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2012年7月26日(木)

法務委員会

  1. 法務局の事務を受託したIA、ATGカンパニー両社の契約解除問題と責任、労働者の雇用の確保等について
  2. 司法修習生の給費制について質問

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 法案に入ります前に、法務局の登記乙号事務を市場化テストにより受託してきたアイエーカンパニーとATGカンパニーの問題について質問いたします。

 両社が様々な違法行為を繰り返してきたということを私は一昨年の十一月以来五回にわたって質問をしてまいりました。ついに法務省は今月の十七日に両社を契約解除にしたわけでありますが、まず、その経緯と対応について当局からお聞きいたします。

政府参考人(原優君=法務省民事局長)

 お答えいたします。

 今委員から御指摘のありました、ATGカンパニー株式会社とアイエーカンパニー合資会社に対しましては、今月の十七日に両社との業務委託契約を解除する旨の通告をいたしました。これは、本年二月に法務大臣から両社に対し、健康保険法等に定める手続の適切な履践等の改善指示を発していたにもかかわらず、今般、この指示に違反して、両社において多額の健康保険料等を滞納している事実が判明いたしましたことから、いわゆる公共サービス改革法所定の契約解除事由に該当すると判断したことによるものであります。

 契約解除後の措置につきましては内閣府の官民競争入札等監理委員会の議を経る必要がございますが、本件につきましては、今月の十二日、同委員会におきまして、近隣県等で登記簿等の公開に関する事務を受託している他の事業者から新たな受託事業者を選定の上、委託契約を締結するという措置をとることが了承されましたので、現在、該当の法務局におきまして当該契約の締結手続を行っているところでございます。

 なお、新たな受託事業者の決定に約一か月程度の期間を要することから、本年七月二日から八月三日までの間は、両社の委託業務の全部の停止を命じた上で国が当該業務の実施をしているところでございます。

井上哲士君

 両社は破産の申立てをしておりますが、五月分の賃金の二割、六月分賃金の全てが未払となっております。労働者の皆さん、大変な不安の中で、今ありましたように、法務省の直接雇用で今法務局で働いていらっしゃるわけですね。

 私は過去の質問の中で、両社が虚偽申告によって保険料などをごまかしているという具体的な証拠も示してただしてまいりました。こういう企業に委託をすることになると、労働者の権利もそうですし、登記乙号事務に対する国民的な信頼も失われるということも指摘をして、契約解除も含めた毅然たる対応をするべきだということも繰り返し申し上げてきましたけれども、結局それは行われませんでした。その結果、この保険料の滞納が累積をする、そして税金の滞納も累積をしてきたわけですね。

 結局、日本年金機構、国税局から差押えを受ける、法務省が払う委託費が差押えの対象になっているという、もう異常な事態ですよ。そして、賃金も未払という最悪と言えるような結果にもなっているわけでありまして、やはりこの間の私は法務省の責任は重大だと思いますが、その点、法務大臣、どうお考えでしょうか。

国務大臣(滝実君=法務大臣)

 基本的に、委員が度々御指摘をされてきたことは、当然この委員会で私も拝聴してまいりました。しかし、そのたびに、言わば社会保険料の未払の問題については担当の部局の方からも督促をするとか、そういうことをずっとやってきたわけでございます。

 今委員の仰せでは、もっと早くこの契約を解除すべきじゃないかということかもしれませんけれども、解除するには法律に基づく要件がありますので、その解除する要件に該当しない限りなかなか解除には動き難い、これがこれまで法務省の置かれた立場でございます。

井上哲士君

 一旦業務停止にしてそれを元に戻した際に、コンプライアンス体制が改善をされたと、こういう評価をしたわけですね。しかし、それ自体が間違っていたということが今回もう明らかになったわけですよ。その後もずっと滞納を続けてきた。

