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井上哲士ONLINE
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2008年12月11日(木)

外交防衛委員会

  • 外交防衛委員会が約一ヶ月ぶりに開かれた。自衛隊幹部教育の「歴史観・国家観」の講義の廃止を求めたのに対し、浜田防衛相は「廃止も含めて検討する」と答弁。質疑終了後、討論・採決。新テロ特措法を反対多数で否決した。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、田母神氏の問題にかかわって任命責任について伺います。

 田母神氏は退任後も、退職後も核武装の必要性などを様々語っておられます。当委員会での参考人招致についても語っておられまして、一体何が問題になったのかということがいまだに分かっていらっしゃらないなということを思うんですね。そういう姿を見て多くの国民は、なぜこういう人物が空幕長に任命されたんだろうかということに不信とそして不安を持っておられます。

 報道などでは、この幕僚長の人事というのは、前任者を中心に制服組が決めて、それを内局と政府が追認するだけだと、こういうことも指摘をされているわけですが、政府としてはこの幕僚長を任命するときにどういう基準でされているのか、防衛大臣、お願いいたします。

防衛大臣(浜田靖一君)

 幕僚長を含む高級幹部の任命につきましては、その者の経歴、能力、人格等を総合的に判断して任命を行ってきているところであります。

井上哲士君

 その際に、言わば実力組織の幹部として、そして公務員としての資質というものが当然問われるべきだと思うんですが、先日の質問をした際に、この田母神氏が「鵬友」などで、過去の論文で同様の趣旨のことを繰り返していたということが任命の際に考慮されたのかということをお聞きしましたら、判断の中に入っていたかは分かればお知らせしたいという答弁でありました。その後、この点は確認をした結果どうだったんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 御指摘の「鵬友」の論文は、今般の田母神氏の論文の存在を認識して以降、同氏のそれまでの部外への意見発表等の状況を確認する過程において認識されたものでもあります。

 いずれにせよ、私としては、今回の件を受けまして、幕僚長のような要職にある者については自らの社会的地位を踏まえた適切な言動を行う責任があることは当然と考えており、高級幹部としての職責を十二分に自覚した者が適切に任命されるよう、より一層適切な選考を実施していきたいというふうに思っておるところであります。

井上哲士君

 以前の答弁では、そういう「鵬友」などについてチェックできる体制もなかったというようなことも言われておりましたが、田母神氏が空幕長に任命をされる前に侵略戦争の正当化や憲法敵視の言動をされていたというのは、この隊内の雑誌にとどまらないわけですね。

 統合幕僚学校長時代に、海外研修の団長として中国やマレーシアを訪問をされております。二〇〇四年の六月に中国に行かれまして、範陸軍中将と面談をされておりますが、その際に歴史論争をやって持論を展開したんだということを雑誌等でも誇らしげに書いていらっしゃるわけですね。

  〔委員長退席、理事浅尾慶一郎君着席〕

 まず、外務省にお聞きしますけれども、この中国での範陸軍中将との面談の場での田母神氏の発言というのは、外務省に公電が来ていると思いますけれども、どういう内容だったでしょうか。

外務副大臣(橋本聖子君)

 田母神前幕僚長は、二〇〇四年に統幕学校海外研修において研修団長として訪中をした際に、人民解放軍総参謀部の総参謀長助理との間で会談を行ったと承知をしておりますが、その際の同氏の発言については、公電により、中国側の歴史認識には同意できない部分があること、さらに、江沢民国家主席が過去の訪日で歴史問題を殊更強調したことが日本国内で大きな反発を招いたことを挙げた上で、歴史問題を頻繁に持ち出すことが両国関係の発展の妨げになっているのではないかと指摘をしたという報告は受けております。

井上哲士君

 当時の発言については、今、公電で報告がされているということでありました。

 田母神氏は、先ほども紹介されました「翼」という雑誌の中で当時のことを書かれておりますが、この範参謀長助理との面談の際にこう言っているわけですね。私は端的に言って日本軍が中国に対して悪いことをしたとは思っていない、日本は諸外国との比較で言えば極めて穏健な中国統治をしたと思っているということを皮切りに、様々述べたことが書かれております。実力組織の代表が侵略を受けた側の国に行って、そのことを認めて謝罪をした政府見解を否定をする内容を外交の場で述べたということは、私大変重大だと思うんですね。

