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2008年6月3日(火)

厚生労働委員会

  • 後期高齢者医療制度廃止法案の審議で、保険料負担の問題と、高額医療費制度の自己負担限度額の2度払いの問題で政府をただす

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 冒頭ちょっと今のに関係してお聞きするんですが、後期高齢者医療に入っている人が元に戻れる仕組みになっているのかどうか。これ、厚生労働省、通告しておりませんけれども、どうでしょうか。

  〔委員長退席、理事家西悟君着席〕

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 ちょっと突然の御質問でございますので確かめなきゃいけませんが、まず切替え時点におきましては、市町村は国保の加入者については把握をしているわけでございますので、千三百万人のうち千百万人は、そういう意味では市町村と広域連合の間の情報交換で把握はできると考えております。

 残りますのは、被用者保険の被保険者と被扶養者でございますけれども、それにつきましても、いったんは除いた形で把握をしておりますので、切替え時点では分かっていたと思いますが、当然その後様々な異動がございますので、現在それが元に戻れるかどうかというのは、これは必ずしもよく分からないということになろうかと思います。

井上哲士君

 国保の部分は大丈夫だと。あと二百万についても、これはしっかりしていただきたいと思います。

 その上で、今日朝から議論になっております保険料の問題についてお聞きをいたします。これは元々大臣が七、八割の人は保険料下がるという発言をしたことが問題になりまして、厚生労働省は、全国の市町村にこれまで国保加入だった世帯の保険料がどう変化するか調査を行っております。

 まず、どういう項目で調査しているのか、お答えいただけますか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 ちょっと先ほどの答弁につきまして、委員から今国保については分かっているだろうということでございましたけれども、切替え時点では分かっていたということでありまして、今の時点でその人のステータスがどうであるかということはこれは分かっておりませんので、今の時点では全部は分かっていないということになろうかと思います。

 その上で、今後期高齢者の保険料の実態調査、どういう項目で調査したのかというお尋ねでございますけれども、この御指摘の調査におきましては、各市町村におけるモデル世帯での国民健康保険料額と長寿医療保険制度の保険料額を調査したところでございます。具体的には、七十五歳以上の単身世帯、共に七十五歳以上の夫婦世帯、夫七十五歳以上、妻七十五歳未満の夫婦世帯、それから七十五歳以上の高齢者と共に七十五歳未満の子供夫婦の世帯の四つのモデル世帯におきます年金収入が基礎年金相当七十九万円でございます、平均的な厚生年金相当二百一万円、それから高額の厚生年金相当四百万円の場合の国民健康保険の保険料額と長寿医療制度の保険料額を調査したものでございます。

井上哲士君

 五月二十九日付けの読売新聞も朝から話題になっておりますが、実はこれは全く同じ項目で調査をしておりまして、百八十三市町村から調査しているんですね。これが七割の世帯負担軽減というふうに報じたわけであります。しかし、これが果たして実態を正確に反映しているのか、全体をカバーしているのかと甚だ疑問なわけですが。

 まず聞きますけれども、今回の調査では、国保料に資産割を採用している自治体において、全員がこの資産割の平均額を払っているという仮定で行われております。しかし、だれもが資産を持っているわけではありませんから、資産割を払ってない方もいらっしゃるんですね。

 まず聞きますが、この資産割を採用している市町村の中で資産割を納めている世帯の比率は幾らでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 保険料の算定に当たりまして、資産割を用いている市町村におきましては、世帯主が七十五歳以上の世帯で見ると、その約七割の世帯において資産割が賦課されております。

井上哲士君

 逆に言いますと、三分の一の人はこの資産割を払っていないということになるわけですね。多分全体六割ぐらいが払っていると思うんですが、高齢者が多少率は高いということになりますが、しかし低所得のお年寄りは資産保有の比率は低いんです。

 これ全体で結構ですが、所得ゼロの世帯で資産割を納めている比率はどうなっているでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 ちょっと今の御質問に対しましてはお答えする準備がございません。

