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2012年3月9日(金)

決算委員会

  • 原発再稼働問題--福島原発事故の究明もないままに再稼動は論外だと強調し、政府が再稼動の条件しているストレステストの第一次評価について具体的中身をただした

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 あさっては東日本大震災と東電福島原発事故から一年ということになります。(資料提示)

 六日付けの朝日新聞が福島県民の意識調査をやっておりますけれども、復興への道筋は付いていないというのが九二%の声であります。そして、万一このまま推移すれば、三十年後は福島の人口は半分になると、こういう試算も出ておりました。こういうことにならないように国が責任を持ってやる必要があると。

 そして、この重大事故で一旦放射性物質が放出されたら完全に抑える手段がないなど、他に類のない異質な事故をもたらす原発と果たして共存できるのかと。やはり撤退を決断をすべきだと思います。

 ところが、総理は、この福島の原発事故について収束を宣言をし、そして今、再稼働を進めようとされております。福島の県議会は全会一致で意見書を採択をして、避難者の不安、不信をかき立てるとして、この収束宣言の撤回を求めております。同じ朝日の調査では、県民の九四%がこれは納得しないというふうに答えております。

 今求められるのは、こういう声にこたえて、そして住民の安全を守る政治、行政だと思います。その立場で再稼働の問題についてお尋ねをいたします。

 原子力安全委員会の班目委員長、来ていただいておりますが、二月十五日の国会の事故調査委員会で、これまでの原発の安全審査指針は明らかに誤りがあったと認められて、そして、国際的にどんどん安全規制を高めるという動きがあるところ、日本ではなぜそれをやらなくていいのかという言い訳づくりばっかりやっていて真面目に対応しなかったのではないかと述べられました。具体的にはどういうことでしょうか。

政府参考人(班目春樹君=原子力安全委員会委員長)

 例えばでございますけれども、シビアアクシデントにつきましては、IAEAの安全基準等で規制要件化するというのが国際的な流れでございます。それにもかかわらず、我が国の場合には、平成四年にシビアアクシデント対策はこれは事業者自主でいいとして、その後見直しをしてこなかった、この辺りはやはり深く安全委員会としても反省しているところでございます。

 そのほかに、例えば全交流電源喪失みたいな話、ステーション・ブラックアウトでございますが、これについても、そのような可能性というのは我が国の場合には非常に低いということで真剣な検討をしてこなかったというふうに考えてございます。この点についても原子力安全委員会としては深く反省しているところでございます。

井上哲士君

 班目委員長は、さらに、一番低い安全基準を電力会社が提案をすると規制当局としてはのんでしまうと、こういう発言もされております。つまり、これまでの原子力行政がもう電力会社の言い分に合わせて安全基準をおろそかにしてきたと、こういう反省だと思うんですね。

 今の政府の対応はどうなのかと。東京電力は、地震では大丈夫だったけれども、想定を超える津波によって原子炉は破壊されたと主張をしております。政府もこれをうのみにして、津波対策さえ講じれば全国の原発の再稼働を認めるという方向で動いているんじゃないですか。

 枝野大臣、お聞きしますけれども、地震による原子炉や配管の損傷はなかったと断言できるんですか。

国務大臣(枝野幸男君=経済産業大臣)

 まず、全国の原発について今やっておりますのは、津波だけではなくて地震についても、従来の想定を超えるような地震があった場合でも耐えられるのかどうか、どこまでなら耐えられるのかどうか、それから地震の予想についても改めて再検討をして安全性を確認するということをやっておりますので、決して津波のことだけをやっているわけではありません。

 その上で、福島第一原発における事故の原因についてでございますが、原子炉を止める、冷やす、閉じ込めるという機能にかかわる安全上重要な七設備等については、地震応答解析により、今回の地震による問題はないということが確認をされております。

 これ以外の耐震安全上重要な設備については、五号機を代表として、基準地震動Ssを用いて解析したところ、一部の配管等で評価基準値を超える結果が得られたため、現場調査を行い、実際には安全機能を損なうような損傷がないことを確認をしましたが、今後、今回の地震動を用いた解析も実施し、詳細な評価を行う予定であります。