 当時は、小泉総理の靖国参拝をきっかけに中国国内でも様々な反日感情の広がりがありました。しかし、その小泉総理自身も村山談話については受け継いでいたわけですね。にもかかわらず、この田母神氏の発言というのは、政府見解にも反し、そして反日感情を更に広げて、これ重大な外交問題にもなりかねない問題だったと思うんですが、この公電はそれぞれ報告されていると思いますが、防衛省内ではどういうふうに報告をされ、対応が行われたんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 訪中時における田母神前航空幕僚長の発言に関する今外務省の副大臣からお話があったほかの記録に関しましては、今現在存在しておりませんで、政府の歴史認識と異なる発言をしたことは今のところ記録上確認できておりません。

 また、この記録がどのように報告され、これを受けて防衛省としてどのような対応をしたかについては、これまで確認したところ当時の記録が残されておりませんで、お答えすることが困難であります。

井上哲士君

 要するに、まともな対応がされてなかったということだと思うんですね。

 田母神氏は、最近講演等で、むしろ防衛省内ではよくぞ言ったと私を評価する声が多かったということを講演等でも述べられております。

 外務省は公電を受け取った側でありますが、外務省はどういう対応をされたんでしょうか。

外務副大臣(橋本聖子君)

 二〇〇四年の訪中時における田母神前幕僚長の発言についての、公電に報告を受けておりますけれども、ほかの記録はこちらには存在をしておりませんで、政府の歴史認識と異なる発言をしたことは記録上確認はできておりません。

 したがって、外務省として防衛省に対し抗議等を行うべき事実等は生じておりません。

井上哲士君

 当時してないということですね。

外務副大臣(橋本聖子君)

 はい、当時しておりません。

井上哲士君

 当時の官邸はどのような報告を受け、対応されたんでしょうか。

内閣官房長官(河村建夫君)

 訪中時における田母神前航空幕僚長の発言に関する先ほど副大臣等お答えになりましたほかの記録は存在しておりません。政府の歴史認識と異なる発言をした等々、記録上確認ができておりません。

 そういうことでありますから、政府がどのような対応をしたかについても、これまでのところでは記録上確認ができておりません。

井上哲士君

 つまり、要するに放置されたんですよ。見逃されたんですね。

 私、非常にこの発言は重大だと思っているんですが、彼はこの「翼」という雑誌の中でこう書いているんです。私は、私の言葉によって北京に駐在する陸海空の武官たちに迷惑が掛からなければいいがと思っていた、さらに、これによって日中軍事交流が頓挫するようなことになると、私は日本国内においてさえ批判を受けることになるかもしれないという不安もあったと。

 つまり、こういう影響が起きるということを自覚した上でそういう発言をされているんです。そして、現実にその後、陸軍の国防大学が研修として日本に来るのがいったん中止になるんですね。その際に彼はこう言っています。私は、元々中国側に一方的に有利な日中関係など我が国の国益を損ないながら続ける必要はないと思っているので、来てもらわなくても結構だから心配するなと統幕学校のスタッフに伝えたと。

 つまり、自分のその持論、日中関係に対する持論がこうなのだから、少々影響受けてもいいんだと、そういうことを承知の上でこういう発言をされているわけですよ。

 ですから、今回、論文で出したということも重大でありますけれども、現実に外交関係でそういう影響が起きると、しかし、自分の持論の方が大切だということでこういう発言をされたということが見過ごされたということは大変重大だと思いますけれども、防衛大臣、いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 確かに今回の事案等も含めて、我々とすれば、御指摘の部分に関して見落としたというところは、前から私どももこれに対しては少々、本当に考えて、考えをしっかりしていかにゃいかぬということも、井上先生の御質問のときにたしかお答えしたような気もするわけでありますが、我々とすれば、こういったことも踏まえて、今後のいろいろな人事の考査等も含めて検討していかねばならないというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 田母神氏が、防衛省内ではよくぞ言ったと、私を評価する声は多かったと講演等で言われていることについてはどう受け止めておられますか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 そのようなことはないと思います。

井上哲士君

 私は、やはり当時、公然として官邸も含めて報告をされながら何も問題にされた形跡がないということが続く中で、そのまま空幕長に任命をされたという、ここのやはり政治の責任ということは大変重いと思います。田母神氏は、当時から一貫して同じ発言をしているのに今回に限ってなぜ袋だたきに遭うのかというようなことも言われておりますが、こういうことを言わせしめている政治の責任が極めて重大だということを重ねて指摘をしたいと思うんですね。

