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2004 年 5 月 27 日

法務委員会
行政事件訴訟法一部改正案(質疑)


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、法案そのものに入る前に、背景といいますか歴史の問題について幾つかお伺いをいたします。

 戦前は、行政事件については、司法裁判所とは異なる行政裁判所に管轄をされるということになっておりました。当時、この裁判所が東京のみに置かれて、この判決に対しては再審を求めることもできない、出訴事項についても大変限定をされておりました。これが戦後の新しい憲法の下でこういう行政裁判所がなくなって、通常の裁判所に管轄は移りまして、扱いも一緒になります。

 ところが、昭和二十三年に行政事件訴訟特例法というのができたわけでありますが、これも訴願前置主義を取ったり出訴期間を制限するなど、大変行政に対する司法審査を制限する色彩の強いものだったと思います。

 その後、今日の行政訴訟法ができたわけでありますが、なぜ戦後この行政裁判、行政訴訟の特別扱いをやめたのか、そしてなぜこの特例にすることが復活をしたのか、この辺の経緯はいかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 経緯といたしましては、今委員御指摘のとおりだろうと思いますけれども、明治二十三年に行政裁判法というものが作られまして、司法権に属さない行政裁判所が置かれたと、こういうことでございます。

 この経緯は、どうも日本の全体、明治時代の法律はドイツの影響がかなりあったということでございまして、そういう関係からこのような体制を取ってきたものというふうに理解をしております。戦後、その体制が変わったわけでございますが、この司法裁判所の方に属して判断をしていくということでございますけれども、これはもうアメリカがそういう考え方を取っておりまして、ヨーロッパ系からアメリカ系に移ったという経緯だろうというふうに思います。

 ただいま御指摘の点につきましても、昭和二十二年に日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の応急的措置に関する法律というのがまず制定されまして、それから委員が御指摘のとおり二十三年に行政事件訴訟特例法が作られまして、昭和三十七年の行政事件訴訟法のところにつながっていったと、こういう経緯でございます。

 まず、なぜ大きな体制が変わったかということは、これはいろいろな歴史的な経緯からドイツ型からアメリカ型に変わったというのが一つの大きな考え方ということでございます。

 それから、じゃなぜ一般の民事訴訟じゃなくてこういう特別の規定を置いたのかと、こういう御質問だろうと思いますけれども、やはりこの権利、国民の権利義務に影響があると、それを守る訴訟だということであっても、やはり行政事件の特殊な性格があるわけでございまして、やはり早期安定と、行政処分ですね、これは行政処分がいろいろ重なっていきますと、かなり時間がたってそれが覆るということになりますと第三者にもいろいろ影響していくと。そういうような早期確定という、そういう要請が一つあるということでございます。

 それともう一つは、この行政処分に関しまして取消し訴訟のタイプでやるわけでございますが、取消し訴訟についてこれは第三者効があると、形成訴訟だということで第三者効を与えているわけでございますので、これになりますと、一人その関連の事件で裁判を起こしますと、それが全部の第三者にも効力を生ずるということで、その統一が図られるということになるわけでございますが、これは通常の民事訴訟でやるということになると、その個人対個人の関係、そこで効力が生ずるという形になるわけでございますので、そこはやはり通常の民事訴訟とは違う要素を持っているということからこのようなものが置かれてきたと、これが現在のように発展してきたと、こういうことでございます。


委員長(山本保君)

 この際、委員の異動について御報告いたします。

 本日、樋口俊一君が委員を辞任され、その補欠として平田健二君が選任されました。


井上哲士君

 朝の審議で日本の国民性としてお上に物を言わないというのがあるというようなお話もありました。私はむしろ、戦前の憲法に色濃くあるような、お上に物を言うな、こういう姿勢が行政の中に色濃くあると思うんですね。これは脈々と今も受け継がれているのではないかと。

 司法制度改革審議会の意見書を受けて、この行政訴訟法の改正にいろんな作業が行われたその経過で、昨年の七月に各省庁にヒアリングをしたということが報道をされておりますが、なかなか今の各お役所の率直な意見が報道をされております。

 例えば、義務付け訴訟については、専門的な判断が求められる行政分野で裁判所に適切な判断ができるか、厚生労働省。それから、原告適格、いたずらに拡大すると多数の者から訴訟が提起され、円滑な行政運営が阻害される、農林水産省。それから、行政計画、行政計画などに対象を拡大すると正当な利益がないものの活動の場として利用されるおそれがあり、不適当、国土交通省。こういうような議論が随分出てきた、相当の抵抗があったということも報道をされておりまして、ここにはやっぱりなるべく行政の異議申立てをさせないという戦前からの流れというのが見え隠れするわけですね。