井上哲士君

 通告してあるはずなんですが、時間もないんであれですが、これは全体の統計で見ますと一八・八%が所得ゼロの世帯で資産割を納めている比率ですね。資産割取っているところに国保に入っている人は全体の半分でありますから、計算しますとおおむねこの倍、三七・六%ぐらいが低所得者の高齢者が資産割を払っている。逆に言いますと三分の二は払ってないということなんですね。

 今その低所得者の負担増が問題になっているのに、なぜそういう人も含めて資産割を全員、全世帯が払っていると、こういう非現実的な仮定の下に今回の調査は行われたんでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 今回の調査におきましては、そういう資産割を採用しているところについては資産割の額を聞いておりますけれども、今回の実態調査で集計したデータを基に、いわゆる四方式を、つまり資産割を採用している市町村におきます資産割の賦課状況などを踏まえまして、できる限り正確な実態を把握できるよう、現在、分析作業を行っているところでございます。

井上哲士君

 どういう結果を出してくるのかなんですが、読売の場合はそのまま七割の世帯が負担減と、こうなっているんですね。しかし、その資産割を入れなかったらどういう変化が起きるのかということを、お手元の資料を見ていただきたいんですが、実は、厚労省は大変だ大変だと言っていますけれども、あの通知に基づく調査というのは保険料率を当てはめればすぐできるんです。私どもやってみました。

 例えば、私、京都、地元の宮津市の場合を試算をしてみましたけれども、宮津市は資産割の平均額は一万四千九百六十四円です。これで計算をしてみますと、世帯区分が四種類それから収入区分が三種類ですから十二種類のモデルになるんですね。全員がこの資産割の平均額を払っているという仮定の厚労省の試算でいきますと、一枚目にありますように、十二のモデル世帯のうち負担増になるのは三つのモデル世帯だけなんです。

 ところが、資産を持たない人はこの資産割の一万四千九百六十四円を払っておりません。これを国保料から引くとどうなるかと。それが二枚目の資料を見ていただきたいんですが、これで計算をし直しますと、十二通りのモデルのうち十のモデルは逆に負担増になるんです。こっちの方の二枚目の調査は一切厚労省はやってないんですね。一枚目の調査だけでいいますと、十二のモデルのうち負担増は三つだけでありますから、実に七五%が負担が減るという、こういう結果になってしまうんですね。ですから、全く逆のことが出てしまうんです。

 この問題は、当委員会で四月十七日に我が党小池議員が指摘をした問題なんですね。にもかかわらずこういう調査をしているというのは一体なぜなんでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 先ほど答弁したことと重なるんでございますけれども、一応この資産割があるということでデータ取ってございますけれども、ただ、その分析作業におきましては、市町村における資産割の賦課状況などを踏まえまして、できる限り正確な実態を把握できるよう作業を行っているところでございます。

井上哲士君

 くれぐれもミスリードをしないように強く求めておきますが、実はもう一つ問題があるんです。

 これは世帯構成を四つに限定をしていますけれども、これで全体がカバーできるのかと。これ三枚目の資料を見ていただきたいんですが、七十五歳以上の高齢者の家族構成というのはどうなっているのかと。上から単独世帯、それから夫婦のみの世帯、それから子と同居、この中には子供夫婦という場合と配偶者のいない子と同居という場合、二種類ありますが、ここまでほぼ一〇〇%なんですね。調べるんならばこのすべてのモデルについて調べる必要があると思うんですが、今回、厚労省が調べておりますのはこの網線の部分だけなんです。夫婦のみの世帯の場合に、両方とも後期高齢者、夫だけ後期高齢者という二つに分けていますけれども、ですから四モデルになっていますが、この網線の部分しか今回の調査対象になってないんですね。

