本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2008年4月22日(火)

外交防衛委員会

  • 「思いやり予算」を続ける日米特別協定について質疑。イラク違憲名古屋高裁判決や、米兵に対する様々な特別扱いについても質す。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 最初に、先日の名古屋高裁の判決について私からもお聞きします。

 この判決は、イラクでの航空自衛隊の空輸活動に憲法に違反する活動を含んでいるということを認め、そしていわゆる平和的生存権についても、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である、こういうことを示しました。自衛隊の活動にかかわる憲法判断というのは高裁では初めてのことでありまして、そういう点でも極めて重い意味を持っていると思うんです。

 ところが、政府は自衛隊の活動に何ら影響を与えるものではないとして活動継続を決め、そして高村大臣は十八日の会見で、判決文は暇でもできたら読むと、こういうふうに言われております。私は、やはり憲法判断をしたこの高裁判決を読みもせずに批判をするというのは、これは憲法擁護尊重義務が課せられた閣僚としての立場も問われることだと思います。

 今後の自衛隊の活動にもかかわる中身も私は含んでいると思います。しっかりこの高裁判決を重く受け止めるべきだと思いますけれども、高村大臣、いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 今回の判決は、自衛隊のイラク派遣等の違憲確認及び差止めを求める訴えは不適法なものであるとして却下され、また損害賠償請求は法的根拠がないとして棄却された国側勝訴の判決、国側全面勝訴の判決でございます。航空自衛隊の空輸活動が違憲であると判示した部分は、判決の結論を導くのに必要のない傍論であると、傍らの論であると承知をしております。このように本件裁判の控訴人の請求は、自衛隊のイラク派遣等が憲法に反するかどうかを判断するまでもなく却下あるいは棄却されるべきものでありました。現に、違憲だと言いながら却下あるいは棄却しているわけであります、この判決は。

 政府はこの裁判において、自衛隊のイラク派遣が憲法に反するかどうかについて、何ら主張もしていないし立証もしていない、それはそういう必要がないと思ったから。争っていないんですよ、そういうことについては。そして政府としては、こうした中で判決の結論を導く必要がないにもかかわらず、こういうことが示された見解であると、こういうことでございます。

 私が読みもしないで判決を批判したと言いましたが、何にも判決自体について批判していません。読んでいませんから、判決については批判していません。これは傍論であると。国が全面的に勝訴した判決ですから、私は高く評価をしております。これは傍論であるということだけ言っているわけです。それは多くの、私自身読んでいませんが、多くの論者がみんな傍論としてこういうふうに言ったという判断を受けていますから、もしこれは傍論でないという方がいたら、そういうふうに指摘していただきたいと思うんですが、私は衆議院の委員会でも傍論だということを何度も言いましたが、だれも、いや、傍論じゃないよと言った人はいなかったと思います。これは判決の主文を導き出すために必要のない傍論を述べたということについて争っている人はいないだろうと、こういうふうに思っています。

 私は、その傍論を各判決に書くことについて、いいか悪いか、私自身の頭の中では判断していますが、私はそれを批判したことはありません。傍論書いたからけしからぬと、そういうことを言っていないんです。私は記者会見でもそういうことを言っていません。

 そして、ただ、私が言ったのは、その傍論が、あたかも判決の傍論部分が行政の判断に優越する司法判断であるというようなことはそれは違いますねと。いわゆる司法の優越というのは、その主文について、あるいは主文を導き出すその理由の部分について司法の優越というのは確かにありますが、主文を導き出すに必要のない傍論部分については司法の優越ということはそれはない、ないんです。そうであるにもかかわらず、裁判所の判断であるから行政の判断よりも傍論であっても優越するかのごとく言って政治利用をする人については批判をいたしました。

 この判決そのものについては、それは私はぐっとこらえて批判をしておりません。

井上哲士君

 傍論傍論ということを言われるわけでありますが、裁判自身が、この憲法違反の判断を求めて、高裁判決というのはこの核心部分に対しての判断をしたわけですね。これまでいろんな違憲訴訟ありましたけれども、全部門前払いをしてきたんです。それを正面から認定をしてきたという点でいえば極めて私は高い重みがあると思うんですね。

 先ほど言いますと、大臣は会見の中で、これあたかも崇高なものであるかのごとく錯覚を与えと、こういう言われ方しました。ですから、まさに私はこの裁判の判決の価値を低めるような発言をされたということは私は批判に当たるんだと思うんですね。

 ここでこればっかり議論しているわけにいきません。

 そういういろんな政府の発言がある中で、先ほどもありましたけれども、航空幕僚長がそんなの関係ねえと、こういう発言をされました。私、お笑いの言葉を使ってこれを論ずること自体極めて不見識だと思いますし、これを聞いた国民は憲法も司法も関係ねえと軽んじているんだと、こういう受け止めをされたと思います。

 先ほど石破大臣は違和感を覚えると、こういうふうに言われましたけれども、私それにとどまらないと思うんですね。やっぱりこういう言葉は撤回を求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 これは航空幕僚長が定例会見で申し上げたものでございます。

 そこは映像が残っておりませんので、文字でしか申し上げることはできませんが、そこの部分はこういうやり取りですね、大体。非常に純真な隊員については一部心を傷つけられている者がいるかもしれないが、大多数はほとんど影響ないと、そんなの関係ねえという状況でありますと、大体、大意こういうような発言ではなかったかというふうに承知をしておるわけでございます。

