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2011年5月18日(水)

決算委員会

  • 武器輸出三原則の形骸化問題で質問。自民党時代に共同開発は例外として進めるミサイル防衛システムを、第3国へ輸出されようとしていることを明らかにし、抜け道を広げるのではなく、三原則の厳格な実施を求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、外務大臣に武器輸出禁止の三原則の問題についてお聞きいたします。

 この三原則は、憲法の平和主義にのっとって、国際紛争を助長しないために一切の武器や武器技術の輸出をしないということを衆参の両院の決議で内外に宣言をし、国是としてまいりました。一九九一年に当時の中山外務大臣が、武器輸出三原則で国際平和のために一切武器を輸出しない、これが日本の国是であると、こういう答弁もされておりますが、外務大臣もそういう認識でよろしいでしょうか。

国務大臣(外務大臣 松本剛明君)

 武器輸出三原則の意義はよく理解をいたしておるつもりでありますし、国際紛争などの助長を回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであると考えておりまして、この基本理念をしっかり堅持することが大切であると思っております。

井上哲士君

 平和国家としての基本理念に基づく、まさにこれが国是だということであります。

 自民党政権時代に、国是と言いながら様々な抜け穴が付けられてまいりました。例えば、八三年の中曽根政権のときに米軍への武器技術供与は例外扱いにいたしました。それから、二〇〇四年、弾道ミサイル防衛について、技術供与だけではなくて、日米の共同開発、生産も三原則の対象外にいたしました。

 そこで、防衛大臣にお聞きするんですが、このミサイル防衛について、九〇年代から今年度まで、日米の共同技術研究を含む日本側の関連経費の総額を初度費も含めて明らかにしていただきたいと思います。

国務大臣(防衛大臣 北澤俊美君)

 お答え申し上げます。

 これまでのBMDに関する予算については、弾道ミサイル防衛用誘導弾技術の研究として百五十六億円、BMDシステムの整備として八千八百八十八億円、並びに平成二十年度以降の初度費として六百三十四億円を計上しており、その合計は九千六百七十八億円となっております。

 なお、また平成二十三年度予算においては、BMD用能力向上型迎撃ミサイルの開発を含め、BMDシステムの整備に約四百七十三億円を計上をいたしております。

井上哲士君

 今のを合計いたしますと一兆円を超えるわけですね。

 前政権はこの計画が純粋に防衛的だということで共同研究開発に参加をしたわけですが、これは、アメリカが本土への反撃を恐れることなく先制攻撃ができるようにするという点でいいますと、大変攻撃的なものだと思います。

 三月三十一日のアメリカの下院の委員会でオライリー・ミサイル防衛局長が証言をして、日本の防衛省に書簡を出したということを明らかにしております。それによりますと、この日米が共同開発をしているSM3ブロックUA、このミサイル防衛計画のものでありますが、開発から生産段階に移行させるための取決めを日本に求めたという、そういう書簡を出したことを明らかにしております。

 ロイターの報道と照らし合わせますと、一月三日に高見澤局長あてに出された書簡だと思われますが、この書簡に日本はどういう対応をしているんでしょうか。

国務大臣(北澤俊美君)

 まず、三月三十一日の米下院の軍事委員会でオライリー・ミサイル防衛長官から、SM3ブロックUAをどのように生産するか、またどのように作業分担をするかなどの点について早期に合意できるのであれば非常に有益ではないかといったまず発言があったことが一つの前提でありまして、さらに、SM3ブロックUAについては、昨年十二月に閣議決定された新中期防において、生産・配備段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずることと我が国としてはされておるわけでありまして、また、本年一月に行われた日米防衛相会談においては、日米共同開発中のSM3ブロックUAが生産・配備段階に移行する場合に備え、第三国移転など今後の課題について日米間で検討していくこととしたところでありまして、これらを踏まえて国内での検討や米側との調整を現在進めておるところでありまして、また書簡については、ミサイル防衛の分野において平素から日米間では様々な協議を行っておりますが、米側との関係もありまして、この書簡についてこの場で明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 いつも相手の関係があると言われるんですが、向こうは議会で証言をしておりますし、この書簡のコピーをロイターは入手をしているということも報道されておりまして、なぜ日本の国会で明らかにできないのかなと思うんですが。

 第三国移転のことは後ほど聞きますが、このオライリー局長は、あるサイトでこのSM3ブロックUAに触れまして、第三国への販売や提供が保証されていないとコスト上昇や生産力の過小評価のリスクが増えると、こういうふうに発言をされております。

 そこで、聞くわけですが、二〇〇六年六月の日米交換公文で、この共同開発をした迎撃ミサイルについて、日本の事前同意のない目的外利用や第三国移転については禁止をすると、こういうふうに明記をされていると思いますが、これで間違いありませんか。

国務大臣(北澤俊美君)

 お答え申し上げます。

 このSM3ブロックUAに関する武器あるいは武器技術については、対米武器及び武器技術に関する交換公文、今お話しになりましたように、これに基づいて我が国の事前同意なく目的外使用及び第三国移転ができないということにはっきりさせていただいております。

