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2010年11月25日(木)

法務委員会

  • 司法修習生の給費制を1年間継続する法案。国民的議論を通じ給費制の必要性が合意なれば再改正をし存続も可能であることを確認。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 給費制を一年間継続させるという法案であります。様々な議論、困難ありましたけれども、この法案、取りまとめられました法務委員長を始め関係者の皆さんに敬意を表したいと思います。

 我が党は、公的な役割を担う法曹の養成に受益者負担主義を持ち込むべきでない、そして経済的な理由で法曹を断念する事態が生まれれば、多様な人材を法曹界に取り込むという、取り入れるという司法制度改革の趣旨にも反するとして、当時、法改正に反対をいたしました。その後、関係者の懸念が現実のものとなり、また法改正時に、必ずしも予想されていなかった事態も生まれました。その中で、法曹を目指す若い皆さん、ビギナーズ・ネットや日弁連、市民からのいろんな世論と運動が広がる中で、今回の改正になったんだろうと思います。

 勝ち組、負け組というお話があったんですが、私はやっぱり若い法曹の皆さんとお話をしていて、司法試験受かって弁護士になったら勝ち組だと、そういう発想で弁護士活動をしたくないからこそちゃんと給費制をしてほしいという、そういう声だったんだろうと思います。

 その上で、まず提案者にお聞きいたしますが、これを一年間継続させるということが必要だと判断した事情、理由について改めてお聞きしたいと思います。

衆議院議員(大口善徳君)

 ただいま井上委員からこの法案に対して賛意の御指摘がございまして、ありがとうございます。

 まず、衆議院法務委員長も答弁いたしましたけれども、本当に最近の法科大学院の志願者が急減しています。平成十六年に比べても、それこそ三分の一になっているんですね。また、平成十五年から見ますと、これはもう四分の一以下になっています。ですから、法曹の志願者が激減しているという、ここをやはり我々がしっかりこの原因を究明しなきゃいけない、こう思っているわけですね。

 その中には当然、例えば法科大学院を修了して、そして合格者が二割と、こういう非常に合格率が低いということもあります。それから、やはり司法試験合格して修習終了しても就職できない人が、例えば今年の七月ですと三五%がまだ内定が出されていない、こういう諸事情もあると思います。それとともに、やはり法曹を目指す人に対する時間的あるいは経済的な負担が非常に大きいと。特に、我々の場合は例えば現役で合格をして、それで修習をしてということがございました。しかし今は、学部を卒業しても二年とか三年とかいう期間が掛かります。そういうことからいきまして、非常にそういう点でも経済的にも負担があると。

 このことも、やはり志願者が急減している要素一つ一つを取っていかなきゃいけない。そのために一年掛けてしっかりと、この財政支援の在り方も、これは政府もまた最高裁判所も当事者としての意識を持って検討していく。また、我々国会も、あるいは立法府の怠慢ということがあったと思います。我々もしっかりやっていく、それによってこの議論をしていく、そして法曹養成制度全体のことにつきましてもしっかり議論をしていく、そのための一年間であるということでございます。

井上哲士君

 給費制が廃止をされた二〇〇四年の改正の際に当委員会で附帯決議を付けたわけでありますが、その中身は、統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることのないよう、また経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことがないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分協議を行うことと、こういう決議を付けたわけですね。

 私は、この決議が実際十分に行われてこなかったということが非常に大きな問題だと思うんです。先ほどありましたように、最高裁が今回給費制の維持を求める日弁連に対して質問状を出されましたけれども、この決議の趣旨からいいますと、やっぱり最高裁や法務省自身がそういうデータをしっかり持っておくべきだったと思うんですね。そういう調査をしてこなかった、そしてまともな検討をしてこなかったということが問題だと思うんです。

 私は、今回のこの一年の延長、継続ということを受けて、最高裁そして法務省自身がそういう実態についての幅広い調査をして検討することが必要だと思いますが、最高裁それから法務大臣、それぞれいかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大谷直人君)

 お答えいたします。

 法曹養成制度に対する財政支援の在り方につきましては、多分に立法政策にかかわるものでありますため、今後政府を中心に検討がなされるものと承知しておりますが、法曹養成の最終段階である司法修習を所管する最高裁判所といたしましても、経済的事情から法曹への道を断念するような事態が生じないように、司法修習生の経済状況等につきましてどういう調査を行うことがデータ収集として適切かといったことについて検討いたしまして、そして関係機関に対して必要な協力をしてまいりたいと、このように考えております。

国務大臣(仙谷由人君)

 先ほどからお伺いしているんでありますが、結局この問題は、とりわけ法曹の場合には、弁護士のみならず、出口は検察官と裁判官の養成ということにもなります。あるべき法曹一元がそもそも実現しておれば、こんな議論にはならないのかも分かりません。

 というのは、先ほど御質問された桜内先生、僕はそれ非難して言うんじゃありませんが、やっぱり国費で留学していただいて、外国の世界でも通用されるリーダーシップになっていただきたいというのが多分今の霞が関人材の外国留学というふうな制度だと思います。つまり、だから法律とか司法の世界の人材養成を、これ裁判官も検察官も含めて、国民の理解の下でどのように税金を使って養成していくのかと。これは、例えば医療もそうであります。皮肉なことに、法律家というか、法曹養成のところで税金を使わないことになった瞬間に、それまでいわゆる無給インターンという制度だった医者の養成のところにお金が入れられるということになったのが多分二〇〇四年だったと私記憶しておるんでありますが、ここはやっぱり改めてこの機会に国民的な議論をしていくと。

 つまり、この法律の世界を、あえて国費を投入して人材養成していくに値する世界なのかどうなのかということを、議論をもう一遍していかなければいけないのではないかというのが最近の私の気分でございまして、政府の中にワーキングチームもできたということでありますから、人材養成あるいは教育という観点から、改めて、この百億という、巨額と思うか、百億程度のお金で人材養成ができるのであれば大いにやるべしというふうになるのか、あるいは百億は高いから五十億で何とか事を済まそうとするのか、その種の議論を大いに闊達に私はやってみるべき価値のあることだと思っております。

井上哲士君

 その上で最後ですが、そういう議論を通じて、やっぱりこの公的な役割を成す法曹の養成については給費制が必要だと、こういう結論になった場合は、この法案自身は一年間の継続でありますけれども、再改正もして、制度自身の存続ということも法律としては排除をされていないと、そういうことを確認をしておきたいんですが、よろしいでしょうか。

衆議院議員(奥田建君)

 井上委員のおっしゃるように、こうであらなければならないという将来のことを断じている法案ではありません。あくまで暫定的な措置として、そして修習生の財政支援、あるいはその以前の、今桜内委員から御指摘のありましたように、ロースクールのところの負担というもの、あるいは修習生を終えて法曹界にデビューしてからの方たちがどういう財政状況にあるのかと。やはり、しっかりとしたデータをお互いに持った上で、国会も含めて、先ほど言った法曹の三者と、そしてまた国会での議論というものを通じてこれからの在り方を決めていきたいというところに対しての暫定的措置であるということを御理解いただきたいのとともに、またそれからの道は皆さんとともに見付けていくんだということを御了承いただきたいと思います。

 なお、付け加えてになりますけれども、人材養成ということに関しても、中期的な視点でしっかりとその在り方というものを、教育のプログラムであるとかそういうことも含めて考えていただきたいということを決議の一つに付け加えさせていただいております。

井上哲士君

 ありがとうございました。


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