 ですから、言いたかったのは、政府として、こういうような傍論が、傍らの論が示されたとしても、それは全く正当性について影響を与えるものではないし、我が国が憲法並びにイラク特措法に基づいて粛々と活動しているということが何ら変更はないものだということが言いたかった。それはもう田母神航空幕僚長の、本当に部下を思い、国を思う、そういう気持ちであったというふうに私は認識をいたしております。

 ただ、言い方として、そのお笑い芸人の方の芸を私よく存じませんし、ここにおいてどのように、どういうようなシチュエーションで言ったのかよく分かりませんが、やはりここにおいてそれを持ってくること自体がそれこそ必要であったかと言えば、それは必要ではなかった、傍論とは言いませんが。そこにおいて、やはり違和感はあります。

 ただ、撤回を求めるということは、その活動が憲法並びに法律に基づいて正しいものであるということを撤回するというつもりは、させるというつもりは私は全くございません。言い方はもう少し別の言い方があったのではないか、これから会見を行う場合に、やはりそのことによって、委員のお言葉を借りれば、憲法なんて関係ないんだというふうに航空幕僚長が言っているというふうに受け取られる方が出るということは決して政府として望ましいことではございませんので、これから先、発言の仕方というものについては幕僚長たるものよく認識をしてもらいたいということは申し上げたいと思います。

井上哲士君

 極めて不見識な発言だということは重ねて申し上げておきますが、この判決は、非常に丁寧に事実認定を重ねまして、久間元防衛大臣の答弁も含めて政府側の答弁も証拠として判断をし、そして政府の憲法解釈に基づいて見てもこれは違憲だと、こういう判断をしているわけですね。

 外務大臣は盛んに主張も立証もしなかったということを胸張って言われるわけでありますが、この判決の中でも政府が情報を国民にも国会にも示していないということも指摘をしているわけですね。結局、四年間、主張も立証もしないというか、事実自身を国民や国会の前に明らかにしないでおいて、都合の悪い判決が出てくれば無視をするということは私は許されないと思うんですね。そう言われるのであれば、異論があるというのであれば、イラクでの空自の活動の実態を包み隠さず国民の前に今明らかにするべきだと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 必要なこと、そして国際場裏からいって明らかにできることについては明らかにしてきていると思います。

 先ほども申しましたように、私はこの判決そのものに、こういう傍論を書いたからけしからぬとか何だとか一言も言っていないんですよ。ただ、傍論の部分は別に行政判断よりも優越するものでも何でもないのに、あたかも裁判であるからその部分まで優越するかのごとく扱って政治的に利用する人たちについては、政治的批判を、私は政治家として批判をしました。判決そのものがけしからぬということを言っているわけではないわけであります。

 それから、判決の内容も私自身つぶさに読んでおりませんが、私個人的なことを申しますと、判決書を読むのが趣味なので、外務大臣辞めて時間があったらいろんな判決書を、最近読む時間がありませんので、読んでみたいと思っているその中の一つであると、こういうことを言っただけで、別にそれを、この判決をさげすんだわけでも何でもないということだけ申し上げておきます。

井上哲士君

 一般的判決ではなくて、まさに今行われている自衛隊の活動にかかわっての判決でありますから、それは趣味で読むものではなくて、私は、まさに閣僚としての責任を持って読んでいただいて重く受け止めるべきだということを思いますし、イラクからの撤退を行うということを求めて、次の質問に移りたいと思います。

 思いやり予算が始まりまして三十年ということになりますが、その対象は拡大を重ねてまいりました。特に、提供施設整備費、いわゆるFIPについてお聞きしますが、これは始まってからの総額は幾らになっているでしょうか。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えさせていただきます。

 提供施設整備費につきましては、昭和五十四年度から平成二十年度までにおきまして約二兆一千四百三十億円を負担してきているところでございます。なお、近年の厳しい財政状況を背景に平成五年度以降は一貫して減少してきているところでございます。

井上哲士君

 二兆を超える巨額でありますが、このFIPは最初、家族住宅とか隊舎、それから環境関連施設等を日本側が負担して建設をするということで始まったわけでありますが、今や、米軍の司令部の施設とか、それから米軍機の保護用のシェルターの建設、それから滑走路、最近でいいますと、横須賀基地に原子力空母が入るためのしゅんせつ等、戦闘と不可分の施設まで日本が負担をするように言わば変質をしていると思うんですが、これは一体なぜこういうことになっているんでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 地位協定二条の1(a)に基づきます施設及び区域の提供につきましては、地位協定二十四条の二におきまして、地位協定二条に定めるすべての施設及び区域をこの協定の存続期間中合衆国に負担を掛けないで提供するという旨が規定をされておるわけでございます。

 つまり、この規定の内容に合致するものであれば我が国が整備し提供するということに地位協定上の問題があるわけではないというのは、これは当然のことでございます。当初は家族住宅であった、それが現在は滑走路や司令部庁舎を整備しているということもそのとおりでございます。

 ですので、私どもが行うことというのは地位協定に何も反して行っているものではないということをまず申し上げておきたいと思います。

 それでは何をやるのだということですが、合衆国からあれもやってね、これもやってねというような希望がございます。それをまず聴取をするわけでありまして、その上で、安保条約の目的達成、すなわち、我が国の平和と独立あるいは極東の平和と安全に寄与する合衆国の軍隊の活動に資するというような安保条約の目的達成との関係、そして、我が国の財政負担との関係、社会的、経済的な影響などを全部考慮いたしました上で我が国が自主的な判断によって対応してきているというものなのでございます。

