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2008年4月24日(木)

外交防衛委員会

  • 日米特別協定(「思いやり予算」)の3回目の質疑、討論・採決。基地外居住の問題を質問。野党の多数で否決した結果は、現行憲法下で初めての出来事。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、米兵住宅の状況、特に基地外居住についてお聞きします。

 全国の米兵宿舎の大半は思いやり予算として提供施設整備費で建設されております。全国の施設・区域内の米兵家族住宅の戸数と入居状況をまず施設・区域別に明らかにしていただきたい。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えさせていただきます。

 米軍家族住宅の整備につきましては、軍人、家族等の居住する生活基盤となるものであり、在日米軍の駐留基盤整備に寄与する施設であるという考え方に基づきまして整備してきているところでございます。

 昭和五十四年度に整備を開始してから提供された家族住宅の戸数については、総計一万一千百三十四戸でございます。

 施設別で申し上げますと、三沢飛行場二千三十三戸、横田飛行場千三百四十三戸……

井上哲士君

 入居状況で結構ですから、全部。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 入居状況につきましては、現時点において防衛省としては掌握しておりませんが、なお、米国が独自に建設しております住宅等を含め、平成二十年一月末現在で、すべての家族住宅数は一万九千六百十二戸、入居戸数は一万五千四百五戸で、入居率は約八割と米側から説明を受けているところでございます。なお、入居していない約二割の家族住宅につきましては、調査時点で極度の老朽化や改装中等の理由により使用することができない住宅も含まれているということでございます。

 いずれにいたしましても、提供施設整備費により整備いたしました家族住宅の入居状況については現在米側に照会中であり、現時点で回答を得ていないところでございます。

井上哲士君

 言わば施設・区域ごとに施設の入居率を把握をしていないと、現状では、ということなんですね。

 私は、これは米軍宿舎の建設は日米間の交渉事でありますから、当然空き家状況というのは把握していることだと思うんですね。これまで日本が建設する際にそういうことを把握せずにやってきたということでしょうか。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えさせていただきます。

 家族住宅の整備に当たりましては、米側の要望に対しまして、整備場所、緊要性、規模の妥当性等を米側より聴取いたしまして、安保条約の目的達成との関係、我が国の財政負担との関係、社会経済的影響等につきまして、現地におきます既存施設の現況、老朽度でありますとか使用実態等や立地条件などの調査を踏まえまして、日米担当者において累次にわたり打合せを実施いたしまして米側の要望について確認し、整備戸数を決定しているところでございます。具体的には、改築整備する場合においては、老朽化が著しく維持補修が困難な状況等を現地調査などにより確認し、現有施設と同規模の改修を実施しているところでございます。

 また、新たに家族住宅を整備する場合におきましては、各地区ごとに必要戸数、現有戸数及び不足戸数を米側から聴取いたしまして、さらに過去の資料等により確認し、整備しているところでございます。米側から聴取しております必要戸数については必ずしも個別に空き家状況を確認しておりませんが、米側から、空き家状況の住宅数も考慮して算出していると認識の上、我が国として整備戸数を判断しているところでございます。

 なお、米国政府が建設した住宅を含むすべての家族住宅につきましては、平成二十年一月時点で入居率は八割ということを米側から説明を受けているところでございます。

井上哲士君

 日本が負担する必要はないという基本的立場でありますが、税金が使われる以上、やはり少なくとも施設ごとの入居率というのはきちっと考慮をされるべきだと思います。今のもう一つはっきりしなかったんですが、その点、今後の建設の問題等でしっかりやっぱり入居率は考慮をしていくという点で、大臣、いかがでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 それは、今も空き家状況の住宅数も考慮して算出しているというふうに考えております。

 ただ、今入居率八割と申しました。つまり、二割が空いているわけですね。それが老朽化が著しくてとても住めないとか、今改装中であるとか、こういうふうに言っておるわけですが、一体どれぐらいが老朽化が激しくて、一体どれぐらいが改装中でということは、それは我々は把握しなきゃいかぬと思っております。当然、今地方協力局の方から米側に照会中でございますが、これはやはりきちんと、私は、なぜこんなに空いているのだと、そしてそれができた暁には、少なくとも改修中のものができた暁にはそこに人が入るわけですから、将来的に建てることが仮にありとせば、一体いつできて、どうなるんだということもきちんと掌握をするということは必要だと思っておりまして、今地方協力局において米側にその状況をきちんと確認をするということを作業として行っておるものでございます。