 また、プラントパラメーターを見ると、津波襲来までの間、原子炉の圧力や水位について異常を示すような変化は見られておらず、放射性物質の放出を示すようなデータも確認されていないなど、基本的な安全機能が損なわれていた可能性を示す情報は得られておりません。

 一方で、今回の地震の影響で安全性に影響を及ぼさないような微少な漏えいが生じるような損傷が生じたかどうかについて、これは確かなことは申し上げられません。

井上哲士君

 政府の事故調査委員会の中間報告でも、現時点では、福島第一原発の被害内容の多くについては、詳細を直接確認することは困難であり、あくまでも推定だと、こういうことを言っております。つまり、まだ結論は出せないとしているわけですね。

 そこで、総理にお聞きいたします。

 総理は、昨年の九月の衆議院の予算委員会で、地震による原子炉の損傷は詳細が不明だと認めた上で、「早急に事故の究明、徹底調査を行うことがすべてのスタートの大前提になる」と、こういうふうに言われました。

 事故究明がまだ途上だというところであれば、その下での再稼働というのはあり得ないんじゃないでしょうか。

内閣総理大臣(野田佳彦君=総理大臣)

 二度と同じような原発事故を起こさないために、これは事故の究明、事実を確認していくということは大事だというふうに思います。

 その上で、政府事故調、国会の中にも事故調ができて、民間レベルでもこの間報告が出ましたけれども、政府事故調については、この間、中間報告でございます。全てが出そろうというんじゃなくて、それが出てきた次第、その都度真摯に受け止めてその総括をしていかなければいけませんが、だから、全部そろうまで何もしないということではなくて、一定の知見というものは中間報告等でも出てまいるというふうに思います。

 その上で、事業者にはストレステストをやっていただき、保安院と安全委員会でダブルチェックをした上で、そして地元の理解を得ているかどうか踏まえて政治判断をするというプロセスをたどっていきたいというふうに思います。

井上哲士君

 一定の知見では駄目なんですよ。また事故が起きたら、知見の外だったと、想定外だったと言うんですか。この安全の問題では、一定程度ではなくて徹底した事故究明が求められているんですよ。それなしに、一定の知見がありましたと見切り発車するというのは許されないと。だから、今政府がストレステストで原発再稼働をすると言っていますけれども、例えば立地県の新潟の県知事も、気休めにすぎないと、事故の検証、分析なしでストレステストを行う意味があるのかと述べているわけですね。

 このストレステストというのは、事業者が行って、それを保安院、安全委員会がチェックする。しかし、さんざん情報隠しをやってきた事業者がやって、一緒になってやらせをやってきた保安院がチェックをして、誰が信じろというのかと。信じろという方が無理なんですね。しかも、原発の安全を確認できるようなものじゃそもそもありません。

 原子力安全委員会は、昨年七月に、原発の安全性に対する総合的評価の実施を保安院に求めました。その後、保安院が、これを一次と二次に分けて、ヨーロッパのストレステストを参考にするとして、原発の再稼働の可否は一次評価で行いますと、こういうことを言いました。

 一次評価は既に十六基の原発から出ておりますが、枝野大臣にお聞きしますけれども、じゃ、二次評価の期限はいつで、それは今幾つ出ているんでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 二次評価については昨年末を目途に報告するよう指示してきているところでございますが、残念ながら、このストレステストを確実に実施できる国内のキャパシティーが十分ではないようでございまして、現時点ではどの事業者からも提出をされていないところでございます。

 作業状況を確認しつつ、できるだけ早く評価が提出されることを促してまいります。

井上哲士君

 一次評価で再稼働できると言ったら、二次評価は年末が期限だというのに一個も出ていないというんですね。いかに私は電力会社が再稼働さえできればいいという姿勢を持っているのか、そして、元々、この年末まで出せと言っても一個も出てこないと、ストレステストそのもののいいかげんさを私は示していると思います。

 安全委員会、もう一回聞きますが、この一次評価の内容でヨーロッパでのストレステストの内容を満たしているのか、そして、安全委員会としてこの一次評価で原発の総合的な安全評価は十分だとお考えでしょうか。

政府参考人(班目春樹君)

