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2012年2月29日(水)

憲法審査会

  • 国民投票法の18歳選挙権の実現や公務員の政治活動の制限の緩和について政府から検討状況を聴取し、質疑を行った

井上哲士君

 共産党の井上哲士です。

 公務員の政治的行為の制限に関しては、今の説明も、専ら現行国家公務員法を前提に、その適用をどこまで除外するのかという議論であります。しかし、必要なのは、国家公務員が職場と関係ない自宅近くで休日に政党のビラを配布することまで刑罰をもって禁止をするという、国際的にも例がなく、憲法が定める言論、表現の自由にも反する現行の国家公務員法や人事院規則の改定だと思います。

 元々、国公法と人事院規則による政治活動の規制は一九四八年にGHQが押し付けたもので、当時の政府や法務官僚ですら抵抗したにもかかわらず、力ずくで制定されました。その後の情勢の変化によって、一九五〇年制定の地方公務員法では政治活動に対する刑罰規定が外されたという経過が国家公務員と地方公務員で違いが生まれたことの訳です。

 欧米各国の公務員の政治活動を見ますと、原則として刑事罰による規制はありません。そして、公務員の職場における中立性は認めても、職務外の政治活動については自由であり、それを前提にして例外的、限定的な規定にとどめていると承知をしております。

 日本のように広範にかつ刑事罰による規制をしている国は見当たらないと思うのですが、その点、まず人事院に、欧米諸国の中で日本のように広く政治活動を刑罰で禁止しているような国を把握しているかどうか、お尋ねをいたします。

 もう一点。そういう下で国際人権規約委員会が二〇〇八年の十月に、この国公法に基づくビラ配布弾圧事件に関して、日本政府に対し、表現の自由及び選挙運動の自由に対するあらゆる不合理な制限措置を撤廃しなければならないという勧告をしております。それから、二〇一〇年三月の東京高裁の判決は、憲法で保障された言論、表現の自由は高く評価をした上で、一般公務員が勤務時間外に行う政治活動に刑罰を科すことは憲法違反だという明示をいたしました。さらに、判決は、我が国の国家公務員に対する政治的行為の禁止規定は欧米諸国に比べて広範に過ぎることは憲法上問題があるというふうに指摘をして、公務員の政治活動の規制の在り方について再検討されるべき時代に来ていると、こういう判示をいたしました。

 人事院としては、こういう勧告や判決をどのように受け止めて、国公法や人事院規則の政治活動規制についてどういう見直しの検討をされているのか、その二点をお尋ねいたします。

政府参考人(桑田始君=人事院事務総局職員福祉局長)

 最初の主要国におきます制限でございますけれども、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツにおきましては、国家公務員の政治的行為を制限する場合においては、刑事罰ではなく懲戒処分がなされているものと承知しております。もちろん、一部、アメリカなどで職員に対し政治活動や政治献金を強制する行為に対して刑事罰が一部科されているということは聞いておりますけれども、基本的には懲戒処分となっております。

 その刑事罰につきましてですけれども、これは猿払事件の最高裁判決におきましても、国民全体の共同利益を損なう行為を行う公務員に対して制裁として刑罰をもって臨むことを必要とするか否かは、国民全体の共同利益を擁護する見地からの立法政策の問題と判示をされ、合憲と判断されているところでございます。

 さらに、先ほど御指摘ございました国際人権規約委員会から示された見解や東京高裁の判決については承知しておりますけれども、現在、御指摘の東京高裁の判決のほかに、同じ東京高裁におきまして、現行の政治的行為の制限について合憲との判断が示された別の案件もありまして、共に現在上告中というふうに承知しております。

 それらの動向につきまして、引き続き私どもとしては注視していきたいと考えているところでございます。


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