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2008年11月11日(火)

外交防衛委員会

  • 田母神元航空幕僚長の参考人質疑が行われた。田母神氏とアパグループとの深い関係、田母神氏は講話でも論文と同様の主張を繰り返し、幹部教育の内容まで変えている問題を追及

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今回問題になっている田母神参考人の懸賞論文はアパグループが募集したものであります。まず、このアパグループとの関係についてお聞きいたします。

 参考人とアパグループの元谷会長が従来から親しかったということは今明らかになりました。この元谷氏は、昨年の八月二十一日に小松基地においてF15戦闘機に搭乗し、四十八分間実際の飛行を体験をされております。

 まず防衛省にお聞きしますが、小松基地でこの元谷氏以前に自衛隊協力者として民間人をF15に搭乗させて飛行させたと、こういう例はあったんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今委員御指摘の件に関しましては、現在確認できる範囲では、小松基地における部外者のF15への体験搭乗は、平成十八年度におきまして、平成十八年六月に一回、同年八月に一回、同年十二月に一回、計三回を実施しているところであります。また、平成二十年度におきましては、平成二十年四月に一回、同年七月に二回、計三回を実施しているところであります。

井上哲士君

 民間人の自衛隊協力者が今数出されましたが、自衛隊の輸送機に乗るとか、それから戦闘機に搭乗して滑走路を走るということは少なくないようでありますが、戦闘機に実際に飛行するというのは極めてまれなわけですね。

 民間人を戦闘機に搭乗させる場合、どういう手続となり、最終決裁者はだれになるんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 お答えいたします。

 部外者を自衛隊の航空機に同乗させて飛行する場合については、航空機の使用及び搭乗に関する訓令に基づきまして、幕僚長又は権限を委任された部隊等の長が、自衛隊の広報業務を遂行するに当たって特に有効である場合などにおいて部外者の搭乗を承認しているところであります。

 昨年の八月二十一日の元谷会長らのF15体験搭乗については、当時の航空幕僚長が承認をしているところであります。

井上哲士君

 ここに、元谷氏の搭乗の承認を求める第六航空団司令から航空幕僚長あての〇七年八月七日付けの進達書、それからこれを承認をした電報の起案書、同月の八月の十三日付けでありますけれども、これを持っております。当時のこの電報起案書の発信者は航空幕僚長であり、当時はあなたでありました。なぜこういう異例の便宜供与を元谷氏に許可をされたんでしょうか、参考人お答えください。

参考人(田母神俊雄君)

 元谷代表は平成十年から小松基地金沢友の会の会長として第六航空団及び小松基地所在部隊を強力に支援をしていただきました。その十年間の功績に対しまして、元谷代表が体験搭乗をしたいという希望がありまして、体験搭乗の希望者はいっぱいいるわけでありますが、その中で元谷代表を部隊の要請に基づいて許可をいたしました。

 以上です。

井上哲士君

 あなたは論文の中でえこひいきは大事だということも書かれておりますが、いっぱいいる中でこの元谷氏に特別の便宜供与を図ったということであります。

 このアパグループはホテルも経営しておりますけれども、自衛隊員がアパホテルを利用する場合には何か特別の利用契約というのがあるんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今回の、今御指摘のお話でありますけれども、自衛隊員は私的にホテル等を宿泊する際には、主として福利厚生を目的に防衛省共済組合が契約をしました株式会社JTBベネフィットに申し込むことができます。この場合、株式会社JTBベネフィットが提携する複数の宿泊施設の一つとしてアパホテルグループの施設が含まれていることなどから、結果として同ホテルの宿泊料金の割引の適用を受けることができるということになっております。

井上哲士君

 その一定の利害関係がある特定の民間企業の幹部との極めて密接な関係ということなわけですね。

 私は、今回の懸賞論文に小松基地が異例の対応をして大量の応募があったということ、これはなぜなのか。それから、田母神氏が、参考人が一位となって三百万という民間の懸賞論文としては相当高額な賞金を手にされたと。こうしたこととこうした便宜供与が関係がないのかどうか、こういう問題は更に解明をする必要があるということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、次に参考人にお聞きいたしますが、今年の一月三十日に熊谷基地を視察をして講話をされたということが埼玉新聞にも報道されておりますが、御記憶にあるでしょうか。

参考人(田母神俊雄君)

 はい。講話を行った記憶はあります。

井上哲士君

 防衛省にお聞きしますが、この基地視察の際などに航空幕僚長が行う講話とか訓示というのは、これはどういう性格のものなのか。言わば職務権限に基づく教育的な中身と、こういうふうに考えてよいのでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 講話とか訓話について厳密な定義はございませんが、講話は部外者に対して広報目的で実施をして、訓話は上級者が部内の者に対して教えを諭すために実施することが多いと考えておるところでございます。

