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2010年10月28日(木)

法務委員会

  • 検察問題の3回目。「証拠改ざん」問題に関連し、捜査機関により集められた手持ち証拠は真実の解明のために、全面的な開示が必要と強調。少なくとも、野党時代に民主党が求めた「標目一覧」は直ちに開示すべきだと迫る。
    また、検察の暴走の背景には法廷での供述よりも、検察の調書を採用して有罪としてきた裁判所の運用があり、第三者も含めた検証が必要ではと最高裁を質した。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 フロッピーディスクの改ざん事件について、関連してお聞きいたします。

 自ら描いたストーリーに合わせて供述を強要し、証拠すら改ざんをする、そして有罪にすると、この事件は検察の在り方そのものを問うております。今回は証拠改ざんが問題になりましたけれども、検察が不利な証拠を隠すということもしばしば指摘をされてまいりました。

 まず、大臣にお聞きしますけれども、国民の税金を使って警察や検察が集めた証拠というものは、これは捜査当局が有罪を得るために使われるものなのか、それともこれはだれのものなのか、何のために使われるべきものなのか、基本的な見解をまずお聞きしたいと思います。

国務大臣(片山善博君)

 国家刑罰権の適正な実現のため、捜査段階であれば起訴や不起訴の判断に、起訴後の段階であれば公判における立証活動に適切に使われるべきと承知いたしております。

井上哲士君

 刑事訴訟法の第一条は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適切かつ迅速に適用実現することと、その法律の目的を言っておりますけれども、当然この目的に沿った形で用いられるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(柳田稔君)

 そのとおりだと思います。

井上哲士君

 そうであるならば、検察当局が集めた証拠というのは別に検察官の所有物でもないわけでありまして、まさに真相を明らかにするために使用されるべきでありまして、これは全面的に開示されるべきものであります。

 検察官の手元には、税金を使って、そして強制力を使って集めた膨大な資料があると。一方、弁護側にはほとんどないということが間々多くあるわけですね。

 この無罪の証拠とか、それから検察に不利な証拠を出さずに有罪を求めたと、こういう冤罪事件というものも数多く指摘をされたわけであります。無罪の証拠とかそして検察に不利な証拠を隠した、結果として無実の方が有罪になると。そういう点でいいますと、私は証拠の改ざんにも等しいことだと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(柳田稔君)

 証拠の改ざんなどということはあってはならないことであり、証拠開示についても検察官は、公益の代表者としての立場から、有罪立証への有利不利を問わず、刑事訴訟法に定められた規定に従い適切に対処すべきものと承知いたしております。

井上哲士君

 有利不利問わずということを言われました。先日も刑事局長からそういう同じ言葉が出たわけでありますが、現実にはどうなっているのかと。

 証拠隠しが様々な冤罪を生んできたわけですね。例えばあの有名な布川事件、これは第二次再審請求審で様々新たな証拠が開示をされました。例えば、殺害方法について自白と異なる中身を示す死体検案書も出てまいりましたし、有力な証人の証言を覆す近所の女性の調書というのもその再審請求の中で出てきて、そしてこれが再審につながっていったわけですね。ですから、初めから証拠が開示をされていれば、もう何十年もこの冤罪に苦しまなくてもよかったという事件があるわけであります。

 今、再審が決まっている名張の死刑再審事件でも、検察側は膨大な資料を持っているというふうに表明をしておりますけれども、弁護人が要求しても標目すら開示を拒否をしているわけですね。これが実態なんです。

 ですから、私は、冤罪で苦しむ人を新たに絶対に生み出さない、そして、現に今再審で闘っている皆さんが、きちっと証拠をしっかり出させて、それを晴らすという点からいいましても、証拠の全面開示に今踏み出すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(柳田稔君)

 検察官手持ち証拠の開示につきましては、平成十六年、刑事訴訟法改正によって大幅に拡充されたところでございますので、その運用も踏まえて検討をする必要があるんだろうと、そう思っております。

井上哲士君

 平成十六年改正で大幅に拡充をされたと、こういう答弁でありますが、民主党が提案をしたいわゆる取調べの可視化法案では、この公判前整理手続において、検察官の手持ち証拠の開示に向けて標目の一覧表の開示を行うということが盛り込まれておりました。