 ですから、後期高齢者全体の三分の二しかカバーをできない調査になっているんです。なぜ、こういうところにだけ限定して調査しているんでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 ただいま委員が御指摘になりましたのは国民生活基礎調査でございます。クレジットも付いてございます。ただ、私どもは国民健康保険実態調査のデータで見ているわけでございます。この違いというのはどういうことかといいますと、国民生活基礎調査から七十五歳以上の高齢者の家族構成が把握できるわけでありますけれども、社会保険として見た世帯構成と一般的な世帯構成には違いがございます。例えば、被用者保険に加入している子供夫婦と同居している高齢者でありましても、一定以上の所得がある高齢者は被扶養者としては認定されず、国民健康保険に加入することになります。その場合は、国民健康保険実態調査上では単身者であれば単身世帯、夫婦であれば夫婦世帯となるわけでございます。したがいまして、私どもは国民生活基礎調査に比べまして国民健康保険実態調査の単身世帯、夫婦世帯を見ているわけでございます。

 この調査に基づきますと、今回の調査のモデル設定につきましては単身世帯及び夫婦二人世帯でおおむね全体の七割程度を占めておりまして、これに三人以上の世帯の典型的なモデルとして七十五歳以上の方一人と子供夫婦の世帯を加えると約八割となっておりまして、おおむね代表的な世帯をモデル設定することができていると、このように考えております。

井上哲士君

 今八割と言われました。しかし、ここで除外をされております後期高齢者夫婦と子供夫婦の四人世帯、それから後期高齢者夫婦と子供一人の三人世帯と、こういう場合は今回の調査の類型と比べてもやはり負担増になる率が高いと思うんですね。その部分をやっぱり外すということになりますと、結局様々違った数になってくる。先ほどの資産割とこれと併せてやりますと相当の違いが私たちは出てくるということを試算をいたしました。

 そこで、大臣にお聞きをするわけですが、四月十七日にこれが問題になったときに、できるだけ実態が分かるように調査を指示しているというふうに答弁をされたわけでありますが、どうもこういう調査項目を見ておりますと、大臣の発言に合わせるような、こういう実態に合わせるような調査が行われているんじゃないかと思わざるを得ないんですけれども、これで正確な実態調査ができているという認識でしょうか。

厚生労働大臣(舛添要一君)

 できるだけ正確な実態を把握したいと。ただ、千三百万人おりますから、本当に一人一人がどれだけ増えたか減ったかは千三百万人全員に問わなければ分かりません。そして、それは莫大な事務量になりますし、とてもそういう手間もコストも掛けられません。そういうときに、いわゆるどういう形で調査をするか、やっぱりモデル世帯というのを想定して、それにどれだけの世帯が対応しているかということを今数字を出していますので、できる限り早く集計してできるだけの全体像を出したいと思うんです。私がこう言ったからその数字に合わせてデータを何かでっち上げている、そういうことではないということは御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 モデルの設定自身が恣意的だということを申し上げているんですが。

 提案者の小池議員はこの問題、委員会でも追及されてきたわけですが、今回の調査についてのお考えをお願いしたいと思います。

委員以外の議員(小池晃君)

 大体この調査、五月十五日からやっているんですけれども、もうこれ今、井上議員がお示しになったように別に克明な調査が必要なわけではなくて、市町村が発表しているデータを基に簡単に計算できるんですね。そういう点でいうと、本来はこの制度が始まる前にしっかり把握すべきことであって、制度が始まってから慌てて調査するということ自体が非常に無責任であるというふうに思います。

 同時に、資産割を加えるということについては既に委員会で問題になっているにもかかわらず、それを前提にした調査をやっている。私は、こういう形で国民の世論をミスリードするようなことはいけないというふうに思いますので、この調査がどういうふうに発表されるのか注目したい。

 それから同時に、大臣は全体を調べなければ分からないというふうに言ったわけですから、この調査では負担増の実態は分からないということに大臣自身もお認めになったのかなというふうに私は受け止めました。