 なお、本年度、平成二十年度予算におきます提供施設整備につきましては、新規事業については環境関連、安全対策施設に限定するということで抑制をしているものでございますし、継続いたしております事案につきましても、その必要性でありますとか緊急性を十分に精査することで、必要最小限の施設を整備するということで抑制的に現在判断をしておるところでございます。

井上哲士君

 私は、九条を持つ日本がそういう戦闘と不可分な施設整備まで負担をするべきではないと思いますが、今言われたような日本の姿勢がアメリカからの費用要求、負担要求をエスカレートさせているんじゃないかと思うわけですね。

 国会図書館の昨年一月に出た「レファレンス」で、アメリカの海兵隊の指令の中で日本の受入れ国負担による建設計画というのを紹介をしておりますが、その中で、日本のいわゆるFIPと、それからアメリカの国防省の軍事建設予算、いわゆるMILCON、この望ましい使途についてそれぞれ挙げているんですね。

 これによりますと、これはアメリカの海兵隊の指令の一部でありますが、FIPの使途として望ましいものは、二つ言っていまして、家族用住宅及びすべての地域生活支援用施設、それから今言われた環境あるいは安全性に係る欠陥に起因する既存施設の改築と、こう言っています。そして、アメリカ側、MILCONの使途として望ましいものとして、既存施設の改築又は拡張、それから攻撃的作戦を実施する能力や力量を増大させる事業計画、こういうことを挙げているんですね。

 実態からいえば、まさに海兵隊自身がMILCONの使途として望ましいというものも含めて、今や日本が造っているということになっているんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

国務大臣(石破茂君)

 ですので、それは、もう何でもアメリカが言うものを造ると、盲目的に造るということを申し上げているわけではございません。

 それをMILCONと呼ぶかどうかは別といたしまして、アメリカのお金でやるのか日本がやるべきなのかということは、それは私ども日本政府として自主的に、これが納税者のお金の使い道として日米安全保障条約の目的を達成するためにふさわしいお金であるのかどうなのかということを一義的に考えるべきものだというふうに考えております。

 したがって、結果として、先ほど申し上げましたように相当抑制的に、そして対象も限定をしてやっておるものでございまして、それは我が国として本当に自主的に判断をするべきものだというふうに考えております。

井上哲士君

 衆議院の議論でも我が党議員が示しましたが、アメリカの国防総省が海外基地の建設や施設整備について内規を示しております。太平洋地域、要するに日本や韓国との関係でいうと、アメリカのMILCONで計算するのではなくて、まず受入れ国負担を優先させると、こういう内規をアメリカは持っているんですね。

 ですから、結局、まずは吹っかけろということになっている下で、やはり日本の負担が増大をさせられている。先ほど言ったように、海兵隊の指令の中身からいっても本来アメリカ側が負担するようなものまで負担するという状況に私はなっていると思うんですね。もう一回、いかがでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 ですので、繰り返しになりますが、使途も限定、継続するものについても必要性、緊急性を十分精査することで必要最小限の施設というふうに我々は判断をしてやっておるところでございます。

 やっぱり、どの国もそうですが、まず第一義的に考えるのは自分の国の納税者の利益であって、いかにして自分の国の納税者の負担を少なくして自分の国の利益を最大にするかということは、それはどの国でも考えることだと思います。ですから、まず吹っかけてみろという言い方が正しいかどうかは別にして、ほかの国が持ってくれるんだったらそれにこしたことはないよねということはございましょう。そしてまた、それがその国にとって、相手国にとっても裨益するものであるということであれば、それはなおさらのお話なのだと思います。

 他方、私どもは私どもの納税者を背景に持っておりますわけで、自主的に本当にこれはふさわしいのだろうかということを判断し、駄目というときには駄目ときちんと言うという姿勢は常に保持すべきだと私も思います。

井上哲士君

 どの国でもそうだと言われましたけれども、先ほど紹介したアメリカ国防総省のまず受入れ国負担を優先させるというのは、太平洋地域においてと、こうなっているんですね。それ、NATOなどとは違う対応をアメリカはしているんです。結果として、日本の負担が率でも額でも突出をしているということはこれまでも議論されてまいりましたし、アメリカの国務省自身が、かつて、日本の接受国援助はアメリカの同盟国の中でも最も気前がいいということを述べたこともあるわけで、私は、こういう言わばアメリカ側の方針に従って国民の税金がどんどんつぎ込まれているということはあってはならないと思います。

 そこで、平成十二年の確認で、このFIPでは娯楽施設などの新たな建設は行わないということになっておりますが、この方針というのは、グアムにおいてもこのことを踏まえるという答弁もありました、米軍再編経費にかかわる建設についてもこの方針は堅持をされると、こういうことでよろしいでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 グアムに移転する場合に私どもが負担をすべきものというのは、これは限定をいたしておるものでございます。

 平成十八年五月一日に日米間で合意しましたロードマップにおきましては、再編実施における施設整備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日本政府が負担するというふうになっております。そして、米軍再編において部隊の移駐、施設の移転に伴って必要となる機能、施設を整備する必要はそれは当然ございまして、これには福利厚生施設が排除されるというものではございません。

