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2008年3月17日(月)

予算委員会

  • イージス艦衝突問題で「あたご」の艦長が「漁船が多いとは思っていなかった」と発言し、自動操舵で運行していたことについて、海域の状況を徹底してこなかった防衛省の責任を追及。

予算委員長(鴻池祥肇君)

 次に、井上哲士君の質疑を行います。井上君。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 イージス艦の衝突問題について質問いたします。

 この事件でだれしも思ったのは、あの「なだしお」事件の教訓はどこに行ったのかということでありました。改めて、あの事件で海難審判庁からどういう勧告を受け、防衛省としてどういう教訓を持ってきたのか、お答えいただきたいと思います。

防衛大臣(石破茂君)

 私どもとしまして、五つ再発防止策を講じたところでございます。繰り返しになって恐縮ですが、東京湾など船舶ふくそう水域における航行安全を図るため、海上交通センターとの情報交換を確実に実施する、潜水艦が浮上航行する際の見張りの体制などを強化する、事故などの不測の事態が発生した場合の情報伝達要領を整備する、潜水艦、掃海艇などへの港湾電話の整備などや護衛艦などへの船舶電話の整備、潜水艦の艦橋と艦内との間の通信手段の改善等々でございます。

 「なだしお」は潜水艦でございましたが、今の申し上げました再発防止策は適用できる範囲で護衛艦についても措置をしたわけでございます。しかしながら、今回例えば通報に十六分掛かっている、前は二十一分で五分短縮したからいいじゃないかというような話には全然なりませんで、これを本当にじゃ徹底できたかといえば、必ずしもそうは言えない、そういう部分があるのではないだろうか。あるいは、見張り体制を強化するということにしておるわけでございますが、それが本当に十分であったかはこれからの捜査あるいは調査の過程で明らかになるものでございます。

 「なだしお」の教訓を本当に十分生かしていたかというふうな御指摘をいただきますと、本当にそれが教育の場においてどのように生かされていたか。これは衆議院でもお話をしましたが、艦船と安全という本がございます。これは毎月のように、ほとんど毎月だと思いますが、いろんな事例を書き、そしてまたそれに対する教訓等々、「なだしお」に限らず、海上自衛隊あるいは船舶の安全についていろんな事例がございます。そのことについて教訓をすべて、すべてといいますか、書いたものでございますが、私はそれが教育の現場において本当にどのように徹底されていたのかということも含めまして、「なだしお」事件の教訓がどのように生かされたか、あるいは生かされなかったかということはきちんと検証しなければならないと思っております。

井上哲士君

 生かされたかどうかきちんと検証しなくちゃいけないという答弁がありました。

 具体的に私聞きたいと思うんですが、例えば安全航行する上で、その海域がどういう状況にあるかというのを知るのは当然だと思うんですが、事故後の記者会見で「あたご」の艦長は、漁船が多い海域と認識していなかったという発言をされました。なぜこういう発言が出てくるんでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 正確に言えば、こういうことだと思っております。混雑する海域とは認識しているが、あの時点であれだけの漁船が入っているという認識はなかったと、こういうふうに艦長は言っておるわけでございます。

 ここが混雑をしているという認識はあった、しかしながらあの時点で、というのは事故が起こりました四時前後ということでございますけれども、事故が起こった時間の前後ですね、その時点でこういうような状況であるのか、あれだけの漁船が入っているかという認識はなかったというふうに艦長は申しておるわけでございます。

 私どもといたしまして、この海域は漁船が多く航行する海域であるというふうに承知はいたしておりました。海上交通安全法にございますように、東京湾内のように船舶がほぼ恒常的にふくそうする海域という、そういう認識ではございません。時間によって船舶交通の状況は大きく変化する。すなわち、ここの海域はこうですよというふうに定型的に言えるものではなくて、時間によってそれは増えたり減ったりするものだという認識でございます。

