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2012年7月26日(木)

社会保障と税の一体改革に関する特別委員会

  • 消費税増税、社会保障改悪法案に対する参考人質疑

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は参考人の皆さん、本当にありがとうございます。

 国民のまだ多くが増税に反対の声を上げておりますし、将来の税金の在り方を超えて、こういうデフレのときに上げるというのは本当に大変なことになるというのが、特に中小企業団体などを中心とした大きな声がございます。ただ、財務省は、増税をしても、駆け込み需要とその反動というものがあるけれども、経済に対する影響は限定的だということを繰り返しておるんですが、私はやはり内需を冷え込ませるという大変大きな影響があると思っております。

 その点について、菊池参考人と橘木参考人からそれぞれ御意見をいただきたいと思います。

参考人(菊池英博君=日本金融財政研究所所長)

 まず、このデフレの日本で増税をすると一体どういう経済効果があるかと、これについて手元の資料を御覧いただきますと、右下の八と九に実はデータがございます。

 まず、この八を御覧いただきますと、消費税五%引上げのGDPへの効果でございますね。これは、DEMIOSモデルという、宍戸駿太郎先生という、筑波大学の副学長もやられた元経済企画庁の審議官で、こういうマクロモデルの世界的大家です。この方が推測されている。

 これによりますと、まず五年間で大体GDPの額が四十から五十兆落ちます、マイナスになります、経済的に。一年目ぐらいはさっき先生言われたようにちょっと上がるかもしれません、落ちが少なくなる。二年目からぐんぐんぐんぐんとして、これはもう本当にどんどん利いてきます。ですから、GDPデフレーター、我々の給料が減り、企業の所得が減るんですから、税収は減ってきますよね。だから、これは本当に、さっき申し上げたイタチごっこです。

 それからもう一つ、なぜ財務省がこういうことを公然とやっているのかといいますと、これは、右下の九という資料があるんです。これは大変面白い資料でして、京都大学の教授の藤井聡先生が参議院の予算公聴会、今年の三月二十二日に公述されているんです。私は藤井先生とよく一緒の研究会をやっていますからよく分かります。

 この冒頭、こう書いてあります。消費税五%引上げの経済予測。挙動不審の内閣府モデル。平均モデルはいずれも、一〇%の消費税増税でGDPが四から六%毀損すると。つまり、五年でですよ、五年で四から六%毀損する。これ、日経NEEDSだとかDEMIOSとか電力経済研究所とか、いろいろ民間で有名なんです。ところが、内閣府モデルだけは上へ上がっておるんですよ。これは、本当に失礼な言い方ですけれども、実情を反映していない恐るべき事態ですよ。こういうことで国民をだまされたんじゃ、本当にかなわない。

 だから、これ、本当に国会議員の先生方、しっかりしていただきたいんです、本当に。こんなモデルを、これ財務省、今内閣府というのは財務省の方が次官ですから、そこで当然出されたんでしょう。それで、藤井先生という方がこういうことを出して、しかも藤井先生は自民党の推薦でたしか参議院の予算委員会にいらしていますよ。ですから、こういうふうにきちっとした指摘をされておられるんですから、これは余りにも、いかに国民がだまされているかということはこういうことなんです。

 ですから、本当にマクロ経済的には大きなマイナスになります。

参考人(橘木俊詔君=同志社大学経済学部教授)

 何度も繰り返しますが、ここ二十年、デフレ脱却、景気回復、もう言われ続けていたじゃないですか。私はもう万策尽きたとは言いませんが、それ言うと皆さんからビーンボールが飛んできますのでそこまでは言いませんが、繰り返しますが、一、二%の成長率は欲しいというのが私の個人的な見解でございます。

 それと、最後の質問で、消費税アップは小企業の方に非常に過酷な負担を強いるというのは私も同感でございまして、例えば、消費税掛かったときに、小企業の人が取引するときに価格上昇の転嫁をうまくできるような手だてを是非とも国会議員の先生方の知恵を絞って、私はもう法律なり規制なりを考えていただきたい。小企業はやっぱり潰してはいけませんので、そういう案を私は是非ともお願いしたいというふうに思います。

井上哲士君

 確かに、この二十年間を見ますと、例えば前回消費税上げたときのGDP、九八年で五百十二兆が二〇一〇年で四百八十一兆になって、縮こまっているわけですね。これは私、少子高齢化で仕方がないことで、万策尽きてこうなっているとはとても思えないわけであります。やはり内需がこの間ずっと冷え込んできたという、やはり経済政策の誤りのあった結果だと思うんですね。