 六月二十九日に両社は解雇通知を出しているんですね。これ、回覧なんですよ。回覧で解雇通知を出して、この度、自己破産のために全ての業務を停止いたしました、よって全従業員の皆様を解雇させていただきます、今まで業務に従事していただきましてありがとうございました、以上ですと。こんなものを回覧で出すような企業が法務省の法務局の業務を委託したということ、それ自体が私は間違いだったと思うんですね。そういうこの市場化テストの法律そのものが問題があったと、そのことも繰り返し指摘をしてまいりました。

 両社で働いてきた皆さんからもたくさんのメールが寄せられておりますけれども、法務省が業務委託している会社がこんなことをするなどまさか思っていなかったというのが多くの皆さんの声なんですね。当然だと思うんです。これまでこの二つの会社で働いてきた皆さんのほとんどが法務省の直接雇用に応じて今窓口業務を担っていらっしゃるので、大きな混乱が起きずに来ていますけれども、もしそうなっていなかったら大変なことになってきたわけですね。

 果たして賃金が払われるのか、そして今後の雇用はどうなるか、大変な不安の中でも、何としても法務局のこの業務をやらなくてはいけないということでやられているわけですから、私はやっぱり、労働者の賃金、今後の雇用の問題について法務省がやはりしかるべき責任を果たすべきだと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

国務大臣(滝実君)

 基本的には、この会社を業務委託したのは法律に基づいて公募という格好でやっているわけでございますから、それに対して法務省がその条件に超えていろんな面からあれこれ言うというわけにはまいらない。これが公共サービスによって委託している一連の手続であることは、委員が元々御案内のとおりでございます。

 その上で申し上げれば、今の段階では取りあえずこの旧委託をしていた二社に雇用されていた人たちをこの八月初めまでそのまま業務をやっていただく、これは直接法務省としてやっていただくと、こういうように当面の措置として切り替えたわけでございますけれども、その後の問題については改めて公共サービス法に従って新たな事業者を決めていくと、こういうことになってくるわけでございまして、それ以上に法務省がこの問題に改めて関与するというわけにはいかない性質のものだろうというふうに思っております。

 こういう事態になったことについては大変法務省としても残念なことでございますし、公共サービス法の言わば限界かというようなことを痛感しているわけでございますけれども、それはそれとして、この問題が法務省の業務にもスムーズに解決しますように、そしてまた、これまで雇用されていた皆さん方が何とかこの不払の問題を乗り越えて円満に解決されますことを心から期待をさせていただいている次第でございます。

井上哲士君

 不安を持ちながら今も現に働いている皆さんがどういう思いを持って今の答弁を聞いたのかなと私は思うんですね。

 一連の経過を見れば、私は、法務省の社会的責任、道義的責任は大変重いものがあります。これを踏まえてしっかりと対応していただきたいと、そのことを改めて強く申し上げておきます。

 法案の方に入りますが、我が党は、二〇〇四年にこの司法修習生の給費制を貸与制に移行する法案については反対をいたしました。公的な役割を担う法曹の養成に受益者負担主義を持ち込むべきでないし、経済的な理由で法曹を断念することになれば、多様な人材を取り込むという司法制度改革の趣旨にも反するという理由からでありました。

 その後、司法修習生の経済的な困難性、弁護士の就職難、それを原因の一つとする法曹志望者の減少などなどの問題が起こる中で、貸与制については一年間延期をして、そして全体の議論をしようじゃないかということになったわけでありますが、結局、設置された法曹養成フォーラムでは、全体の議論がまとまる前に給費制の打切りだけが決められるということになったわけであります。

 法案は貸与制への移行を前提に一定の改正をするものでありますけれども、給費制の打切りという点では変わりませんし、その復活を保証するものではないということで、私どもとしては賛成をできません。