 しかしながら、太平洋の大海原のように、見渡す限り見える船とてなしというような、そんな状況ではないということは当然承知をしておったものでございますが、あれだけの漁船があの時点で入っているという認識は持っていなかった。それは、艦長が今申しておることをそのまま申し上げればそういうことでございます。

 全然船がないよ、そんな状況ではない。しかしながら、東京湾内のように恒常的に物すごく船が出たり入ったりする、それとは違うのだという認識であったというふうに承知をいたしておるところでございます。

井上哲士君

 あの時点であれだけの漁船が入っているという認識がなかったと、これが私は重大だと思うんですね。

 その周辺の千葉、東京、神奈川だけで八十一の漁協があります。いろんな漁の形態はありますけれども、神奈川と千葉だけでも組合員数は二万二千以上なんですね。あの海域は東北からもたくさん船が来ておりまして、しかもあの時間帯というのは、朝のうちに港に入ろうという入港する船と、そして未明から漁に向かう漁船が交錯をする、こういう時間帯だと。これはいろんな方に聞いても常識だと言うんですね。

 そういう、つまり、あの時間帯、そういう状況があるということを艦長が知らなかった、知らすことがなかった、この防衛省の徹底の問題というのはどうお考えなんでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 「なだしお」の事故を受けまして、「船舶が輻輳する海域における自衛艦の安全航行について」という通知が出されたのは委員も御案内のとおりでございます。

 ここにおいてうたわれている海域ではないということでございまして、それは当然、時間帯によってはまさしく委員御指摘のように入ってくる船がある。朝、港がオープンするといいますか、いろんな施設が動く時間に入ろうと思って入ってくる船がある。また、漁に出る船がある。そういうように、混雑する海域であったという認識は、混雑という言葉も気を付けて使わなければいけませんが、艦長の言葉をそのまま使えば、漁船が多く走行している、航行している海域であるという認識はあった。そこはあったのです。

 そこが、ただ時間によって、あの時間はどうだと言われれば、そこは混雑する海域だという認識はあったのかもしれません。しかしながら、そこは衝突予防法等々、そういうものに定められているような、そういう義務をきちんと履行する、そういうような海域であるというような認識であって、全く太平洋独りぼっちみたいな、そういうような認識ではない、それなりの注意を要する海域であるというふうには認識を持っておりましたし、ここは、この船自体はここに入ったのは初めてでございますけれども、海上自衛隊としてここを通る場合に、この海域がそれなりに多く漁船が航行する海域であるという認識はそれは持っておったと私は考えております。

 ただ、この時間、この海域、そういうものに特定をした特段の注意喚起を限定して行っていたということではなかったということは事実でございます。

井上哲士君

 先ほど申し上げましたように、この時間帯が出て行く漁船と入ってくる船が錯綜していくということ、そして大変豊かな漁場であるということでありますが、そうしますと、この時間帯、しかもまだ暗いというところで、特段の注意をすべきということを防衛省としてきちっと認識をして徹底していなかった、このことに大きな問題あるんじゃないんですか。

防衛大臣(石破茂君)

 それはどういう認識であったかということについて、ここは調査あるいは捜査の過程でどういう認識を持っていたか、この当該「あたご」という船がどういう認識を持っていたか、艦長が記者会見において申し述べましたことを更に正確に言えばどのような認識であったかということがこれから先明らかになってくるんだろうと思っております。

 時間に限らず、例えば東京湾内でありますとか、あるいは浦賀水道、もっと限定して言えば浦賀水道、それは時間に限定をしているわけじゃなくて、この海域というふうに指定をしておるわけでございます。今回の場合のように、まさしくこの時間におけるこの海域というふうにそれに限定をして、特段の注意喚起を行っていなかった。しかしながら、海上衝突予防法等々に書かれている義務というものは当然履行すべき、それはもうどこの海域も一緒でございます。