 先ほど、少し答弁、防衛大臣ありましたけれども、この五日の会見で、こういう不適切な見解を繰り返した場合に、いろいろな人事査定等のときの参考にするのは当然のことというふうにも述べられておりますが、そして、今回、田母神氏の後任の空幕長を任命されたときに、過去、政府見解に反するような論文はなかったというふうに会見でも言われております。

 つまり、今後、やはり自衛隊の幹部の任命に当たっては、侵略戦争の正当化とか憲法否定とか、政府見解を否定するような発言をしてきた人はふさわしくないと、こういう基準で対応するということでよろしいでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 当然これは、今委員から御指摘のありました点というのは、これはもう今回いろいろな形で御指摘を受けたわけでありますし、ただ、我々とすれば、当然それもチェックをしながらも、すべての幹部自衛官たる資質、いわゆる部隊の運用等も含めて総合的に判断していくのは当然でありますんで、我々とすれば、今委員の御指摘のお話もその中に入れて、国民の皆様方に対して不安のないような形を取っていきたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 こういう憲法等に関する過去の言動も一つの基準だということだと思います。

 そこで、更にお聞きしますが、この「鵬友」等で田母神氏が繰り返しているのは、時代は変わったと、自衛隊がインド洋やイラクまで出かけて行動するという中で、これからは自衛隊を張り子のトラにしておくことでは済まされない、行動する自衛隊は士気が高くなければ任務を遂行することはできないと、こういうことを言われています。それから、我が国の歴史に対する贖罪意識を持っているようでは部隊を元気にすることはできないということを繰り返し述べているわけですね。

 つまり、戦前の軍と今の自衛隊を連続したものととらえて、そして、自衛隊が海外に出る時代になって、旧日本軍が間違いを犯したと思っていたら元気が出ないんだと、そんな自衛隊では日本が守れないんだということを繰り返し彼は言っているわけですね。

 そこで、お二人の大臣と官房長にお聞きしますが、この戦前の日本軍と今日の自衛隊を連続したものとしてとらえて、昔の日本軍が間違いを犯したと思っていたら日本を守ることができないと、この田母神氏の考えについて、それぞれの御見解を聞かしていただきたいと思います。

外務大臣(中曽根弘文君)

 先ほどからいろいろ田母神氏の発言について議論しているわけでありますが、個人の見解、それから発言の一々について政府としてコメントすることはできるだけ差し控えたいと思いますが、いずれにしましても、現職の航空幕僚長が政府の認識と明らかに異なる見解を公にしたということは、私は不適切であったと思っております。もう政府の考えというものは、再三申し上げておりますように、平成七年八月十五日の村山総理大臣談話、そして平成十七年八月十五日の小泉内閣総理大臣談話にもう示されているとおりでございます。

内閣官房長官(河村建夫君)

 政府といたしましては、今外務大臣答弁されたとおり、個人の見解、発言について一々コメントすることは差し控えたいと思います。

 いずれにしても、現職の航空幕僚長が政府の認識と明らかに違う見解を公にしたことは極めて不適切であると、このように考えております。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今、両大臣がおっしゃったとおりでございまして、その意味では一つ一つこのコメントをするのは差し控えたいと思いますし、ただ、連続しているなどということはあり得ないわけでございまして、そういった意味では、士気が落ちる落ちないというのは、まさに任務に対してどういう思いを持っているかで決まると思っています。戦前、戦後、戦後は当然のごとく我々自衛隊としてやるべきことをしっかりとやるということの中で任務の完遂ということを目指してやっているわけでありますので、そこでの連続性などというものがあるはずがないと私は思っているところであります。

井上哲士君

 防衛大臣、更に聞きますが、連続性については否定をされました。田母神氏はその上で、要するに旧日本軍が間違いを犯したと思っていたら日本を守れないということを言われているんですが、そのことについてはどうお考えですか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 私はそうは思いません。

井上哲士君

 外務大臣にもう一回お聞きしますが、一般論として、こういう昔の日本軍が間違いを犯していたと思っていたら日本を守れないという考え方についてはどうお考えでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 今防衛大臣から御答弁ありましたけれども、私も同様に考えております。

井上哲士君

 当然の御答弁だと思うんですが、そうであるならば、そのことが貫かれないといけないと思うんですね。

 先日の質疑でも、田母神氏が航空幕僚長として講話や訓話を行って、全国の自衛隊で同趣旨の発言をされてきたということを問題にいたしました。大臣は、質問に対しては、その調査に速やかに着手をしたいというふうに答弁をされました。一部御報告はいただいたわけでありますけれども、記録が残っていないなどとして全容は明らかになっておりませんが、いろんな聴き取りもされているんだと思うんですが、田母神氏が論文と同趣旨の持論を自衛隊内で講話や訓話で繰り返していたと、こういう事実としては把握をされているということでよろしいでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今回、防衛省におきましては田母神前航空幕僚長が在任中に行った訓示、講話等の可能な限りの調査を行ってまいりましたけれども、これまでの調査で判明した範囲において、航空幕僚長在任中に訓示、講話等を合計八十六回実施していることが明らかになりました。

