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2009年7月9日(木)

外交防衛委員会

  • 対カザフスタン、ブルネイとの租税協定の審議。みなし外国税額控除の問題を取り上げた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 これまでに結ばれてきた租税条約全体に対してお聞きいたしますが、日本は、途上国に投資している企業がその国で租税上の優遇措置によって減免された租税の額を納付したものとみなして日本の法人税額から控除することを認めております。いわゆるみなし外国税額控除でありますが、資本金が三百億円以上の日本の法人が最近五か年、このみなし税額控除を受けている実績をまず述べていただきたいと思います。

国税庁調査査察部長(岡本榮一君)

 お答え申し上げます。

 国税庁は、外国税額控除の適用状況を標本調査に基づき把握しております。これによれば、過去五年間のみなし外国法人税額は、それぞれ、平成十五年分二百二十億円、平成十六年分二百八十億円、平成十七年分五百二十億円、平成十八年分五百二十億円、平成十九年分千百十億円となっております。

井上哲士君

 五年間で実に五倍に膨れ上がっているわけですね。九六年十一月の政府税調の法人課税小委員会報告を見ますと、みなし外国税額控除の一層の見直し・縮減の努力を継続すべきものと明確に述べております。これによりますと、この制度の問題点として、税の公平といった課税の基本原則といった観点も踏まえる必要があるという指摘もしているわけでありますが、この制度のどこが問題であるという認識でしょうか。

財務大臣官房審議官(古谷一之君)

 お答え申し上げます。

 この制度は、先ほど先生から御指摘がございましたように、開発途上国であります条約締結相手国が、経済開発を促進するために、外国企業の誘致などを目的としまして租税の減免措置を行いました場合に、これに対して減免した税額相当額の控除をこちら側で認めまして、言わば自国の課税権を制約する形により開発途上国の支援をするという特別の措置でございます。

 これにつきましては、OECDなどでも議論が行われておりまして、開発途上国に対する支援の手法として必ずしも効果的ではないんではないかとか、投資促進手段としての有効性に疑問があるのではないかとか、さらには、途上国に所得を移転するなどの誘因となりまして濫用のおそれがあるのではないかといった指摘が行われております。

 こういった指摘がございます中で、政府税調の指摘にもございますように、近年の条約の締結、改正に当たりましては、適用期限を付すなど、この制度の見直し、縮減を行ってきているところでございます。

井上哲士君

 税調でも、今紹介あったOECDでも様々な問題が提起をしているわけですが、しかしそれが、実績は五年間で五倍の額に膨れ上がっていると。この認識と逆行する事態については、財務省としてはどういう認識をされているんでしょうか。

財務大臣官房審議官(古谷一之君)

 みなし外国法人税額が増加している理由につきましては、必ずしもつぶさに私ども分析はできておりませんけれども、世界経済のグローバル化が進展いたします中で、この制度の適用が認められております租税条約相手国、現在、中国、タイ、ベトナム、バングラデシュ、フィリピンといったアジア諸国が入っておりますけれども、こういった国での我が国の法人の経済活動が活発に展開されているということが一因ではないかと考えております。

井上哲士君

 私は、それだけではこの五年で五倍になったということのなかなか説明にはなっていないなと思うんですが、やはりここはきちっと分析をされる必要があると思います。

 そこで、外務省に聞きますが、日本が租税条約でみなし外国税額控除を供与している国がありますが、その中で、この供与期限の設定がない国は今どうなっているでしょうか。

外務大臣官房審議官(北野充君)

 お答え申し上げます。

 現在、日本がみなし外国税額控除を供与している国というのは合計八か国ございます。順に申し上げますと、スリランカ、ザンビア、ブラジル、フィリピン、それから中国、タイ、バングラデシュ、ベトナムの八か国でございます。このうち、フィリピンにつきましては平成三十年まで、それからベトナムにつきましては平成二十二年まで、また中国につきましては、事業所得は平成二十八年までということになってございますけれども、そのほかの国につきましては供与期限というふうな形での設定は行われておらないところでございまして、先ほど財務省の方からも答弁がございましたように、今後の協議の中で、改正というふうな形の中で縮減を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 税調やOECDの報告書の方向に照らしますと、私はこれ早期見直しが要請されると思いますが、改めて大臣から御見解を伺いたいと思います。

外務大臣(中曽根弘文君)

 先ほどからお話ありますように、外国税額控除というのは、課税の公平性とか中立性、あるいは租税回避のために濫用されるおそれがあるとか、あるいは投資交流の促進に必ずしも資するものではないというような問題点、そういうものも指摘されております。

 そういうところからも、先ほどから御答弁申し上げておりますように、今後の締結交渉とかあるいは改正交渉におきましてもこの規定は設けないことを基本といたしまして、そして既存のみなし外国税控除に関する規定の廃止、それから縮減、これらを図ってまいりたいと考えています。

井上哲士君

 今回の対カザフにおいては、使用料に対して議定書において実質五%に引き下げられた源泉地国課税となっておりますが、過去の答弁で、使用料は、相応の担税力があると考えて租税条約で一〇%程度に軽減しつつ源泉地国課税権を確保したと、こういう答弁があるわけで、担税力があるにもかかわらずこの税率を引き下げるということになりますと、進出する日本の大企業に特に有利に働くと思いますが、この点、いかがでしょうか。

外務大臣官房参事官(兼原信克君)

 お答え申し上げます。

 使用料は、委員御承知のとおり、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物の著作権、特許権、商標権等の使用料のことでございますが、日・カザフスタン租税条約では、日・カザフスタン両国間の知的財産権に関する交流を促進するという観点から、この使用料に対する源泉地国の課税に関して、その限度税率を実質五%になるように規定したわけでございます。この規定は、必ずしも大企業に限らず、国境を越えた経済活動を展開している中小を含む我が国の企業及び個人について広くその税負担を軽減して、日本企業のカザフスタン進出を促進するという効果を有するとともに、現地での競争条件を改善することにつながると考えております。

井上哲士君

 経産省の基本調査、二〇〇四年実績で見ますと、日本の大企業の本社が海外から受け取る投資所得の内訳で、例えば非鉄金属部門全体では二十六社で二百十一億五千六百万円ですが、そのうち使用料が九十三億八千八百万円で四四・四%を占めております。これが五%というふうに措置をされるとどうなるのかと。

 この使用料は、現地子会社への技術移転が終了するまで支払が継続をいたしますし、それから技術移転の進展とともに増加をしていくわけで、現地におけるこの使用料の源泉課税の実質軽減措置というのは非常に大きな恩恵になるわけですね。とりわけこの非鉄金属、それから資源エネルギー産業の巨大固定資本というのはパテントの塊みたいなものでありますから、そういう点では、この使用料の軽減税率というのが大企業、多国籍企業にもたらす恩恵は非常に大きいというふうに言わざるを得ません。

 こういう、先ほどのみなし外国税控除額が事実上拡大をしているということや、こういう大企業に対する優遇税制措置が更には上塗りされるということでありますから、これはやはりOECDなどが指摘するように公平性と効果に非常に問題があるということを指摘をいたしまして、質問を終わります。


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