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2011年3月24日(木)

法務委員会

  • 外交安保分野の参考人から意見聴取

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、この度の大震災の犠牲者の方への哀悼の意と、そして被災者の方へのお見舞いを申し上げたいと思いますし、今なお救援と復興、そして原発災害を抑えるために奮闘されている関係者に敬意を表するものでございます。

 今回、未曽有の大災害でありますから未曽有の対応をする必要があるわけですね。今までの制度や施策の運用とか法律の範囲内では対応できないことが多々あると思います。ですから、制度に被災者を合わせるんではなくて、被災者の救援と復興のために制度を柔軟に適用するし、それで足らないものは法律自身も変えていくという、あらゆる知恵と力を尽くすという基本的姿勢が必要だと思うんですけれども、その点でまず大臣の御決意を伺いたいと思います。

国務大臣(江田五月君)

 今回の災害は、本当にこれはもうまさに未曽有、我々あるいは我々の先輩も含めて今まで経験したことのない大災害でございまして、これを乗り越えることができるかどうか、これは本当にこの国が今問われている事態だと思っております。

 国民一人一人も本当にオールジャパンという覚悟でそれぞれできることをやっていただきたいし、また私ども国会も、あるいは政府も地方自治体も皆精いっぱい被災者の救援から復興に向けて努力をしていって、そして私は、そういう努力をした暁に私たちは戦後六十年とまた違う日本にたどり着くことができるんじゃないか、そういう言わば希望を持ってここは頑張っていくときだと思っておりまして、委員おっしゃるとおり、既存の制度にもし隘路があるならば、それはもう超法規的とは言いませんが、極力弾力的にその隘路を乗り越え、さらにまた国会も、ここはもう本当に、私が申し上げるとおかしいですが、党派の違いを乗り越えて、やはり国民のために必要な立法がもし出てきたら迅速にやっていかなきゃならぬときだと思っております。

井上哲士君

 新たな対応が求められるものの一つに、先ほど来議論になっている瓦れきの問題があるわけですね。

 阪神大震災のときにもこれがまず最初に問題になりました。あのときは宅地の上に瓦れきがあったわけですけれども、これはまず個人の責任で撤去しろという話になって、とってもできないということで相当国会でも議論になって、これは災害廃棄物ということで自治体が費用も持ってやっていくということになりました。

 今回の場合は津波で流失していますから、自分の土地じゃないところに家財や家や自動車等がとどまっているということの中で、先ほど来ありますように、ほかの敷地にあるような無価値と判断されるものは自治体が処分もできると。一方で、ナンバーの付いた自動車などは一定の保管をするとか、それから写真やアルバムなどについてもできるだけの配慮をしてほしいと、こういうことがありました。

 是非適切に、かつ迅速にお願いをしたいと思うんですが、一方で、ちょっとこれは議論をしていて、聞いて思ったんですが、例えば船とかそれからナンバーの入った自動車とか、場合によってはその後使用できるものがあるわけですね。しかし、個人の力では到底撤去できないというものがある場合にこれはどういう扱いになるんだろうかと。これは保管料とか移動のための費用がどこが持つかということも出てくるんですが、この辺はどんなような検討がされているんでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 これはまさに、今、席を外しておりますが、小川副大臣が座長になった検討会議で検討をしているところで、今日中にも結論、指針を出そうというところでございます。

 ですから、まだ申し上げるのはちょっと早いのですが、物の考え方としては、とにかくその瓦れきの下にまだ御遺体があるかもしれない、あるいは幸いにもまだ救える命があるかもしれない、そういう事態ですので、現場の人がとにかく撤去できる方向にひとついろんな考えを向けていこうということでございまして。

 例えば自動車。それは、かなりぼこぼこになっていてもひょっとしたら修理して動かせるかもしれないと。しかし、ひょっとしたら動かせるかもしれないからというよりも、やはりちょっとこれだけ壊れていたら無理じゃないかなという判断の方にむしろ、どういうか、背中を押せるような、そういう指針にしたらいいんじゃないかなと私は思っております。

