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2008年4月8日(火)

外交防衛委員会

  • 大臣所信に対する質疑で横須賀での米兵によるタクシー運転手殺害事件と、核廃絶問題も取り上げ、洞爺湖サミットの議長国として核廃絶をサミットで正面から議題として取り上げるよう求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 横須賀基地の米兵によるタクシー運転手殺害事件が起きました。基地あるがゆえの、まああってはならない事件でありますが、今回の事件で驚きの声上がっておりますのは、脱走兵だったということと併せて、犯人がナイジェリア国籍だったということですね。今アメリカは、イラクやアフガンに大量の派兵をしまして兵士不足になっている、その下で兵士集めに躍起になっておりまして、今回の容疑者のようにいわゆる永住権と引換えに入隊をさせるグリーンカード兵なる新語も生まれているということでありまして、こういう採用基準の緩和が質の低下をもたらしているという指摘もあるわけですね。

 そこで、まずお聞きするんですが、日本に駐留している米兵のうち、このグリーンカード兵と呼ばれる兵は陸海空、海兵隊でそれぞれどれだけいるんでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 おっしゃるように、米軍では、米国籍を有しなくとも、米国居住権や語学能力など一定の条件を満たせば米軍人となることが認められていると承知をしております。

 一方、在日米軍人のうち米国籍を有しない軍人数については、米軍の運用にかかわることでございますので、政府としては承知をしておりません。

井上哲士君

 日米地位協定の中で、日本国政府は、入国者及び出国者の数及び種別について定期的に通報を受けると、こういうことになっているわけですね。この協定ができたときにはそういう外国籍の軍人というのはほぼ想定をされてなかったと思うんです。やはり国籍という問題もこの通報の項目に入れるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 今般の横須賀における事件が米軍人により引き起こされたことは極めて遺憾でありますけれども、今般の事件については、国籍の問題というよりも、脱走兵のような人物に対してより適切な措置がとられるべきではなかったかとの観点から再発防止を講じることが重要と考えております。

 このため、米軍人が行方不明となった場合の情報共有の在り方について、情報共有の範囲等を含め合同委員会の枠組みで整理すべく米側及び関係省庁で検討をしているところであり、可能な限り早期に大枠につき合意したいと考えているわけであります。

 米軍人の国籍が何であるかということは、必ずしも日本国政府が把握すべきことではないのではないかと考えております。

井上哲士君

 私もナイジェリア国籍だから悪いということを言うつもりはないんです。ただ、先日も予算委員会で性犯罪の問題、質問しましたけれども、今のアメリカ軍というものの実態がどうなっているかということをきちっと把握しなければ実効ある再発防止措置も求めることができないと思うんですね。

 その採用基準の緩和というのはいろんな問題がありまして、米軍の新兵の採用担当者が自分の目標達成のために応募者の犯罪歴とか病歴を隠すと、こういう違法行為も増えているわけですね。こういう実態は例えばじゃ日本は掌握されているんでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 米軍の採用につきましては日本政府としてその詳細を承知しているわけではありませんけれども、米軍は軍人の採用に当たっては、犯罪歴などを申告させ又はこれを調査し、しかるべき審査の上、規律を維持するにふさわしくない人物については入隊を認めていないとの手続を取っているものと承知をしております。例えば、未成年者に対する性犯罪や暴力的な性犯罪で有罪判決を受けた者については入隊は認められないと、こういうことであります。

 政府としては、米軍は米軍の責任においてその規律を維持するのにふさわしい人員を採用、配置すべきものと考えております。

 取りあえずそういうことでございます。

井上哲士君

 今答弁されたような仕組みになっているんです。だから、それを隠してやっているという違法行為があるんですね。

 これはアメリカの政府監査院が二〇〇六年の八月に報告書を出しています。アメリカ自身の報告書の中で、こういう目標達成のために犯罪歴や病歴を隠しているというのが出されているわけですね。ですから、私はやっぱりこういう下でやはりモラルの低下とかいろんなことが起きているというこの事実はしっかり見て、その上での実効ある再発防止策をしっかり迫ることが必要だということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、今も議論になりましたけれども、核兵器廃絶の問題やサミット議長国としてのイニシアチブの問題について質問いたします。

 二〇〇〇年のNPTの再検討会議で、核廃絶を求める国際世論の中で、核保有国も自国の核兵器の完全撤廃への明確な約束というのを受け入れて合意に盛り込まれました。政府としては、この二〇〇〇年の合意については現時点でどういう評価をされているんでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 二〇〇〇年のNPT運用検討会議最終文書には、CTBTの早期発効、カットオフ条約交渉の即時開始、早期終了、米ロ間の核軍縮の推進及び核兵器の全面的廃絶に対する核兵器国の明確な約束といった核軍縮・不拡散分野における将来に向けた前向きな措置が盛り込まれているわけであります。我が国はこれを、核不拡散体制を堅持し、強化し、また核軍縮を推進していく上で極めて有意義な成果だったと評価をしております。