 この間、GDPはこういうふうに小さくなりましたが、逆に大企業の内部留保というのは百四十三兆から二百六十兆に膨れ上がっております。同じ時期に、労働者の正規から非正規が進み、そして、正規労働者についても賃金が下がるということが並行して起きて、つまり、国民の懐はどんどんどんどん寒くなる政策をやられたのに、大企業を中心に内部留保が増えていったと。こういうことが冷え込んだ結果であって、私は、ここを転換をすればきちっと成長の軌道に乗り、それによって財政をつくり出すことができるというのが私どもの基本的な財政論の柱であります。

 そこで、高山参考人にお聞きいたしますが、この非正規労働者の拡大であるとか、そして正規労働者の賃金も減っているということ、先ほどの陳述の中でもありました。これは、社会保障の担い手そのものも減少させているわけですね。非正規が増える中で国民年金の掛金を払っていない方が非常に増えておりますし、それから保険料の額自身が正規の給料が減る中で減るということになってきております。

 そういう現状があるから、だから、例えば給付の減とかそういうことではなくて、やはりここ自体を正すということが私は必要だと思うんですね。日本のこういう非正規中心という労働状況というのは国際的にも非常に異常なわけですから、むしろ、きちっと内部留保もしっかり持っているわけですから、拡大してきたわけですから、社会的責任を果たしてこの社会保障の担い手を拡大をしていく、そういう労働条件を拡大をしていくと、こういうことを企業にもしっかり求めていく、そういうことが必要かと思いますが、その点いかがでしょうか。

参考人(高山憲之君=公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構研究主幹)

 企業は、言わばゴーイングコンサーンとして生き続けなければいけません。激しい国際競争下に今の日本の企業みんな置かれているわけですよね。バブルの時期にいろいろな意味でコストが大きくなり過ぎた。その一つが人件費だったわけです。企業は生き延びるために人件費を節約せざるを得なかった。そういう中で、正規労働者の雇用を厳選し非正規を増やした、あるいは正規の人たちの賃金カーブをフラット化したと、で、生涯賃金を下げちゃった。非正規の人は、雇用を非常に不安定なものにさらされている人が多いわけですね。そういう中で、おっしゃるように内部留保を厚くした企業があったことは事実だと思います。

 ただ、今後の展開で、日本の雇用をどうやって安定的なものにするかというのは、やはり国内企業の力に懸かっているわけですね。

 例えば、いろいろな意味で、また企業に負担を求めるということをすると、またいろいろな意味でコストが上がってしまう。それが、企業が生産基地をまた外国に移してしまうとか、そういうような形で雇用にまたある意味では反作用といいますか、そういうような形で返ってくる。まあゴムまりみたいなものです。こっちから押すとやっぱりこっちから返ってくる力があるということですね。

 そういうことを考えると、なかなか、確かに私は雇用の安定化、特に若い人に着目していろいろな手を打っていただきたいというのは声を大にして申し上げたいんですけれども、それは、今までの雇用慣行、日本に合った雇用慣行を見直すとか、いろいろな労働規制、今のままでいいのかどうかとか、その他いろいろあると思いますけれども、あるいは教育から就労へのつなぎをどうするかとか、新しい問題、今出てきておりまして、その辺いろいろなことが必要だと思っていますけれども、いずれにしても企業は生き延びていかなきゃいけない。その企業が雇用の主体であるということを踏まえると、なかなかおっしゃるような形にはならないんではないかというふうに危惧をしている次第です。

井上哲士君

 我々はもちろん、企業が潰れるようなことをしろと言う気は毛頭ありませんし、この間本当に増え続けてきた内部留保のごく一部を取り崩すだけで雇用に回せるということを申し上げてまいりました。むしろ、生き残るために必要だということで、賃下げや、要するに低賃金労働をはびこらした結果、国内需要が冷え込んで、お金があっても投資先がないという悪循環に陥っていると思うんですね。

 菊池参考人は、法人税の最高税率引上げということも先ほど陳述されましたけれども、私どもは、今むしろ引き下げるということについてはやめるべきだと、それからいろんな優遇についてもやめるべきだということを申し上げておりますが、そうしますと、企業が外に出ていくというようなことの反論も必ずあるわけです。