 船にしても、それは鉄の大きな船がまさに陸に、しかも人の土地の上にどんと乗っているわけですから、これをどかすといったってどかしようがない。権利者とよく相談をするということなんですが、その権利者が分からない。分かるんですよ、名前は。名前は分かるけれども、どこにいるか分からないというような事態ですから、今。これはやはりもうまさに、緊急の避難措置として一定のことを行政が思い切ってやらざるを得ないんじゃないかというような頭で今指針を作っているところでございます。

井上哲士君

 まさに、救援と復興を第一に考えつつ、そういうのが例えば権利者の後から負担になったりとかならないように是非お願いをしたいと思います。

 それから、先ほども戸籍の問題が出ておりました。

 南三陸町の場合は幸い再製が可能だということなんですが、自治体機能がかなり傷んでいる中で直ちにデータは残っていても抄本など出せないところがあるのではないかなと予想するんですが、そういうところの場合も結局、全ての全国の法務局で対応ができるということでいいんでしょうか。

 例えば、これから選挙があるわけですが、抄本を、例えば遠くに戸籍があって郵送でやったらその町の自治体機能がないというときなどは直接法務局にお願いするということもあるのかなと思うんですが、その辺の対応はどうなんでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 おっしゃるとおり、自治体機能が消失していて大変困難を来しているのは事実で、現在、戸籍の正本が滅失した、そういう自治体では、市、町ですが、再製できるまで戸籍の正本がありませんし、また、庁舎が津波で流されるなど、人的、物的に体制が不十分でコンピューターシステムを設置することもできないというようなことがあるのは事実で、戸籍の証明書の発行を行うことは非常に困難になっております。

 そこで、戸籍の再製ができるまでの間の対応として、当該市、町の状況に応じて、法務局又は市、町において、法務局が保存している戸籍の副本データに基づいてパソコンによる戸籍の副本に係る証明書、行政証明、これを発行するということにしております。

井上哲士君

 次に、法律相談の問題です。

 阪神大震災のときも弁護士会や司法書士会の方が随分取り組まれました。借家関係から、隣の家が倒れかかっているなど、土地工作物責任に関する相談とか、住宅再建に関する制度の紹介、それにとどまらず、いろんな生活上の相談とか心のケアなど、多様にわたる相談を受けたということをお聞きしています。

 当時の司法書士会のいろんな経験をまとめたものを読んだんですが、やっぱり大変な御苦労があるんですね。今回、政令適用を検討されている罹災都市借地借家臨時処理法も、関東大震災の後に作られたもので、ほとんどそんなものの存在も皆知らなくて解説書も何もないと。昭和二十一年の制定当時に作られた解説書が国会図書館にあって、そのコピーを取り寄せてまず勉強から始めたとか、随分御苦労をされております。

 やはり、今回も非常に広範囲な被害で、幸い軽度のところは、これからどうするんだろうかということで今からの復興にかなり関心が来ているということがあると思うんです。神戸の場合も、十日後からもう生活相談、法律相談始めたというわけですね。

 日弁連も電話相談を始めたということですが、そういう過去の経験なども生かして、そして、しかも今回は法テラスがあるという新しい条件もあるわけですから、かなりきめ細かな法律相談をやることが求められていると思うんですね。現場における出張相談も含めてやることが必要だと思うんですが、当然、法テラスなどの特別の予算とか体制も必要だと思いますし、それから、弁護士会や司法書士会を始めとした関係団体に例えば集まっていただいて、どうやっていくかというような相談も要ると思うんですが、この辺はどのような計画になっているでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 計画というところまではまだ具体的には行っておりませんが、当然、委員御指摘のような要請がこれからずっと出てくると思います。法テラスは精いっぱい法律相談、民事法律扶助あるいは情報提供などを行っていく覚悟でおりますし、これもオールジャパンで取り組んでいきたいと思っておりますが、そのために予算措置も必要になってくるだろうと思っております。

 ただ、今の、例えば罹災都市借地借家臨時処理法の適用についても、とにかく今はどこがどこだか分からないという状態で、どこの土地に例えば借地権があるようにするかといったことが、まだとにかく瓦れきをどけてみないと分からないという状況ですので、これは罹災都市借地借家臨時処理法は区域を指定していくわけで、その指定の手続などが先行していかなきゃいけないので、今は検討するという気持ちでおるというところまでしかまだ言えないのが現状でございます。