井上哲士君

 極めて有意義な成果だったと。

 この具体化が二〇〇五年の再検討会議で求められました。私も、当時、国連本部に傍聴も行き、いろんな行動をニューヨークでしたわけですが、残念ながらアメリカの抵抗もあり合意文書ができなかったわけですね。そこで、次の二〇一〇年のNPT会議というものが大変注目をされております。この二〇一〇年の再検討会議で、この核兵器廃絶の明確な約束の実行を迫る上で非常に大きな変化がこの間起きております。

 昨年の一月に、キッシンジャーそれからシュルツ両アメリカの元国務長官、それからペリー元国防長官、そしてナン元上院軍事委員長の四氏がウォール・ストリート・ジャーナルに、核兵器のない世界というのを呼びかけて、そのための本格的な取組をアメリカ自身に求める論文を発表して大変衝撃を与えました。一年後の今年一月にも、再度この四氏が核兵器のない世界に向けてという呼びかけを発表しております。

 大臣、まず、これお読みになったかどうかだけまずいかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 これを全体を読んだということはございません。

井上哲士君

 これは今国際会議などでも大変大きな注目があるわけですから、核被爆国の外務大臣として、是非これは、ちょっと私は驚いたんですが、これは、読んでいないということは、それで核廃絶に向けての交渉ができるんだろうかということを思うんですね。

 昨年の論文では、抑止力の目的で核兵器に依存することはますます危険だというふうにした上で、拡散の防止のためには核廃絶に進むことが必要なんだということを言いました。今年もこういうことを言った上で、昨年の論文の呼びかけにアメリカの元高官から非常に大きな支持が広がっているということを書いているわけですね。オルブライト、ベーカー、クリストファー、パウエルという元歴代の国務長官、それからブレジンスキー元大統領補佐官、ですからケネディ政権からブッシュ第一期政権までのすべての政権の国務長官あるいは国防長官、安全保障担当の大統領補佐官のだれかが名を連ねているという状況になっております。

 アメリカの核政策を立案をし推進をしてきた人物が、もう抑止力というのは有害だという、それから核拡散の防止のためには核廃絶に進むことが必要だということを呼びかけたというのは大変大きな意味があると思いますけれども、大臣、概略は御存じかと思います。こういう論文を受けての御感想、そしてそれにアメリカの元高官の支持が広がっていることに対する受け止めはいかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 この論文については概略の説明は受けておりますし、大変いい方向が出ているなと高く評価するものであります。そして、元高官が、多くの高官がそれを評価しているというのもいい傾向だなと。願わくば現役のときにそういうことを言ってほしかったなと。私以上に読む必要があるのは、アメリカとかロシアとか、核保有国の首脳に是非読んでもらいたいと。私とは大体元々同じ意見でありますから、私は読まなくてもいいけど、そういう人たちにこそ読んでもらいたいと、こういうふうに考えているわけであります。

 本件投稿記事に示されているような核兵器廃絶に向けた現実的かつ着実的な努力の呼びかけは我が国の核軍縮に関する国連総会決議案との共通点もあり、我が国が行ってきている核兵器廃絶を目指した努力とも基本的には軌を一にするものであると考えております。

 我が国は、唯一の被爆国としても今後とも核廃絶に向けた現実的かつ着実な努力を継続し、NPTを礎とする国際的な軍縮・不拡散体制の維持強化のため引き続き取り組んでいく考えでございます。

 他方、東アジア地域は、北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験実施発表に示されるように、引き続き不安定、不確実性を内包しており、核抑止力を含めた米国の抑止力は我が国の安全を確保する上で極めて重要な役割を果たしております。核軍縮を議論するに当たっては、そうした我が国が置かれている環境等についてもよく勘案すべきであると考えます。

 政府としては、核廃絶という目標と核抑止を必要とせざるを得ない現実の状況との差を縮めるべく、核軍縮・不拡散のための現実的かつ着実な努力を粘り強く続けていくことが重要と考えております。

井上哲士君

 この呼びかけに加わったシュルツ元アメリカの国務長官が今年の一月に日本の新聞にインタビューで答えていますが、抑止にも役立つんじゃないかという質問に対して、それは大きな間違いだと、こう彼は言っているんですね。敵対国家というのはもう通常兵器でも抑止できるんだということを言っているわけであります。

 私は、やっぱり従来型のアメリカの核の傘のような議論からは日本は今脱すべきときだと思うんですね。

 あの四氏の呼びかけの反響というのは非常に世界的にも広がっておりまして、今年の二月にはノルウェー政府が主催をしてオスロで核軍備撤廃の国際会議が開かれて、日本からも大使が参加をされております。それから、イギリスのベケット外務大臣なども、こういうのを支持するようなシグナルの意見を出されているわけですね。