井上哲士君

 これを聞きますのは、結局二割以上の空き家があるのに基地外居住が今どんどん行われているからなんですね。今、全国的な基地外居住の状況というのはどういうふうになっているでしょうか。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えいたします。

 在日米軍の軍人軍属、家族の施設・区域外居住者の人数につきましては、米側から提供されている直近の情報によりますと、平成二十年一月三十一日現在において二万二千八百九名でございます。

井上哲士君

 この発表の数でいいますと、居住者数は七万一千四百八十人で、そのうち今の数が地域外なわけですね。

 基地内の米兵住宅というのは日本国民より間取りも庭などもはるかにゆとりを持った住宅でありまして、米軍はこの間、基地増強によって足りなくなったとして新たな住宅提供を求めてきました。そして、それに加えて基地外居住を積極的に進めております。海兵隊が作っている住居管理マニュアルというのがありますけれども、それを見ますと、軍人の基地外居住は海兵隊及び軍人の健康と福祉にとって最善の利益をもたらすと、こういうふうに書いているわけですね。

 その下で、例えば、沖縄の嘉手納の近くに砂辺という地域がありますが、ここは現在の世帯数は九百五十余りですが、そこに七百世帯の米兵住宅ができてきていると。区長さんは、これはもう基地外基地だと、砂辺が米国に乗っ取られるというような声も上げておられる、こういう事態が出てきているわけです。実態上、こういう基地外居住の広がりで事実上の基地拡張になっていると、こういう事態が生まれていると私は思うんですが、この点、外務大臣の認識、お聞きしたいと思います。

外務大臣(高村正彦君)

 施設・区域外の居住については、例えば昭和六十一年の三月の国会審議におきまして、沖縄における約六千五百戸の米軍家族用の貸し住宅のうち約五千五百戸は米軍家族が住んでいるものの、昭和二十年代、三十年代に米軍からの協力依頼もあって建てられた約千戸が空き家となっていることについて貸家組合から陳情を受けていた旨の政府答弁があるわけでありまして、施設・区域外居住は必ずしも最近生じたという話ではありません。最近、沖縄の一部地域において施設・区域外居住者が増加傾向にあるとの調査結果が報じられていることは承知をしております。

 いずれにしても、米軍人等が施設・区域外に居住する際には民間の住宅を賃貸しており、政府が施設・区域として提供しているものではありません。したがって、施設・区域の拡張であるという指摘は当たらないと、こういうふうに思っております。

井上哲士君

 主権国家に他国の軍が駐留をしていると。しかし、軍の管理下なので例えば外国人登録もしていないという状況にあるわけで、私は、基本的にやはり基地内に居住をするべきだと思うんです。

 かつてからあった問題だと、こういうふうに言われましたけれども、今、新しい事態が生まれつつあるわけですね。二〇〇三年に在日海軍は、賃貸住宅提携プログラムというのを作っております。レンタル・パートナーシップ・プログラム、RPPというふうに言われておりますが、これ、軍人や家族、独身者に対して質の高い手ごろな賃貸民間住宅を提供するという目的で、物件を検査、評価をして軍の住宅部が不動産業者と契約すると。さらに、そこに入る軍人も不動産業者との間で契約をすると。全体として言えば、軍が保証するみたいな形になっているわけですが、こういうプログラムを持っていることは外務省は掌握されているでしょうか。

外務副大臣(木村仁君)

 承知しております。

井上哲士君

 このRPPによりまして、今各地で米軍専用マンションというのが建てられておるわけですね。広さや設備も全く違います。例えば佐世保の例でいいますと、それまで日本人と混在していたところでいいますと、三LDKで大体七十から八十一平米ですが、これで造られたものは三LDKで百二、三十平米ですね。間取りも広いしいろんな電化製品も最初からくっついているという米軍仕様になっております。

 この間、佐世保で写真もいただいたんですが、入口のところに看板がありまして、この建物は米軍専用住宅です、関係者以外無断で立ち入らないでくださいと、こういうふうに出ているものもあるわけです。

