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2011年6月16日(木)

法務委員会(2回目)

  • 東日本大震災被災地で相続の熟慮期間を延長する法案の質疑

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 被災地の生活の実態などを見ればこれは必要なものでありまして、賛成でありますし、提案者の御苦労を多としたいと思います。

 この法案は、八月末には被災者の生活が安定するという前提で、九月から三か月間の熟慮期間を設定するという考え方にし、一律十一月三十日まで延長ということになっております。ただ、相続財産を確定するには、被災土地の公的な復旧がどうなるのかとか、債務の免除に関する立法措置がどうなるのかとか、また原発被害に対する補償など様々な問題が解決いたしませんと、相続する財産に一体どれだけの価値があるのかどうかということも確定しないという状況もありますし、生活についても果たして八月末に本当に安定するのかというのは、是非希望はしたいんですが、かなりいろんな問題があろうかと思うんですね。

 そういう点でいいますと、前提である八月末のそういう生活の安定というものが必ずしも確定をしないという中で、十一月三十日までの延長というのが果たして妥当なのかと、もう少し長くしてもいいんではないかという思いもあるんですが、まずその点いかがでしょうか。

衆議院議員(法案提出者 衆院法務委員長代理 辻惠君)

 既に別の先生からも御質問あった点だというふうに思います。やはり一番の眼目は、被災地におられる相続人の方々が、相続の放棄をするにしても限定承認するにしても単純承認するにしても、判断をするというその精神的な余裕がないし、それどころではないという状況を、やっぱりそこに焦点を当てて救済の方法を考えるべきであろうというところに第一の問題があるというふうに思っておりまして、そういう観点で、取りあえず一応の生活のそこそこの状況の安定というのが、仮設住宅がおよそ完成するだろう八月末が一つの目途として考えられるのではないかと。

 おっしゃるように、債務の免除の立法措置の問題とかそういう問題は更にその後に生ずることになるかもしれませんけれども、他方で、法律関係の早期の安定というのも要請、趣旨としてございますから、利益衡量の点として八月三十日というのは相当程度の妥当な線として許容される範囲内ではないかというふうに思います。

 いずれにせよ、熟慮期間が八月三十日まで延びて、なおもっと熟慮したいということであれば延長の申請ができるわけでありますし、被災者の方は全国に避難されておられますから、こういうそもそも立法がなされたということもなかなか御存じでない方もいらっしゃいますので、各地域で被災者の皆さんを受け入れておられる全国で自治体がいらっしゃいますから、そういう自治体にも周知徹底を図るように、法務省の方からもしっかりと図ることが併せて重要なことなのかなというふうに考えます。

井上哲士君

 十一月三十まで延長した上で、そこから先は個別の延長の申請というやり方があるというお話、先ほどもありました。

 ただ、相当数それが出てきますと、実務的にも大変混乱もあるだろうし、体制も必要だということも出てくる可能性は高いわけですね。

 実は被災地の地方自治体の首長、地方議員の選挙についても、一旦九月二十二日まで延長をしておりますけれども、実際なかなかそこではできないという状況があって、必要な法的措置はその場合で判断して、場合によっては再延長もあるという附帯決議も付けて通しているという経過があるんですね。

 私は、やっぱりそういう状況もあり得るということは選択肢としてはあってもいいんじゃないかと思うんですけれども、これはどうでしょうか。

衆議院議員(辻惠君)

 確かに、そういう要請も無視できないものであるし、合理的な要請であろうというふうに思いますけれども、まあ熟慮期間を個別に延長していただく中でその幅を相当程度長く設定するように裁判所に申請することも可能だと思いますし、やはり一律に再延長を認めるというのは、法律関係の早期の安定ということとの兼ね合いで、必要とされる実数がよほど大きくなればそれはまた別の考慮も必要かと思いますけれども、ある程度の数にとどまるものだというふうに想定した上でこの法律案の内容で御了解いただきたいなというふうに思います。

井上哲士君

 現時点で確定的に言えることではありませんので、やはり被災者の皆さんの生活の現状ということを第一に今後も考慮いただくことが必要かなと思っておりますし、議員立法でありますので、全体でそういうことは考えていきたいと思います。

 既に法定単純承認となっている場合で、相続人が相続した債務について債権者と話し合った結果、既にもう全額返済したという場合、それから分割返済をして、その返済の途中だという場合、それから返済すると取決めはしたけれども、まだ返済は始まっていないという場合、それぞれについて、これ本法案が施行されたらどういう効果が生じることになるんでしょうか。

衆議院議員(法案提出者 衆院法務委員長代理 階猛君)

 今のケースは、まず法定単純承認となっているということですから、まず三か月は過ぎている話でございます。その上で、この法案施行前に相続人が相続した債務について債権者と話し合って三つのケースに分けて合意が成立しているということでございました。

 それで、既に全額返済した場合、あるいは分割返済を取り決め、その一部を返済した場合、また返済の取決めをしたもののまだ返済をしていない場合というふうに明確に言われましたけれども、多分合意の内容をもうちょっと見ていかないと一概には判断できないというふうには思うわけでございますけれども、もちろんその単純承認に当たる場合も当然あると思っています。そうした場合は、今回は熟慮期間の延長は仮にこの法律が通ったとしてもありません。

 また、一部を返済したというような場合であって、これは相続財産の処分ということになりますから、これも単純承認と同様、この法案が通ったとしても熟慮期間の延長はないというふうに御理解いただければと思っております。