 原子力安全委員会の方で要請した総合的安全評価というのは、これは一次評価、二次評価、セットでやっていただきたいというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 であれば、この一次評価で原発の総合的安全評価は十分だとお考えなのかどうかです。

政府参考人(班目春樹君)

 総合的安全評価としてはまだ不十分で、是非二次評価までやっていただきたいというふうに考えてございます。

井上哲士君

 ですから、ストレステストというのは、ヨーロッパでもこれでいいのかという批判が上がっておりますけれども、一次評価ではそれすら満たしていない、不十分なものなんですね。これに基づいて、なぜ安全といって再稼働ができるのかと、このことが問われております。

 そして、先ほど地震の揺れについても対応していると大臣言われましたけど、実際には東日本大震災を踏まえた地震や津波の想定の見直しはされておりません。それがこのストレステストの前提になっているんですね。

 保安院は、福井県の大飯原発の三号、四号に関する関電からの一次評価について、二月十三日に妥当だという結論を出しました。その内容は、想定する揺れが七百ガルで、千二百六十ガル、一・八倍まで耐えられますと、津波の高さは二・八五メーターで、十一・四メートルまでは余裕があるということであります。

 しかし、あの福井の若狭湾の周辺というのは断層の巣と言われているところでありまして、この想定に専門家から様々な疑問の声が上がっております。特に、この地域の敷地の近くの二つの海底断層と、そして陸上にある熊川断層、これが連動して動く可能性が想定をされていないという批判がされてきましたが、この点はどのように検討されているんでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 まず、大飯原発については、かつては想定される地震動の最大値は四百五ガルでございましたが、最新の活断層調査等の結果を踏まえて、御指摘のとおり七百ガルに引き上げたところでございまして、今のところこの七百ガルを基準値にしておりますが、同時に、三つの活断層の連動の可能性があるということで保安院が指示をいたしまして、これについて改めて調査をして、その報告について公開の意見聴取会において評価を行っているところでございます。

 なお、ストレステストに対する評価に当たっては、こうした耐震バックチェックについてなお今検討中の論点があることを併記をしているところでございまして、こうした耐震バックチェックの状況を踏まえて、安全と言えるのかどうかということを評価、確認することになると思っております。

井上哲士君

 つまり、耐震バックチェックは途中だということなんですね。

 枝野大臣は昨年の十月二十八日の記者会見で、耐震バックチェックについて、大飯第三号機に関することについての結論が出なければストレステストについてチェックは行わないと、こういうふうに言われていますね。終わっていないのに、チェックは行わないと言いながら、何で妥当という結論が出るんですか。

国務大臣(枝野幸男君)

 ですから、終わっていないということを付記しております。ですから、このバックチェックで、もしこの前提となっている七百ガルというのが違うと、もっと高いという評価を受ければ、今は一・八倍の余裕度ということになっておりますが、この一・八倍ということが小さくなる可能性があるということを含めて保安院として確認、チェックをしたということでございまして、最終的に安全性について確認するに当たっては、この今の七百ガル、一・八倍というのは変化する可能性があるということを前提にして評価を最終的には今のままでしたらせざるを得ないと思っています。それまでにバックチェックの結果が出れば、当然そのバックチェックの結果に基づいて、この一・八という数字が小さくなる可能性はあります。

井上哲士君

 だったら、何で妥当という結論を出したんですか。今の話から妥当という結論が出てくるはずないじゃないですか。

 ここが、まさに今、活断層の連動性による調査はまだ進行していると、こういうふうに言われたわけですよ。東日本大震災では、起きないと言われていた巨大地震が起きたわけですね。そして、例えば柏崎の刈羽原発は、設計時の想定は四百五十ガルでした。ところが、動かないと言われていた断層が動いて、中越沖地震のときには千六百九十九ガル、三・八倍の揺れが起きたんですね。

 断層というのは絶対に過小評価してはならないんですよ。大飯だって、まさにそれが、評価を検討している最中に何で妥当としたのかと。まさに、初めに再稼働ありきじゃないかと、こんなことで安全と言えるのか。

 総理、こんなことでいいんですか。こんなことで再稼働できるんですか。総理、総理。

国務大臣(枝野幸男君)