 是非、これは御期待にこたえるように、御心配のないように頑張っていきたいと思います。

井上哲士君

 それこそ地形が変わったところもあれば、例えば千葉などは液状化現象で家が傾いているとかというのがあって、かなり法律相談のニーズと現状が違うと思うんです。ですから、その辺、きめ細かく見てやっていただかないとと思うのと、これ例えば、阪神のときには、これは司法書士会の皆さんが阪神・淡路大震災の法律相談百問百答というパンフ、本を出されて、非常にきめ細かくやっておられます。その後、中越震災なども含めて、いろいろ経験も蓄積されていると思うんですが、こういう分かりやすいパンフレットとか、そういうものを被災者向けに法務省なり法テラスなどで発行することも検討すべきだと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 御指摘を受けて、検討していきたいと思います。

井上哲士君

 なかなか電話相談というのは、取りあえず不安で掛けて、落ち着くというのはあるようですが、やっぱり面と向かってやることとか、やっぱり文書でちゃんとやるということがだんだん必要になってきますので、是非お願いをしたいと思います。

 それから、今後、民事調停事件の増加等が予想されまして、被災者の方ですから民事扶助の利用の拡大というのが予想されます。これ、阪神大震災のときは利用が相当増えたと思うんですが、これはどういう状況だったでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 法務省において、平成七年の七月から三か年、当時は法テラスはありませんでしたので財団法人法律扶助協会、そして近畿弁護士連合会と共催で阪神・淡路大震災被災者法律援助として法律相談とか、あるいは示談交渉等の援助とか、あるいは訴訟、調停の援助を実施をいたしました。

 数字はここにありますが、平成七年度に訴訟、調停援助が千百四十九件、示談交渉等の援助が二百二十四件、被災者法律相談が一万二千四百四十三件などなどとずっと続いて、平成十年度まで行いました。平成七年度の被災者法律援助のための補助金は約三億三千四百万円と、八年度も同程度、九年度からずっと下がっておりますが、そういうような対応でございます。

井上哲士君

 今回は被災者の数、そして被災地の広さからいいましても相当の利用が予想されると思うんですが、これも今後、補正予算などでこの民事法律扶助の予算拡充が求められていると思いますが、この点はどうお考えでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 これは当然膨大な金額になると思いますが、まだ積算などできる状況じゃございませんが、財務当局とはしっかり相談をしていきたいと思います。

井上哲士君

 もう一点、今後のインフラの復旧や建物の復旧、再建において、やはり土地の境界を画定するということが必要になるわけですが、先ほども議論ありましたように、地殻変動を原因とするこの土地境界の移動ということが起こっておりますから、状況を現地で見て、そして既存の登記所備付地図との照らし合わせなどをして適切な処理をするという、これも大変な作業かと思うんですが、この辺の予算措置や、また関係団体との協力などはどういうお考えなのか。また、当然登記に関する仕事量も相当増えてくるわけでありますけれども、この辺の体制的手当も必要かと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 おっしゃるとおり、もう繰り返しませんが、本当に土地が動いていたり陥没していたり、どこがどこだか分からないという状況で、まずは現状把握のために被災状況の調査、あるいは被災者からの土地の境界に関する登記相談などのそういう対応をしていかなきゃなりませんし、登記所備付地図がある地域については、これは関係省庁と連携をして測量による地図と現地の照合などを行っていかなきゃなりませんし、精度の高い地図がない地域は、今度は残っている境界標とかあるいは目印になるものと公図や地積測量図によって境界を画定をしていかなきゃなりませんし、そうしたことを行う専門家が、司法書士とか土地家屋調査士とかいろいろおられますので、そういう皆さんともしっかり緊密な相談をしながら、また関係省庁と協議も行っていかなきゃなりません。

 いずれも予算措置も伴うことでございますが、まだ積算などというところまで行っておりませんので、精いっぱい相談をしながらやっていきたいと思います。

井上哲士君

 救援などが一段落したころに、次の希望を与える上で大変法務省の仕事というのは大事だと思うわけで、是非抜かりなくいろんなことを進めていっていただきたいと思います。

 震災の関係はこの程度で、若干あと個人通報制度についてお聞きいたします。

 所信の中で、国際社会に向かって国を開くという点でも意義のあることというふうに述べられました。そして、導入を見据えて、通報事案への具体的対応の在り方や体制整備等について関係府省とともに検討を進めてまいりますと、こう述べられたわけですが、国を開くという点でもというふうに述べられたんですが、やはり国民の人権を守るということが私は一番の中心だと思うんですが、その点でのこの通報制度の、個人通報制度の意義について、大臣のまず御所見を聞きたいと思います。