 こうした米軍専用マンションというものについて、これが増えてきているということについてはどうお考えでしょうか。

外務副大臣(木村仁君)

 このRPPというプログラムは、米軍がその個人個人で契約する私的契約である民間住宅の賃貸契約についてモデルを示し、そしてよりスムーズに契約ができるようにという配慮の下に作っておられるプログラムでございまして、基本的には私的な契約に関するものでございますので、第三者である日本政府が一々コメントする立場にはないわけでございますが、その上であえて申しますと、そういう形で米軍専用マンション等ができていることは事実でございます。

 ただ、一つの集合住宅の居住者がすべて米軍関係者であったり、あるいは米軍関係者向けを想定して建設が行われているということもございます。これも今申しましたように、あくまで私的契約の結果そういうことになるのでありまして、日本人でもそういう特別のグループの方々がみんな入っておられるというマンションはあると思います。このような契約自体について政府として意見を言うわけにはまいらないと思います。

 近隣住民を始めとする地元の方々に無用の懸念を生じさせるということがあってはいけませんので、かかる観点にかんがみ、実態を把握することや規律の強化について要望をいただいておりますので、そういう面については対応してまいりたいと思います。

井上哲士君

 佐世保で在日海軍の司令部が民間業者に説明を受けたときのリーフ持っているんですが、ここでは、現在盛んにアメリカ本土で実施されている賃貸住宅提携プログラムの紹介と推進を行いたいと、こういうふうに言っているんですね。しかし、アメリカ本土で盛んに行われているからといって、駐留国である日本にこれを持ち込むというのは私は無理があると思うんですね。

 これまで在日米軍住宅の建設というのは、国が関与して進められてきました。池子住宅にしても岩国にしても、これ随分大きな地域住民を巻き込んだ、自治体をも巻き込んだ問題になってきたわけですね。しかし、これも民間業者主導だということで、第三者だから知りませんということでやられますと、どんなことが起きているか。

 例えばこれ横須賀の例でありますけれども、当初住民は、分譲マンションの建設というふうに聞いていたのに、途中で在日米軍の単身者向けの賃貸マンションというふうに聞いて驚いたと。近くに小学校があるわけです。騒音の問題もありますし、それから米軍関係者が例えば通勤中に自動車事故を起こしたという場合に、現状で言いますと日本の警察が関与できない、補償も十分なされないと、こういう心配もいろいろ起きているわけですね。

 ですから、国が全く知らないままに、個人とはいえ実際は米軍が関与してそういう施設がどんどん増えていくということは、私は、こういうアメリカの本土で行われていることをそのまま持ち込んできているということは許されるんだろうかと、こう思うわけですが、これ、大臣いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 アメリカ本土で行われることを何でもかんでも日本国内に持ち込んでいいという話ではありませんけれども、このことについて、アメリカ本土で行われている、日本の中で個人と民間業者がするのに軍の方でこういうふうにしたらいいですよという老婆心でそういうことをやったからといって何がいけないのか、私には直ちに理解できないところでございます。

井上哲士君

 軍がいわゆる紹介、あっせんをしているということだけではないんですね。米軍自身が不動産業者とも契約をしてやっているんです。そして、居住者も直接契約するという形でやって、そして、まさに先ほど言いましたような、その下における米軍専用マンションというのができてきているわけですね。例えばテロの対象になる場合だってあるんですね、米軍専用マンションだということで。そこがそうならなくても、どこかで起きたというときに警備対象になるということもあるでしょう。ですから、やっぱり地域住民とか地方自治体にとっては特別な施設になるわけでありまして、私は国が全く知らないというような姿勢はおかしいと思うんです。

 それで、更に聞きますけれども、例えば地位協定上にこうしたいわゆる米軍専用マンションで日本の主権が制限されるとか、そういうことは起こり得ませんか。

外務大臣(高村正彦君)

 米軍専用マンションで主権の制限が起こり得ないかというその質問自体の意味がよく分かりませんが、何か起こるということは、私の常識の範囲では起こり得ないのではないかと思います。