井上哲士君

 明確に協定をしておるわけですね。

 そして先ほど、一月の日米防衛大臣の会談でこの第三国移転についても話があって、検討していると、こういう答弁がございました。つまり、まだ結論を出していないということなわけですね。この第三国移転というのは自民党政権時代にもまだやっていないことであります。

 ところが、昨年の十二月の一日のアメリカの下院の軍事委員会戦略軍の小委員会の公聴会でジェームズ・ミラー国防副次官が次のように証言をしております。我々は、現在日本と共同開発を行っているもう一つの別の新しい種類のSM3ブロックUAを導入するつもりであると。そして、二〇一四年に最初の迎撃テストを行い、二〇一八年までに運用を開始する予定である、我々は二十四基をポーランドに配備する計画であると、こういう証言なんですね。

 ですから、日本との同意なしにできないはずなのに、既に二〇一八年という時期、そしてポーランドという国、二十四基という数まで決まっている、こういう発言なんですね。

 いつ日本はこういうポーランドへの配備について日米間で合意をされたんでしょうか。

国務大臣(北澤俊美君)

 このBMDシステムの日米共同開発、生産については、平成十六年の内閣官房長官談話によって、厳格な管理を行う前提で外されておるということはもうお話のとおりでありまして、これについて制度上可能なのかどうかということでありますが、これにつきましては、目的外使用及び第三国移転については、対米武器及び武器技術に関する交換公文、先ほど申し上げましたが、等で我が国の事前同意なく目的外使用及び第三国移転ができないと規定されており、事前同意によって厳格な管理を行うこととしておるわけでありますが、したがって、我が国の同意があれば、逆にこれは米国による目的外使用及び第三国移転は可能であると理解されるわけでありまして、平和国家としての基本理念を踏まえて、個々の具体的なケースに応じて、当該武器を米国に対して供与した趣旨、米側の要請の背景、それから事情等をも慎重に勘案の上、我が国として判断をしてまいりたいということは再三申し上げておるところでありまして、今年中に結論を出していきたいと、このように思っております。

井上哲士君

 ですから、そういう厳格な管理の下に、我が国の同意の下にと言いながら、去年の暮れの段階でアメリカは配備する時期、国、数まで議会で証言しているんですよ。こういうことでいいんですかということを私は聞いているんです。

国務大臣(北澤俊美君)

 これは米側が話しておるわけでありまして、日米の間での協議の俎上にのってそれを今検討しているというところまでは来ておらないわけであります。

井上哲士君

 ですから、厳格な管理と言いますけれども、どうせ日本は合意しますという、それを織り込み済みで、追認するということでどんどん具体的に計画を進めていっているという現状があるわけですね。ですから、一旦その共同開発に加わりますと、こういうアメリカの戦略の中で結局拡散をしていくということを私は示していると思うんですね。

 さらに、今重大な計画がアメリカで進行しております。アメリカ国防総省の国防高等研究計画局が進めているアークライト計画というのがございます。このシステムは、即時地球規模攻撃構想、つまり、地球上のどこにある目標でも通常兵器を使用して即時に攻撃するということを可能にする、そういう構想の一環を成すものというものであります。

 世界中に配備をされているアメリカ海軍のイージス艦とかそれから潜水艦が、防空ミサイル用に備えている発射機を使って、大体半径三千六百キロ範囲内の目標を三十分以内にピンポイントで攻撃する新兵器を目指すと、こういう恐るべき計画であります。つまり、世界中どこでも三十分以内にピンポイントで攻撃できるようにすると、こういう計画なんですね。

 このアークライト計画について防衛省は承知をされているでしょうか。

国務大臣(北澤俊美君)

 お話しのアークライト計画というものが、米国の国防高等研究計画局が公表している資料によれば、アークライト計画というのは、今お話しになりましたように、高速かつ長距離飛翔する攻撃ミサイル研究計画であるということは承知をいたしております。

井上哲士君

 私、ここにアメリカの国防総省の予算書を持っておりますけれども、この中で非常に重大なことは、今申し上げた、世界中どこでも三十分以内に攻撃できるようにするというこのアークライト計画に、日米が共同開発中のこのミサイル防衛計画用のミサイル、SM3ブロックUが言わば運搬手段の一環として想定をされていると。この計画が進みますと、つまり、日本が共同開発をしているミサイルが世界中の目標を即時に攻撃をするという極めて攻撃的なシステムに転用されるということになるわけでありまして、先ほど来言われました、純粋に防御的といって共同研究開発に参加をしたということがこういう攻撃的な計画につながっていく、こういうことになっているんじゃありませんか。

国務大臣(北澤俊美君)

 これにつきましては、先般、衆議院の予算委員会でもこういう御議論、御指摘があったわけでありますけれども、日米の共同開発中のSM3ブロックUAがアークライト計画に用いられるかについて、米国、先ほど申し上げました国防高等研究計画局に確認をいたしましたところ、日本が開発した構成品や技術が同計画において用いられることはない、そういう回答を得ているところでございます。