 そのときの提案理由説明でありますが、既に公判前整理手続においては証拠開示の方法が定められておりますが、被告人側は、そもそも検察官がどのような証拠を有しているのか分かっておりません、実体的真理を解明するためには有利不利を問わずに明らかにされるべきものであり、その前提として証拠の標目の一覧表の作成及びその開示をすることとしておりますと、こう言っているんですね。

 ですから、十六年改正は行われたけれども、標目さえ出されなければ、実質的にこれは問題があるということでこういうことが出されているわけでありますから、少なくともこの標目の一覧表の開示ということに私は直ちに踏み出していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(柳田稔君)

 民主党の提案は尊重いたします。ただ、関係者の名誉とかプライバシーに与える影響とか、検討しなければならない問題点もありますので、この辺も十分考慮して検討したいと思います。

井上哲士君

 プライバシーとかいう問題は、その標目を見て弁護側が開示請求をした場合に最終的に裁判所が判断していくわけですね。ですから、標目の開示には私は今のことは全くできない理由にならないと思いますけれども、刑事当局、どうでしょうか。

政府参考人(西川克行君)

 まず、証拠の標目の開示ということについて、平成十六年の改正の際に相当議論がなされたと聞いております。

 その議論の中身というのは、まず供述調書、鑑定書、証拠物といった証拠の表題だけが記載された一覧表、これは開示してもそれほどの意味はないのではないか。それから、証拠の内容や要旨まで記載した一覧表を開示するとすると手持ち証拠をすべて開示するのに等しいということで、そのときに導入された類型証拠等の証拠開示のルールと異なってくるのではないかと。それから、手持ちの全証拠について一覧表を作成させると、特に内容を要旨まで記載した一覧表を作成させるということは、これ証拠物、証拠書類一式すべてということになりますと捜査機関の負担を相当過重にすると。現実的に見て妥当ではないということで結局採用されなかったと、こういうふうに認識をしております。

 ちなみに、刑事訴訟法で、裁判所は検察官に対して、指定する範囲に属する証拠の標目を記載した一覧表の提示、これを命じることができるというふうにされているわけですが、この一覧表については何人にも閲覧、謄写させることができないとされているということでございまして、限られた範囲の証拠の一覧表であっても開示による弊害が生ずるおそれは避けられないと考えられたということによるものでございまして、手持ち証拠すべての一覧表を開示するということについてはこのような弊害についても考えなければならないということでございまして、現行制度の運用、これを踏まえつつ、その必要性等関係者の名誉、プライバシーに与える影響そのほか問題点を十分考慮して検討する必要があると考えております。

井上哲士君

 私も当時法務委員会でしたのでその議論は参加をしておりますけれども、そういう理屈がありました。しかし、現実にどうなっているのかということがあるわけで、今の答弁よりも私は民主党案の提案理由説明の方がよっぽど説得力があると思いますので、これ是非大臣、検討会議の中でも議題にしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(柳田稔君)

 今回の検討会議を立ち上げた理由はもう皆さん御存じのとおりでありますので、検察の全般的なこと、そして抜本的なこと、議論をすることになるだろうと思っています。井上委員がおっしゃった点についても、必要に応じて検討の対象になるんだろうと思っております。

井上哲士君

 前回の質疑で、検察の言わば横暴を許してきた背景に裁判所の責任もあるということを申し上げました。この間指摘した点ともう一つ、法廷での供述と検察の調書が食い違った場合に、検察側の調書を採用して有罪と認定し続けてきた、こういう裁判実務があるんじゃないかと、こういう指摘もされております。

 元裁判官の木谷明氏が、朝日新聞のインタビューで、捜査の内容に疑いを持たず、持ったとしても深く調べず、検察が描いた筋書どおり事実認定しているだけの裁判官は少なくないと、チェック役を果たさず検察を増長させてきたという意味で裁判所の責任も重いと元裁判官の方が述べられておりますが、こういう指摘、どう裁判所は受け止めていらっしゃるでしょうか。

最高裁判所長官代理者(植村稔君)