 そのことについてどれぐらいの評価がなされるかというのはこれから先の問題でございますけれども、私自身として、特段の注意喚起を行う行わないは別として、注意して航行すべきは当然であるし、そしてまた、全く四方見える船とてなしというような状況とは違うので、それは注意義務というのはおのずと異なるものだということは一般論としては申し上げられる。今回、この海域においてどうであったかということ、当該事故に関してどうであったかということは、まさしく捜査、調査の過程において明らかになることだということだと私は思います。

井上哲士君

 いろんな関係者に聞きましても、あの場所、あの時間帯は大変注意が要るんだと、こう言われています。その時間帯に自動操艦にしていたと。本当に常識では考えられないことだという声がたくさんあるわけですね。つまり、そういうだれが考えても当たり前の常識すら身に付けていないという自衛艦がここを走っていたと。これは艦長の問題なんですか、それとも防衛省の問題なんですか、そこはどうなんでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 自動操舵にするかしないかということについて、防衛省の持っております船が一律こうであるという決まりは現在のところございません。自動操舵にするというのはそれぞれの船において裁量を持って任されておるものでございます。しかしながら、自動操舵にしているからといって見張りがおろそかになっていいとかそういうようなお話でもございません。私は今回、どういう場合に自動操舵にするか、どういう場合に手動に切り替えるのかということについて、それぞれの船ごとに決めるというのはどうだろうかということについて問題は提起をいたしておるところでございます。

 そして、私も民間船舶を運航しておられる方からも事故の後いろんなお話を承りました。委員御指摘のように、この場所は自動操舵にする場所ではないということは私自身も聞いておるところでございます。そうしますと、どういう場所において自動操舵というものを許すか。それは例外的に許すということなのかもしれません。あるいは、諸外国においてどのような自動操舵の使い方をしているかということ。自動操舵であれ手動操舵であれ、見張りというものはきちんと行わなければいけないのは当然のことでございますが、自動操舵の使い方というものについて私はきちんとした考え方というものを持つ必要があるのではないかというふうに思っております。

 基本的に、自動操舵にしたから即危険だということには直接にはならないのかもしれません。そこのところはいいかげんなことは申し上げられませんが、どのような操舵方式であるにせよ、見張りを厳となさねばならないのはそれは当然のことだと思っておるところでございます。

井上哲士君

 この海域がどちらに、自動操舵にするのか手動にするのか、迷うようなところではないというのが多くの民間の方の声なわけですね。ですから、今、海を航行する者として当然の常識的な判断を身に付けないままこういうことが起きているということが、私は果たして「なだしお」の教訓が生かされているのだろうかと、こういうことを指摘せざるを得ないわけですね。

  〔委員長退席、理事伊達忠一君着席〕

 そして、今おっしゃいましたように、自動操舵であれ手動であれ、見張りをきちっとしなくちゃいけません。じゃ、見張りや回避行動についても徹底されていたんだろうかと、このことも大変疑問に思うわけですね。

 先ほどありましたように、「なだしお」事故が起きた後に改訂された操艦教範があります。私も持っておりますが、例えばこの第七章、衝突予防及び避航というのがありますが、見張りの重要性、どういうふうに述べられているでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 見張りの重要性でございますが、操艦教範におきましては、衝突予防及び避航の第一条件は厳密な見張りを行うこと、このために、見張り配置、目視見張り、レーダーなどによる見張りを適切に行うことというふうに書かれておるものでございます。

 そのほか、幾つか操艦教範におきまして書かれておりますが、見張りの重要性について指摘をしておる部分はそこの部分かと存じます。

井上哲士君

 さらに、海上衝突予防法の遵守ということもこの中で明記をされておりますが、この点はどういうことを強調しているでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 海上衝突予防法の遵守といたしまして、海上交通の安全は海上衝突予防法の規定の正当な適用により初めて確保できるものであること、同法によらない行為は相手船の了解を得られないばかりか、多くの場合、衝突の予防と反対の結果をもたらすものであることと書いてございます。