井上哲士君

 その中で、今回の論文と同趣旨の持論を展開をされたものがあるということを把握をされておりますか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今回の公表というお話が今ありましたけれども、原稿や記録の有無について可能な限り調査を行ってまいりましたが、そもそも訓示、講話等については組織的に作成した原稿、記録が必ずしも残っているわけではございませんで、現時点で十三件の原稿が確認されております。これについては既に提出をさせていただいているところであります。

井上哲士君

 参考人質疑の際も、熊谷で行った講話については田母神氏もほぼその内容が論文と同様のものであったということを認められておりますし、各地でそういうことが行われたということが様々あるわけですね。先日の審議の際に総理も、職務としてこういう侵略戦争正当化等の話をするということがあれば、これは不適切だというふうに言われました。

 ですから、そういう不適切なやはり講話、訓話が空幕長として繰り返されていたと、そのことを見逃してきた、問題にしてこなかったということの責任についてはどうお考えでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 いろいろな御質問の中でも私、お答えをさせていただいておりますけれども、確かにそのカリキュラムの見直しというのはしていかにゃいかぬとも思っておりますし、これからどういった形にするのかも含めて、今後、しっかりと体制をつくっていきたいというふうに思っています。

 先生の御指摘の部分を我々も認識をしながらやっていきたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 今聞いたのは講話、訓話の話なんですが、今答弁あったのは幹部教育の話だと思いますが、講話、訓話が繰り返されたことへの責任ということであります。

  〔理事浅尾慶一郎君退席、委員長着席〕

防衛大臣(浜田靖一君)

 確かにチェック体制が甘かったという御指摘、これはもう当然のことだと思っておりますし、それを真摯に受け止めてやっていきたいということでございます。

井上哲士君

 さらに、先日の質問の際は、統合幕僚学校で田母神氏が新設をした歴史観・国家観の講義について質問をいたしまして、あの論文と同じような中身を教え込む内容になっているということを指摘をいたしました。

 あの質問の際には、浜田大臣はカリキュラムの中身については把握しておりませんと、確認したいということでありまして、その後、一定の資料は提出をされたわけでありますけれども、大臣自身はこうしたものに目を通されて、どこに問題があるという御認識をされているでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 講義の内容につきましては、歴史観・国家観の講義はその記録が残されておりませんで、詳細に分析しているわけではございませんけれども、部外講師が御自身の見解を講義して、幹部自衛官が様々な見解があることを学ぶことは直ちに否定されるべきものではないと考えておりますが、講師の選定につきましては、講師名のみによって教育が偏向しているか否かを論ずるのは適当ではないと考えますが、その意味では、皆様方から御指摘いただいたように、バランスを欠いているというような印象を受けるというのもこれはもう当然、私もそう思いました。これからは、そういった皆様方からのいろんな御意見を受け入れながらしっかりとやっていくべきだと思っております。

 ですから、今御指摘があったように、こういったカリキュラムを考えるときにも、講師というものを適切に考えながらやっていきたい。ですから、今回の場合、少々適切であったとは考えられない、難しいというふうに思っておるところであります。

井上哲士君

 適切であったと言うのは難しいということでありました。確かに、講師を見ますと、先ほどの質疑にもありましたけれども、新しい教科書をつくる会の方などに偏っているというものでありますが、ただ、その講師のバランスだけの問題なんだろうかと思うわけですね。

 防衛省から平成二十年度の幹部高級課程の教育実施計画をいただきましたけれども、言わば計画として、歴史観・国家観の講義では、主要教育内容として、憲法の問題点とか大東亜戦争史観とか東京戦争史観というものがその主要教育内容として挙げられているんですね。こうやってこの実施計画で主要教育内容を決めて、これに沿った講義を講師に依頼したと、こういう流れだと思うんですけれども、それでよろしいでしょうか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 お答えいたします。