井上哲士君

 私、予算書を今持っておりますけど、これは明確に書いているんですね。このアークライト計画は、アメリカの二〇一〇会計年度に二百万ドル、そして二〇一一会計年度に五百万ドルの予算を計上いたしまして、この中にSM3ブロックUブースタースタックというのが明確に明記をされているわけでありまして、私は、先ほど申し上げましたように、結局、第三国協定と一緒ですけれども、一旦この共同開発とか研究に加わりますと、こういう形で日本の言わば合意のないままにどんどんどんどんそういうものに組み込まれていく、こういうやっぱり実態を示していると思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(北澤俊美君)

 これは、更に詳細に申し上げれば、米側の回答は、ただいま私が申し上げたような、日本が開発をした構成品や技術が用いられることはないと。その上で、一段目の推進装置であるMK72は米国の単独開発であり、SM3ブロックUAに使用されるものだが、これは垂直発射装置、VLSとの連接性を保持するためにアークライト計画においても使用されますが、二段目及び三段目の推進装置についても米国製を使用する予定であると、はっきりこういうふうに回答されておるところであります。

井上哲士君

 確かに、このSM3ブロックUについてはいろんな段階でそれぞれの開発研究しているとあります。しかし、全体としてやっぱり一体の研究を日米間やっているわけですね。それがやはりこういう極めて攻撃的なものにあえてつながっていくということは、これは私は大変やっぱり重大だと思うんですね。

 結局、技術開発についてはこういう形で抜け道をつくってきたということが、先ほどの第三国供与の問題でも合意のないままに実際にはアメリカではどんどんどんどんそういうことが進められていると、時期も場所も数もそういう証言がされている。私は、こういう拡散をしていくということがやはりあるし、より攻撃にエスカレートをしていくということを示していると思うんですね。そういう点でいいますと、この第三国供与というものはやはりやめるべきだと思います。

 武器の共同開発、研究というものをやめて、やはり厳密に武器輸出三原則を守ると、こういうことが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(北澤俊美君)

 先ほども申し上げましたように、交換公文によって厳格な歯止めを掛けておるわけでありまして、その範囲の中で日米で今様々協議をいたしております。

 ただ、委員がおっしゃるように、武器輸出三原則という大きな枠組みが国民の中に長く平和国家としての基本理念として浸透しているという大きな部分と、今共同開発をして、しかしそれは一定のところで歯止めを掛けておるということの中で十分に理解がされているかというと、私は必ずしもそうではないというふうに思いますので、我々の努力とすれば、そういうところを国民の皆さんになるべく公開をしながら理解を深めて、そしてまた、今御懸念のような日本でつくったものが攻撃的な分野に進出していくということは決して許されないことでありますので、その点はしっかり慎重にやってまいりたいと、このように思っております。

井上哲士君

 最初にも申し上げましたように、このミサイル防衛計画というもの自体が、アメリカ本土が反撃に遭わない、恐れることなく先制攻撃ができるようにするという点でいいますと、私は非常に攻撃的なものだと思いますし、それが歯止めなくいろいろ広がっているということ自体が問題だということを申し上げておきたいと思うんです。

 外務大臣、お聞きしますけれども、私はやはり武器輸出を禁止をした本来の理念が問われていると思うんです。

 これは外務省が二〇〇八年に出した「小型武器と対人地雷」というパンフレットでありますが、この中にこういう記述があるんですね。日本は武器輸出三原則等に基づき、原則として武器輸出を行っていません、輸出を前提とした軍需産業もありません、このため、国際社会に小型武器問題が提起されて以来、国連を中心とする枠組みを通じて国際社会をリードしていますと、こういうふうに書いております。

 武器輸出三原則をしっかり確立しているからこそ国際社会をリードできると、小型武器の問題、この見解は当然外務大臣も支持をされるということでよろしいですね。

国務大臣(松本剛明君)

 先ほども武器輸出三原則は平和国家としての基本理念に基づくものであり、この基本理念を堅持をしていくということを申し上げました。

 その上で、今、この武器輸出三原則、何というんでしょうか、平和国家としての基本理念というものに基づくものでありまして、これが今お話がありましたように、私どもの平和国家としての基本理念を訴える一つになっているということで、小型武器についての問題でリードするということで理解をしていただく一助になっているというふうには思っております。

 同時に、この基本理念を堅持をしていく中で、例えば平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機などの装備品の活用や被災国などへの装備の供与というものを通じて効果的な協力をするとか、今御議論がありましたけれども、国際共同開発・生産に参加をすることで、装備品の高性能化を実現しながらコストの高騰に対応する、コストの高騰ということは、国民の言わば税金の使途にかかわるわけでありますから、これに対応するという国際的な流れをしっかりと、基本理念を堅持しながらこれに対応するということは必要なことであり、また、国際的にも理解をされるところだというふうに考えております。

井上哲士君

 私は、三原則の抜け穴を広げたり、なし崩し的にこれを見直していくのではなくて、しっかりとこの本来の中身を堅持をしていくと、そのことこそが必要だということを改めて申し上げまして、質問を終わります。


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