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2004年11月18日(木)

法務委員会
「裁判外紛争解決手続きの利用に関する法律案(ADR法案)」(質疑終局まで)

  • 裁判外紛争機関(ADR)として認証された後のADRの公正、中立性の確保について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 前回の質問で、ADR機関の信頼性を高め、育てていく上で、認証に当たっては公正、中立性について厳格な審査を行うことが必要だということを指摘をいたしました。同時に、過去の紛争解決実績を含めたADR機関の情報開示も求めたわけですが、今日は、認証された後のADRの公正、中立性の確保の問題についてまずお聞きをいたします。

 第七条の七号で、認証解決事業者である法人であるものが認証を取り消された場合に、その取消し前六十日以内にその役員であった者は、五年間は認証を受けることができないと、こういう規定があるわけですが、この役員だった者が個人で認証を受けられないのは明確だと思うんですが、他の認証解決事業者の役員になるということは可能なんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 そういう者が、前に、以前に取り消されたという者が他の役員等になって申請をするというような場合につきましては、これは認証の段階であれば、その認証のやっぱり欠格事由、七号と九号にそれを置いておりますので、その欠格事由に当たるということになりますし、後日それが判明したという場合は、二十三条に規定がございますので、そこで必要的に認証を取り消すということになろうかと思います。

井上哲士君

 今ありました七条の九号で、「法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに前各号のいずれかに該当する者のあるもの」と、こういう規定で欠格ということになるんだと思うんですが、ここには「役員又は政令で定める使用人」というふうになっております。

 これはどういう範囲になるのか。例えば、役員ではないけれども、実際上、事務所の責任者として取り仕切っていたと、こういう人もこの「政令で定める使用人」という範囲に入るんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは政令で定めることになりますけれども、物すごく分かりやすく言えば、会社でちょっと考えていただきまして、取締役はこれ役員でございますけれども、通常、下であれば部長クラスがおると思いますけれども、その辺のイメージを言っているわけでございますけれども、それをもう少し抽象的に言えば、法人の業務執行上重要な職責を負う職員で、役員に準ずるものとして取り扱うという趣旨でございます。今言われました、言いましたように、大体部長クラスのイメージということでございます。

井上哲士君

 そうしますと、その機関の規模などにもかかわるわけですけれども、例えば支店長などでも、会社の場合、部長ということもあり得るわけで、場合によってはこういう事務所の責任者なども含まれていくと、こういうことでよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 そうですね、その部署の責任者ですね、そういうものも当然含んでいくようなそういうイメージでございます。

井上哲士君

 次に、認証の在り方とともに、問題がある場合に機敏、的確に対応する必要があると思います。国が認証ADR機関から定期的に報告を受けて、それに基づいて必要な検査をするわけですけれども、同時に、利用者から直接苦情を聞くというのは非常に大事だと思います。衆議院の答弁では、何らかの工夫をして、苦情をきちっと自ら受け取るということもしていく方向で考えざるを得ないと、こう述べられたわけですが、どういう工夫をして、どこがどういう方法でこういう苦情を受けることをお考えなのか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これはまだ具体的にどこの部局がこの事務を担当するかということは決まっておりませんが、いずれにいたしましても、法務省の本省の担当部局というものを中心にいたしまして、いろいろな苦情を承り、それでその苦情の種類に応じて様々な対応が必要になるとは思いますが、必要であれば、認証ADR機関から事情をお聞かせ願う、あるいはさらに様々な形で資料の提出を願うというようなことも必要になってくるだろうというふうに考えております。

井上哲士君

 利用者の方で直接法務省に苦情を言う人というのはなかなかいないと思うんですね。ADR機関とすぐ法務省というのが、認証の確かに標識はあるかもしれませんけれども、結び付かないわけで、もっと言わば苦情のアクセスがしやすいような窓口を広く、しかも全国的に要ると思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 もちろん、ただいま私どももサービサーの関係の事務をやっておりますけれども、想像以上に最近は直接電子メール等で苦情をお寄せいただく方もおいでになる、あるいは投書の形で苦情をお寄せいただく方もありますので、法務省が決してこの苦情の面で敷居が高いというわけではないだろうというふうには思っておりますが、ただ、おっしゃるとおり、いろんな方がおいでになるわけで、地方においでになる方が必ずしもアクセスについて十分な御理解を得ているとは限りませんので、その辺はまた司法支援センター等のいろいろな情報関連機関と協働いたしまして、これについての処理が適切に行われるように対処を検討してまいりたいと、このように考えております。