 そういう中で、私はもっともっと日本がこういう呼びかけにこたえてイニシアチブを発揮をするべきだと思うんですが、ただしておきたいのは、今年二月にミュンヘンで開かれた国際安全保障会議での対応なんですね。

 これ、日本は高村大臣が日本の閣僚として初めてこのミュンヘンの会議に参加をされておりますが、大臣の演説が外務省のホームページでも見れますが、この中ではこういう四氏の呼びかけに触れることもなければ、北朝鮮の核問題はちょろっとありますが、核廃絶、核軍縮という言葉もないわけですね。

 私は、日本がイニシアチブを発揮するという場合に、やっぱりこんな基本的な国際会議の場でそのことをしっかり述べるということが必要だったと思うんですね、被爆国の外務大臣として。いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 そのときそのとき、TPOに応じてそのとき最も全体的なテーマになっていること、そういったことについて述べているわけでありまして、その演説の中で述べていないからといって日本がそれを重要視していないというわけではないと。それは国連等において核廃絶決議案等を出していることからでもお分かりいただけるだろうと、こういうふうに思います。

井上哲士君

 高村大臣の前の日に、ドイツのシュタインマイヤー外務大臣が、核軍縮問題を欧米諸国最重要課題と位置付けて、核兵器保有国に対して軍縮で指導性を発揮するということを演説で求めているんですね。その演説の中でこの四氏の呼びかけにも触れて、今度のNPTの見直しの中で綿密に吟味されるように期待すると、こういうことまで述べられているわけです。その翌日に私は大臣が演説されたということは、せっかく呼びかけられているわけです、これやっぱりこたえる演説を急遽中身替えてでもやるべきだったんではないか。

 私は、唯一の被爆国である日本というのは、先ほどTPOと言われましたけれども、まあ会議の空気が読めてないなと言われるぐらいあらゆる会議でしっかり言ってこそイニシアチブ発揮できると思うんですね。こういう呼びかけがわざわざされているのにかえって触れないということは、むしろ後ろ向きの印象、メッセージを与えるんじゃないかという懸念を持っておるんです。

 そこで、今度のサミットでどういうイニシアチブを発揮するのかということが大変重要だと思うんですが、先ほどもいろいろありました。しかし、この間のやはり決議を見ますと、声明を見ますと、見出し自身が不拡散になっていますし、それから、先ほど三本柱と言われました。三本柱という言葉はあるけれども、不拡散という言葉はあっても、核軍縮という言葉自身はこの声明の中に出てこないんですね。私、同じものが出てきたようであれば、これは力強いメッセージにはならないと思うんです。

 ですから、やはり正面から核軍縮、核廃絶ということを議題として取り上げるということ、それから、この機会に是非、被爆者の代表の発言の機会とかそれから核被爆写真の展示を併設するなど、核兵器の実相を示すそういう場も与えてこそ被爆国の議長国にふさわしいイニシアチブだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 御存じだと思いますが、サミットは、本来経済サミットとして経済の問題が中心になって始まったものでありますが、その時々の政治問題も取り上げると、こういうことでやっているわけであります。

 この核軍縮の問題というのはずうっと続いた問題なんですね。それで、そのときそのときのトピックとしては、今はイランの不拡散の問題がありますね、今は北朝鮮の不拡散の問題がありますねと、こういうことで不拡散という問題を取り上げているわけでありますが、その基盤として核廃絶、核軍縮も必要ですねと、当然そういうことで触れていくと、こういうことであるので、まさに現時点の起こっている政治問題が何だと、こういうことで不拡散という話に今度のサミットではなっていると、こういうふうに御理解をいただきたいと。

 それから、ミュンヘンの会議についてお話ありましたが、私も後で知りましたが、私はちょうど飛行機に乗っている間にされて、連休二日を使って行って帰ってきた旅でございますので、そのときの空気が読めなかったといっても、そこ、いなかったときの空気でありますから、そこは御理解をいただきたいと、こう思います。

井上哲士君

 それは、やっぱり外務省全体が被爆国の政府にふさわしい対応をしていただきたかったと思うんですね。

 今、今の中心は違うんだということを言われましたけれども、だからこそ私は、今四氏の呼びかけなど、核廃絶ということがこの一年間で大きな変化が起きている、まさにチャンスなんだということを言いたかったんです。先ほど言いましたシュルツ氏は、オスロの会議でチャンスを失わないことということを強調しているんですね、今がチャンスなんだということを言っています。

 九月にサミット開催国で、日本で議長サミットが開かれます。日本では初めてでありますけれども、その会場に衆議院議長は広島を選びました。ですから、アメリカの下院議長が初めて広島に来るんですね。サミット参加国の下院議長が原爆の慰霊祭に献花をし、平和記念資料館を見る、そして平和、軍縮への議会の役割ということをテーマで議論をする、これは非常に大きな私はイニシアチブだと思います。そういう立場を政府もしっかり発揮していただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。


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