 また、そのほか漁船に対する措置といたしましては、漁船についてはこれが海上衝突予防法の漁労に従事している船舶か否か留意する必要があること、群集する漁船に出会ったときは海上衝突予防法に沿ったより慎重な操艦が必要になること等がここには書かれておるものでございます。

井上哲士君

 この教範が本当に実践されていたんだろうか。目視の見張りを厳重にして、レーダーを活用して有効な見張りができるように処置をされていたんだろうか。

 そして、今の群集する漁船に出会った場合でありますが、今大臣は読まれませんでしたが、差し支えない限りその外縁を航行することというのがまずあるわけですね。こういうことをきちんとしていれば事故は起きなかったと思うんですけれども、この教範が本当に徹底されていたんでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 先ほど山口委員の御質問にもお答えをしたものであり、重複になって恐縮でございますが、群集した漁船というものの定義をどう考えるかということでございます。

 実際に、ある特定の海域において漁をいたします場合には、それはそこに錨泊、錨泊というのか、そこの位置に網を降ろし魚を捕るということになるわけでございます。これはもうどこの海域というふうに特定をするわけではございませんが、そこにおります漁船団というものはまさしく群集という評価、それは飛行機の上から見てみるとよく分かるのでありますが、そこに本当に固まっているという評価でございます。そこの場合には確かにそこを迂回するというようなことが書かれてございますが、じゃ、今回の場合にはそこに群集していたかといえば、そうではないであろう。そこに、漁場に出るために移動しておったという行為を、それを群集している漁船という評価、これに値するかどうかといえば、それはやや異なるのかもしれないというふうに考えております。

 そこにおいて迂回する措置というのは確かに群集の場合には書かれておるわけでございますが、実際に漁場に行きますときに、漁場に行きます過程において移動しておる、その船が何隻も航行しておるという状況と群集しているという状況は、それは評価において異なるものだというふうに考えております。

 だからいいなどということを申し上げるつもりは全くございませんが、ここの部分はそのままストレートに該当するかといえば、必ずしもそうではない場合があり得るということを申し上げておるのでございます。だからいいということを申し上げているわけでは全くございません。

井上哲士君

 報道によりますと、航海長は漁船群が接近しているということを当直士官に引き継いだと、こういうふうに言われているんですね。そうである以上、その時点から当然、様々な緊張感を持って対応するべきだったと思うんですね。

 ですから、定義と言われましたけれども、漁船群が接近していると、こういう引継ぎをしているということが言われているわけですね。やはり私はこれは大きな問題があると思いますが、改めてどうでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 そこはどういう認識を持っていたかということについては、これから捜査あるいは調査の過程で明らかになるものでございます。

 ですので、漁船群が接近しているというのは、それは移動をしているというような評価でございましょう。群集しているというのは、必ずしも移動という概念を中核とするものではないということではなかろうかと思っております。

 ただ、そこにおいてどのような判断をするのが適切であったか。海上衝突予防法に書いてございます、いろいろな危険回避の義務が海上衝突予防法には書いてあるわけでございますが、その時点においてどのような行動をするのが最も適切であったのか、今回それがそれに照らしてどうであったのかということが、これは繰り返しになって誠に恐縮でございますが、これから明らかになることでございまして、現時点において、私がいろいろな前提に基づいてあれこれ断定的なことを申し上げることはできないのでございます。

井上哲士君

 いずれにしても、結果として漫然と航行して、最後まで回避行動を取ることなく事実上こういう事件が起きているわけですね。ですから、やはり「なだしお」の教訓が生かされていない。そして、そうであれば他の艦船でも起こり得る話なわけですね。

 私ども、いろんなところで自衛隊がそこのけそこのけで航行しているというたくさんの証言を聞いてまいりました。

 千葉の漁協関係者は、事故が起きた海は、黒潮が流れ、少し北に行けば親潮が来ると、年中魚が捕れる豊かな漁場だと、そこをやつらは汚してきたんだと、自分たちの船が来れば漁船はよけてくれると思い込んでいると、わしらはいつも危険と背中合わせで漁をしてきたんだと、こう言われました。母港である舞鶴、危険を感じることは結構あると、自衛隊は小さい船がよけて当たり前というような航行をしておると、こういうお話も聞きました。もっともっと、いろんなところで全国でこういう声があるわけですね。

