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2009年7月7日(火)

外交防衛委員会

  • 核兵器持込みの密約問題について3回目の質問。米公文書館で公開されている核兵器持込みを認める藤山外相とマッカーサーの「討論記録」=密約文書を資料配布。これは元次官証言で存在が裏付けられているものであり、政府が誠実に調査して、国会に提出するよう求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 議題となっております四つの条約は賛成です。

 前回に続いて、核兵器の持込みの日米間密約の問題について質問をいたします。

 まず、外務大臣にお聞きいたしますが、実は昨日発売のサンデー毎日という雑誌で、大臣のお父上である中曽根康弘元総理と日本共産党の不破哲三元委員長が異色の対談をしております。その中でこの核密約のことも話題となりまして、中曽根元総理はこう言われているんですね。安保条約の下、領海通過や一時寄港もあり得ると考えるのが常識でしょう、米軍の艦船が日本に入るときだけ核を外すなど考えられないと、こう言われております。

 核兵器の持込みを認める発言をされているわけでありますが、大臣はどうお考えでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 まず、週刊誌のこの記事ですが、私も今初めて実は見たところですが、最後に不破氏から、密約文書は見ていないんですかと、それは見たことないねと、そういうようなふうに答えてあることを申し上げておきますが。

 私どもとしては、もうかねてから申し上げておりますように、従来から申し上げておりますように、そのような密約はないということでありますし、また、歴代の総理、外務大臣もかかる密約の存在についてはもう明確に否定しているわけでありまして、このことは、総理あるいは官房長官の御答弁でもこれは明確になっているところでございます。

井上哲士君

 また過去の答弁を持ち出されるわけでありますが、同じ発言の中で中曽根元総理は、政府の非核三原則についてはその実態と形式的な表現や国会における答弁がある時代において乖離しているのは意識していましたと、こういうふうに言われているんですね。

 今の言われたような答弁と実態が乖離をしていたということではないんですか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 これ、今初めて記事見ますし、この発言の本意といいますか、それがどういうものか、私自身、ちょっと今見たばかりでよく分かりませんし、これは本人にお聞きいただくしかないんじゃないかと思います。

井上哲士君

 元総理がこの問題で国会答弁と実態が乖離をしていたということを言われているということは、私は大変重大だと思います。

 その上で話を進めますが、政府は日本に核兵器が持ち込まれていないという論拠として、一九六〇年の藤山・マッカーサー口頭了解、それから岸・ハーター交換公文というのを挙げるわけであります。持込みの場合は事前協議が必要だけれども、事前協議がされていないので持ち込まれていないと、こういう理屈なわけでありますが。

 そうしますと、一九六〇年以前は、この核兵器を搭載した米軍艦の日本の港湾での持込みというのはどういう扱いになったんでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 政府といたしましては、今委員が御指摘の時期におきましても米軍による核持込みが行われていたとは承知いたしておりませんけれども、例えば昭和三十二年、一九五七年ですが、三月二十七日の予算委員会におきまして、当時の岸総理は、「この日本に駐留する部隊や兵器というようなものにつきまして、実際上日本の意思を無視して入ってくるということは現在までもアメリカはやっておりませんし、また日本としては、そういう場合において私は原子兵器等についての持ち込みについては、これに応ずる意思なしと断わる」旨答弁をされておられます。

 ただし、現行の日米安保条約の発効以前は我が国への米国による核持込みに関しまして法的拘束力を有する約束は存在しませんでしたので、昭和三十五年に発効いたしました現行の日米安保条約及び関連取決めにおきまして事前協議制度という明確な法的枠組みを定めて核兵器の持込みを事前協議の対象としたことは、もう従来から累次御説明してきているところでございます。

井上哲士君

 当時は約束事はなかったと、取決めはなかったということでありますが、お手元に配付している資料は、これは実は二〇〇〇年にも国会に出したものでありますが、アメリカの公文書館で公開をされているアメリカの国務省と国防総省の安全保障担当が共同して作成をした公文書でありまして、「日本と琉球諸島における合衆国の基地権の比較」というものをお配りをしております。

 原文と訳があるんですが、その八ページを見ていただきますと、その真ん中辺りに、核兵器搭載の米艦船が日本の港湾に寄港する慣行は一九六〇年以前に確立されたものであったと明確に書いております。

 そこで、六〇年の安保条約の改定交渉の中でこの慣行をどうするかというのが問題になったわけですね。配付資料の一ページが、日米政府の協議の結果、五九年の六月二十日に合意をされ、六〇年の一月六日に藤山外相とマッカーサー氏が署名をした討論記録というものであります。

 一項は藤山・マッカーサー口頭了解の内容の説明ですが、問題はこの口頭了解の作成に当たって考慮し了解をされた内容として挙げられている第二項なんですが、この第二項のCについてちょっと訳していただけますか。

外務大臣官房審議官(羽田浩二君)

 今委員の方からお配りになったこの文書というものについては、政府として内容についてコメントする立場にはありません。

 その上で、この文書の今委員の方から御指摘になったC項という箇所の英文の日本語での意味ということについてだけお答えすれば、おおむね次のような意味になると考えております。

 事前の協議は、合衆国軍隊の日本への配置に関する重要な変更の場合を除き、日本への合衆国軍隊及びその装備の配置、米軍機の立入り、米艦船の日本の水域及び港への立入りに関する現行の手続に影響を与えるとは解釈されない。

 以上でございます。

井上哲士君

 実は訳文は六ページに付いておるんでありますが、きちっと向き合っていただきたいと思って、あえて訳していただきました。

 これ、立入りについてはこれまでの手続に影響を与えないということで五〇年代には確立していた核の持込みを認めるという内容でありまして、これがまさに密約文書なんですね。署名の当日にマッカーサー氏がハーター国務長官に送った公電によりますと、原本は秘密指定、日本が保持する複写は後で厳秘指定されることになっているという取扱いまで報告をされております。

