井上先生の御質問にお答えいたします。
社会奉仕命令というものがアメリカなどで現実に行われておりまして、それも社会内処遇の一環としてかなり注目された時期がございます。アメリカなどの場合には著名な人が公道を掃除したりするシーンがマスコミ、マスメディアで大いに取り上げられて、その一つの効果をもたらしているというような面もございますが、逆にそういった刑罰として、あるいは刑罰に代えて社会奉仕命令を我が国で導入した場合どうなるかという観点からの議論が非常に激しく行われました。
その点で申しますと、これは社会奉仕命令という形で強制的に社会の公然と目の付く場で一定の作業をさせるということがそこでのメーンになるわけですが、これはある意味で一つの社会的なさらしものにするというような側面がございます。そういった意味で、これは当人の人格、これをかなり卑しめるのではないかと、そういうことによって逆にその人もまた傷つくということで、本来の社会内処遇としては適切ではないんではないかと、こういう意見がありました。それと、これもまたプライバシーの問題にもかかわってまいります。そういうマスメディア、公然とやるということになりますから、そういった意味ではむしろマイナスではないかということで考えたわけです。
ただ、これを刑罰ではなくて執行猶予などの遵守事項の一環として、先ほど小林参考人からお話がございましたように非常に効果を上げている面もございます。自分自身が社会で存在意義があるんだということで、その作業を通してそれを実感して、それが更生につながるという面も非常に強いことがございますので、遵守事項としてやるならこれはかなり成果が上がるだろうと。ただ、刑罰として、あるいは刑罰に代えてそれをやるのはよろしくないのではないかという、こういう議論でございました。