 こういう中で、推進本部はいろいろ御苦労されて立案作業をされてきたわけでありますが、どうなんでしょうか、こういういろんな抵抗に対してかなり押し戻して、行政が間違いないんだ、行政無謬論みたいなものを押し返してこの法案まで来たと、こういう御認識か、それとも相当の省庁の抵抗の中でそこまで行かなかったと、こういうものなのか、事務局長、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 私の立場でお答えするのは非常にお答えしにくいわけでございますが、確かにヒアリングを二日間にわたりまして全省庁から行ったということでございまして、その中でいろんな御意見ございました。やはり現在の制度を変えていくということに関しましてはそれなりにいろいろ御意見もあり、場合によっては抵抗もあったという理解はしておりますけれども、最終的には、もう時代が国民がこういうものを要求しているんだということですね、そういう時代背景をよく認識をしていただきまして、御理解をいただいてこういう成案の形になったということでございます。

 それを押し返したのかどうかという、これはなかなか評価は難しいところもございますので、少なくとも閣議決定ができて、出せる運びになったわけでございますので、御理解はいただいたと、こういうことでございます。

井上哲士君

 衆議院の議論を見ておりましても、与党自民党の議員の方からも、三合目か四合目ぐらいだ、今度の法案はと、こういうようななかなか厳しい評価もされておりました。この間の本会議でも、そもそも行政が自分たちが不利になるような法律の仕組みを作るはずがないんで、そこは限界がある、むしろ議員立法でやるべきだという、このような意見もあったわけですね。

 どうでしょうか。そうしますと、そういういろんな各省の抵抗もあって議論をしてきて今回出したものが、これでもう言わばぎりぎりの線なのか、それとも今後まだ更に検討を加えて、政府としても更に前進したものを出していけると、こういうお考えでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この点については二つございまして、今回、私どもとしては手続法の中でできるものは可能な限り出していこうということから今回の案を考えさせていただきましたけれども、ただ、これについても、じゃこれで万全かと言われますと、やってみないと分からないところもあるんです。やったことによって結果がなかなか出ないとか、そういうこともございますので、そこを考慮いたしまして、先ほど申し上げましたけれども、附則で、五年後にはまた見直していこう、必要があれば見直していこうと、こういう規定を置かしていただいております。ということは、これで終わりではないということを一つ表しているわけでございます。

 それと、今回、いろいろ検討会では対象になりながらこの法案の中に盛り込まれていない点につきまして、先ほど大臣の方からも御答弁ございましたけれども、これについてはもっと議論を経なければならないというものもございますし、それから、これは行政の場合によっては実体法の問題であって、いわゆる司法の方からアクセスをするというのが適当かどうかというものもあるということ、それからもっと大きな問題になりますと、司法と行政がどこまで権限を行使することになるのか、それからあるいは国会との関係もどうするのかという三権の在り方に大きくかかわってくるような考え方も提唱をされているわけでございまして、これについては本格的な議論をした上でどうするかということを決めないと、なかなかそんな簡単に技術論で収まっていく話ではない。

 こういうものについては、私ども本部がある限りはもう少し検討を深めて、仮に本部が終わった後どうするかという問題についても、そのジャンルジャンルによってどういうところでどういう議論をしていくかということがその中で浮かび上がってくることになろうかと思いますので、またそういう点についてもどうしていくかということも含めて今後の検討課題であるということでございますので、これで終わりということを言っているわけではないという御理解を賜りたいと思います。

井上哲士君

 四十年ぶりの改正で多々前進面を持っておりますが、しかしそれでもまだ通過点にすぎないんだと、こういうお話でありました。

 その上で、法案のそのものに入ってまいりますけれども、まず大臣に、午前中からも、今の日本の行政訴訟の現状についてのいろんな認識についての議論がありました。そもそも訴訟の件数が非常に少ない。二〇〇二年度で二千三百件余りでありますから、ドイツの二百分の一、アメリカの十六分の一、台湾の八十五分の一、韓国の二十八分の一と、こういう少ない現状になっているその原因をどのようにお考えで、そして本法案でどのように改善をされるとお考えか。まず大臣からお願いいたします。

国務大臣(野沢太三君)

 委員御指摘のとおり、また午前中での御審議の中でも指摘をされておりますが、一概に、多い少ないというのは、これは言えないところもございますが、それは訴訟制度の違いもありますし、国民性の違いもあり、また歴史的な経緯もあるということもございますが、実際比べてみた場合には、日本の提起件数、少ないことは確かに事実だと思います。

 しかしながら、行政訴訟制度の現状を受件数だけで評価することについてはいかがかなと思っておりますし、先ほどからも原告の勝訴率の問題も出てきておるわけでございますが、いずれにしても、少ないということは、一つにはやっぱり入口が狭いというか、この制度自身の使い勝手がやっぱり難しいということが一つあったかと思います。この点は、今回できるだけ改善しようということで取り組んでおるわけでございますし、もう一つ、私は行政の方の立場から考えてみれば、できるだけトラブルが起こらないようにということで、熟慮に熟慮を重ねた形で提案され、実行されているということもあるし、また行政の内部でのそれぞれの救済措置なりあるいは回復措置なりというものも機能している部分もあったかと思うわけでございます。