 なお、リロケーション、提供施設移設整備というものがございますが、これは米側に負担を掛けないで移設するということになっておるわけでございまして、地位協定二十四条の規定に基づき我が国がその経費を負担しており、これには福利厚生施設も含まれるものでございます。

 したがいまして、その辺りはグアム移転についてどうなのだというふうに限定的なお尋ねになりますと、これはもう何をやるのかと、何をやらないのかという詳細について今決まっておるものではございません。決まっておるものではございませんが、私どもとして本当に納税者の負担に耐えるものなのかどうなのかということはきちんと精査をいたしたいと思っておるところでございます。

─────────────

理事(浅尾慶一郎君)

 この際、委員の異動について御報告いたします。

 本日、牧野たかお君が委員を辞任され、その補欠として長谷川大紋君が選任されました。

─────────────

井上哲士君

 そうすると、確認しますが、日本国内における再編に伴う様々な今後の建設の中でゴルフ場などの建設はあり得ると、こういうことなんですか。

防衛大臣(石破茂君)

 日本国内において、では新規に造るということがあり得るかと言えば、それはやっぱり抑制的に考えていくべきものだと思います。

 リロケーションということで、返還の要求があってあるゴルフ場を返さねばならないと。そこは、しかしながら、返されることになるゴルフ場の代替的なものをリロケーションとしてどこか造るという形で負担をすることは今後もございます。

井上哲士君

 それは、私は国民の理解は得られないと思いますね。

 今、今回のこの思いやり予算の中でも改めてこうしたレジャー施設などの人件費も含めて厳しい批判の声があるわけで、リロケーションだから造るというのは、これは国民の理解は絶対に得られないと厳しく指摘をしておきたいと思うんですね。

 それで、今回の協定の交渉における合意事項として、今後、より効率的で効果的な駐留経費とするための包括的な見直しを行うということで合意をしたということとされていますが、例えばこういう娯楽施設における人件費なども含めて当然見直されると思うんですが、政府としてはこの包括的な見直しで何を具体的に提起をされようとしているんでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 日米協議の結果、日米両政府は、新たな特別協定の有効期間中にこの在日米軍駐留経費負担をより効率的、効果的なものとするために包括的な見直しを行うということで一致しておるわけでございます。

 この見直しのやり方につきましては、例えばどういうやり方をするかとか、いつ始めるかということにつきましては今後米側と相談していくことになりますけれども、この見直しの対象は特別協定上の措置、それから、それに限らず特別協定の枠外の労務費であるとか今話題になっておったFIP、提供施設整備費も含まれ得ると思います。その他在日米軍駐留経費の負担に伴う様々な制度上の問題につきましても、そのあるべき姿などについて率直に米側と協議していきたいと考えています。

井上哲士君

 今回も百億削減とか言われながら結局はそうならなかったわけでありまして、私は、日本国民の税金でありますから、厳しくこれは見直しを求めたいと思います。

 次に、グアム移転にかかわってお聞きいたします。

 二十日付けの沖縄タイムスに、「海兵隊一部ハワイ移転か」と、こういう記事が掲載をされました。アメリカの下院軍事委員会のニール・アバークロンビー航空・地上軍小委員会委員長がネット上で公表されたということでありますが、グアム移転が決まっている在沖米海兵隊の第三海兵師団、それから第十二海兵連隊の両司令部のアメリカ・ハワイ州移設をアメリカ海軍省が希望していると、こういうことでありますが、この二つの部隊は沖縄から移転するとしていた八千人のうち一体何人を占めるんでしょうか。

防衛省防衛政策局長(高見澤將林君)

 お答えいたします。

 報道については承知しておりますけれども、米国政府が、報道にあるような在沖米海兵隊の一部、すなわち第三海兵師団と第十二海兵連隊の司令部や訓練場などでございますけれども、それを米ハワイ州の海兵隊基地に移転する方向で検討していると、そういった事実は私どもとしては承知をしておりません。

 いずれにいたしましても、二〇〇六年五月に合意しましたロードマップにおきましては、グアムに移転する部隊は第三海兵機動展開部隊の指揮部隊、第三海兵師団司令部、第三海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、それから第一海兵航空団司令部及び第十二海兵連隊司令部を含むというふうに記述をされております。私どもとしては、こういった考え方が米側においてもロードマップに従って移転の問題について着実に進められていくものというふうに考えております。

井上哲士君

 昨日の次官の会見でも、この件についてはアメリカと協議をしていないということでありました。

 ただ、具体的に、この調査設計費約二十一億九千万円の予算を計上すると非常に具体的に言われておりまして、先ほど言った第三海兵師団の司令部機能や下士官宿舎、そして第十二海兵連隊の司令部施設などの、関する予算も計上されると、こうなっているわけですね。

 今協議してないというのは昨日あったわけでありますが、この間の再編協議の中で、過去においてアメリカの海兵隊、在沖海兵隊をハワイに移すというような話というのはこれまで出てきたことがあったんでしょうか。いかがでしょうか。

防衛省防衛政策局長(高見澤將林君)

 お答えいたします。

 私どものこのロードマップの合意というのは、今までのいろんな議論がある中で整理をしたものでございますけれども、いずれにいたしましても、現在、日米間ではこのロードマップに従っていろんな協議を進めているという状況でございます。

井上哲士君

 いや、過去にハワイというようなことが協議の中で経過として出てきたのかどうかということをお聞きしているんです。

防衛省防衛政策局長(高見澤將林君)