井上哲士君

 先ほどありましたように、入口には、専用住宅であり、関係者以外は無断で立ち入らないでくださいと、こういうのが出た看板もあります。報道では、例えばこの間の沖縄の例、基地外の自宅前にいて警察が身柄を拘束できたけれども、米軍は基地外居住地も米軍専有の財産との認識で、家宅捜索には米側の許可が必要になると言っていると、こういう報道もありましたけれども、こういうことは起こり得ませんか。

外務副大臣(木村仁君)

 基地外の米軍居住物件について日本の警察権が制約を受けるということは全くありませんし、関係者以外入ってはいけないというような看板を出すことは日本人でもそういうことはよくやることで、取り立ててそれを禁止するというような必要はないものと思います。

井上哲士君

 沖縄でもあの事件が基地外住宅居住者だったということで改めて問題になったわけですが、地方自治体にとっても住民にとってもだれが住んでいるか分からない状況になっているわけですね。そこで、防犯という点でも、きめ細かい町づくりという点でも、それから災害対策という点でも、どこにだれが住んでいるかということを地方自治体が把握をしたいというのは私は当然だと思います。この点、日本政府としてはどういう立場で米国と交渉をされているんでしょうか。

外務副大臣(木村仁君)

 施設・区域外に居住する米国人等に関しましては、地元からその実態をできるだけ把握してほしいという要望、あるいは規律を強化してほしいという要望もいただいております。

 こういう要望を踏まえまして、二月二十二日に発表した再発防止に係る当面の措置におきましては、米国側が日本政府の要請を受けて、年に一度、施設・区域の所在する市町村ごとに施設・区域外居住者等について情報を提供することとし、日本政府はこれを適切な方法で関係自治体と共有するということを決めました。既に、二月二十七日、防衛省から平成十九年三月現在の情報を得て、これを公表することと同時に、各地方の防衛局より関係地方自治体にお知らせすることにいたしました。二十年三月現在の数字も、鋭意今作業を進めているところでございます。

 いずれにいたしましても、地域内にそういう居住者がいて、やはり地域との関連を重視する意味からいろいろ配慮をしてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 地方自治体は、自治体ごとの数だけではなくてもっと細かく地域ごとの、どういう人物か等も含めて把握したいとしているわけでありますから、是非その方向での交渉を求めたいと思います。

 終わります。

反対討論

 私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定に反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、そもそも地位協定第二十四条は、在日米軍の維持経費について、日本国に負担をかけないで合衆国が負担すると規定しており、我が国に負担義務は一切なく、本特別協定はこの原則に反するものだからです。

 政府は、一九七八年、思いやりと称して米軍駐留経費の一部負担を始め、一九八七年には地位協定の解釈からも説明の付かない負担受入れのために特別協定を締結しました。それ以降、暫定的、特例的、限定的と繰り返しながら、基地従業員の給与本体、諸手当、光熱水料費等、訓練移転費へと負担は拡大され、米軍人軍属の給与以外の駐留経費はほとんどすべて我が国負担となり、思いやり予算の総額は五兆円を超えます。本特別協定の継続は地位協定の負担原則を重ねて踏みにじるもので、絶対に容認できません。

 反対理由の第二は、政府の財政制度等審議会でさえ、日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変わってきており、従来どおりの負担の継続は適当でないと指摘しているように、政府が米軍が困っているからと始めた思いやり予算を続ける理由は今や全く成り立たないというものであります。しかも、訓練移転費や娯楽施設にかかわる人件費など、思いやり予算は至れり尽くせりのものとなっています。

 政府は、財政赤字を理由に次々と国民生活予算を削減し、今月からは後期高齢者医療制度が始まっています。まさに思いやる相手が違います。基地あるがゆえの米兵による凶悪事件も繰り返されています。思いやり予算をこれ以上続けることを国民は到底納得するものではありません。さらに、政府は米軍再編を強行しており、米軍関連経費の新たな膨脹が始まっていることも重大です。

 今回の特別協定は、我々の反対で参議院においては承認されないでしょう。一院において条約が承認されないのは現行憲法下では初めてです。政府及び国会はこのことを重く受け止め、しかるべき対応を取られるよう強く望みます。

 本特別協定を含む思いやり予算はやめるべきだ、改めて主張し、反対討論とします。


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