 いろいろな要するに諸条件がかみ合わさって結果としてこのような数字が出ておるわけでございますけれども、私は最初から申しましているとおり、行政の規模が非常に大きくなって多様化して、しかも国民の生活のもうあらゆる分野に及んでいる中では、もっともっとそれに対する国民の側からの意見があってしかるべきですし、行政というのはどうしてもマクロ的な規模で問題を進めることが多くありますから、個別の個人の権利の侵害ということも起こってくることも事実であるということからして、今度の制度の発足によりまして、やっぱり件数あるいは内容ともに、これは拡大していくことがあってもしかるべきではないかと思うわけでございます。

 今回の制度の中では、この原告適格が実質的に広く認められるような改正がありますし、義務付けの訴え及び差止めの訴えも新たに設けておる。それから、確認訴訟の明示、訴訟類型の選択の幅も広げる。行政庁に対する資料の提出を求めることも行いまして、審理の充実、促進を図るということもやっておるわけでございます。

 被告適格の簡明化とか管轄裁判所の拡大、出訴期間の延長、さらには出訴期間等の教示ということで、相当利用しやすくする改革もしておりますので、この結果を十分見守りまして、先ほど事務局長からも説明がございましたが、実績を見ながら更に必要な改善を加えていくことが大事ではないか、こう思っております。

井上哲士君

 午前中の審議でも日本の行政訴訟の勝訴率はそう外国に引けを取らないんだということはありました。

 しかし、非常に訴訟に至るまでのハードルがたくさん日本の場合はあって、訴訟する側からすれば、それをやっとくぐり抜けて裁判まで持っていってもこの程度しか勝てないということですから、私はやっぱり単純に勝訴率が外国と一緒だということは言えないんじゃないかと思うんです。

 その大きなハードルになっているのが原告適格の問題で、先ほど来ずっと議論がありました。これが非常に狭く解釈をされてきた。今回の法案でのこの考慮規定を入れるという手当てによって、どういうことを期待をして出されているんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この点につきましては、今委員御指摘のとおり、いろんなハードルがあって、本体の中身を審議してもらうところまでなかなか行けないというような御批判があったわけでございまして、そういう点について、やはり現在のままでは非常にやっぱり障壁が高過ぎるといろいろ御指摘がございました。

 そういう点を踏まえまして、それをどうやって広げていくかということでございまして、私ども、先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、法律上の利益という文言はそのまま存置をいたしますけれども、これが実質的に広がっていくように、拡大していくようにということでわざわざ二項を置いて、その考慮事項を四つ、それは大別すれば二つということになりますけれども、これを置きまして、全体の考慮事項を必ずどういう裁判でも考慮しなければならないものとして位置付けをいたしましてレベルをアップしていくと、こういうことを図ったわけでございまして、これの趣旨をよく理解をしていただきまして、最終的には裁判所の裁判で定めることではございますけれども、その辺のところはよく理解した上で裁判に当たっていただきたいなということでございます。

井上哲士君

 では、実際に裁判が原告適格の拡大によってどう変わるのか、幾つかの具体例でお聞きをいたしますので、できるだけ具体的にお答えをいただきたいと思うんですね。

 まず、今年の三月の十六日に最高裁で判決が出ました学資保険裁判というのがあります。これは、福岡市の夫妻が子供の高校進学に備えて郵便局の学資保険に加入をして生活保護から払い続けてきたわけですね。これを、この掛金を福祉事務所が収入と認定をして、半年間生活保護費を減額をした、これが違法だということで争われた裁判です。

 一番の争いは、保護費を学資保険に積み立てることが生活保護の趣旨に合うのかどうかと、これが争いでしたけれども、一審ではやはり原告適格が問題になったわけですね。九五年三月の福岡地裁の判決は、実は生活保護支給の名あて人である父親が死亡したわけですね。ですから、保護の受給権は一身専属で相続ができないということで、娘二人の原告適格を認めずに言わば門前払いをしたと、こういうことになったわけですね。

 これは、控訴審では原告適格ありということで逆転勝訴をしましたし、最高裁で確定をしたわけですけれども、こういう裁判のケースはこの法案が成立すればどのように変わると予想されるんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この事件に関しまして、私、前に訟務局長であったときに、たしか私も名前がどこかに載っかっているかと思いますけれども、そういう意味ではちょっとお答えしにくいところがございますけれども、この結論は結論として、今委員が御指摘になりましたように、一審と二審で考え方が分かれまして、上告審ではもうその控訴審の判断をそのままいいということで、もうほとんど対象にならずに終わったということでございます。

