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2009年6月23日(火)

外交防衛委員会

  • 対ベトナムとスイスの経済連携協定について、ベトナムからの野菜等冷凍品やスイスからのナチュラルチーズを日本側の譲許に加えたことが、日本農業に与える影響についてただした。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 EPAと日本農業の問題に絞ってお聞きいたします。

 まず、外務大臣にお聞きしますが、ベトナム、スイス、両国の農林水産物の平均関税率はそれぞれ幾らか、また、両国より平均関税率がはるかに低い日本がこの分野で譲許する理由は何なのか、まずお願いします。

外務大臣政務官(柴山昌彦君)

 WTOの統計によりますと、ベトナム及びスイスの農林水産品に対する平均関税率は、それぞれ二四・二%及び四三・五%でありまして、我が国の平均関税率二一・八%よりも高い水準となっております。

 そして、後段の、なぜ日本がこの分野で譲許するのだということについてなんですけれども、当然のことながら、日本そしてこれら両国との間におきましては、産業構造も国の発展段階も違うわけでございます。そして、それを踏まえて、こうしたEPA協定を締結すれば相互発展に資するということからこうした協定を締結するわけでありまして、その上で、お互いの困難な状況を考慮しまして互いの国内産業へ悪影響を与えないよう十分留意をした上で、御指摘の農林水産品も含めて双方が関税の撤廃や削減を行っているということで御理解をいただきたいと思います。

井上哲士君

 農水省が出していますOECD加盟国の農産物平均関税率は、スイスは五一・一パー、ベトナムは二七・二五パーと、こうなっております。日本は関税率は一一・七パーでありますから、スイスは日本の四・三七倍、ベトナムは二・三三倍ということになるわけで、この数字を見ても日本側の譲許が本当に必要なのか疑問であります。

 具体的にそれぞれについて聞きますが、今回のベトナムとの譲許表に野菜等冷凍品が入りました。そのことの日本農業に与える影響についてどうお考えでしょうか。

農林水産大臣官房審議官(小栗邦夫君)

  この度のベトナムとのEPAにおきましては、委員お話のありましたように、冷凍のホウレンソウ、エダマメ、ササゲなどの冷凍野菜の関税につきまして、五年から十年で段階的に撤廃する方向で合意したものでございます。

 この合意内容につきましては、これら冷凍野菜の輸入につきましては中国などからの輸入が大宗を占めておりまして、ベトナムからの輸入は中国などからの輸入を補完するような位置付けにございます。例えば、ベトナムからの輸入が最も多いホウレンソウにおきましても、中国が全体の約八割近くを占め、ベトナムは一割強にとどまっておるところでございます。

 また、これまでタイとかインドネシア等の東南アジア諸国との間で締結されましたEPAにおきましても、この度のベトナムと同様の内容で譲許をされておりまして、この度の合意が大きな状況の変化にはならないと読まれておりまして、このようなことから国内の野菜生産への影響は少ないものと考えているところでございます。

井上哲士君

 私は見通しが甘いんじゃないかと思うんですが、ベトナムに進出をして農水産物の加工品の日本への輸出をねらう日本企業もかなりあります。経済産業省の九州経済産業局が去年の三月に報告書を出しておりますが、この中で、九州には農産物栽培や水産物の養殖、食品加工に関する技術の蓄積があることから、それらの技術移転や提供を行い、付加価値を高めた製品のベトナムでの生産、加工や生産委託での展開可能性は高いと、こういうふうに経産省の報告書でもしているわけでありまして、そうするとやっぱり今後の影響というのは看過できないということは指摘しておきます。

 スイスとの譲許品目で聞きますが、ナチュラルチーズが入りました。スイス側の強い要求があったということなのか、及び、この具体的な譲許措置の中身についてお聞きします。

農林水産省生産局畜産部長(佐藤一雄君)

 お答えいたします。

 ナチュラルチーズにつきましてはスイス側の主要な関心品目であったということから、国内に悪影響を与えない範囲で一定の譲許を行ったところでございます。

 具体的には、まず譲許の対象でございますが、国産品と競合することのないスイス固有の高価格なナチュラルチーズということで、主にチーズフォンデュ用に利用されるエメンタールあるいはグリュイエール、スプリンツ、こういったものにまず対象品目を限定いたします。そしてまた、二つ目といたしましてこの数量でございますが、これまでの輸入実績、二〇〇八年度が七百二十トンでございますので、こうした量を踏まえまして、枠内数量を十年で六百トンから千トンに拡大して、枠内税率を五年で現行の二九・八%から一四・九%へと五〇%削減する、こういう関税割当を設定することで合意したところでございます。

井上哲士君

 今、輸入チーズ量が国内生産量の五倍以上を占めるという中で、やはり更にチーズ輸入量への拡大圧力を加えていくことになると思うんですね。何よりも、チーズなどの乳製品の販路を切り開いて生計を立ててきた酪農家の経営努力、特に今、北海道では国産チーズの市場拡大努力を頑張っていますが、こういうことにやはり背を向けることになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

農林水産省生産局畜産部長(佐藤一雄君)

 今お話し申し上げましたこのナチュラルチーズの中でスイスからのものにつきましては、これは先ほども何回も申し上げておりますが、いわゆるチーズフォンデュ用のチーズ固有のものであるということと、それと、これにつきましては豪州産あるいはニュージーランド産よりも二倍以上高いものでございます。こうしたことから国産のものと競合するようなことはないというふうに考えております。