 ただ、いろんな輸出関係のアンケートなどを見ておりますと、やっぱり企業が外に出ていく一番の理由は、そこに需要があるからなんですね。つまり、海外には需要がある、しかし国内には需要がないということになっている。その原因が先ほど言ったような国民のやっぱり物を買う力が弱まっているという、これは悪循環になっていると思います。

 こういう法人税の引上げをすると企業が外に出ていくとか日本経済にマイナスになると、こういう議論について御意見をいただきたいと思います。

参考人(菊池英博君)

 まず、経営者の方々、特に大企業ですね、大企業の方々、経団連だとか経済同友会の方々は、一種の脅しとしておっしゃるのが、法人税を下げないと私海外へ行くよと。法人税を下げなくたって海外へ行きますよ。行かざるを得ないんです。

 まず、法人税を下げても、といいますか、今、日本で一番の問題は、やっぱり国内の雇用が少なくなる、内需が減っていくということでしょう。経済の規模が縮小する、デフレが進んでいく、それに対する対策がどうかということなんですよ。じゃ、その一環として法人税を下げたら、それどう思っているか知りませんよ、しかし法人税を、いやしくも、私は、民主党政権があの今年の三月の、東日本の危機とパッケージでされるとは夢にも思いませんでしたよ。これははっきり言って、民主党政権の皆さんには悪いけど、国民に対する背信行為です。いや、本当にそうです。

 法人税を下げたところで、この金は結局今どうなるかといいますと、この金は結局、国内に投資をされればいいですよ、すれば雇用が生まれます。しかし、一回法人税を下げたときに、その法人税は、結局、今までの過去の例を十年見れば分かるんですよ。企業の内部留保、役員報酬の増加、配当の増加に吸収されてしまう。それで、ましてや国内がデフレが進んでいきますから、結局外へ出ていかざるを得ないんですよ。それで、出ていくということは、私はある程度はもう、先生おっしゃったとおり人件費が低いからですよ、法人税は関係ないです。これは野口悠紀雄さんという大蔵省のOBの方がさんざん指摘されています。これ、大変な正論です。

 ですから、それで問題は、じゃ、内需が減っていくじゃないかと。だからこそ、内需拡大策を思い切って取らなきゃいけないんですよ。それによってデフレを解消する、そして経済の規模を大きくする。そうすることによって結果的には、まあ出ていくのはいいですよ、結局入ってきた収入とかそういうのは国内のために使うわけです。国内に投資をする。それで、さっき申しましたように、デフレのときは政府がイニシアチブを取らなきゃいかぬからそれをやる、そうすると民間が出てくる。それから、内部留保でもたくさんありますよ。それで、国内のデフレが解消方向に向かえば、企業はおのずと国内にも投資をしてくるんです。これはトヨタの人なんかもはっきり言っていますよね、トップの人なんか言っています。

 ですから、これもやっぱり結局一種の敗北主義なんですよね。結局、デフレだと、海外へどんどん出ていくと、国内は法人税下げなきゃいかぬとかもう内需は出てこないという意見は出ますけど、そうじゃなくて、必ずそれを克服する手は具体的にあるわけです。だから、それを取ってデフレを解消して規模を大きくする。

 それで、そういうふうに規模を大きくしていく過程で、さっき出た非正規社員の問題でも、やっぱり企業は正規社員というのは必要なんです。ということは、技術を長く伝承していかなきゃいかぬ、技術教育をしていかなきゃいかぬ。これは企業にとっては命ですからね。だから、中小企業の人でも、こういうことがだんだんと、採用できないのは非常に残念だとおっしゃる。

 だから、そういう形を取れば必ず正規社員も増えてくるし、それから、これは一種のやっぱり減税するならば、法人税を下げるならば、国内に投資して、国内の正規社員を雇えば減税するという投資減税を取ればいいと思います。実はこれ、韓国やっているんですけどね。それが私の意見です。

井上哲士君

 結城参考人にも社会保障問題をお聞きしたかったんですが、もう時間僅かであります。自助、共助、公助ということが強調されていますけど、結果としていわゆる助け合いということが強調され、社会保障の理念が崩れるんじゃないかという危惧が出されております。その点だけ簡潔にお願いします。

委員長(高橋千秋君)

 結城参考人。時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

参考人(結城康博君=淑徳大学総合福祉学部准教授)

 一言だけ。

 やはり、自助と互助はかなり減退しておりますので、私は、公助、共助、是非強めていくべきだと思っています。

 以上です。

井上哲士君

 ありがとうございました。


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