 こういう経緯を見てまいりますと、最高裁でもこの点については現行法の中でも当事者適格があるということが承認されたわけでございまして、そういう経緯からいけば、一般論として言えば、今回の改正によって原告適格についての結論が変わるということでなくて、現行法の中でも認められるものだと、こういうふうに考えておるわけでございます。

井上哲士君

 ただ、現行法がそうであっても一審は逆の判断をしたということでありまして、そういうことが多分きちっと、レベルアップと言われましたけれども、正されていくと、こういうことでよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 先ほど私、そういうふうに申し上げましたので、確かにこういうふうに判断が分かれるということですね。こういうことはこの考慮事項を置くというようなことによって大体皆同じような考え方に統一していくんではないか、こういうことを期待しているわけでございます。

井上哲士君

 次に、これは去年の十二月十八日に東京高裁で控訴審判決が出た小田急の高架事業の認可取消し訴訟です。

 これは、二〇〇一年十月三日、東京地裁で住民勝訴の判決が出まして、大変大きな話題になった判決ですけれども、高裁では逆に住民原告を全面敗訴とする判決になりました。これも原告適格が問題になったわけですね。高裁の判決は、本来は一体的である連続立体交差化の鉄道の高架事業と側道事業が別だと、こういうふうにしまして、側道の地権者には側道事業への原告適格は認めるけれども鉄道の事業については争うことはできないと、こういう判断を下したわけですが、この訴訟については本法案でどういう変化が起きると思われるでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この事件は、現在、最高裁に係属中でございまして、この点について今私がここでお答えするのはやっぱり適当ではないだろうということで、その点は御勘弁をいただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 もう一点、そうしたら、現在、第二電電が NTT の接続料金の値上げ認可の取消しを求める訴訟を行っております。認可を受けたのは NTT ということで、認可対象でない利用者は不利益を受けるとしても対象でないというような、この間の流れからいいますと、当時の片山総務大臣は、却下されるんじゃないかと、こういうような発言もされておりますけれども、こういう場合もこのケースではいかがかと。また、反射的に電話料金の値上げで不利益を被る一般国民が出訴をするという場合にはどうなるのか。いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 前段の問題につきましては、ちょっと事件、まだ係属中でございますので、この点についてはちょっと御勘弁をいただきたいというふうに思います。

 それから、後段の方は、一般的設例という理解でおりますけれども、例えば電話料金の値上げについて一般の方が出訴できるかどうかという点につきましては、この法がどういう建前を取っているかということになるわけでございますけれども、どうも私もこの点、必ずしも詳しくはございませんけれども、法の建前といたしましては、電気通信事業法上、契約約款の一内容として総務大臣に対して届け出ることで足りる場合もあるというふうに聞いております。そうなりますと、届出だけの問題であれば、これはもう処分とかそういう問題ではないということになるわけでございますが、ただ、例外もございますようで、総務大臣の認可を要する場合もあるということでございます。

 認可を要する場合の認可の取消しの訴えの原告適格については、この電気事業法の趣旨及び目的のほか、許可をしてはならない事由としてその法律の二十一条三項に各号列挙をされておりますので、そういう事由、こういう点も踏まえまして、認可において考慮されるべき利益の内容及び性質等について考慮することによって判断をしていくということになろうかと思います。

 これは、ちょっと今一般的に申し上げるのはなかなか難しいわけでございますけれども、この各号列挙で何が掲げられているかということだけはちょっと御紹介をしたいというふうに思います。

 これにつきましては、二十一条の三項の各号でございますけれども、これにつきましては、「総務大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、基準料金指数以下の料金指数の料金により難い特別な事情があり、かつ、当該申請に係る変更後の料金が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、同項の認可をしなければならない。」と、こういう規定になっておりまして、一号として、「料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていないこと。」、それから「特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであること。」、それから「他の電気通信事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その他社会的経済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を阻害するものであること。」と、こういう条項が置かれているわけでございまして、まず、この条項で一体どういうものを守ろうとしているのか、こういう点も判断し、現実にどういう実害が生じているのか、こういう点も総合的に考えて当事者適格を定めていくと、こういうことを行政事件訴訟法では言うことになるわけでございますが、それを総合的に判断をしていただいて、当事者適格があるかどうか、これを決めてもらう、こういうことになるわけでございます。

井上哲士君

 これ、ずっと朝から議論が続いておるわけでありますが、考慮事項の列挙で確かに一定の改善になるんだろうと思うんですが、やはりこれ、どうも答弁を聞いておりますと、そう大きくは前進しないんではないかと、こういう懸念を非常に抱くんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 朝からこの質問責めでございますけれども、私、いろいろなところから批判受けていることは、それはもう承知をしておりますけれども、今まで、解釈でございますから、それは解釈はその裁判所、裁判官、それは自由でございますから、事案事案によって考えていくわけでございますから、仮にかなり広く認めた判例があったとしても、じゃ、ほかの裁判例で必ずしもそのとおりにいくのか、それを利用するのかといったら、そうではない、解釈でございますから、その事案事案に適したものでいいと、こういうことになるわけでございます。

