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2008年9月12日(金)

災害対策特別委員会

  • 7月末におきた金沢市で発生した豪雨災害の諸問題をとりあげて、特に、被災者生活再建支援法の弾力的運用で被害の実態に見合った住宅再建への支援を求めるとともに、同法のいっそうの改善を求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、一連の災害での被害者の皆さんの御冥福をお祈りし、被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 本委員会としての金沢の視察に私も参加をいたしました。そして、浅野川のはんらんによって泥水につかった下流部の地域を訪問し、被害者の皆さんのお話も伺ってまいりました。こういうお話なんですね。泥水の粒子が大変細かい上、雨水とともに下水もあふれたため、浸水を受けた家屋の内部に泥がへばりついてひどい悪臭がすると。チョコレートのような汚泥というのがぴったりな表現だそうでありますが、高齢者が多い地域で、被災した高齢者が親類のところに避難をしていたけれども、そこで徘回が始まって捜索願を出すというような事態にもなったと、こんなお話も伺いまして、やはり生活の基盤である住宅の再建は一刻も早くやる必要があると思うんです。

 そこで、まず大臣にお伺いするわけでありますが、この間、被災者生活再建支援法が作られ、そして与野党の協議の中で改正をされてまいりました。特に昨年の改正では、住宅本体の再建への補助など非常に実態に見合った支援ができるように改正をされ、先日も調査で行った際に石川県能登でも大変喜ばれておりました。その改正後初めての大規模な雨の被害なわけですね。私は、やっぱりこの法律の立法の精神、それから、その後の改正を積み重ねてきたその趣旨、こういうものを生かしながらこの法律を弾力的に活用して、できるだけの被災者の生活再建の支援に当たるべきだと思うんですが、まずその点での御所見をお願いしたいと思います。

内閣府特命担当大臣(林幹雄君)

 御案内のとおり、被災者生活再建支援法は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対して、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して支援金を支給するものでございます。これは昨年改正されましたが、本制度を被災者にとって分かりやすく使いやすいものにすることで速やかに被災者の生活の再建を支援しようとする趣旨によって行っていただいたものと認識しておるところでございます。

 七月二十八日からの大雨によりまして、金沢市に被災者生活再建支援法が適用されておりまして、昨年の法改正の趣旨にのっとって制度の適正な運用に努めてまいりたい、このように思っております。

井上哲士君

 浸水被害については地震の際よりも認定が厳しいんじゃないかというのが朝の議論でもありました。浸水被害については、二〇〇四年の十月の二十八日に、住宅被害の認定に係るこの法律の弾力的な運用を図るということで、浸水等による住宅被害の認定についてという通知が出されております。

 一つ質問を飛ばしますが、この中で、半壊であっても、浸水等の被害により、流入した土砂の除去や耐え難い悪臭のためやむを得ず住宅の解体を行う場合は全壊とみなすと、こういうふうになっております。つまり、住家がその居住のための基本的な機能を失っている、この場合は全壊とするというのが基本的な基準になると、こういう考え方でよろしいでしょうか。

内閣府政策統括官(大森雅夫君)

 この認定基準にありますように、全壊又は大規模半壊、そして三番目の要素として半壊等でやむを得ず解体をしていく場合、そういった場合に限られるわけでございまして、もちろん半壊等で、悪臭によりやはりもう解体せざるを得ないといったときは、基本的にはやむを得ない事情として基準を満たしているというように認定をしているということでございます。

井上哲士君

 内閣府が出しましたこの被害認定の基準運用指針でも、全壊というのは住家がその居住のための基本的な機能を喪失したものと、こう明記をされているわけですね。

 そこで、具体的にお聞きをするんですが、お手元に写真を配付させていただきました。これは浅野川の下流の昌永町というところのYさんのお宅でありまして、八月に撮影をした写真であります。外から見ますと、泥水がつかった跡は分かりますが、家としては残っているわけでありますが、中を開いていただきますと、まさにチョコレート状の汚泥が張り付き、床下にもびっしり泥が行き、そして水回りなどもその機能を失うという状況になっているわけですね。もう耐え難い悪臭もあるということで、このお宅は実は九月五日にもう住めないということで解体をされておるんです。

 ところが、このお宅の場合は二階がありまして、二階は水につかっていないということもあり、市の判定ではこれは半壊認定にも至っていないわけですね。二階に寝ることはできるかもしれませんが、一階はこういう状態で耐え難い悪臭もあると。つまり、住家としての居住のための基本的な機能を失っているということは私は明らかだと思うんです。ところが、これは半壊認定されておりませんので、取り壊しても一切この支援法による支援は受けられないということになってしまうわけですね。