井上哲士君

 幹部が教え諭すものだということが言われました。

 それで、当日、この一月三十日にあなたが「我が愛すべき祖国日本」と題して行ったとされる講話の記録文書を私持っておりますが、この中で、専守防衛は国策だがこれがずっと続くかは検討されなくてはならないとか、南京大虐殺はだれも見ていないとか、決して日本が侵略のために中国へ出ていったのではないのですなどなど、今回の論文とほぼ同趣旨のことを述べておられますけれども、御記憶にあるでしょうか。

参考人(田母神俊雄君)

 私はいつも前置きをしてしゃべるんですが、これは私の私見であると、だから正しいかどうかは皆さんが判断をしてくださいと。でも、これは私の考えですということでしゃべっていますが、しゃべっている内容は多分論文に書いたのと私は一緒だと思います。

井上哲士君

 「朝雲」によりますと、今年の四月一日に、空自の准曹士先任集合訓練の場で田母神氏も訓話に立って、東京裁判や南京大虐殺にも触れながら戦後教育の危うさや自虐史観を指摘したと、こう報道されておるわけですね。

 つまり、今回と、論文と同趣旨の内容で様々な場所に行って訓示や講話をしているわけです。つまり、任務として幹部自衛官を集めて、その場で職務権限として教え諭す、つまり教育をしているわけですね、航空幕僚長として。その内容がまさに憲法にも政府見解にも真っ向から反する、こういうものだということなんですよ。先ほどから議論になっているような一自衛官の言論の自由という問題ではないんですね。強力な権限を持つ人が、その権限としてこういう講話をしている。自衛隊の外で公にしたら更迭されるような内容を、職務権限として自衛官に教え込んでいるということなんですね。防衛大臣、重大だと思われませんか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 大変重大なことだという認識の下に、今回お辞めをいただいたということだと思っております。

井上哲士君

 つまり、今回論文が明らかになりましたけれども、まさに職務としてこの間ずっとやってきた問題が、今問題だとおっしゃいました。

 田母神氏、参考人のこのときの講話を見ますと、自衛隊は親日派、保守派の代表として外に向かって意見を言っていかなければならない、問題が起きたときは航空幕僚長を先頭に航空自衛隊が頑張るしかないと、問題は何ぼ起こしていいから頑張ってくださいと、こういうことを述べられているんですね。まさにけしかけているんですよ。私は、本当にこれは重大だと思うんですね。今回の集団応募の背景にも、こういう問題があるということを言わざるを得ません。

 報道によりますと、田母神氏は一年七か月で二十か所近く基地視察などで講話もされているということでありますが、どういう講話や訓話をしてきたのかと。そこに憲法や政府見解と全く反することが行われてきたのではないか。これ全部明らかにしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今御指摘をされて、大変、全国何か所でも訓話、講話をしていらっしゃるというお話を聞きました。

 我々とすれば、すべて確認を今しておりませんので、今後検討をさせていただきたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 この一年七か月の間にそういうことをやっておきながら、言わば放置をされてきたと。ここに政治の責任は極めて重大なものがあると思います。

 さらに質問いたしますが、田母神参考人は「鵬友」の平成十六年三月号の中で、統幕学校では今年の一般課程から国家観・歴史観という項目を設け、五単位ほど我が国の歴史と伝統に対する理解を深めさせるための講義を計画した、主として外部から講師をお迎えして実施をしてもらっていると、こういうふうに述べられておりますけれども、これは事実でしょうか。

参考人(田母神俊雄君)

 はい。事実です。

井上哲士君

 この一般課程の創設を主導されたと、こういうことでよろしいでしょうか。

参考人(田母神俊雄君)

 はい。日本の国をやっぱり我々はいい国だと思わなければ頑張る気になれませんね、悪い国だ、悪い国だと言ったのでは自衛隊の士気もどんどん崩れますし。そういう意味で、こういうきちっとした国家観・歴史観なりを持たせなければ国は守れないというふうに思いまして、そういう講座を私が設けました。

井上哲士君

 つまり、当時、統合幕僚学校長だったわけですが、この「鵬友」という雑誌は部内誌だと言われました。そこに論文を載せるというだけではなくて、陸海空のすべての幹部に対する幹部教育の体系を改定したということなんですよ。既に国家観や歴史観の教育はもう四年間行われております。

 この幹部教育のカリキュラムの概要を昨日いただきましたので、一部お手元に配付をしております。教育目的としては、「上級部隊指揮官又は上級幕僚としての職務を遂行するに必要な自衛隊の統合運用に関する広範な知識及び技能を総合的に修得させる。」というふうになっておりますが、具体的に平成十六年度の一般課程の歴史観・国家観の教育目標を見ますと、「健全な歴史観・国家観を育成し、防衛戦略研究及び将来の部下指導に資する。」と、こういうふうになっております。その後、この課程は幹部高級課程ということになっておりますが、平成二十年四月のものも付けております。ここには、例えば大東亜戦争史観という教育内容が出てまいりますし、日本国憲法の本質というものもあります。ほかの年度を見ますと東京裁判史観という項目もあるわけでありますが、この東京裁判史観とか大東亜戦争史観という呼び名自体が侵略戦争を否定する歴史観の中で使われる非常に特殊な言い方なわけですね。