 私は、これだけの声がある以上、やっぱり自衛隊が優先されて当たり前だというような航行のやり方がある。私は、大臣自身がこういう関係者の声も直接聞いて対応するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 艦長が記者会見におきまして、今委員が御指摘のように向こうがよけると思っていたのかというようなことについて、そのような認識は持っていないというようなことを申し上げたのではないか。正確ではございませんが、私はそのように記憶をいたしておるところでございます。

  〔理事伊達忠一君退席、委員長着席〕

 ただ、委員おっしゃいますように、漁業に従事される方々の声というものを真摯に受け止めるということは、それは当然に必要なことでございます。事故が起こったときから、そこのけそこのけイージスが通るというような御批判をいただいておるところでございまして、そういうような御批判をいただくということ自体、私どもとして、国民の生命と財産、国の独立と平和、それを守る者として、そのような御指摘をいただくようなことがかりそめにもあってはならないことだというふうに考えております。

 そこは、私、それがどのような効果があるかどうか、そこについてはまた議論をしなければいけませんが、実際問題、私どもが漁船に乗ってみて護衛艦というものがどのように見えるのかということも、それはできればやってみなければいけないことではないだろうか。ちょっと変な日本語になりますが、そういうことも私はやってみたいと思っているのです。

 やはり漁民の方々から、国民の方々から本当に信頼される、そういうものであらねばならないのでございまして、そこのけそこのけイージスが通るというようなこと、別にイージスでなくてもいいのですが、そういうことが言われないようにしなければならぬ。保持船と避航船の義務というものは、船の大小に、あるいは船の用途によって変わるものでは全くございませんので、そこのところはよく認識をしなければいけない。

 御指摘は、謙虚に真摯に承らねばならないと思っております。

井上哲士君

 是非、文字どおり真摯に受け止めて、まさにこうした事態が二度と起こらないようにしていただきたいと思うんですが、この二人の捜索をされた仲間の漁船の皆さんが、漁を休む一方で捜索には相当の油代なども掛かっているわけですね。必要な財政措置をとるべきだと思います。

 大臣は、休業された方については最大限の誠意を持って当たるということを外交防衛委員会でも答弁をされましたけれども、具体的にどのようにお考えでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 誠心誠意というのは言われてやることではないのでありまして、私どもとして本当に何ができるか、そのためにどんな枠組みができるのかということ、そして、自らの判断によって漁を休んで仲間の捜索に当たられた方々のそういうようなお気持ちにどうすればこたえることができるかということは、私どもとして、ありとあらゆる見地から検討していかねばならないことでございます。

 自衛隊法の百五条の第一項、これに、自衛隊の行う訓練及び試験研究のために水面を使用する必要があるときは、一定の区域及び期間を定めて漁船の操業を制限又は禁止し、これにより漁業者が漁業経営上被った損失を補償すると、こういうふうに書いてございますが、これはストレートには使えないということになります。

 ただ、私どもは、この法律がこうだから使えるとか使えないとか、そういう話をしておるのではないのでありまして、どういうような枠組みを使って本当に誠心誠意対応ができるかということについて、現在、各方面と検討を行っているものでございます。

 これは、繰り返して言うことでございますが、人から言われてやるものだとは思っておりません。私どもでありとあらゆる可能性を考え、ありとあらゆる誠意の尽くし方を体現しなければいけないと思っております。

井上哲士君

 実際的に休業補償までできるようにしっかり、まず文字どおり誠意を持って当たっていただきたいと思います。

 今回の事件を考えますと、改めて、東京湾の入口に横須賀港という軍港を置いたままでいいのだろうか、こういう問題があります。この横須賀港は、しかも、米軍の空母の世界で唯一アメリカ以外にある母港なわけですね。しかも、大変豊かで交通がふくそうした海域に米軍や自衛隊の専用の演習海域が設定をされております。

