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2006年2月15日(水)

参院・経済・産業・雇用に関する調査会
「経済及び所得格差問題」について

  • 格差の現状について、格差が拡大傾向にあるという認識で一致。若い世代での格差拡大が今の特徴のひとつであり、将来の日本にとって重大な問題になっていることが指摘される。

井上哲士君

 今日は三人の参考人の皆さんありがとうございます。

 今度の国会でもその格差問題というのは大変大きな論争のテーマになっておりまして、当初総理も、格差が開いているとは思わないという答弁から、格差があっても悪いとは思わないということを、当参議院の予算委員会でも言われました。

 それで、それぞれの方から評価や程度の差はあれ、格差が拡大をしているということについては共通の御意見だったと思うんですが、そこで、まず水野参考人と勇上参考人にお聞きするんですが、山田参考人は、あらゆる先進国で不安定化が発生したのであって、日本の政策失敗ではないと、こういうふうに言われたわけですが、先ほども、全体、世界的なIT化の関係のお話はありましたけれども、しかし、これだけあらゆる分野で、まあ大企業と中小企業、地方と大都市なども含めて格差が広がっているというその日本的特徴を言わば加速をさせた政策的対応については、それぞれどうお考えになっているかということをそれぞれにお聞きしたいと思います。

 それから、山田参考人に二点お聞きしたいんですが、私はやっぱりすべての人々が希望を持てる社会というのが必要だと思っているんですが、中には、一握りの能力がある人が全体を引っ張って、あとは言わば分を知って生きればいいんだと、こういう議論もあると思うんですね。山田参考人は、そういう希望格差社会と言われるものが、今の若い人たちの状況がずっと主流になって年を取っていく、そういう社会になることが、どういう社会、やはりどういう問題をお持ちとお考えになっているかということが一つです。

 それからもう一つは、今あのいわゆるライブドアの堀江氏の問題が起きているわけですが、いわゆる彼に対して、非常に若い人たち、特にフリーターなんかをされている人たちが彼に夢を感じて支援をしたということも随分あるわけですね。今回のああいう事件によって、そういう、まあ先生、意識の問題が御専攻なので、そういう若者の今後の意識にどんな変化を与えるとお考えか、少し御意見があればお聞きしたいと思います。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 では、水野参考人、お願いします。

参考人(水野和夫君)

 この格差が拡大したことについての政策の評価という御質問だと思いますが、私はいろんな格差というのが九五年ぐらいから加速的に付いてきて、さらに、二〇〇〇年以降、二〇〇一年、二〇〇二年ですかね、その辺りから一段と更に加速しているという現状だと思います。

 これは、本来ならば九五年前後に世界の枠組みが大きく変わってきたのだと思います。ところが、日本の場合は、幸か不幸か、まだそのとき不良債権問題があって、まだ過去の対応に追われていて、で、世界のグローバル化、あるいは山田先生がおっしゃるようなニューエコノミーとか、それに、前に世界が進んでいるのに後ろ向きの処理に追われていて、それが二〇〇二年、二〇〇一年ぐらいまで掛かってしまって、その後、市場原理主義的な政策を取ることによって今までの九五年から本来やっておくべき世界の流れに付いていくのを一気に取り戻そうとしたということで、より、ちょっと加速させるのもやむを得ないような選択だったと思います。

 ただ、その結果、いろいろな指標を見ますと、非貯蓄保有世帯がもう四世帯に一軒とか、それから就学援助を受けているお子様が区によっては四割にも達するというような、もうこれは明らかに私は行き過ぎの領域に入っていると思いますので、加速、二〇〇〇年以降から世界の大きな変化が起きたために市場原理主義的な施策を取ること自体は、それは、まあやむを得なかったと思いますが、同時に、やはりこれだけ格差が増えるということはある程度予見して、セーフティーネットとかそういうものはやはり同時進行、本当はした方がよかったかなと思いますので、功罪私は半ばだなというふうに思っています。

会長(広中和歌子君)

 じゃ、勇上参考人、お願いいたします。

参考人(勇上和史君)