国務大臣(江田五月君)

 個人通報制度は、国際社会の中に人権関係のいろんな委員会、組織があるわけですよね。そこに国内の救済を尽くした人は駆け込んでもいいですよと、答え出しますよというそういうシステムが国際社会にできているので、そういうところと日本、我が国とのつながりを付けていく。それによって、一人一人、我々はもちろん国内で救済システムは完全にできていると思いますけれども、しかし、それぞれ、いや、これでは自分はまだ救済されていないと思う人がいて、国際社会はそれは窓を開けているわけですから、そこへ出ていくことが個人の権利利益の救済にもつながるし、同時に、国際社会から見て、日本というのはそこまで人権保障を国際社会のシステムの中で徹底させた国だということで評価されるようになっていくので、そんな観点から、国際社会に向かって国を開くという表現を使わせていただきました。

井上哲士君

 昨年六月の質問主意書に対する答弁書を見ますと、この問題で、我が国の司法制度や立法政策との関係で問題が生ずることはないかという観点などから検討するとありまして、この我が国の司法制度との関係で問題が生ずることはないかという言い方は、前政権時代に司法権の独立に問題が生ずるおそれがあるということを散々言われたことと重なってくるようにも見えるんですが、これは日本の司法制度と相入れないと、こういう意味ではないということで確認してよろしいですね。

大臣政務官(黒岩宇洋君)

 お答えいたします。

 今、私の下でこの個人通報制度の導入に対する検討を行っておるところで、その点からお答えしますけれども、今、井上委員が御指摘のように、この個人通報制度の導入自体が我が国の司法制度と相入れないという、そういう意味ではございません。これでしたら非常に消極的な話でありますので、決してそういうことではなくて、やはりこの委員会の見解と国内の確定判決の内容が異なる場合が想定されますので、じゃその場合には具体的にどうやって対応していくのかということを今現在検討する、そのことが必要であるという趣旨でこの質問主意書の答弁書は書かせていただいておりますということを御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 導入を見据えというのが大臣の所信であったわけですから、前向きの検討はされていると思うんですが、ただ一方で、なかなか検討検討という中で進行がよく見えてこないというのも実態なわけでありますが、民主党のマニフェストにも明記をされていたことでありまして、どこまでその検討が進んでいるのか明らかにしていただきたいと思います。

大臣政務官(黒岩宇洋君)

 今までは外務省の下、外務省主催の下にこの個人通報制度関係省庁研究会という、これいわゆる官僚、事務方の研究会を開いておったんですけれども、この度、私の下に政務レベルということで、この個人通報制度の導入する際の様々な検討もしっかりと責任を持ってしていくという今状況がつくられております。そして、外務省も主体的に今この問題に取り組んでいますので、外務省の政務官とも逐次、今意見交換や情報交換をしていると。

 先ほど申し上げましたけれども、いざ導入する際に様々な省庁、様々な法律にいろんな問題が生じるかもしれない、委員会から勧告受けるかもしれない、こういったかなり今精密な詳細な場合分け、想定をしまして、それに対する対応を一歩一歩、今構築しているという状況でございます。

井上哲士君

 政務レベルでという御答弁だったんですが、法務大臣を千葉大臣が退かれたときに、この問題で、法務官僚が司法権の独立の問題で渋ることはなかったが、いろいろと細かい問題を見付け出そうという傾向はあったと、議論は出尽くしていると、あとは政治家が決断するしかないと、こういうふうに振り返っていらっしゃるわけで、是非、政務レベルでの検討をされているということでありますが、政治家としてのやっぱり大臣の決断とリーダーシップが求められていると思います。是非その御決意をお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 千葉大臣の思いを体して、是非導入に向けて頑張っていきたいと思っております。

井上哲士君

 本当に多くの皆さんが期待をされ、そしてマニフェストにも明記されていたことでありますから、一刻も早い実現を願っているわけでありますから、その点での一層の御努力を求めまして、質問を終わります。


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