井上哲士君

 一応取決めはしたけれども、まだ返済は始まっていないという場合はどうでしょうか。

衆議院議員(階猛君)

 例えば、取決めはしたけれども、私が申し上げたような単純承認にも相続財産の処分にも当たらないケースがあるんではなかろうかという問題意識だと思うんですが、具体的にそのようなケースを想定してみますと、相続人の固有財産を原資とする返済又は返済の取決めであるが第三者弁済と認められる場合、これは相続とは切り離して考えるべき返済でありますから、この法律が施行されたとしても変更の効果は生じないということであります。

 また、次のケースとして、相続財産を原資とする返済又は返済の取決めであるが、相続財産の管理としてなした場合、これも限定承認や相続放棄とは切り離して考えるべき弁済でありますから、この法律が施行されたとしても変更の効果は生じないということで、これにつきましては、この延長法案が通れば延長はなされるということになります。

井上哲士君

 分かりました。

 関連して若干聞くんですが、金融庁に来ていただいておりますが、この同じ三か月という区切りで被災者に不安を与えておりますのが、債務の支払が遅れて、それがいわゆるブラックリストに掲載をされるという問題です。多くの場合は、入金予定日から三か月以内に何の返済もないと、この信用情報上、延滞情報の登録がなされてしまって、そうなりますと、その後、事実上融資が受けられなくなるという事態になりまして、大変大きな制約があります。

 ただ、東日本大震災という未曽有の災害の中で、家族も住宅も仕事も自動車も失ったというそういう多数の被災者が、既存の債務の支払が遅れて、返済のめどが立つまで一定期間が必要になるという状況がある中で、返済が遅れたからといってそういう延滞情報に登録をされて将来のいろんな生活や仕事に困難が生じるというのは、やっぱり不合理だと思うんですね。それは、やっぱり本人だけではなくて地域全体の復興にも妨げになると思います。

 今、金融機関については、返済そのものも含めて一定の運用上の配慮がされておると聞くんですけれども、まず、それはどういう状況になっているでしょうか。

政府参考人(金融庁総務企画局審議官 森信親君)

 お答え申し上げます。

 個人信用情報の取扱いに関しましては、全国銀行協会では本年三月二十三日に、今般の大震災を起因とした延滞等の事故情報は、当面の間、全国銀行個人信用情報センターへの登録を行わないなど、被災地域の顧客が不利益を被ることのないよう十分留意する旨を会員金融機関に対して通知しております。民間金融機関においては、これを踏まえまして、顧客の被災状況等に十分配慮した対応を行っているものと承知しております。

井上哲士君

 先ほどの遅延損害金のと同じことになるんですが、当面のところ配慮されていて登録は行われていないということなんですが、しかしこれでは非常に安定性に欠けるわけですね。

 本来、やっぱり債務者には何の責任もない問題で返済不能に陥って、しかもいまだに復旧復興の見通しが立たないという状況を見ますと、やっぱり復旧復興が軌道に乗って生活再建の見通しが立つまでは、こういう延滞情報登録、ブラックリストに載せないということを、やはり政府として民間任せにせずに、指導なり立法措置なり要請なりするべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(森信親君)

 我々としましては、地震発生当日の三月十一日に金融担当大臣と日本銀行総裁と連名で、被災者の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずるよう民間金融機関に要請を行っておりまして、先ほど申しました対応もこうした要請を十分に踏まえたものとなっていると認識しております。

 委員御指摘のとおり、今後のことでございますが、我々としましては、ローンを抱えた被災者のやはり生活再建というものが何より重要ではないかと思っております。現時点におきましては、金融機関は債務者の元本とか利子の支払猶予など被災者の便宜を考慮した対応を行い、そのローンを延滞としない旨の努力を行っているものと思います。

 今後、生活再建の具体的展望が明確になる段階で、既存ローンの返済、それをどうするかということの検討も進んでいることになると思われますが、我々としましても、現在、金融機関が行っている取扱いが時期尚早に変更されまして、被災した債務者が大きな不利益を被ることのないよう注視してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 注視ということではなくてしっかり働きかけて、現実にやはり被災者の皆さんが救われるということで努力していただきたいと思います。

 最後、一点だけ。この間、法務、司法の分野での被災者支援を求めてきたわけですが、法律相談とか民事法律扶助の柔軟な運用など、その一つとして民事調停の申立ての手数料の減免ということも求めてまいりました、先ほどもちょっと答弁の中でありましたが。これが一体どうなったかということと、あわせて、二次補正の策定というのが指示をされております。一次補正に法務関係はなかったわけでありますが、法務大臣としてはどういうことを求めていこうとお考えか、併せてお尋ねして、質問を終わりたいと思います。

国務大臣(法務大臣 江田五月君)

 民事調停については、今年六月一日公布、施行されました平成二十三年東北地方太平洋沖地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の一部を改正する政令という政令を出しまして、民事調停の申立て手数料を免除する特例措置を既に実施をしているところでございます。

 この措置は、この東日本大震災に際し、災害救助法の適用地域、ただ東京都はちょっと除かせていただいておりますが、その地域に住所、居所、営業所又は事務所を有していた者が大震災に起因する民事に関する紛争について三月十一日から平成二十六年二月二十八日までの間に民事調停の申立てをする場合に適用されるということでございまして、既にスタートをしております。

 なお、二次補正につきましてはまだ議論が始まったところで、これから十分に検討させていただきたいと思います。

井上哲士君

 終わります。


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