 今の御質問にお答えしますと、私は雇用問題専門にやっております。その点から見ますと、やはり九五年ごろから、本日お話ししました若者の格差につながるような動きが見られたと、労働市場において見られたと。ただ、若年の就業機会が極端に量的にも質的にも変わってきたというときに、やはり、今でこそ若年の問題はかなり政策的なマターになりますし、一括のワンストップセンターとかそうしたものが、施策的なものが整備されてきたわけですが、やはりそこを九五年から見ますと、もう既に十年たっております。ですから、そうした意味で、何かをやったことの失敗という評価よりは、やはり基本的には不況の問題だということで、十年前から少しその取組が遅れたことがあるのかなというふうなことは感じます。

 ですが、雇用形態の多様化自体がその政策の下で進んだということは、特に派遣社員に関して規制緩和はありましたが、まだ就業人口で見ますと女性でも数%、三十代の雇用者の中の例えば女性の派遣社員の比率というのは三%ぐらいとかですので、やはり若年、本日お話ししたお話につながる問題としては、やはり若年への対応がそれまでなかった経験ですので、うまく、学校から職業へとうまく転換していたということが機能しなくなったということに対する対応がやはり少し遅れたことがあるのかなという気がしております。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 それでは、山田参考人、お願いいたします。

参考人(山田昌弘君)

 どうもありがとうございます。

 先ほど井上委員からの質問のどういうふうになってしまうかというところなんですが、レジュメの五ページの下の方に、希望の喪失からの帰結としてまあこういうのが起こってくるのではないかという形で書いてあります。

 私、リスクからの逃走って名付けたんですけれども、親と同居していれば生活ができるんだからわざわざ努力が報われない体験を実社会でしなくたっていいだろうという形で逃走してしまったり、さらに、まあ別にパチンコ、ゲーセンが、私もゲームはよくやりますので悪いというわけではないのですが、つまり実社会で努力が報われないので、そういうバーチャルな世界で努力が報われて、画面の向こうからあんたすばらしいと言ってくれるようなものにふける人が増える。さらに、もう将来どうやったっていい生活が送れそうもないという人は、まあやけになって幸福な人を道連れにするような形の犯罪が起きたりするでしょうし、さらに、将来が不安定でリスクがあるんだったら、ちょっと子供を持つのを、結婚したり子供を持つのを先延ばしにしようという人が増えて少子化が起こるといったような問題が起きると思っております。

 少子化の面では、去年は少子化の調査会で報告をさしていただいたんですけれども、やはりこれも日本社会の負の遺産で、イギリス人の方と議論をしたときに、不安定な雇用でリスクがあるんだから結婚しないなんてイギリスで言ったらだれも結婚しなくなってしまうよというふうに言われたので、それだけ日本社会というのは、結婚して子供を育てるんだったら安定した収入が確保されなければ先送りするということが、意識が強いんだと思っております。

 今はオールドエコノミーにつかっている親にパラサイトしていますので、まあ二十、三十、四十でも親と同居している不安定雇用者が大きいのでまだ顕在化しませんけれども、親が弱ったり亡くなったりしてきたときに相当社会、顕在化してくるということは、逆に、今対策をやっておけば大きな問題にならずに済むというふうに私は思っております。

 あと、まあライブドア事件に関してですが、私も、学生等をつかまえたり、学生にブログやインターネットに飛び交うことを検索させたりして、助手に検索させたりして反応を調査したのですが、やはり夢を見ていたという人は三十代ぐらいで、もう二十歳ぐらいの人は結構さめていて、いや、あんなことをしたって、ああいうことはおれには、私にはなりっこないだろうと思う、割と、私は比較的健全だと思うんですけれども、割とあきらめ、そういう夢には踊らされないぞという人が増えているような気がします。

 むしろ逆に、もう少し現実的に、そこそこ努力が報われてそこそこ周りから評価されるような場、要するにNPOでも何でもいいんですけれども、そういうところがもっと与えられて、さらにそこそこ生活ができる見通しというものを持たせられることができたら、若者というのはどんどん元気になってくるのではないかと思っております。


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