 個々の個別の交渉の過程の細かいやり取りについて私一々すべてここで全部承知しているわけではございませんけれども、いろんな日米間のやり取りがこのグアムの問題に限らずいろいろあった中で、現在私どもが実行しようとしているのは日米間の合意、このロードマップに従ってそれを着実に進めていこうということでございます。

 ただ、具体的な内容についてまだ細部まで確定しているわけではございませんので、そういったものを一つ一つきちっとしながら今、日米間で協議をしていると、そういう状況でございます。

井上哲士君

 防衛省はこのグアム移転費を日本も分担する理由として、アメリカは戦略上の観点から現状維持がベストと考えていたけれども、我が国としてアメリカに働きかけた結果、今回の合意にこぎ着けたんだと、だから日本が負担するんだと、こういうことを言われてきたわけですね。

 しかし、この記事の中でも、海兵隊は二十一世紀の太平洋での戦略的課題に対応する体制を検討中だと、国防総省の最終決定は下されていないというアメリカ太平洋軍司令部の発言、そしてさらに、アメリカ海兵隊の戦闘展開・統合副司令官の発言として、これは米下院での発言でありますが、沖縄の海兵隊移設計画は未完成で、ハワイも組み込まれる等と発言をしているわけですね。

 要するに、アメリカの軍事戦略からどこにやるかということを検討していて、その中でハワイもあり得るということをここで言っているわけですね。そうしますと、まさにアメリカの軍事戦略に沿って行われるものであって、日本がグアム移転費を分担する、最初私が防衛省の見解として述べたような、その理由はもう成り立たなくなるんじゃないですか。いかがでしょうか。

防衛省防衛政策局長(高見澤將林君)

 お答えいたします。

 アメリカのいろんな軍事戦略が日本の防衛と関係してくるということも当然ございますでしょうし、また日本がアメリカとの関係でいろんなことを主張するにいたしましても、アメリカの全体の戦略の中でどうしてもいろんな議論があり得ると、つまり日本側が望んだとおりにアメリカが戦略を考えてくれるわけではない。私どもとしては、日本の安全保障をきちっとするためには、そういったアメリカの全体的な動き、今回の再編の流れでいえば、グローバル・ポスチャー・レビューでありますとか、そういったいろんな防衛構想、安全保障戦略を着実にとらえながら、私どもとして必要なものを日米間で交渉してやってきているということではないかというふうに考えております。

 したがいまして、今回の、今報道を引用されましたけれども、具体的な兵力の移転計画というものは、グアムの基地の計画というのを御覧いただきましても、私どもの沖縄の海兵隊を移転する部分と、全体としてグアムの基地の施設整備をする部分というのがございますので、そういった全体の流れの中で、日本政府の主張を通して2プラス2で合意して、それを今具体化をしていくフェーズにある。その具体化のフェーズの中では、いろんな内容を精査していくと。私どもとしては、そのグアムならグアムの基地整備というものが、日本政府が沖縄の負担軽減と抑止力の維持と、その両方を両立するような形で、国会でも御説明しているような内容になるように交渉しながらきちっと進めていくということではないかというふうに考えております。

井上哲士君

 これは二〇〇五年十月にアメリカ太平洋の海兵隊のグッドマン司令官が述べていますが、海兵隊が変革・再編の一環としてアジア太平洋地域で取り組んでいるのは、即応能力を向上させるため、兵力と指揮統制能力を地域全体に分散配置することだと、こういうことも言っているわけですね。

 私言いたいのは、要するにアメリカは戦略上の観点から現状維持がベストと考えていたと、だから日本は負担するんだというのとは、こういう言明は違うんじゃないかと、現状維持がベストと考えていないんじゃないかと、であれば日本が負担する理由はないじゃないかということを申し上げているんです。

防衛省防衛政策局長(高見澤將林君)

 海兵隊のグアム移転につきましての移転経費を負担する理由につきましては、今まで国会で随分いろんな議論がなされておりますけれども、その中で申し上げておりますのは、やはり沖縄県民の県外移転というものの要望があり、どうやって沖縄県民の負担を早期に軽減を達成するかと。それは、日本全体の負担の軽減という観点にもつながるということでやっておりますので、そういう意味で、少なくともこの問題については日本政府として主体的に沖縄の負担軽減を考えた結果できた枠組みでございまして、アメリカ自身もそういったことを理解した上でこうした負担を要望し、そしてその中で全体の枠組みをつくったと。それがまさに日本の政治的な意思として、沖縄の負担軽減に向けての日米双方の決意を示すものであると。そしてまた、我が国としての応分の負担というものをするんだというのがこれまでの議論であったと。これはすべて今までも国会で議論がされている点だというふうに理解をしております。

井上哲士君

 防衛省が配られているグアム移転のペーパーの日本が負担する理由のトップには、アメリカは戦略上の観点から現状維持がベストと考えていたと、しかし我が国としてアメリカに働きかけた結果、今回の合意にこぎ着けたということを一番に書いてあるんですよ。しかし、先ほどから幾つか紹介しますように、アメリカは別に現状維持がベストと考えていたんじゃなくて、戦略的観点からこれやっているわけであって、私は今このことの御答弁を聞いていても、日本がこのグアムの移転費を負担をする理由というものの前提は成り立たないということを改めて指摘をしておきたいと思います。