 歴史観・国家観の講師及び主要教育内容につきましては、基本的には統幕学校の教育課長が、それまでの実績等も踏まえまして、講師それから主要教育内容を含みます一般課程の教育実施計画案というものを作成いたしまして、統幕学校長がその計画を決めていたということでございまして、その主要教育内容の方が先か講師の方が先かという御質問かと思いますが、その辺の詳細な経緯につきましてはこれまで確認できておりません。

井上哲士君

 当時の教育課長の坂川氏、その後講師もされておりますけれども、田母神氏と相談してこのカリキュラムを決めたんだと、こういうふうに言われているんですね。ですから、教育実施計画として教育を決めているわけでありますから、当然こういう内容に沿った講師が依頼をされて、講師はそれに沿ってお話をされたんだろうと思うんです。ですから、講師のバランスということはもちろん問題でありますけれども、そもそもこういう教育内容、カリキュラムを作ったことに一番の私は大本があると思うんですね。

 こういうこの教育内容については、大臣にはどういうふうに報告をされていたんでしょうか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 お答えをいたします。

 先ほど申しましたように、この実施計画につきましては統幕学校長が決めていたということでございますが、その計画を定める際に防衛大臣まで報告していたかどうかということにつきましては確認できておりません。

井上哲士君

 内局には報告あったんですか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 この教育実施計画につきましては、統合幕僚学校の統合教育及び調査研究に関する達というものに基づいて教育課長が案を作って統合幕僚学校長が決めるということになっておりますので、その達に基づいて作られたということでありまして、当時、内局に話があったかどうかというところにつきましても確認されておりません。

井上哲士君

 そうしますと、現時点においてもいわゆる統合幕僚学校等の教育内容については内局は知らない、あずかり知らないということでいいんですか。そんなことでいいんですか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 答弁いたします。

 一般課程の教育実施計画全体につきましては内局の方にも報告されております。

 ただ、先ほど申し上げましたように、講師の選定とかあるいは主要教育内容というところ細部まで報告があったかどうかにつきましては確認されていないということでございます。

井上哲士君

 この歴史観・国家観というのはそれまでなかったのに新たに設置をされたわけですね。なぜそういうものができたかとか、当然、私は内局また大臣なりがしっかり見ておくことが必要だと思います。

 大体それまでこういう講座がなかったのになぜ田母神氏がつくったのかと。本委員会での参考人質疑の際に、日本をいい国だと思わなければ頑張る気になれない、きっちりとした歴史観、国家観なりを持たなければ国は守れないと、こういうふうに言われました。

 つまり、先ほど大臣も否定をされた、日本が侵略したということを否定しなければ国は守れないという前提で歴史観を教え込もうということでこの講座をつくったということを本人がやっぱり言われているわけですね。そうであるならば、私は講師だけの問題ではなくて、こういう講義そのものが必要なのかということも、そういう廃止も含めてまさに抜本的な検討がされなくちゃいけないと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 当然、今先生から御指摘がありましたことを我々も念頭に置きつつ、何が良いか、当然そこまで踏み込んで計画を変えるのか、その課程をなくすのかどうかも含めてまた検討していきたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 廃止も含めた検討をするということでよろしいですか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 その部分に関してはそういった選択肢を含めて検討させていただきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 結局、自衛隊が専守防衛の範囲を超えて海外派兵を拡大をしてきたということが矛盾を生んで、そのためにこういう講義が必要になってきているということだと思うんですね。私は、やはりその大本にあるこういう派兵そのものをやめるということが必要だということも言っておきたいと思います。

 次に、この懸賞論文を航空幕僚監部が全国に紹介をしております。そして、多数の応募がされたわけでありますが、大臣直轄の防衛監察本部がその経緯を調べる監察を行っておりますが、その対象と目的及び現在把握している事実について御報告いただきたいと思います。

防衛大臣官房長(中江公人君)

 お答えをいたします。

 お尋ねの防衛監察につきましては、今般の事案を踏まえまして、今年度の定期防衛監察の対象項目の一つであります法令遵守の意識、態勢の一環として実施する旨防衛大臣に報告をし、十一月十一日から防衛監察本部が航空幕僚監部並びに第六航空団等を対象に実施をしております。監察の内容につきましては、この法令遵守の意識、態勢という観点から、今回の懸賞論文への応募に至った経緯、手続等につきまして全般的に実施をしているところでございます。

 その監察の内容につきましては、現在まさに監察の途中でございますので、現時点で確たることを申し上げる状況にはございません。

井上哲士君

 この紹介を受けて小松基地では幹部論文のテーマをわざわざ懸賞と同じようなものにしてやっておりますが、この小松基地で行われてきた幹部論文のテーマというのはこの五年間はどういうふうになっていたんでしょうか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 お答えいたします。