 大臣、先日の質疑で、今後とも、村山談話などの政府見解を踏まえた適切な幹部教育に努めると。つまり、これまでもそういうものを踏まえた幹部教育が行われてきたという認識なわけですが、こういう内容の歴史観・国家観教育というものが適切だとお考えでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 いや、私も今委員からお話があったようなそのカリキュラム、そしてその中身については私も把握しておりませんので、その件に関して私の考えというのはちょっと今申し上げられません。中身を見れば、見させていただいて、どういうことなのかというのは確認はしたいとは思いますが、今この場で発言は控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 私は、これは自衛隊の幹部教育の場で一体何が行われているかということを防衛省が把握をしていないと。これは重大だと思いますね。しかも、これが田母神氏の下で四年前から行われてきているわけです。私が出しました資料には、この講師の名前は全部黒で消してあるわけなんですね。なぜその講師の名前を伏せる必要があるのか。こういう方が名前が明らかになりませんと、どういうことが行われているかということが分からないわけですね。

 実は、平成十八年のカリキュラムの中の歴史観・国家観の②という部分は大正大学の福地惇教授が四月十七日に行ったということが、新しい歴史教科書をつくる会の関係のホームページで明らかにされておりまして、講義内容も全部載っております。福地氏は、この講義の内容の中で、この講義の目的は、第一に、昭和の戦争は東京裁判の起訴状と判決に言うような侵略戦争では全くなく、自存自衛のためにやむを得ない受け身の戦争だったこと、第二に、それが了解できれば、現憲法体制は論理的に廃絶しなくてはならない虚偽の体制であると断言できることを論ずることでありますと、これが講義の目的だと、こういうふうに言っているんですね。

 驚くべき内容でありまして、事は何か論文で明らかにしたということにとどまらない。つまり、村山談話にも政府見解にも反するような特異な歴史観・国家観を自衛隊幹部全体に職務として教え込むと、こういうやり方が、先ほど田母神氏が自らこの幹部学校については指導したと言われました。そういうことで行われている。大臣、重大だと思われませんか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 その部分につきましては、我々、統幕学校において平成十五年度から一般課程で歴史観・国家観という項目を、課目を設けられておりまして、同課目が我が国の歴史について部外講師を講義等に実施しているというのも承知しております。ただ、部外講師による講義は、歴史認識を含めて様々な事項についてバランスの取れた見解と幅広い視野を有する自衛官を育するために有意義であると考えております。他方、部外講師の選定については、自衛隊員が偏向した歴史認識を有することなく歴史を客観的に理解することができるよう考慮しつつ、慎重に行う必要があると考えているところでございます。

 今先生の御指摘にあったことが、逆に言えば、これを確認するという意味では、まだ我々とすればそういったことも意識の中にはございませんし、逆に言えば、今先生から御指摘のように、これは重大なことではないかといえば、まだその影響がどのように出ているのかを今把握をしておりませんので、この場でお答えをすることは控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 今回の田母神参考人の行為も、そしてあの懸賞論文に多数の自衛官が応募をしたということにも、私はこれ影響が出ているんだと思うんですね。つまり、そういう議論をすること、公然と言えるような雰囲気や土壌をつくってきたということは非常に私は重大だと思います。

 今、バランスが取れた中身でなくてはいけないという趣旨のことを言われました。これを見ている限りでは、およそバランスが取れた中身とは表題を見ているだけでも私には思えません。一体この中で、どこで村山談話とか政府見解が徹底をされているのか全く見えてこないわけでありまして、まずこの講師の名前を明らかにすること、それから、こうした国家観・歴史観に関するこの間の幹部教育の内容、講師名、すべて全容を明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 先生の御指摘のことに関しましては、御本人の確認も、意思の確認もさせていただかなければなりませんし、その辺に関してはお時間をいただきたいというふうに思うところでございますし、ただ、今先生の御指摘のあったように、こういうことを自由に議論しているからこうであるという御指摘がある反面、他の議員の先生から、もっと議論をしてしっかりと吐き出させることも重要だというような御指摘もあり、我々とすれば、その良い方法を今後選んでいきたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 一自衛官の議論の自由とかという問題ではないんですね。幹部教育として任務として集めて、その中で教育しているんですよ。その中身が重大だということをもっとしっかり認識を持っていただきたいと思います。

 田母神氏を空幕長に任命した当時の安倍内閣自体が、日本の戦争は侵略戦争でないと、こういういわゆる靖国派の皆さんが多数派を占めていたということもありましたし、今回の論文についても政府筋から、あんなもの大したことないと、日本人みんなが思っていることというような発言も出ているという、こういう土壌をつくってきた政治の責任は重大だと思います。

 こういう事態のまま自衛隊を引き続き外に出していくようなことは厳しく問われておりますし、この問題の一層の徹底究明が必要であって、テロ新法の採決というのは論外だということを申し上げまして、質問を終わります。

資料


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