 また、今御指摘ございましたように、国産チーズ、我々拡大を図っておりまして、そうした今申し上げましたようなチーズフォンデュ用のところでない違う分野で今だんだん伸びてきておりますので、こうしたことについては今後とも積極的にやっていきたいというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 農水省は、日本・メキシコのEPA以来、この程度なら国内への影響がないということで農水分野での譲許を繰り返してきたわけですが、結果的に輸入圧力が加え続けられているということでありまして、私は、やはり日本が食料輸入大国を見直して食料主権の見地から国内農林水産業を立て直す、食料自給率の向上に取り組むという姿勢が問われているときだと思います。こういう輸出国の要求に応じた譲許の姿勢というのは容認できないということから、私どもはこの協定には賛成できないということを申し上げておきます。

 次に、関連しまして、このEPAの政府の交渉姿勢についてお聞きをいたします。

 今年の五月に日本とカナダの外相会議が行われておりますが、この場でカナダのキャノン外相から日本とのEPA交渉の立ち上げの要望が出されております。

 まず確認いたしますけれども、二〇〇七年の日加経済枠組み共同研究報告書では、この農林水産分野の輸入自由化の措置について、日本の農林水産分野に対する影響への懸念にかんがみ、今回は合意に達することができないとしております。つまり、この分野での自由化はできないという結論に達しているわけでありますが、この結論について今回の外相会談では変更はなかったということでよろしいでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 日本とカナダのEPAにつきましては、二〇〇七年十月に日加両首脳に提出をされました日加共同研究の結果を踏まえまして、現時点で交渉を開始することは困難でありますけれども、日加経済関係を更に深めると、そういう点が重要である、そういう観点から日加次官級経済協議でその可能性を再検討して、まずは双方にとりまして実施可能な協力から進めていくと、そういうことになっております。昨年の十二月にも次官級協議が行われました。先日の五月の日加外相会談におきます私とカナダのキャノン外相とのやり取りも含めまして、こうした現在の我が国の立場に変更はございません。

井上哲士君

 カナダの先ほどの報告書では、日本の輸入自由化によって日本では穀物及び肉製品の生産が減少する、こうありまして、国内農林畜産業への経済的打撃を指摘をしているわけですね。立場に変わりはないという答弁でありましたが、堅持していただきたいと思います。

 同時に、国内農業への打撃を及ぼす懸念のもう一つは日本とオーストラリアのEPAでありますが、今年三月に第八回会合をされております。オーストラリア側からの日本側への農林水産品の関心品目について、現時点ではどういう要求がされているんでしょうか。

外務大臣政務官(柴山昌彦君)

 日豪EPA交渉におきましては、豪州サイドよりは、米、牛肉、乳製品、砂糖及び小麦を含む多くの農林水産品に係る関税等の国境措置に関して特恵的な待遇を得ることについて関心が示されています。

井上哲士君

 いずれも非常に国内、日本農業にとって重大なものなわけでありますが、農林水産省にお聞きします。

 二〇〇六年にオーストラリア産の農林水産物で輸入量が多い牛肉、砂糖、乳製品、小麦の完全撤廃をした場合の試算をされておりますが、当時、日本の生産に与える直接的影響はマイナス八千億円というふうにされておりますが、この試算が今でも有効かということ。また、その関連産業などに与える影響などを含めまして総額幾らの経済的打撃が懸念されているのか。いかがでしょうか。

農林水産大臣官房審議官(林田直樹君)

 お答えします。

 日豪EPAによりまして豪州産農産物の関税が撤廃された場合の直接的な影響につきましては、一定の前提の下に小麦、砂糖、乳製品、牛肉の四品目につきまして試算を二〇〇六年に行ったところでございます。また、関連産業につきましては影響額の試算は行っておりませんが、製粉業、製糖業、乳業等の関連産業に甚大な影響があるものと見込んだところであります。

 この試算の前提であります我が国と豪州の農産物の価格差は二〇〇六年以降も変わらず大きいままでございますので、このような品目に対する関税を撤廃した場合には大きな影響が出るものと考えております。

井上哲士君

 北海道は、道として道内経済に与える影響が一兆三千七百十六億円と、酪農・畑作地域の経済社会の崩壊につながると、こういうことも言っているわけですね。こういう事態をやはり踏まえたことが必要だと思うんですが、対カナダの農林水産分野の自由貿易は先ほどありましたように見送りを決断をしたわけですね。そして、日豪につきましては〇六年十二月、衆参の農林水産委員会で全会一致の決議が行われております。万一、我が国の重要品目の柔軟な取扱いについて十分な配慮が得られないときには、政府は交渉の継続について中断も含む厳しい判断をすべきだと、こういう全会一致の決議であります。私はやっぱり、カナダではそういう決意をした、そしてこういう決議を尊重するんであれば、もう日豪についても交渉を中断すると、こういう決意があってもよいと思いますが、いかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 日豪のEPAにつきましては、これは日豪両国の関係、これの更なる強化につながると、そういう認識の下に交渉を進めているわけでありますが、今までのところ大変有意義な議論を行ってきております。

 農林水産分野の市場アクセスの交渉に当たりましては、今委員から衆参の国会での決議について言及がございましたけれども、我が国の農林水産業の重要性を十分に認識をいたしまして、やはり守るべきものは守る、そういう方針の下で日本側の立場を主張しながら粘り強く交渉を続けているところでございます。

 また、投資とかサービスの分野、またエネルギー、鉱物資源など広範囲にわたる分野において交渉が続けられているわけでありますが、我が国にとりましてやはり最大限のメリットを獲得できるように政府一丸となって交渉していく、そういう考えでございます。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、我が国の農林水産物の平均関税率は、OECD加盟国の中でも最低水準なわけですね。世界の中でも日本ほど自由化を進めている国はないわけでありまして、むしろ食料主権の確立という立場で関税・輸入規制措置の強化などを進めるべきだと申し上げまして、質問を終わります。


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