 したがいまして、判例で、何かそういうことが一つ出た、あるいはこういう要素を判断したものがあるといっても、そのままに存置しておきますと、全体として拡大していくのかというと必ずしもそうなるかどうか、保証の限りではないわけでございます。

 したがいまして、今回、この考慮要素、四つ入れさせていただきましたけれども、これは今までの判例等で何か出てきている要素でありまして、これで我々としてやっぱりここの点を盛り込めば広がっていくだろうと考えたものをこの中に盛り込んでいるわけでございますが、これは今回の法律が置かれることによって必ずこの考慮要素については判断をしなければならないという命題になるわけでございますので、今までのように解釈で自由にやってもいいということにはなりません。

 したがいまして、最低限ここは考えていただくということになりますし、これを踏まえた上で、まだ更に解釈の問題も当然出てくるわけでございますので、そういう意味では、全体的にかなり広がっていくだろうと私どもは考えておりまして、また期待もしているわけでございます。

井上哲士君

 期待をしているということでありましたけれども、大きく変わる一つのかぎは国の応訴態度にあると思うんですね。

 先ほど紹介した福岡の学資保険裁判の当時の訟務局長が事務局長だったというお話がありましたけれども、国側が訴えられたときに相手に原告適格がないじゃないかということで争うケースというのは結構多いわけですよ。それが、この法律が成立しても、これまでと同じように原告適格を争うというような応訴態度を国が取ったらこれは何も変わらないし、むしろこの法案の水準で変わるというならば大きな変化が私は起こると思うんです。

 当然、法案を提出をした政府としてそういうふうな応訴態度が大きく変わるということで、これは大臣から御確認の答弁をいただきたいと思います。

国務大臣(野沢太三君)

 今回の改正におきましては、原告適格の判断におきまして法律の趣旨、目的や処分において考慮されるべき利益の内容、性質などを考慮すべき旨が規定されているところでございますが、法務省といたしましては、改正の趣旨に沿いまして適切な対応を取ってまいりたいと考えておるところでございます。

井上哲士君

 裁判迅速化法ができまして、法務省としてきちっと趣旨に沿った対応をするようにというようなパンフレットを出されていたこともこの間委員会で質問をいたしましたけれども、国側がどういう対応をするかというのは地方自治体もよく見ているわけですね。法律はできたけれども、結局、同じように原告適格を国も争ったじゃないかということになりますと、裁判としても延びまして、全く趣旨とも変わるわけでありますから、これは是非、正に法務省の決断でできることでありますので、お願いを繰り返ししておきます。

 次に、新たな救済手段が設けられた点についてお聞きをいたします。

 これ自体は大変前進なわけでありますけれども、例えば都市計画道路等で、都市計画決定そのものが違法だと、こういう場合が争うことができないということで退けられていろいろ問題になってまいりましたけれども、これ自体は解決をしておりません。裁判所が無名抗告訴訟に対して非常に消極的な態度を取っているということを見ますと、更にこの救済手法とか救済対象を拡大をすることが必要かと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま都市計画の例を出されたわけでございますけれども、これが計画がされた段階で早期にその都市計画について争いの対象にするかどうかという点、これは従来からもいろいろ議論がされているわけでございまして、判例上も否定されているものもあるということでございます。

 この点も私どもの検討会でもいろいろ議論はいたしましたけれども、この都市計画を直接の訴訟の対象として公共事業の計画段階などの早期の司法審査を認めるということが適切かどうかという点でございまして、これにつきましては、例えば、もしそれを認めることになりますと、その段階で出訴期間も適用になるわけでございますので、かなり早い段階できちっと対応しておかなければ後で争えなくなるということも出てくるわけでございまして、本当にそういうことでいいのかどうかという点も重々検討を加えなければならないという問題でございます。

 これは、訴訟法上物を考えるというよりも、それぞれそういう政策をお持ちの各行政庁でそれをどうしていくのが一番いいのかというまず実体法の判断が優先すべきことでございます。

 したがいまして、この点についてはそういうその対象のいろいろな行政行為をお持ちのところでまず基本的に検討していただくと、こういう命題であろうというふうに理解をしておるわけでございます。

 それから、全体として出訴期間とか、そういう関連とか、そういうこと、それから後で争いたい場合についてどうしていくかということとか、全体の手続の流れ、これをきちっと定めておかないととんでもない混乱が生じてしまうということにもなるわけでございますので、これは抜本的な検討が必要だということになります。これは、手続法のレベルからだけ検討するというのでは足りないということから、今回は手続法の観点から可能なものについてやっていくということで検討の対象から落としたということで、今後の検討課題であるという位置付けだろうというふうに思っております。