井上哲士君

 そうすると、いわゆる総合司法支援センターの窓口でもこういう苦情を受け付けていくという方向でよろしいんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 司法支援センターがこれを、苦情の処理を表看板にするかどうかということは別でございますが、いろいろな形で相談が寄せられます。その中には当然こういう苦情の処理があるだろうと。そういう苦情処理をどう本省の関係機関に伝達するかということについて、支援センターの方と十分な協議をしたいというふうに思っております。

井上哲士君

 看板にするかはどうかとしても、とにかくうちは違いますということでたらい回しになるようなことがないようにこれはお願いをしたいと思うんですが、そういう窓口に寄せられた苦情というものも、プライバシー等には配慮をしつつ、しかるべくやっぱり国民に開示をされるということが、この間言われていましたような、やはりある意味での淘汰ということからいっても大変大事だと思うんですが、そういう言わば開示についてもお考えでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは何度も申していることでございますけれども、一般的にこの認証ADR機関の仕組みといいますのは、何でもかんでも国が規制してしまうというんではなくて、むしろ利用者の方が適切な機関を選んでいただけるような仕組みを作るということにございますので、この開示、情報の開示というのが非常に大きな決め手になります。そのために十一条と三十一条で情報開示の規定を置いておりまして、十一条では自ら開示する必要のある事項を定め、さらに、補充的ではございますけれども、法務省自体が必要な情報を開示するということでございます。

 その内容についてはもちろん、今委員自身が御指摘になられましたように、非常に機微にわたる、プライバシーに当たるような事項もございますので、個々の案件についての情報というのは慎重に扱わなければなりませんが、概括的にどのような傾向にあるかというようなことについては、これは、法務省自身もそうでございますし、またそれぞれの機関が自分のところはどういう苦情を受けていてどういう処理をしているかということ自体もその機関の信用にかかわることでございますので、そういうことについて、できるだけ分かりやすい情報で、かつ、先ほど申したようなプライバシーに反しないような方法を工夫してやっていただけるように私どもとしても検討してまいりたいと、このように考えております。

井上哲士君

 情報開示というのは本当に大事なポイントになると思いますので、是非お願いをしたいと思います。

 次に、人材の育成についてお聞きをいたします。

 衆議院の参考人質疑で青山教授が、ADRが伸びるか否かは手続実施者に人を得ることができるか否かに懸かっていると述べられました。私も同感です。

 司法制度改革の推進計画では、必要な知識、技能に関する研修などを充実させる方策を検討し、平成十六年三月までに所要の措置を講ずるということが閣議決定をされておりますし、それに基づいてアクションプログラムで人材の育成に関する相互の協力体制を整備するということが目標として掲げられておりますが、この閣議決定された計画に基づいてこれまでどういうことが実施をされてきたのか。そして、本法案が成立しますと一層この問題重要になると思うんですが、この民間型ADRを育てていくという点で必要な知識、技能に関する研修等をどのように充実させるとお考えか。いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘の点、大変重要なポイントでございます。私ども、この関係では、これのみならず、各省の横断的な連絡協議会、これを設けて、様々な議論をこれから続けていくと、こういう体制を作り上げたわけでございます。その中で、アクションプランが出されたわけでございます。

 これに基づきまして、私どもの本部事務局といたしましては、本年の三月に、各種相談窓口の紛争解決手段に関する総合的な案内サービス機能の充実強化、これを目的といたしまして、相談窓口担当者等を対象に研修を行いました。その研修で、司法型、行政型、民間型のADRの機関について、その概要あるいは手続の内容等を把握してもらうために各機関の実務担当者を講師として招き、説明をしてもらって、参加者の理解を深めました。こういう行動をしております。そのほかにも、各府省におきまして、例えば研修プログラムの開発の支援を行うなど、そのアクションプランに基づいて様々な活動を行っております。

 今後は、こういう活動につきましては、引き続きこの本部が終わっても政府の横断的なものとしてその会議はそのまま残って、残して、人材の育成あるいは広報活動、そういうものについてきちっとやってまいりたいと考えております。

井上哲士君

 この横断的組織には最高裁も参加をされているわけですけれども、最高裁としてはこういう人材の育成にどのように貢献をされていく計画なのか。例えば調停委員等の研修とADRの担当者の研修など、重なる部分は有機的結合などもあってもいいんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)

 認証ADRと裁判手続とは互いに協力し合い、補完し合う関係にあるというように考えておりますので、裁判所としましても、認証ADRの手続が順調に進むように、できる限りの協力をしていきたいというように考えております。