 保安院の妥当という評価についての意味がちょっと誤解をされているのかなと思います。

 保安院が今回ストレステストについて妥当と評価をしたのは、ストレステストがストレステストとしての手続として定められている手順に基づいてきちっと行われているということについて妥当と評価したものでございまして、これは皆さんから従来言われているとおり、ストレステストをやったからそれで安全性が確認、それだけで安全性が確認されるというものではございません。

 安全性を確認をするための一つの手段でございまして、一方で耐震バックチェックをやっていて、これについては、プロセス、途中にありますから、しかも大きくなる可能性があるわけですから、当然のことながら、その耐震バックチェックの結果として、これは今具体的に出てきておりませんが、例えば、例えば一例として申し上げますが、そこが最も大きい、まだ結論出ていないわけですが、最も大きく地震の想定の揺れ方になった場合には一・八を下回るかもしれないというような可能性のある議論がされているのであれば、一・八の余裕度があっても駄目ですし、一・八が一に限りなく近づくような場合であれば駄目になりますし、しかし、それが例えば一・八が一・七になる可能性があるということで検討しているのかどうかと、そういったことを総合的に評価をするということになります。

井上哲士君

 重要な答弁ですよね。ストレステストをやったって安全とは言えないと。そのテストのやり方自身を保安院が判断するのであって、安全とは言えないと。これはおかしいですよ。地方自治体には、ストレステストやったら安全なんだから、だから再稼働すると言っているじゃないですか。こんな、めちゃくちゃですよ。

 大体、同じ若狭の敦賀原発の敷地を通る活断層がこれまでの評価よりも長い三十五キロ以上あって、従来の想定の二倍のエネルギーの地震が起きるということがこの間、産業技術総合研究所の調査で明らかになったばっかりですよ。昨年の九月の中央防災会議の報告書も、従前の想定手法の限界であり、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震、津波を検討していくべきであると、こういうふうにしているんですね。

 その断層の影響評価がまだ終わっていない段階に、妥当ということを保安院が言って、それを言うと、それは安全という意味じゃない。こんなことを聞いて、立地の県や地方自治体の人が分かりましたとなるはずがないんですよ。しかも、想定を超えた事故への対応もできていないわけですね。

 政府は、現在の原発から半径八から十キロ圏とする事故対策の重点地域を今度は三十キロ圏まで拡大するとしておりますけれども、地元の都道府県や市町村での地域防災計画の改定が必要になると思いますが、これはいつ改定されるんですか。

国務大臣(細野豪志君=原発事故担当大臣)

 防災指針というのは、これは現在の制度では原子力安全委員会の方で考え方を提示をされる形になっております。ただ、ここが我が国の法制度の不備なんでありますが、法定化されているものではありませんので、そうやって出てきたことに基づいて防災計画をそれぞれの自治体に作っていただいているという非常に不安定な状況に置かれた、そういったものになっております。

 今回、EPZについては非常に拡大をされるという方向でございますので、できれば御理解をいただいて新しい法制度を発足させていただきたいと思います。発足させた上で、六か月ほど掛けて新しく制定される原子力災害対策指針を踏まえた地域の防災計画を是非自治体に作っていただきたい。準備だけはしておるんですが、法制度が整っておりませんので、そこにとどまっているというのが現状でございます。

井上哲士君

 つまり、事故究明も尽くしていない、事故防止策も部分的に不十分、そして事故後の対策もまだこれからなんですよ。こんな中でどうして安全と言えるんですか。結局、従来の安全神話の中での対応でしかないんじゃないですか。

 総理、やはり再稼働はやめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。総理。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 ストレステストの評価についていろいろありましたけれども、基本的にこれはIAEAのレビューも受けながら、福島第一原発のような地震、津波に対してどれぐらいの裕度があるかということをチェックをして、それを、いろいろ組織としての信頼感のお話も御指摘がありましたけれども、今回の教訓を踏まえて保安院も安全委員会も厳しく安全性をチェックするというふうに思いますので、それを踏まえた中で、地元の御理解をいただいているかどうか、しっかりチェックしながら政治判断をしていきたいと思います。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、決して住民は納得しないでしょう。

 再稼働についてはやめるべきだということを重ねて申し上げて、質問を終わります。


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