井上哲士君

 今回、新たに行政訴訟の類型が加わるわけですが、たくさんのそういうメニューがありますけれども、こういう行政訴訟に熟知されている方ばかりではありませんから、どういう類型を選ぶのか、事件によっては非常に場合分けが難しいケースが多いと思うんですね。その類型の選び方によって判決も変わるということもあるわけで、類型間の移動、変更というのを柔軟に認めるという運用が必要だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、いろんな類型ができますので、類型を誤ったときにそれで終わりと言われると、やっぱり国民としては、それはやや酷ではないかという問題も生ずるわけでございますが、先ほどもちょっと答弁させていただきましたけれども、被告の、被告適格というんですか、被告の対象が基本的には国あるいは地方公共団体ということになるわけでございますので、そうなりますといろんな態様の訴訟も、相手は国になるわけでございますから、そうすると国の、官の訴訟類型の変更ということになりますので、今までのように処分庁、対象者が変わるということにはなりませんので、そういう意味では変更はある程度しやすくなってくるということでこの規定を設けさせていただいておりますけれども、ただこれ、余りくるくるくるくる変わっていってはこれはもう裁判の対象何であるかということになります。ただ、やはりある程度柔軟に処理をして、実質的な解決ができるようにというふうにすべきであるということは間違いないということでございます。

井上哲士君

 今回、抗告訴訟の一類型として義務付け訴訟と差止め訴訟が法定をされました。これはこれまでも無名抗告訴訟として認められるというのが通説ではあったと思うんですが、実際には判決では認められてこなかったと。その理由は何なのか。そして、今回の改正でどういうことが期待をされているのか、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、御指摘のとおり、現在でも無名抗告訴訟として解釈上は可能であるというふうに理解をされておりますけれども、実はその要件等についてなかなかその通説的な見解がない、いろいろ見解が分かれているという状況でございますので、そうなりますと、裁判を起こしてもそれが認められるのかどうかということ、これについて確たるものがないという状況でございますので、起こしにくいということは間違いございません。そういう影響を受けてというふうに思われますけれども、余り件数もない、それから認められたものもないと、こういう状況であったわけでございます。

 しかしながら、やっぱりニーズはあるということから、この類型を認めていこうということでございます。これを比喩的に言えば、民事訴訟法では確認の訴え、形成の訴え、それから給付の訴え、それから場合によっては差止めももちろんございますね、そういうような類型を認めているわけでございます。それで、行政の方は基本的には形成の訴え、取消しというのは形成の訴えでございますので、これを中心にしているわけでございまして、あと確認訴訟もあることはありますけれども、いわゆる給付的な訴えとかですね、差止め的な訴えがないといえばないわけでございます。したがいまして、今回の改正は限りなく民事訴訟の訴訟類型手段、これに近づけようということでございます。

 先ほど来申し上げております義務付け訴訟につきましては、一種の給付的なものでございますので、こういう処分をしなければならないと、これを命ずるわけでございますので、金幾らを払えというのとほぼ同じものでございます。

 それから、差止めの訴訟につきましては、こういう処分をしてはならないというわけでございますので、これは民事でも差止めの訴訟がございますけれども、それと同じ機能を果たすものということでございまして、これだけ社会が複雑になってまいりまして行政行為が増えてまいりますと、こういう対応のものも設けてないと権利保護のために不十分な場合も生じてくると、こういうことから設けたということでございます。

井上哲士君

 新たに設けられたわけですが、この二つの類型とも原告勝訴の判決を行うのは非常に厳しい要件があるんですね。その「訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき」と、大変厳しい要件が入っております。取消し訴訟の場合には判決にこういうような要件の規定はないかと思うんですが、この義務付け訴訟、差止め訴訟の二つの類型にこういう厳しい要件を付けたのはどういう理由なんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは二通りございまして、まず義務付けでございますけれども、法令によって申請権が認められているもの、これが拒否をされるという場合がございます。このときに、取消しだけではなくてこういう処分をせよと、こういうタイプがございます。これにつきましては、端的に法令に基づく申請が違法に拒否され又は放置されたことが要件とされているわけでございまして、これについては何も要件を設けていない、これは当然でございますね、そういう位置付けにしております。

 もう一つの類型の点でございますが、これは申請権が認められていないタイプのものでございまして、これにつきましては、例えば他人に対する規制権限の行使などの処分を求めるような場合、こういう義務付けもできるわけでございます。そうなりますと、これは申請権のない者が行政の介入を求めるということになるわけでございますので、そう簡単に申請権がない者はそこの中に入っていくというのはそうだれでもいいよというわけにはいかないと、こういう前提があるわけでございます。そこで、一定の処分がされないことによって重大な損害を生ずるおそれがあるということがやっぱりどうしても一つ必要になるわけで、余り何も影響がないのに勝手にやめてくれやめてくれということにはならないということですね。