 次に、幾つか国内における米軍の優遇という問題についてお聞きをしてまいりますが、現在自動車登録をされているアメリカ兵使用の車、いわゆるYナンバー車でありますが、その数、それからそのうち車庫証明が出されている自動車の数は幾らになるでしょうか。

国土交通省自動車交通局技術安全部長(松本和良君)

 合衆国の軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の私有車両、先生おっしゃったYナンバーでございますけれども、平成十九年度末現在で十五の都道府県で登録がなされておりまして、総数は五万六千四百五十台でございます。

  〔理事浅尾慶一郎君退席、委員長着席〕

 その内訳につきましては現在調査中でございますけれども、各運輸支局などにおいて保管中の申請書類から引き出して、保管場所証明書、車庫証明の添付の有無についてすべて調査をする必要があるということでございまして、時間がちょっと掛かっております。本日御報告するに至っておりません。

井上哲士君

 かつてこのYナンバー車が全く車庫証明が出されていないということが国会でも問題になったわけでありますが、その後、今どういうふうな現状になっているでしょうか。

国土交通省自動車交通局技術安全部長(松本和良君)

 Yナンバーの車庫証明でございますけれども、平成十年の六月に警察庁、外務省と協議の上で、Yナンバーの登録に当たりましては車庫証明の添付を求めるということにいたしましたが、在日米軍において一定の準備期間が必要であるため、その実施について日米間で協議がなされてまいりました。

 平成十六年の七月二十日の日米合同委員会におきまして、保管場所が米軍施設・区域の外にある車両、これらにつきましては登録申請の際に保管場所証明書、つまり車庫証明の添付を求める、こういう取扱いにすることについて合意に達しまして、同年九月から添付されております。

井上哲士君

 平成十年の国土交通省が出しています通達は、アメリカ合衆国の軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族であっても車庫法の適用を除外されるものではないと。よって、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私有車両の登録に当たっては、車庫証明書の提出がない場合にはこれを行わないことと、こういうふうにしているんですね。そして、今あったように、その時期については追って通知をするということになっています。

 ですから、この通達では、基地の中と外というのは全く区別していないんですね。ところが、今ありましたように、基地内にある車については、引き続き車庫証明の提出なしに車両登録がされているということになっておりますが、この基地内の車は引き続き免除になっている、この一体どこに法的根拠があるんでしょうか。これ、外務省ですかね、いかがでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 今の御質問でございますが、保管場所が米軍施設・区域の中にある場合の取扱いにつきましても、関係法令に沿った対応が実現するよう米側との協議に努めておるところでございまして、引き続きそのような努力を続けてまいりたいというふうに考えています。

井上哲士君

 これは、つまり本来適用除外されないのに現実はされているという取扱いになっているわけですから、法に反する状態が引き続き放置されているわけですね。手数料を一台二千五百円といたしますと、五万六千台全体でいいますと一億四千万ぐらいになるわけですね。

 具体的な取扱いについては、アメリカ合衆国軍隊において一定の準備期間が必要だということで、追って通知するといって十年たっているわけですね。にもかかわらず、基地内については改善されていないと。これ、この間どういう対応をして、これからどうするのか、もう少し突っ込んでいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 繰り返しになるかもしれません。甚だ恐縮でございますが、保管場所が米軍の施設・区域の中にある場合の取扱いにつきまして米側と協議しておりますけれども、その詳細については、米側との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 結論的に、現在までのところ米側との間で合意に至っておりませんけれども、引き続き関係法令に沿った対応が実現するよう、引き続き米側との協議に努めてまいりたいと存じます。

井上哲士君

 ですから、通達が出されて十年たった、なお関係法令に沿わない対応が残されているということは私は大変重大だと思います。

 次に、横須賀刑務所での米兵受刑者の優遇についてお聞きをいたします。

 この問題は、九七年に我が党の緒方議員が質問をいたしまして、二〇〇二年に私も質問をいたしました。米兵受刑者は全部横須賀刑務所に集められておりまして、いろんな優遇がされている。一番の問題は、非常に食事が優遇をされているということなんですね。

 最近の三月二十三日から三月二十九日までの横須賀刑務所におけるメニューをいただきました。例えば三月二十四日を言いますと、米軍関係受刑者は、朝食、フルーツ、スクランブルエッグ、ビーフパティ、フレンチトースト、シリアル。日本人受刑者は、サケフレーク缶、昆布つくだ煮、白菜漬け、みそ汁。昼、米兵は、スパゲッティ、ポテト、ボイルドキャロット、ビーツアンドオニオン。日本人受刑者は、卯の花いり煮、チキンサラダ。夕方、夕食、米軍関係受刑者は、ビーフヌードルスープ、ペッパーステーキ、シーズンズキャベツ、スライストマト、パイナップル・アップサイドダウンケーキ。日本人受刑者は、混ぜ飯、煮浸し、豚汁、刻みショウガと、こういうふうになっているんですね。一週間通して見ましても、要するに、肉関係がきちっと米軍関係は出るという問題と、毎食デザートが、ないしはフルーツが付くと、それからお茶の代わりにコーヒーや牛乳が付くと、こういうふうになっているわけですね。これは、九七年に指摘して、私も二〇〇二年に指摘したけれども、いまだにこういうことが出ております。

 この優遇というのは、一体どういう法的な根拠、協定上の根拠があるんでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 米軍関係の受刑者に対する取扱いについてでございますが、刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意がございまして、この中で、我が国の当局が米軍関係者を拘束した場合には、日米両国間の習慣等の相違に適当な考慮を払う旨定められておるところでございます。こうした合意を踏まえまして、横須賀刑務所におきましては、米軍関係者に対しては他の受刑者と一部異なる取扱いがなされているものと承知しております。