 お手元の資料にもありますけれども、(資料提示:PDF:338KB

これが「あたご」の衝突位置でありますが、この周辺にチャーリー海域、それからキロ区域、相模湾潜水艦行動区域、さらに自衛隊の訓練水域というものが設定をされております。

 今回の事件は、このチャーリー海域と自衛隊の訓練水域のそばで起きているわけでありますが、このチャーリー区域というのはどういうものなのか、御説明いただきたいと思います。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えいたします。

 御指摘のチャーリー区域につきましては、千葉県野島崎東南方沖の公海上に位置しておりまして、昭和二十七年七月に、日米合同委員会で合意の上、米軍の海上演習場として一定の水域を指定したものでございます。

 米軍は、当該区域について、当初、各種艦砲の水平及び対空射撃演習を行っていたところ、昭和三十七年七月以降、使用条件が変更され、各種海軍訓練用兵器の発射もできることとなっております。

 当該区域を海上演習場として指定しておりますのは、米軍によります演習が行われる区域を確定することによりまして、船舶、航空機等の航行の安全を図る等のためでございます。

井上哲士君

 日本が占領中に訓練区域として認められて、それが一九五二年以降ずっと設定されたままなわけですね。

 非常に豊かな漁場であります。漁船は年間を通じて進入禁止になっていると思うのですが、ここも含めまして四十九か所米軍の演習海域がありますが、年間、日本が行っている漁業補償の総額というのは幾らになっているか、この五年間で答えていただきたいと思います。

防衛省地方協力局長(地引良幸君)

 お答えいたします。

 米軍の制限水域に係ります漁業補償金の過去五年間の支払実績を述べますと、平成十四年度は二十九億六千二百万円、平成十五年度は二十八億二千七百万円、平成十六年度は二十五億九千百万円、平成十七年度は二十三億一千三百万円、平成十八年度は十九億八千九百万円となっております。

井上哲士君

 年間、全体で三十億から二十億の漁業補償が行われております。アメリカの訓練のために漁船の通航禁止をして、その補償を日本が行っている。私は大変驚くわけでありますが、こういう豊かな漁場に訓練地域がある、そして大変密集した海域の入口に横須賀基地がある、こういうこと自身、私は今問い直すべきだと思います。

 こうした訓練地域も廃止をするし、米軍や自衛隊の基地をなくすという方向での抜本的な対応が必要かと思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 御意見は御意見として承っておきます。

 これは、じゃなぜ横須賀にあるんだということを申し上げましたときに、それはやはり首都に近いということ、あるいは整備能力等々、いろんな観点からこの横須賀というものに置いておるものでございます。思い付きで横須賀に置いておるわけではございません。

 したがいまして、自衛艦のみならず米艦船においても、本当に航行の安全ということはきちんと遵守をしなければならないものだというふうに承知をいたしております。

 また、チャーリー海域につきまして、チャーリー区域につきまして御指摘をいただきました。

 これはもうずっと昭和二十年代から経緯のあることでございまして、日米安全保障条約等々に基づいていろいろな定めがなされておるものでございます。どういうふうな形で安全が保てるか、そしてどういうような形で漁業者の利益というものがきちんと確保されるかということについて、私ども本当に常に細心の注意を払っていかねばならないと考えております。

井上哲士君

 横須賀の基地が首都に近いからという答弁がありました。私は、ああいう首都、しかも人口密集地の近くに外国のそういう基地がある、原子力空母の母港があるということ自身が世界的に見ても極めて異常だということを申し上げておきたいと思います。

 最後、大臣は外交防衛委員会で、「あたご」が衝突一分前に漁船を認識して後進を掛けて、七分ごろに衝突したということを明らかにされました。

 この説明の根拠はどういうことだったのでしょうか。衝突時間等。

防衛大臣(石破茂君)