 これは、このお宅だけの特殊な事情では実はないんです。私ども日本共産党の金沢市議団でこの昌永町をずっと訪ねているんですが、訪ねた四十六軒のうち床上浸水は三十五軒、床下浸水が十一軒、そのうち取り壊すというのは九軒ありまして、もう既に四軒は取り壊しておられるんですね。しかし、半壊に認定されているのは一軒しかありません。ですから、Yさんのような例がかなりあるんです。つまり、住居がその居住のための基本的な機能を失っているという点では全く一緒で、やむを得ず解体をしなくてはならないという事情が同じだと。しかし、半壊に認定されれば全壊とみなす支援が行われて、半壊にまで認定に至っていないものについては全く支援が受けられないというゼロか一〇〇かという事態が起きるわけですね。

 私は、これは災害によって生まれた被害に対してできるだけ支援をし、生活再建を応援をしていくというやっぱり法の趣旨からいいましても、こういう事態というのは食い違っているんではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

内閣府特命担当大臣(林幹雄君)

 もう先生よくこの支援法の中身を御存じなわけでありますけれども、実際には半壊に至っていないということの判定をされているわけですが、この問題、私は個人的には何となく分かる気がするんですが、この悪臭等の住宅被害の取扱いにつきまして、被害認定の調査、判定方法に関する検討会の中で見直しを含めて検討をさせていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 つまり、家屋の物理的な損傷を足し上げていくということと、実際にそこに住み続けていく上で障害になる経済的な被害というのは一致しないということも間々あるわけですね。

 これだけじゃありませんで、例えば床下浸水の場合でも深刻な被害が出ることがあるんですね。阪神大震災以来、べた基礎というのが非常にいいということでこれが広がっておりますが、中にはべた基礎にして空気穴を大きくつくっていない基礎があります。この金沢の場合でもそういうところがありまして、家とその基礎の間にすき間があってそこから水が入ると。結果としては基礎の部分が全部プールのようになるんですが、水の出口がありません。結果、この家の場合はバキュームで吸い上げて、かつ消毒をして六十八万円ほど掛かったと言われるんですね。ところが、床下浸水ですから、金沢市が独自に出す十五万円の見舞金も床上浸水以上ということで、一切の支援の対象外になると、こういうことにもなるわけですね。

 私は、やっぱり浸水被害の場合は家屋の物理的被害の積み上げだけではなくて、現に居住の機能回復をしていくということに係るその被害ということに着目をした認定とか、それから制度の仕組みということも要るんではないかと思うんですが、この点、いかがお考えでしょうか。

内閣府政策統括官(大森雅夫君)

 午前中の議論にもございましたけれども、地震被害に比して浸水被害がなかなか厳しい状況になっているんではないかというような御指摘もあり、附帯決議もありということで、我々、今後この検討委員会で様々なものを議論をしていきたいというように思っております。

 ただ、今先生おっしゃった例えば床下浸水の場合どうするかということでございますけれども、これはどこまで支援の対象を広げるかということになってきますと、この制度そのものは自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して自立した生活再建ができるよう特別に支給をしていくということでございますから、重大な被害を受けた全壊、大規模半壊等に限定して重点的に支援をしているということでございます。

 一方で、こういうふうに支援対象、床下浸水まで広げていくと対象世帯数が非常に多くなってまいります。国及び都道府県等の財政負担というものが非常に大きくなってくるということもございまして、どこまでやるのがいいのか、その辺りは非常に難しい問題だろうと思います。

井上哲士君

 午前中の議論にもあったわけですが、全壊、大規模半壊、半壊、床上、床下とか、こういう階段状になっているのがいいんだろうかというようなことも午前中議論もありました。現に、やはりその家に住み続けられるということにとって起きている被害の大きさというものに着目をして、支援をして、結果としてやっぱり法の目的である居住の機能回復ということに資するということは、私はもっと柔軟な対応、検討を是非していただきたいと思うんです。

 それで、そういう法改正や運用上政令等の整備は更に進めるとしましても、現状でも法の精神に基づいた弾力的な運用で金沢では支援に当たっていただきたいと思うんですが、現場で自治体の皆さんもいろいろ苦労はされていると思うんですが、他の水害と比べましても、今の金沢の場合に非常に半壊認定が極端に少ないんですね。

 例えば、二〇〇六年の七月の鹿児島県の豪雨災害での被害認定を見ますと、被災直後は床上浸水が千六百三十一棟、全壊と半壊が計四十六棟でした。ところが、一か月間掛けてずっと第二次査定をした結果、一か月後には全半壊は千四百六十七棟になって、大体、床上浸水以上の住家に対する割合は八〇%ぐらいになっています。

 金沢の場合は、私どもが行きました八月六日の時点で床上浸水五百十二棟、全壊二棟、半壊三棟でした。一か月後の八月三十日現在でも全壊二棟、半壊九棟ということで、認定が進んでいっているという数ではないんですね。もちろん、災害によって被害実態が違いますので、割合が低いからそれだけで問題だということを言う気はないんですが、ただ、こういう中で、先ほど申し上げましたように、やむを得ず解体をせざるを得ない住宅があるにもかかわらず、あの地域では半壊は一つしかないというのもこれもまた現実なわけです。