 過去五年間で小松の第六航空団が計画しました幹部論文は平成二十年度のみでございまして、そのテーマは真の近現代史ということでございます。

井上哲士君

 次官の記者会見では、航空自衛隊においては幹部に論文を書くようにということを恒常的に行っていると理解しておりますと言われましたが、今答弁がありましたように、小松基地における幹部論文というのは五年間やっていなかったんですね。それがこの年に、今年わざわざやって、そしてしかもテーマはこの懸賞論文に合わせたと。ですから、自己研さんというよりも、特定の民間企業の行う懸賞論文に募集を促すためにわざわざ五年間やっていなかった幹部論文を課したということなんですよね。驚くべきことだと思いますが、なぜこのようなてこ入れといいましょうか便宜供与をしたんですか。

防衛省人事教育局長(渡部厚君)

 お答え申し上げます。

 懸賞論文募集の紹介に至る経緯につきましては、これまで調べたところによりますと、航空幕僚監部の教育課長が五月十五日に新聞でアパグループの懸賞論文募集の広告を知りまして、これが幹部自衛官の自己研さんに好ましいと判断しましたことから、同課において、五月の十九日から二十日にかけまして各部隊に対しまして懸賞論文募集について紹介するファクスを送付したということでございます。

 第六航空団におきましては、このファクスを受けていたわけでございますけれども、八月に至りまして、第六航空団の司令の方から、先ほど申し上げました真の近現代史観をテーマとする幹部論文を作成するように指示をしたという経緯でございます。

井上哲士君

 経緯は分かっているんですね。

 これまでの答弁でいいますと、毎年幹部論文が課せられていて、たまたま今年はこれに合わせたというふうに多くの人は受け止めたと思うんですが、実は五年間は全く幹部論文なんかしていなかったと。それをわざわざ書かせて懸賞に応募をさせたという非常に異常な、異例なやり方が行われていたということなんですね。

 大臣、お聞きしますけれども、こういうことがなぜ起きたのか。このアパグループという民間企業の懸賞論文になぜこのような異例の対応がされたのか。そして、このアパグループのホテルは小松基地の宿舎の三割も契約しているという報道がありましたし、この間議論になってきたように、この会長の元谷氏に大変異例の体験搭乗も戦闘機にされていると。こういうことも含めて、癒着の関係はなかったか等も含めて、どうしてこういうことになったかということを更に徹底して解明をする必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今、我々とすれば、先生のおっしゃったような疑問に対してお答えできるかどうかも含めて、今いろいろな角度から検討しておるところでございますし、我々とすれば今のところそういった事実はないというふうには思っております。しかし、まだ足らざるところがあれば、それはしっかりと説明できるだけの調査、そして並びにそれだけの我々の確たるものを持ちたいというふうには思っているところであります。

井上哲士君

 この問題発覚してもう一か月以上たっているわけでありまして、なぜ航空幕僚監部が全国に紹介をしたのか、そして、小松基地が突出してそれに応募をしたのかということはこの問題の一つの核心を成す問題だと思いますが、いまだにそういう状況というのは大変私は遺憾でありまして、更に徹底した解明を強く求めたいと思います。

 最後、法案に関連をして幾つかお聞きをいたしますが、この間の議論の中で、アフガニスタンの治安が著しく悪化をして情勢が泥沼だということを指摘をしてまいりました。当委員会で、米軍や多国籍軍の空爆が一般市民に犠牲をもたらし続けるということを看過できない問題として直ちに中止を求めるべきだということを言ってきたわけでありますが、その中で日本政府は、米軍の活動にアフガニスタン政府が同意を与えていると擁護をしてきましたけれども、実はその同意なるものが二〇〇二年の当時の暫定政府時代に交わされた覚書であって、内容的には事実上の白紙委任と言えるようなものであったということ、そして、その下でアフガニスタン政府が見直しを求め、とりわけ空爆の中止を求めているけれども、市民の犠牲が増え続けている、アフガニスタン政府自身が繰り返し空爆中止を求めてきたけれども、聞き入れられなかったと述べているということを指摘をしてまいりました。

 それで、その質疑をしていた十一月の六日にアフガンではまた被害者が出ておりまして、カンダハルで結婚式の会場が空爆を受けて、女性や子供を含む民間人三十六人が死亡したと言われております。そして、一番直近でいいますと、つい十日の未明にアフガニスタン南部のザブール州で、何と地元の警察署が空爆をされております。掃討作戦中に警察署の近くから銃撃を受けたということで正当化をしておりますが、警察官六人が米軍の空爆によって亡くなっておるんですね。

