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2012年2月15日(水)

憲法審査会

  • 衆院憲法調査会の中山元会長らの参考人質疑--審査会を作らねば立法不作為だとしてきた根拠などを追及

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士でございます。

 最初の御指名とちょっと思っていなかったんであれですが、今日は衆議院の元調査会長の中山参考人にも来ていただきました。ただ、私は、幹事懇談会の場で、当審査会で衆議院の憲法調査会の報告聴取をする必要はないということを主張してまいりました。なぜか。二〇〇七年に参議院で改憲手続法の本会議質疑が行われた際に、自民党の法案提出者が衆議院での審議を踏まえて足らざるところを集中的に審議したらよいという旨の答弁をされました。これに対して各党から、これは参議院軽視だという厳しい抗議の声も上がりまして、議事録削除になったという経過があります。つまり、参議院は独立性、自主性を持った院として独自に議論をするし、衆議院とは違う結論を出す場合もあり得るということであります。

 ですから、これまで各種委員会や調査会でも衆議院が作成した報告書について聴取するようなことは行われてこなかったわけでありますし、衆議院が憲法調査会でどのような議論をしてきたかは必要に応じて各党や各議員がそれぞれ自習をしたらよいのであって、参議院の審査会としての報告聴取は、それぞれの院の三分の二以上で改憲の発議をするとする憲法九十六条の趣旨と矛盾をしますし、また二院制の存在意義を脅かしかねないということと感じております。改めてこのことは申し上げておきます。

 その上で、船田参考人に二点お聞きいたします。

 改憲手続法は、これがないことによって国民の権利が侵害されている、立法不作為だということで成立が強行されました。ただ、その直後の参議院選挙で改憲を掲げた安倍内閣が大敗北を喫しまして、それ以降、四年以上審査会は動かないということがありました。その間、何ら具体的に国民の権利が侵害された、国民が困ったという事実はなかったと私は考えますが、参考人はこの四年余り審査会が動かなかったことによって国民の権利が侵害された事実を具体的に何かあるとお考えか、お願いをしたいと思います。

 それからもう一点は、今、衆議院での三つの問題ということで言われましたけれども、実は参議院で一番大きな議論になったのは最低投票率の問題でありました。提案者からは、憲法九十六条には最低投票率は明記してない、これを要件として加えることは憲法にも反するというような答弁がありましたけれども、一方で、憲法に明記されていない憲法発議に関する両院協議会を定めるのはおかしいじゃないかという議論に対して、私はもう一回議事録を読みましたけれども、事実上答弁不能のような形になったと思いますが、この件については今どのようにお考えか。

 以上、二点お願いします。

参考人(船田元君=前衆議院日本国憲法に関する調査特別委員会理事)

 井上議員にお答えを申し上げたいと思いますが、まず、この四年間、国民投票法の成立のときに、先ほども説明いたしましたけれども、ある意味で政局に巻き込まれる形で最終的な自公そして民主の間の合意ができなかったというのは今でも大変残念に思っております。

 しかしながら、やはり衆議院を通り、そして参議院でも慎重な審議をしていただきまして成立をした国民投票法でございますので、そこに定められた、三年以内に法整備を行うこと、あるいはその三年過ぎたら具体的に憲法改正案を発議するということが可能となる、そういった事態をやはり国会としてきちんとやっていない、そういうことはやっぱり法律的に見ても私は不作為というよりも政治的な責務を果たしていないというふうに考えております。この状態はやはり望ましくないということを改めて申し上げたいと思います。

 具体的に、じゃ、その四年余り議論をしてこなかった、あるいは憲法改正がなされなかったことによって具体的に国民の権利が侵害されているのかどうかと、こういうことですが、これはそれぞれお考えがあると思いますが、私は、具体的ではないんですけれども、例えば、先ほど中山参考人からもお話ありましたように、あの大震災の後、政府としてどういう対応ができたのか、これは、それを批判するつもりは全くございませんけれども、仮に非常事態の法制が憲法によって規定されていればもう少し何か別の対応ができたのではないか、これがやっぱり一つ大きな例として挙げられるのではないかなと考えております。

 また、最低投票率ということにつきましては、これは衆議院でも参議院でも大変長い時間を掛けて議論がございました。そういう中で、やはり最低投票率を設けるということは、既に発議の段階で国会議員総議員の三分の二以上、そして国民の二分の一の、過半数が賛成をすると、こういう条件に加えての加重な条件であると。これは憲法が想定したものではないと、憲法九十六条が想定した条件に更に加えるということは、これは現憲法を履行している中でそれは越権ではないかということを考えたことが一つ。それから、最低投票率を設けますと、どうしても、投票しない、ボイコット、こういうことが組織的に行われる可能性もございます。

 そういったことを排除して、本当に冷静な形で国民の皆さんに議論をしていただき、そして投票していただくためには最低投票率は設けない方が望ましいというのが私どもの意見であり、そしてそのことは国会の中でも議論された結果としてこの最低投票率制度が導入されなかった、こういう意思判断、意思表示をしたものと理解をしております。


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