 ですから、やはり支援法の趣旨や弾力的な運用で住家被害を認定をしていくという、この間の一連の指示などが、やっぱり現場の市町村に繰り返し周知徹底するということは非常に大事だと思うんですけれども、金沢の場合、こういう現状を踏まえてどういうふうな対応をされてきているのでしょうか。

内閣府政策統括官(大森雅夫君)

 この住宅被害の認定につきましては、確かに市町村の通常のルーチン業務ではございません。そういう面では、我々としてもこういった運用について、それぞれの市町村により的確に伝わるよう努力をしていかなければならないものだと思っております。

 一つには、この支援法に関するクエスチョン・アンド・アンサーなるものを本年四月にも自治体に配付しておりますし、五月には全都道府県の担当者を集めまして説明会も実施しているところでございます。

 先生御指摘のこの金沢の件でございますけれども、七月二十八日からの大雨に際しましては、翌二十九日に石川県などに対しまして事務連絡を発出し、先生御指摘の平成十六年の通知等に留意して適切に被害認定を実施していただくようお願いをしているところでございます。

井上哲士君

 紙の通知だけではなかなかその精神が伝わらないということもあると思いますし、やっぱり現場で起きていることに即して一つ一つ改善をしてもらうことが必要だと思うんですね。

 市の担当者に被害写真などを示しまして再調査を求めたことによって判定結果が床上浸水から半壊に変わったというのが一つありまして、それがこの町の一つのケースなんですが、この内閣府の被害認定基準の運用指針でも、「第二次判定のための調査は、原則として申請者の立会いを必要とする」と、こうなっておりますが、立会いなしで行われた第二次判定というのはやっぱり必ずやり直すと、こういうことでよろしいんでしょうか。

内閣府政策統括官(大森雅夫君)

 特殊な事情の中では立会いを経ずに行う場合もあるというように聞いております。ただし、一般的には、当然、二次判定につきましては家屋の内部への立入調査を行うこととしているわけでございますから、被災者の立会いの下で行っているというように伺っているところでございます。

 御指摘のように、被災者の立会いなしに二次判定が行われ、被災者から再調査の要望があったという場合には、市町村において再調査が実施されるというように伺っているところでございます。

井上哲士君

 これも昌永町の自治会、町会に行っていろいろお聞きをするんですが、被災当日、それから二日後、三日後ぐらいに集中的にどうも認定の査定があったようなんですが、住民の皆さんは、泥出しやごみの処理など忙しくしている中で、中にはそんなの来たのかというふうに言われている方もいらっしゃいますし、ここまで水来たのならこの辺は床上浸水だなと言いながら帰っていかれたと、こう言っておられた市民の方もいらっしゃいますし、家の中をちらっと見ただけじゃないかというようなことを言われております。いずれにしても、混乱の中で起きていますので、やっぱり納得いかないということがあるわけですから、これはきちっと本当に住民の皆さんの納得のいくやり方をやるように是非指導、援助をお願いしたいと思うんですが。

 その上で、先ほど言いましたように、もう既に四軒取壊しをされております。半壊認定にならないまま、もう無理だと思って壊されているわけですが、こういう場合でも、写真であるとか、また近隣住民の証言などで基準を満たせば認定をされるということはあり得るということでよろしいでしょうか。

内閣府政策統括官(大森雅夫君)

 御指摘のように、被災者が生活再建支援制度などを知らなかったというような理由から被害認定を受ける前に住宅を解体してしまうというケースは間々あると承知をしております。これは、市町村が、個別の事情を確認した上で、写真等の客観的な証拠を基に被害認定を行うことが望ましいと我々は考えております。

井上哲士君

 最後、大臣にですが、認定方法については改善の必要があるということでいろんな検討をされているということでありましたが、現に今幾つか金沢の例を挙げました。やはり被害の実態に合わせた本当に必要な支援が行われるようにこの支援法の弾力的な活用で進めていくという点で最後御決意をいただいて、終わりにしたいと思います。

内閣府特命担当大臣(林幹雄君)

 この被害認定につきましては、昨年、再建支援法が改正された際に、「支援金支給等の前提となる住宅の被害認定については、浸水被害及び地震被害の特性にかんがみ、被害の実態に即して適切な運用が確保されるよう検討を加えること。」との附帯決議をいただいているところでございます。

 この附帯決議の内容を踏まえて、今年度、被害認定の調査方法、判定方法の見直しも視野に入れまして、検討会を設置して検討を行ってまいりたい、このように思います。

井上哲士君

 今の、現状のままでの適用は大丈夫でしょうか。

内閣府特命担当大臣(林幹雄君)

 現状のままではちょっと難しいんではないかというふうに認識しています。


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