 それと、もう一つは、その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限って提起をすることができるということでございまして、これは法令上こういう場合には他の訴訟類型を用意しているものもあるわけでございますので、そういうものについてはそれで利用をしていただきたい、こういうことを言っているわけでございます。これについては民事訴訟ができるから、それで、それによればいいんであって、こちらを利用することができないと、そういう解釈ではございません。民事訴訟は民事訴訟でやっていただく、こちらはこちらということでございますが、行政上の争い方についても別途法律で決まっているものもあります。そういうものについてはそれを利用していただきたいと、これを言っているだけということでございます。基本は、ここで言っているのは、やっぱり重大な損害を生ずるおそれがあるかどうか、これが基本の要件だということになるわけです。

 それから差止めの方でございますけれども、これはその処分、裁決がいまだにされてないわけでございまして、それを事前にその判断をするということになるわけでございますので、これはある意味じゃ行政が処分する前に司法が入り込んでいくということになるわけで、一線を中に入るということになるわけでございますので、そうなりますと、やはりその一定の処分又は裁決がされることによって重大な損害を生ずるおそれがある場合に限ってそういう提起をすることができるというふうにしないと、だれでもかれでも、じゃ事前に差止めで中に入っていけるということになるのは、やっぱり行政と立法のその境をどこにするかという問題の一線を超えるときに、それではちょっとまずいだろうということからこういうものを設けていると。

 それから、例外的に、先ほど申し上げましたように、損害を避けるために他に適当な方法があるとき、これはできないと。これは先ほどと同じ考え方でございますので、言わば行政と司法の境をどういうふうにしていくかということの範囲を変えていくわけでございますので、申請権があるもの以外のものについては、それについてはやっぱり重大な損害とかそういうおそれがあるものに限るべきであると、こういう考えでございます。

井上哲士君

 今のに関連ですけれども、行政処分については一般に行政不服審判法による行政不服審査が行えるということになっていますが、今の二つの類型とも他に損害を避ける適当な手段がないときに限って認めるということになっておりますが、これは行政不服審査を経ないと出訴できないと、こういう趣旨でしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 いや、それとは関係はございません。別途、行政不服審査とは違って、法律上、こういう訴訟によらなければならないというのが規定されておりますので、そういうものをいうわけでございますので、それほど例が一杯あるわけではございません。

 例えば、ちょっと一点だけ具体的にちょっと申し上げたいと思いますけれども、税金の更正の請求でございますけれども、期間経過前は義務付けの訴えは不適法となりまして、その期間経過後の場合も、更正の請求の制度を設けつつ、その請求期間を限定して、その租税法律関係の安定を図った制度、こういうものを設けているわけでございますので、これについてはその制度を利用してもらうということでございます。

 これが、例えば過大な申告をした場合に、その税額の減額をする更正の請求の制度が別途あるような場合に、その損害を避けるための方策が個別法の中で特別に定められているような、こういうような場合には、減額更正処分の義務付けを求めるというようなことについては別途その規定があるものですから、これは他に、損害を避けるため他に適当な方法があるということになるわけでございますのでこの義務付け訴訟を使うことはできないと、こういう解釈でございます。

井上哲士君

 この義務付けと差止め訴訟が法定化されたことに伴いまして新たな仮の救済制度というのが設けられましたけれども、この趣旨はどういうことでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、義務付け訴訟、それから差止め訴訟はできましたけれども、これを訴え提起をいたしましても、直ちにそこで結論が出るというわけにはいかないわけでございます。したがいまして、そのまま放置をしておきますとその方の生活について重大な支障が生ずる場合もあり得るわけでございます。

 例えば、公的給付等についてこういうような処分を、金幾らを支払う処分をしなければならないということを裁判で起こしましても、直ちにそれで支払われるわけではございません。そうなりますと、その金銭で生活をしている方については途端に生活が困ってしまうわけでございます。場合によっては命にも影響してくるということになりますので、そういう状況のある方については、訴えを提起したときに仮の義務付け、これを行いまして、いわゆる仮処分でございます、民事でいえば、それで、断行の仮処分的なものになろうかと思いますけれども、仮に金幾らを給付する、その処分をしなければならない、こういうものを認めて、国民が本当に困った状況にはならない、そういう手段を与えると、こういうことでございます。

井上哲士君

 新しい制度が設けられること自身は確かに前進なんですが、ただ、大変固い要件なんですね、これも。執行停止の場合は、回復の困難な損害という要件が重大な損害ということに緩和をされたわけですね。ところが、この仮の救済制度については、償うことができない損害を避けるためという要件になっております。