 それは、根拠と申しますのは、事故直後、「あたご」の乗組員に聴取、聴き取りしたことでございます。それに基づいて申し上げたものでございます。

井上哲士君

 それは航海長の証言ということでよろしいですか。

防衛大臣(石破茂君)

 「あたご」の乗組員、それは航海長のことにつきましては、これは航海長がヘリで参りまして、そこで海上幕僚監部が聴き取りをし、そこにおいて整理をしたものでございます。航海長の証言という言い方は、私、正しいかどうか分かりませんが、「あたご」の航海長から聴き取ったもの、あるいはそのことについての確認の作業、そういうものを経た上で申し上げておるものでございます。

井上哲士君

 昨日のNHKの報道では、当直乗組員から事情を聴いた結果、「あたご」は清徳丸がすぐそばに迫っていると気付いて短い警笛を数回鳴らしたものの、間に合わず衝突していたことが分かったと。つまり、一分前に回避行動を取ったというのは違うんじゃないかという報道がされていますが、大臣の説明と違うんじゃないでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 先ほど申し上げました、当該漁船は前方約百メートルで大きく右にかじを切っておるでありますとか、当該船舶との衝突は午前四時七分ごろ発生したでありますとか、そのようなもろもろのこと、これは二月の十九日に申し上げたものでございます。念のため申し添えておきたいと存じます。

 なお、今汽笛吹鳴についてのお尋ねがございました。

 そこは、本当に汽笛吹鳴というのを行ったかどうか、そしてそれを聞いた者がいるかどうか、そのことにつきまして艦長が申し述べている。しかしながら、そこについて聞いた人がいるかどうか、そういうようなことにつきましてこれから確認作業が行われるということだと承知をいたしております。

 私どもは、艦長が吹鳴したということを申しておることは承知をしておるところでございますが、それが実際にそうであったのかどうなのか、艦長がそう言っておるということは申し述べることは客観的事実としてできますが、そのことを聞いた人がいたかどうか、そのことにつきましてこれから調査が行われる、あるいは今行われているところだということだと私は考えております。

井上哲士君

 今疑問に出ていますのは、まさに一分前に後進を掛けたということ自身も違うのではないかということが昨日の報道で言われているわけですね。私は、これは大変重要な問題だと思うんですね。

 「あたご」には艦船の位置や速力、それから船首の方向、時刻などの航行情報を電磁的に記録したものがあるということを認めておられます。大臣は、海保から「あたご」への乗組みを禁じられているからと言って衆議院では公表を拒否されましたが、既に六日から防衛省としても独自の調査をしているわけでありますから、こういう客観的なデータを明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

防衛大臣(石破茂君)

 それは、電子的に記録したものはございます。ただ、そこの電子的に記録されているものを防衛省、当省の独自の判断というもので出せるかどうかということは、そのことがまさしく事故原因の核心に触れるということは当然あることでございます。私どもとして、これも衆議院で申し上げたことでございますが、捜査の厳正性というものを確保する上において、それを私どもの独自の判断で出すことについてどうなのだろうかということは、それは当然考えておかねばならないことだというふうに考えております。

 電子的に記録をされたものでございますので、それは変更とか改ざんとか隠すとか、そういうことが全くできるものではございません。そういうものを明らかにするということがどういうことになるのか、そのことにつきまして、よくよく議論をし、認識を持って、明らかにすべきものは明らかにしてまいりたいというふうに考えております。

 ただ、今この時点で、委員がおっしゃいますように、そのことすべて開示せよということにつきまして、はい、そうですかということが現時点でお答えできる状態に今ないということでございます。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、客観的事実を明らかにするのは構わないということを海上保安庁長官も答弁されているわけでありますから、国民の前に包み隠さず明らかにしていただきたいと思います。

 終わります。

予算委員長(鴻池祥肇君)

 以上で井上哲士君の質疑は終了いたしました。(拍手)


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