 これは具体的に申し上げれば、今先生御指摘のメニューの件でございますけれども、補充食料として米軍から横須賀刑務所に定期的に届けられているといったものでございますけれども、現在、米側関係受刑者と日本人受刑者との間での処遇の違いについては、日米関係当局間で補充食料の改善につき協議を行っているものと承知いたしているところでございます。

井上哲士君

 これは、補充食料の提供の方法やその量というのはどういうふうになっているんでしょうか。

法務省矯正局長(梶木壽君)

 今御指摘のありました米軍関係受刑者に対する補充食料でございますが、米軍から横須賀刑務所に対しまして定期的に現物による提供が行われております。

 若干古い統計で恐縮でございますが、平成十七年四月から平成十七年三月まで、約一年の期間でございますが、総量として約十三トンというふうに把握をしております。

井上哲士君

 宗教によっても豚肉が駄目だとか、食習慣は違うわけですから、それに合わして献立などを配慮するのは当然だと思うんですね。しかし、この米兵への優遇というのは言わば習慣の違いという範疇ではないんじゃないかと思うんですね。

 アメリカ兵以外の外国人受刑者に対してこういう補充食料が許可をされたという例はあるんでしょうか。

法務省矯正局長(梶木壽君)

 そのような例は承知しておりません。

井上哲士君

 そうしますと、外務省に聞きますけれども、この横須賀刑務所での優遇というのは、地位協定で、まあ言わば外国人の習慣に配慮というふうに言われましたけれども、その外国人の習慣ではなくて米兵だけが優遇されている、するということに一体どういう根拠、理由があるんでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 お答え申し上げたことと重なってまいりますが、合同委員会合意では、我が国当局が米軍関係者を拘束した場合には、日米両国の習慣等の相違に適当な考慮を払う旨定めておるところでございまして、米軍関係者であるから優遇せよということが書いてあるわけではございません。

井上哲士君

 これは優遇じゃないですか、どう考えたって。それは詭弁ですよ。そして、要するに、同じアメリカ人が日本で罪を犯してもこんなことはないんです。米兵だけがやられているんですね。これ説明が付かないと思うんですね。

 何か、じゃ、法務省聞きますけれども、米兵だけを優遇するということが矯正政策上何か意味があるんでしょうか。

法務省矯正局長(梶木壽君)

 この補充食料の提供につきましては、この日米合同委員会合意ができた時代、いろいろな背景があったかと思います。

 現在、我々の立場、考え方といたしましては、最終的に処遇の格差は是正されるべきであろうというふうに考えております。これは、それ以外にも幾つか横須賀刑務所であったわけでございますが、これまで米側と種々協議をいたしまして、これ以外のシャワーの問題でありますとかあるいは消灯時間の問題でありますとか、一つずつ解決をして努力をしてきたところでございます。

 この提供食料の問題につきましても、我々の方で、従来我々が使っている食料、素材で、言わば米国人の食味にも合うような、そういった新しいメニューを考案をいたしまして米側にこれを提示すると同時に、試行として、朝食用、昼食用それから夕食用ということでやって、こういうことを積み重ねて交渉を継続していっているところでございます。

井上哲士君

 最初に指摘してから十年ということになるわけですが、今試行されているということを言われましたけれども、どこまで改善がされようとしているんでしょうか。

法務省矯正局長(梶木壽君)

 今申しましたように、補充食料の問題につきましては、平成十八年の十二月に横須賀刑務所の中にワーキンググループをつくりまして新しい献立等について議論すると同時に、米側にも参加を求めて御説明をしてきたところであります。

 先ほど申しましたように、新しいメニューを作って、これを今、試行を始めた段階でございます。

井上哲士君

 指摘から十年たっていて、余りにも私は遅いと思うんですね。

 外務省としてはどういう対応をこの間されてきたんでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 ただいま法務当局から御説明のあったところに尽きるわけでございまして、両当局間、つまり法務当局と米軍当局の間で協議をしていると。横須賀刑務所の食事提供の実情を説明するとともに、米側による補充食料によらないメニューの検討などを行っているものと承知しております。

井上哲士君

 私も法務委員会時代に刑務所を何度も視察しましたけど、食事というのは本当に大きな問題なのね、受刑者にとって。これがこういう差別があると。日本人受刑者というのは、お菓子やフルーツなんというのは滅多に出てこないんです。

 結局この一番の規定には、米兵の受刑者が言わば基地に服務しているときと同じようなメニューやカロリーを保障するという発想になっているわけですね。私は、これではアメリカ兵が日本で犯罪を犯したって大したことじゃないと、こういう意識を生み出すことになっていると思います。早急に改善をしていただきたいと思いますが。

 もう一つ、騒音訴訟についてもお聞きをしておきますが、これまで、米軍の航空機の騒音訴訟がありまして、各地で幾つもの裁判が闘われてきました。賠償金を支払を命じる判決も出されてきましたけれども、防衛省にお聞きしますが、各判決によって命じられた損害賠償金の総額、そのうち日本政府が支払を行った金額、それからアメリカ側が支払を行った金額はどうなっているでしょうか。

防衛大臣官房長(中江公人君)