 今、大半のことが慰謝料とか損害賠償で償うということが行われておりますから、こういう償うことができない損害を避けるためという要件を付けると相当狭くなるんではないか。新聞の中で例えばある学者が指摘されていますけれども、例えば公立高校の入試で、成績上位者が身体障害者というだけの理由で不合格となった場合、仮入学できる可能性が開けるが、その基準は償うことのできない損害を被る場合というと。この表現だと一年や二年浪人しても人生は償えるとして、救済されないかもしれないと。同級生と一緒に四月に仮入学ができるように、重大な損害と要件を修正するべきじゃないかと、こういう指摘もあるわけでありますが、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは、そもそも義務付け、差止めというのは、本来、行政庁が行うべきところを、もうその前に司法がその判断をするわけでございます。それに、かつまた緊急状態で仮のものを認めるわけでございますから、その判断変わることもあり得るわけですね、物によっては。そうなりますると、まだ十分に審議をしないままでも認めるわけでございますので、そうなりますと、そう簡単にだれでもかれでもできるということではございませんで、仮にこの給付、仮に払ってしまいまして、後で結論ひっくり返りましても、多分それを返還することはもう不可能だろうということにもなるわけでございます。

 そういう意味から、償うことのできない損害ということを求めているわけでございますが、仮に先ほど私申し上げたような例で生活ができないということは、これはもう償うことのできない損害であろうというふうにも考えられます。

 それから、ちょっと事案によって先ほど御指摘あった点、具体的にどういう事案を言うのかはちょっと別として、一般的に言えば、その仮の入学を認めるとか、こういう点につきましては、じゃ、そこの一年二年はいいじゃないかという議論になるのか、一番可塑性に富んだ時期の一年二年、これは人生で本当に取り返しが付くのかどうかという、そういう判断にもなろうかと思います。

 そういう判断いかんによっては、当然償うことのできない損害というふうに解釈される余地もあるわけでございますので、今後のまた事例を柔軟に解釈していく問題であろうというふうに考えております。

井上哲士君

 次に、確認訴訟のことについて、まず大臣にお聞きします。

 当事者訴訟として確認訴訟というのが例示をされることになります。従来から、この確認訴訟は当事者訴訟に含まれると言われておったわけですが、これをわざわざ今回例示をしたその理由は何でしょうか。

国務大臣(野沢太三君)

 行政需要の増大と行政作用の多様化が進展する中で、典型的な行政作用を念頭に置きまして、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を対象としている取消し訴訟などの抗告訴訟のみでは、国民の権利利益の実効的な救済を図ることが困難な場合が生じておるわけでございます。

 御指摘のとおり、公法上の法律関係に関する確認の訴えにつきましては、これまでも当事者訴訟に含まれると解されていたと考えられます。

 これを当事者訴訟の一類型として例示することとした趣旨につきましては、ただいま申し上げましたような状況に対応するために、抗告訴訟の対象とならない行政の行為を契機として争いが生じた公法上の法律関係に関して、確認の利益が認められる場合については現行の行政事件訴訟法においても当事者訴訟としての確認訴訟が可能であることを明らかにいたしまして、その活用による多様な権利利益の実効的な救済を図ろうと、こういう考えで実施したものでございます。

井上哲士君

 大いに活用されることが期待されて作られたわけですが、そこでちょっと聞くんですけれども、民事の確認訴訟というのもあります。それと、この行政訴訟の確認訴訟がどう違うのか、特に規定はないわけですが、原告適格、それから判決が行われる場合の判断基準、出訴期間などなど、民事とどう違うのか同じなのか、この点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 基本的には、民事訴訟は私法上の法律関係の確認、これを目的とするものでございます。行政訴訟につきましては公法上の法律関係の確認を目的とすると。この違いは当然あるわけでございますが、それ以外の点についてはどちらも確認の利益を有するものについて原告適格は認められます。それから、判断基準は、これはもう実体法の問題ですから、これも同じだということになります。出訴期間はどちらもないということですから、基本的には同じだという理解をしております。

井上哲士君

 抗告訴訟の場合は仮の救済制度というのが整備をされておりますが、確認訴訟にはありません。例えば労働者としての地位の確認を求めるという場合などは、法律関係に、そういう場合などですね、法律関係によっては仮の救済制度を作るという必要もあるかと思うんですけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは、公務員の労働者の場合には懲戒免職によってその地位を失うということになるわけでございまして、当該処分について取消し訴訟を提起するということになろうかと思います。その取消し訴訟を提起するとともに、仮の救済といたしましては、処分の執行停止の制度が現在もありますので、これを御利用いただいて仮の救済と同じ効果を生じていくと、こういうことでございますので、手段はこちらで用意がされているというふうに理解をしていただきたいと思います。

井上哲士君

 今日はこれで終わります。

委員長(山本保君)

 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。

午後四時三十二分散会


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