 御指摘の検察官調書を含めまして、証拠の評価というのは大変難しゅうございます。証拠能力、それから証明力、いずれにつきましても慎重な検討が必要であるということでございます。

 まず第一の証拠の採否、証拠能力の問題でございますが、一般論としてのお答えになりますが、裁判所といたしましては、今後とも事実認定における証拠の重みというものを肝に銘じまして、弁護人の御主張、これも出していただくわけでございますが、弁護人の御主張にも十分耳を傾けまして証拠能力の要件の吟味というものを慎重にやっていかなければいけないというふうに考えております。

 それから、採用することもあるわけでございますが、採用した場合にも、その内容、それ自体の内容を慎重に吟味するとともに、客観的証拠がどうなっているか、それとの対比も十分に見る必要があります。

 さらに、繰り返しになるかもしれませんが、弁護人の御主張も当然あるでございましょうから、それにも耳を傾けまして、証明力の評価につきましても慎重に検討しなければならないというふうに考えております。

井上哲士君

 結果として誤判が起きております。そして、例えば最高検は死刑三冤罪事件についての検討委員会というものをつくられました。果たしてどう生かされているのか、公表もされていませんので問題はありますが、しかし最高裁としてはこういう検討をどうも行っていらっしゃらないようなんですね。もちろん、裁判所の独立という問題はありましょう。

 しかし、例えば日弁連は今年の三月に、公的機関としての誤判原因を究明する調査委員会を設置すべきであると、こういう意見書も出しておられます。誤判発生の原因を明らかにし、この刑事司法制度の運用について改善すべき点を検討すると、こういう提案もされておりますが、こういう誤判の検証をするような、原因を究明する第三者機関の設置については最高裁はどうお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(植村稔君)

 お答えをいたします。

 まず、委員御指摘の再審事件についてのところからちょっと御説明をさせていただきたいのでございますが、委員も御発言になりましたように、裁判官の職権行使の独立という観点から、最高裁の事務当局として個々の事件について当否の判断をするということになりますと問題が生ずると考えております。

 ただ、委員も御承知のとおりと思いますが、最高裁に司法研修所がございまして、この司法研修所では裁判官に委嘱をいたしまして司法研究というのを行っております。こうした司法研究の中には、例えば昭和六十三年に提出されました「自白の信用性」と題するもの、それから平成四年に提出されました「情況証拠の観点から見た事実認定」と、こういったものがございます。

 こういった裁判官の研究におきましては、御指摘になられました財田川事件、免田事件、松山事件、そのほかの再審無罪事件もございますが、こういった事件、各審級ごとにどんな判断がされたのか、問題点はどうだったのか、その辺も研究の対象となっておるところでございます。

 それから、二つ目の第三者の調査委員会の点でございますが、組織、権限などが分かりませんので発言は控えたいと思いますが、ただ、公的な機関が具体的な事件を対象にいたしましてその審理の検証を行うということになりますと、やはり憲法上認められた裁判官の職権行使の独立という観点から問題が生じかねないと思っております。したがいまして、慎重な御検討をお願いしたいと思っております。

井上哲士君

 時間ですので最後にしますが、昨年の最高裁の国民審査のときに最高裁判事の方に報道各社が共同アンケートを取っておるんですが、この問題を聞いているんですね。例えば、竹内行夫判事は、誤判という結果が確定した場合に何らかの形で検証する必要があり、その際、検証作業への第三者の参加を得ることが望ましいと、こういうふうに回答されておりますし、竹崎最高裁長官は、刑事裁判の本質にかかわる問題として真剣に検討すべきだと考えると。できるだけ広い視点に立って、裁判と科学、技術の在り方全体について建設的な方策を検討することが必要であると。もちろん、裁判の独立ということを考慮した上でということでありますけれども、私は何らかの形でやはりもっと幅広い検証が必要ではないかと思っております。

 最後にこの点で大臣の見解をお聞きして、質問を終わりたいと思います。

国務大臣(柳田稔君)

 余りいい答弁にならないのでございますけれども、先ほどの答弁と同じように、裁判官の職権行使の独立性、関係者の名誉等の保護の観点から慎重な考慮を要するものと私も考えております。

井上哲士君

 時間ですので、終わります。


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