 ですから、治安活動の援助だと言いながら、警察を米軍が空爆するという驚くべき事態が起きているわけでありますが、外務大臣にお聞きいたしますけれども、アフガニスタン政府がこれほど要請をしながらそれが聞き入れられていないと、こういう実態があることについてどういうお考えをお持ちでしょうか。

外務副大臣(橋本聖子君)

 アフガニスタン政府は、米国等がアフガニスタンの領域内で実施している活動に関しまして一般市民に被害が及ばないよう要請を行ってきておりますけれども、アフガニスタンにおける治安維持回復活動そのものを中止するよう求めているものとはこちらは理解をしておりません。治安の回復、麻薬問題等が山積をしておるアフガニスタンの復興が依然道半ばである中、国際社会は部隊を増派するなどして懸命の努力を続けている状況です。

 我が国としては、テロとの戦いは息の長い取組と認識をしておりまして、国際社会と協調をしながらアフガニスタン政府の努力を今後もしっかりと支援していく考えであります。

井上哲士君

 政府の答弁が一年間ちっとも変わらないということを、私この間指摘をしてまいりましたが、今も言いましたように、警察すら空爆をされるという事態が起きております。

 カルザイ大統領は、オバマ氏の大統領選勝利が確定をした十一月の五日に、アフガンの村落における空爆や戦闘ではテロとの戦いに勝てない、民間人の犠牲を食い止めることが我々の最優先の要求だと、最優先だと言っているんですね。こう言って、一般市民の犠牲者を出さないように次期オバマ政権に求めるという意向を表明をしているんです。

 このカルザイ大統領が最優先と言っている要求に私はこたえて、外務大臣、是非このアフガンのカルザイ大統領の叫びを受け止めろということを新しいアメリカ政権に言っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 一般の民間人が本当にそういうような空爆によって負傷したりするということは、もう当然のことながら避けなければならないことでありまして、これは米軍等も十分に注意をしていることでございます。ただ、アフガニスタンにおきましては、反政府勢力が逆に意図的に民間人を巻き込む、そういう戦術を取っているというようなところもありまして、そういうところからも民間人もかなり多数犠牲となっていると、そういうふうに聞いております。

 一方、テロとの戦いを続けておりますアフガニスタン政府、それから国際部隊の活動によっても、今委員がおっしゃっていますように、犠牲が一般市民に出ているということでございます。アフガニスタンの国民、政府、それから国際社会、双方が一日も早いアフガニスタンの安定と復興を望んで今懸命な努力を続けているわけでありますけれども、今おっしゃいましたようなこうした無辜の民間人に犠牲者が出てしまうということは、本当に心が痛むことでございます。

 治安・テロ対策が必要であるからこそ、一般市民の被害を最大限回避するということは当然のことでありますけれども、米国等も各国もこういう点は十分に配慮して活動を行っているものと、そういうふうに私は認識をしております。

井上哲士君

 配慮とは言えないような実態が起きているというのが、今の結婚式場の空爆であり、警察署まで空爆をされたということがあるわけですね。私は、それがむしろ事態の解決に逆行しているということを繰り返し求めてまいりました。

 当委員会の参考人質疑でも、ペシャワール会の中村哲現地代表が、テロは軍事力では絶対になくならない、ますます拡大する、外国の空爆が治安悪化に拍車を掛けているというふうに厳しく指摘をされました。先日、アフガンNGOの調整事務所代表代行のサター氏が来日をされ、国会内でも迎えての集会があったわけですが、その場でも、軍事で平和は生まれないとして、むしろ日本政府に対しては和解交渉や人道支援の促進で指導性を発揮してほしいということを言われておりました。

 この声にこそこたえるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 アフガニスタン政府は、かねてから国内和平を推進する、そういう強い決意を表明をしてきていると、そういうふうに承知をいたしております。

 我が国は、アフガニスタン政府によりますこういう和平の取組というものは、当然のことながら同国に政治的な安定をもたらすと、そういうことでアフガニスタン政府のこの取組を支持しているわけでございますが、他方、タリバン指導部が、交渉は行われている、政府側からの和平の交渉が行われていると、そういう報道を否定をするなどして現地では非常に複雑な情勢が続いていると、そういうふうに承知をしておりまして、困難な道のりも今予想されているところです。