 しかしながら、この維持、復活へということで様々な努力がされてきたということがあるわけで、新しくつくられる合議体も生かしながら、その復活のために一緒に力を尽くすという点では共通でありまして、その立場で質問をしたいと思いますが、修正案では、この合議体で、結論として、給費制の復活も排除しないということが先ほども答弁でありました。衆議院で公明党さんが提出された修正案ではこの検討の間は給費制を続けるという中身であったんですが、私どもこれには賛成という立場でした。残念ながら否決をされ、今回の修正になっているわけですが、新たな合議体で給費制の復活も含めて議論をすると、排除されないということであるならば、その間は維持をするべきだったと私は思うんですが、その点、提案者、いかがでしょうか。

衆議院議員(辻惠君=法案提出者)

 お答えいたします。

 元々、法案の成立の時点で給費制は二〇一〇年まで延長するということに、廃止をそれまで見守るということになっていて、一昨年の改正の時点で昨年十一月まで延長をされたということでありますから、給費制を存続させて議論を深めるというのももちろん選択肢としては十分あり得ただろうというふうに思っておりますし、ただ、全体的な合意が得られない状況の中で、元々貸与制への移行が前提にされていたという現実に踏まえて、適切な経済的措置を早急に抜本的な法曹養成制度全体の見直しの中で図るという、やむを得ない選択として今回修正案を提出させていただいております。

井上哲士君

 全体の合意にならなかったということでありますが、大変残念であります。

 その公明党修正案では、法曹になろうとする者が経済的理由から法曹になることを断念することがないよう法曹の養成に対し適切な財政支援を行う観点からと、こういう文言があったわけですが、これは否決をされて、修正されたものでは、司法修習に対する適切な経済的支援を行う観点からということに変わっておりますが、これはどういう違いがあり、どういう理由からこうなったんでしょうか。

衆議院議員(辻惠君)

 法曹になろうとする者全体についての経済的理由の支援ということと司法修習生に対する支援ということと対比して、前者を否定するという意味で否決されたものではないというふうに私は理解しておりまして、文言上、裁判所法では、司法修習生、修習について規定するというくだりになっておりますので、それに合わせた表現になっているにすぎないものであって、趣旨は全く変わらないものであるというふうに考えております。

井上哲士君

 趣旨は全く変わらないということであります。

 次に、給費制の復活を排除しないと。先ほどやはり提案者から、その際に、遡って、現在貸与制の方にも給費制が実質的に適用されるという方向について、これも排除されないという答弁がございました。法務大臣からは、全員が貸与を受けているわけでもないのでいろいろ難しい問題があるというような答弁はあったんですが、給費制の復活という場合に結果として不公平が生じないようにきちっとした措置がとられるようになると、そういう貸与制を受けた方、受けていない方も含めて、こういうことはきちっと手当てをする必要があると、この点では確認してよろしいでしょうか。法務大臣。

国務大臣(滝実君)

 その辺のところは、要するにこれからの、仮に給費制に戻るとした場合の議論の一つのポイント、そんなに大きなポイントというわけにはまいりませんけれども、一つのポイントであることは先ほども御指摘を申し上げたところでございます。

井上哲士君

 きちっとそういうことを議論をしていくということでありますが。

 この修正案では、経済的支援について、司法修習生の修習の位置付けを踏まえて検討するとされております。その趣旨について、衆議院では提案者から、戦前の分離修習ではなく、戦後の法曹養成については、法曹三者はそれぞれ司法の担い手であり、職業としての法曹は一体であるべきとして統一修習がされてきた、この意義を踏まえるべきだという答弁がございました。

 やはり、国の土台とも言える司法権の強化とか人権保障の観点から、法曹三者を統一して国が養成をするということと、その修習に専念する義務を課すということと、そしてその生活を保障する給費制というのは、私は一体だったと思います。

 私は、弁護士会が、会としても個人でも非常に旺盛に公益活動取り組んでこられたと思うんですね。先ほども議論ありました。個々にいろんな問題を起こす方はもちろんいらっしゃいます。しかし、全体として見れば、大変そういう活動取り組んでこられたと思いますが、やはりそれを醸成してきたのが、一つがこの給費制の意味があると思うんです。