 この存在がさっきの四人の元次官の証言で裏付けられたわけですね。元次官のC氏はあの共同通信の報道で、この日本側文書が外務省にあると、全く一言一句変わらないことが書かれていると述べているわけですね。つまり、この英文の討論記録と一言一句変わらないものを日本が保持しているということを日本側の当事者が裏付けたわけであります。

 さらに、村田氏の実名証言でそういう存在を一枚紙で事務次官が引き継いできたということも言われてきたわけで、是非、外務省、しっかり調査をして、この討論記録を提出をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 政府といたしまして、核搭載艦船の寄港それから領海通過はもう事前協議の対象としないということを大平外相が確認したとの事実を承知していないということにつきましては、もう従来から説明を申し上げているとおりでありまして、またそのような趣旨を目的とした大平・ライシャワー会談というものは当時の記録にございません。

 また、一九八一年当時の国会におきましても、既に当時の鈴木総理から、先ほども御答弁申し上げましたけれども、「大平さんはそういうことを言っておらない、後の外務大臣にもこのことを引き継いでおらない、外務事務当局も一切承知しない、記録もない、」と答弁をしておりまして、政府として結論を出しております。この点は、その後も歴代の総理、外務大臣からも繰り返し説明をしているとおりでございます。

井上哲士君

 大平・ライシャワー会談というのは一九六三年のことなんです。私が言っていますのは、これは一九六〇年に藤山外務大臣と当時のマッカーサー氏が署名をした討論記録があるはずだと、そういう証言も外務次官がしていると、これを出していただきたいと言っているんですが、いかがですか。

外務大臣(中曽根弘文君)

 政府といたしましては、先ほど申し上げましたけれども、核搭載艦船の寄港それから領海通過は事前協議の対象としていないということを大平外相が確認したとの事実を承知していないということにつきましては、今申し上げましたとおり、従来から説明をしているとおりでありますが、いずれにいたしましても、米側は、事前協議に係るものも含めまして、安保条約及び関連取決めに基づく日本に対する義務を忠実に履行すること及び事前協議については日本政府の意思に反して行動することはない旨を繰り返し述べておりまして、政府として本件の文書を米側から入手し、また提出する必要はないと、そういうふうに考えております。

井上哲士君

 先ほど大平・ライシャワー会談のことを言われましたが、今示したこの討論記録があったにもかかわらず、次の池田総理が寄港なども持込みに当たるという国会答弁をしたと。そこで、アメリカ側でそれが大問題になったわけですね。

 提出資料の英文の五ページ、訳では八から九ページにこういう経過を明らかにしておりますが、ケネディ大統領の下で会議を行って、当時のライシャワー駐日大使が大平外務大臣と会って確認しろということになって行われたのが一九六三年のこの秘密会談であるわけです。そのやり取りは先日の質疑で犬塚議員が示しました。

 そのライシャワー氏が本国に送っている公電では、先ほど示したこの討論記録、その二のA項と二のC項を持ち出して、核持込みというのは事前協議の対象だけれどもいわゆるエントリーについては対象にならないという中身を大平さんに言ったら、自分は知らなかったけれども了解したと、こういうことを言っているわけですね。

 重要なのは、この大平・ライシャワー会談の記録文書が存在しているということを先日の共同通信のあの四人の証言のうち三人が同じように認めているということです。例えばA氏は、大平氏が外相だったときに確認したということも秘密の文書に書いてあり、それも読んだことがあるというふうに言っています。B氏、C氏も同じように言っているわけですね。

 そこで、こういう同じようなケースは沖縄返還に伴う密約でも起きております。アメリカに公文書があるのに日本が否定していると。これは今、作家の澤地久枝さんらが情報公開を求めている訴訟を行っておりますが、六月十六日の公判で裁判官が異例の発言をしているんですね。アメリカに密約文書があるんだから日本側にも同様の文書があるはずとの原告の主張は十分理解できる点があるというふうに述べて、国側に対して、ないと言うのだったらアメリカの公文書をどう理解すべきなのか説明しろ、ない理由を出せと、こういうことまで裁判所ですら言われているわけでありますね。

 こういう指摘については、司法からの異例の指摘でありますけれども、どう受け止めていらっしゃるんでしょうか。

外務大臣官房審議官(羽田浩二君)

 六月十六日に、今委員御指摘のとおり、本年三月に国を被告として提起された情報公開に関する行政事件訴訟の第一回口頭弁論が東京地裁で行われました。本件情報公開請求に関する不存在による不開示という決定は、情報公開法に基づき適切に判断して行ったものであります。

 本件は訴訟係属中であり、詳細についてはコメントを差し控えますけれども、裁判所からの指摘も踏まえ、裁判の場においても政府側の立場をしっかりと説明して、適切に対応していきたいと考えております。

井上哲士君

 核兵器廃絶への重要な流れがある中で、その先頭に立つべき被爆国日本が、国是である非核三原則にかかわる問題で国民を欺く態度を取っているということでは、その役割を果たせないと思います。世界に核兵器廃絶でしっかり物が言えるように、真実を明らかにし、秘密合意を破棄をするという点で大臣の決断をお願いをしたいし、あわせて、国会に対して虚偽答弁が続けられてきたわけですから、これはやっぱり国会として真実を明らかにする必要があると思います。

 是非、国会の責務を果たすためにも、与党の皆さんにも村田次官らの証人喚問を是非賛同していただきたいと強く求めまして、質問を終わります。


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