 我が国としては、まずはアフガニスタン政府がやっておる主体的な和解努力、これの動向を十分に注視をしながら、今後、同国の政府の要請など、そういうものも踏まえながら、どのような効果的な支援ができるか、そういう点を検討していきたいと、そういうふうに考えております。

 いずれにいたしましても、このアフガニスタン政府によります和平の取組というのは治安・テロ対策に直接すぐ代わるというものではなくて、アフガニスタンを今囲んでおります、含んでおります国際情勢、国際社会というのは依然としてアフガニスタン国軍やそれから多国籍軍による治安・テロ対策が必要である、そういう認識で一致をしていると、そういうふうに思います。

 我が国といたしましても、いつも申し上げていますが、アフガニスタンをテロの温床にしないと、そういうことで、そのために引き続いて治安・テロ対策、それから人道復興支援、双方に取り組んでいく、そういう考えであります。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、和平へのアフガン政府の努力にもむしろ逆行する軍事掃討作戦への支援につながる給油延長はやめるべきだと申し上げまして、質問を終わります。

〈井上議員の反対討論〉

 私は、日本共産党を代表して、新テロ特措法延長法案に反対の討論を行います。

 そもそも、アメリカの報復戦争を支援するため自衛隊をインド洋に派遣し、アフガニスタンへの空爆を行う米軍艦船などに給油支援を行うことが憲法九条に真っ向から反することは明白です。自衛隊は直ちに撤退すべきであり、法律の延長は断じて認められません。

 本委員会での審議を通じ、アフガン情勢への打開のためには軍事から政治への切替え以外にないことがはっきりしました。アメリカによる報復戦争開始から七年、アフガニスタンは今最悪の事態に陥っています。米軍の空爆と掃討作戦で多くの罪のない人々が犠牲となり、それがアフガン国民の反発を招き、更なる情勢悪化を招いてきたのであります。

 参考人質疑で、ペシャワール会の中村哲現地代表は、テロは軍事力では絶対になくならない、ますます拡大する、外国軍の空爆が治安悪化に拍車を掛けていると厳しく指摘しました。戦争でテロはなくせない、政府はこの事実を認めるべきであります。

 今、アフガン国内外で和平と対話の動きが日々広がっています。アフガニスタンのカルザイ大統領はタリバンとの政治的和解を呼びかけ、交渉が始まっています。アメリカ政府自身が報復戦争の行き詰まりの中でタリバンとの対話を検討するという大幅な戦略の見直しを迫られているのです。

 ところが日本政府は、治安・テロ対策と人道復興支援は車の両輪などと一年前と全く変わらない答弁を繰り返し、あくまで派兵を継続するというのであります。国際社会の変化を全く見ないものと言わざるを得ません。

 来日したアフガンNGO調整事務所の代表代行は、軍事で平和は生まれないとして、日本政府に対し和解交渉や人道支援の促進で指導性を発揮することを求めています。報復戦争支援をやめ、本法案は廃案にすべきであります。

 重大なことは、現職の航空幕僚長が日本の過去の侵略戦争を美化し、集団的自衛権も行使できないなどと現憲法を公然と批判、非難する論文を執筆し、民間企業主催の懸賞論文に応募していたことです。私たちの追及で、田母神前空幕長は、空幕長在任時代に職務として全国の基地で同様の主張の講話、訓話を繰り返し、統合幕僚学校長時代には同様の主張に基づく講義、歴史観・国家観を新設していたことが明らかになりました。

 侵略戦争美化、憲法破壊の主張を繰り返してきた田母神氏がなぜ空幕長に任命されたのか、自衛隊内の教育がどうなっているのか、全容の解明が引き続き必要であります。

 同時に強調しなければならないことは、田母神氏の主張が、九〇年代以降政府が進めてきた自衛隊の海外派兵と密接な関係にあることです。田母神氏は、東西冷戦構造が壊れ、自衛隊の海外派遣が頻繁に行われる、自衛隊が働く時代に入ったとして、それに対応した精強な部隊をつくるために自衛官に対し我が国の歴史と伝統に揺るぎない自信を持つよう求めているのです。自衛隊が海外派遣を本格的に実行していくための精神的支柱として侵略戦争を肯定する歴史観、国家観が必要だというのが田母神氏の主張であり、それが現に隊内教育として進行したのであります。この点からいっても、自衛隊の海外派遣を継続することは危険極まりないものとして厳しく指摘しなければなりません。

 以上、自衛隊はインド洋から直ちに撤退させるよう強く求め、法案への反対の討論を終わります。


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