 お答えをいたします。

 委員御指摘の、米軍関連飛行場における航空機騒音訴訟におきまして、これまで八件の事件が確定をしております。

 各判決で示された損害賠償額、遅延損害金を含めた金額でございますが、嘉手納基地の一次から三次につきまして約十億四千百万円、嘉手納基地の遅延損害金請求事件につきまして約二億五千七百万円、厚木基地の一次につきまして約一億六千九百万円、厚木基地の二次につきまして約一億八千八百万円、同じく三次につきまして約五十一億七千八百万円、横田基地の一次、二次につきまして約一億六千二百万円、同じく三次につきまして約七億二千四百万円、同じく五次から七次につきまして約三十九億八千四百万円で、総額約百二十二億円というふうになっております。

 これにつきまして、原告側に日本政府から支払った額でございますが、今申し上げました損害賠償額及び遅延損害金と同額の支払をそれぞれ原告側に対して行っております。

 また、三点目の御質問の、この各判決で示された損害賠償額の中で米国政府が支払った額でございますが、現時点におきまして、米国政府から何らかの支払がなされたということはございません。

井上哲士君

 外務大臣にお聞きします。

 地位協定は、この米軍の活動による損害の補償のルールを決めておりまして、にもかかわらず、今ありましたように、アメリカ側は補償金を払っておりません。

 この点に関して、二〇〇六年の三月三日の政府の答弁書は、地位協定に基づく分担の在り方については我が国の立場と合衆国の立場は異なっていると、こういうふうに述べているわけでありますが、そこで確認ですけど、日本政府としてはこれはアメリカも賠償金の一部を支払うべきだと、こういう見解だということでよろしいでしょうか。大臣、大臣。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 お答え申し上げます。

 米軍機による騒音に係る訴訟に関する損害賠償金等の日米地位協定に基づく分担の在り方につきましては、政府としては米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきております。

井上哲士君

 地位協定上は、アメリカが七五パー、日本が二五パーというふうになっておりますけれども、これが適用されるべきだということで交渉しているということでよろしいでしょうか。

外務省北米局長(西宮伸一君)

 地位協定十八条五の規定はそのとおりでございます。

 しかしながら、この問題についての米側との協議におきましては、日本側が提供した施設・区域を利用した米軍機の飛行から発生する騒音問題に関する損害賠償について、日米地位協定上の分担の在り方がいかなるものであるのかという根本的な問題につきまして日米双方の立場が異なっており、なお妥結を見ておらない状況でございます。政府といたしましては、繰り返しになりますけれども、日米地位協定に基づく分担の在り方についての立場の相違の問題の解決に向けまして引き続き努力をしてまいる所存でございます。

井上哲士君

 図書館に調査してもらいますと、アメリカはアメリカ本土でも軍用機騒音の損害賠償請求訴訟を起こされているんですね。オシアナ基地が二〇〇一年から二〇〇四年にかけて集団訴訟を起こしておりまして、二〇〇七年五月に司法省と海軍の間で、原告一世帯当たり五千ドル、総額約三千四百万ドルの補償を行う協定が結ばれておりまして、要するに米国内ではちゃんとこういう補償を行っているわけですね。

 一方、日本では、幾つもの判決が出ているにもかかわらず、賠償金を一切支払っていないと。これは本当に長年蛮行に苦しんできた周辺住民からは受け入れられ難いものだと思うんですが、外務大臣、いかがお考えでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 米軍機による騒音に係る訴訟の判決に基づき国が支払った損害賠償金等に関する日米地位協定に基づく分担の在り方につきましては、政府として米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきているわけであります。

 しかしながら、本件については、日本側が提供した施設・区域を利用した米軍機の飛行から発生する騒音問題に関連する損害賠償について、日米地位協定上の分担の在り方がいかなるものであるのかという根本的な問題について日米双方の立場が異なっていることから妥結を見ておりません。政府としては、日米地位協定に基づく分担の在り方についての立場の相違問題の解決に向け引き続き努力をしてまいります。

井上哲士君

 この間、様々米兵による凶悪事件のあるたびに綱紀粛正や再発防止が言われるのに改善がないということを問題にしてまいりました。

 今挙げましたように、車庫証明の問題でいえば事実上違法状態がまだ放置をされている、民事訴訟で賠償金命令を受けても払っていない、そして刑事裁判で有罪になって刑務所に入っても優遇がされていると。こういう状態であれば、日本国内の法律守らなくても大したことないと、日本国内で事件を起こしても大したことないという状況を私はつくっていると思うんですね。これはやっぱりいずれの問題も早急に解決をするべきだと思いますけれども、外務大臣の決意、もう一度お聞きしたいと思います。

外務大臣(高村正彦君)

 ゆっくり解決するよりは早く解決した方がいいという観点から我々は我々の立場で米側と折衝を続けているところでありますが、基本的な立場が異なっているというのは、この問題について、要するに、アメリカ側からすれば、日本側が提供した施設・区域を利用して普通の訓練をしているときに発生しちゃったものについて米側の責任ではないのではないかという基本的な立場があります。我々はまたそれと違う立場がある。そういう中でその立場を乗り越えるのはそう簡単ではないということは御理解をいただきたいと、こう思います。

 我々は我々の立場に立って折衝を続けていくと、こういうことでございます。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、まさに日本の法を守っても守らなくてもいいというような状況を放置しておくわけにはいかないと思います。

 早急な解決を求めて、質問を終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.