 具体的にどのような協力ができるかでありますが、認証ADR機関がまだ発足していない現段階におきましては確定的なことまで述べることはできませんが、裁判所には御指摘のように民事調停や家事調停というADRの手続を運営してきました長い歴史がございます。その経験と実績に基づきまして、例えば一定の実績のある認証ADR機関から研修の講師の派遣依頼を受けました場合には、裁判所から当該研修に対して適切な講師を派遣するというような協力をすることが考えられるというように思います。ADRの機関の研修に講師を派遣するというようなことのほかにも、具体的に制度が動き始めますといろいろ考えられる可能性がありますが、現在はそのようなことを考えておるところでございます。

井上哲士君

 是非、更に踏み込んだ協力をお願いしたいと思うんですが、それ以外に最高裁としてこのADRの、育てていくためにどういう協力をお考えか。この例えばアクションプログラムなどを見ますと、裁判所における情報提供の担当部署を明らかにする等必要な措置を講ずるということも書いてありますし、判例の普及であるとか、それから専門家情報の提供、交換などいろいろやることがあると思うんですが、この点いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)

 まず、判例の提供についてでございますが、認証ADR機関は法的素養を備えるか、あるいは法的な助言を受けることができるということを確認の上で認証を受けておりますので、基本的な判例につきましては、認証ADR機関自身で研究し、あるいは習得をしていただくべきものであろうというようには考えております。

 ただ、最新の判例に関する情報提供につきましては、裁判所が国民に対して提供していくという必要がございますので、現在、例えば最高裁のホームページにおいて迅速に最高裁判例を紹介するというような体制を取っております。認証ADR機関においてもこれらを利用して研究をしていただけるものというように考えております。

 それから、裁判所の窓口と認証ADR機関の関係でございますけれども、裁判所では受付窓口において手続教示の事務を行っております。この中には、裁判所内の手続を案内するということばかりではなく、例えば弁護士会の法律相談について案内するというようなこともやってございます。

 したがいまして、認証ADR機関が発足して活動実績を上げるようになりますと、裁判所としましても、その活動実績から見て相当と認められるというものにつきましては、認証ADR機関の所在場所、活動内容などについて紹介をするというようなことが考えられようかと思っております。

井上哲士君

 これ広げていく上で広報が大事だということも先ほどお話がありまして、ホームページなども大いに活用するというお話なんですが、例えば、山崎事務局長はホームページでADRを検索された経験はありますか。

政府参考人(山崎潮君)

 私は機械に弱いものですから、パソコンの方はほとんど触っておりませんので、ございません。

井上哲士君

 実は私、質問するに当たりましていつもホームページ、インターネットを活用するんですが、ヤフーでADR検索しますと、一切ヒットしないんです。これだけ質疑で言われたので改善されているかと思って、先ほど昼休みに確認しましたけれども、やっぱりヒットしないんです。グーグルだったら随分ヒットするんですね。ですから、多分その登録の段階できちんとされていないのかなとか、ちょっとよく分からないんですけれども、全くADRではヤフーは出てこないんです。ですから、かなり前からやられて強調されている割にはこういう状況というのがあるわけで、それは現実に国民に届くというところまで見届けたことが必要だと思います。

 最後に、大臣にお聞きするんですが、今後、認証ADRは法務省、行政型は各省庁、そして司法型は裁判所というふうに所管も分かれてまいります。先ほど、関係機関の連携の会議などは続けていくということを言われましたけれども、広報についても今言ったようなまだ状況があるわけですから、さらに人材の育成とか解決事例の蓄積とか公表、そういう政府として総合的に検討を推進していくということは、もう少し踏み込んだ私は政府としての推進体制が必要だと思うんですが、司法制度改革推進本部も一応の期限が切れるという以降、どういう推進体制を確立させていくのか、その点をお伺いをいたします。

国務大臣(南野知惠子君)

 お答え申し上げますが、その前に、インターネットであれば最高裁のホームぺージなら今このADRの問題について見解が取れるというふうに思っておりますので、また時間があればお試しいただければというふうに思っております。

 今のお尋ねの件でございますが、ADRの拡充・活性化に関しましては、司法制度の改革推進本部の設置期限後におきましても、本法律案に基づく認証の事務を行うこととなる法務省と、それを始めとする各省、各担当府省におきまして、総合調整を担当するまた内閣の方におきましても、両方相まちまして引き続き責任を持って取り組むことになると思いますので、どうぞ、頑張ってまいりますからよろしくお願いいたします。

井上哲士君

 終わります。


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