 先日の質問でも、例えば日弁連の少年保護事件の付添援助事業を取り上げましたけれども、それぞれ皆さんが基金に拠出をして、こういうことも取り組んでいらっしゃいますし、東日本大震災の復興活動でも重要な役割をしてこられました。

 私は、いわゆるロビー活動という問題も、現場でいろんなやはり立法上の問題があるということを国会にしっかり届けられるということは、この公益活動の一つとして大変重要な役割も果たしてこられたと思っております。

 こういう給費制が法曹の公共心であるとか強い使命感、その醸成に大きな役割を果たしてきたと考えますけれども、この点は法務大臣としてはどう評価をされているでしょうか。

国務大臣(滝実君)

 その点は、私は実際の経験者じゃありませんから何とも言いようがありませんけれども、そういうような指摘があるとすれば、それはそれなりの役目を果たしてきた、一つの公務員の一形態として自覚をそれによってされた人は、一生涯そういうつもりで法曹として取り組んでくれているというような人があるとすれば、それはもう大きな役割を果たしたということは否定できないと思います。

井上哲士君

 貸与制になった修習生の方のいろんな声なんかも私ども聞くんですが、例えば、大ベテランの先生から、修習のときに国のお世話になって育ててもらったという意識が残っているからいまだに少年事件なんかもやっているんだよなという話を聞いて、自分もそういう弁護士になりたいと強く思ってきたけれども、今現実に貸与制になって、国に育ててもらっているという意識が生まれようがないということを言っているんですね。もちろん、こういう方もいろんなことを通じて公益活動に旺盛に取り組んでいただけるとは私は思っておりますけれども、やはりそういう思いを持たせている、これがいろんな点で今後どういうことになっていくのかなと思いますと、そういう角度から今後議論も深めるべきだと思うんですね。

 同時に、当然経済的な問題があります。衆議院での当時の小川大臣の答弁なんですが、修習中に経済的な支援を受けられるということでは、給費制も貸与制も実質的には同じではないかと、ただ、法曹になったときに、返還できるという経済力を付けた段階ではお返しいただきたいということなんだと、こういう答弁がありましたけれども、私はちょっと現実とは違うと思うんですね。

 現に、先ほどもありましたけれども、貸与制になったということで、司法試験に受かりながら経済的な事情によって修習を辞退をしたという方のお話も直接私は聞く機会もありました。やっぱり実質的に同じではなくて、現に貸与制になったことで法曹の道が遠のいてしまう人がいる、経済的理由でと、こういうことについては大臣はどういう認識でありましょうか。

国務大臣(滝実君)

 貸与制と申しましても、国が全く負担をしないわけではございませんで、貸与制としても返還年限は十年という大変長い時間を設定しているということもあるわけでございますから、貸与制は国が全然何もやっていないんだというわけにはいかないと思います。

 私も学生時代、奨学金を数々受けました。その受けた奨学金の主宰者には今でも感謝をいたしております。そんな状況でございまして、別に給費生として給付を受けたわけじゃありません、ちゃんと後返したんでございますけれども、それでもやはり奨学金を受けたという恩恵は、これは残るんですよね。そういうものだろうと私は思っております。

 それがたまたま公務員に準じた格好で給費生として存在したということが一生涯の支えになっているという方がおいでになれば、それは大変良かったなということは評価しなきゃいけないとは思いますけれども、そういうような国の財政の中でどう考えるかということが、この給費制か貸与制かという議論の中では一つの判断材料としてあるんじゃなかろうかな、しかしこれはここで私が言うことじゃなくて、これから新しい体制の中で十分に議論をして決めていくという、改めて議論していく問題だろうと思っています。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、戦後初めて貸与制で修習を受けている人たちがいるわけですね。そういう人たちに実際何が起きているのか、よく、合議体でもそうですし、法務省としても話を聞いて、特に当面の実費負担の問題など直ちに解決すべき問題があります。そういうことも含めてしっかり対応していただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。


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