井上哲士君

 もう一点、高額医療費の二重払いのことについてお聞きをいたします。

 私、地元の京都の病院からこういうメールをいただきました。

 入院患者のAさんが今年の四月半ばで七十五歳の誕生日を迎えました。Aさんは、住民税非課税で、自己負担限度額は二万四千六百円ですと。誕生日までの一部負担金が二万四千六百円をオーバーをしていたと。ところが、七十五歳の日から後期高齢者医療制度に入れられたために一部負担金はゼロからの計算になると。ですから、そこからあとの二万四千六百円をまた負担することになったと。後期高齢者医療制度ができるまで七十五歳の適用は基本的に翌月からだったからこんな二回払うなんということはなかったのに、何でこういうことなのかと。こういう怒りのメールでありましたが、なぜこういう理不尽な事態が起きるんでしょうか。

厚生労働省保険局長(水田邦雄君)

 お尋ねのありました高額療養費につきましては、これはそれぞれの医療保険制度におきまして月ごとのレセプトを基にそれぞれの加入期間に掛かった医療費についてその月の自己負担限度額を超える部分を支給する、こういう仕組みでございます。

 したがって、月半ばで七十五歳の誕生日を迎えて長寿医療、後期高齢者医療の被保険者となる場合、それまで加入していた医療保険者と後期高齢者医療広域連合がそれぞれ自己負担限度額を超える分を負担することになりまして、被保険者から見ますと自己負担額が重複するということは起こり得るものでございます。

 ただ、これは、月の途中で会社を退職して健康保険から国民健康保険に移行する際にも生じ得るものでございます。

  〔理事家西悟君退席、委員長着席〕

井上哲士君

 自らの意思で保険を変わったときに起きる問題とは根本的に違うんですよ。自分の意思と無関係に無理やりこれまでの保険から引きはがされた結果、医療費を二倍払わなくてはいけないということになっているんですね。しかも、たまたま誕生日が月半ばで、しかも七十五歳の誕生日を迎えたときに入院をしていたという方に起こる事例なわけですね。本人に何の罪もないのに今月だけ医療費二倍を払ってくれと。本当に医療機関の方は説明に苦慮されているんですよ。

 私はこれ七十五歳で区切ったことで起きている矛盾だと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

厚生労働大臣(舛添要一君)

 要するに、制度の運営主体が違うということで起こっているわけです、今おっしゃったことを別の言葉で言うと。

 しかし、こういう問題も新しい制度設計をしたときに出てきている。これは、今後どうするかというのはやっぱり一つの検討課題としないといけないと思いますので、何らかの形で善処できないか、これは今後検討したいと思っております。

井上哲士君

 事前に事務方に聞きますと、年齢で区切る今の法律の下では政令等では無理なんだという、こういうお話だったんですね。私は、やっぱりここに七十五歳で区切るということの無理ができていると思うんです。たまたま病院で七十五歳の誕生日迎えたら、普通ならプレゼントもらいたいところですよ。それが今月は誕生日祝いで医療費二倍いただきますと、これは本当に長寿に対するもう懲罰みたいなことになっているわけですね。

 やはりここに大きな矛盾があると思いますが、提案者小池議員に御見解をいただきたいと思います。

委員以外の議員(小池晃君)

 これ非常に象徴的な私は出来事だというふうに思うんですね。七十五歳という年齢で区切ることによって、今委員がおっしゃったように、おめでとうございます、今日から七十五歳ですねと言うんじゃなくて、今日から負担が二倍になりますと。やっぱり、これは年齢で機械的に別の保険制度に移行してしまうというこの制度の本質的に持っている矛盾から生まれる、たった一月のことではありますけれども、大きな矛盾であるというふうに思います。

 ですから、この問題解決するだけでなく、やはり年齢で差別するという制度そのものをこの制度を廃止するということによって解決する、そのことによってしかやっぱり問題解決しないと思いますので、是非、与党の皆さんも、この制度廃止法案、参議院の意思としてこの国会で可決をするという方向で御協力をいただきたいということを重ねて申し上げます。

井上哲士君

 今朝の東京新聞にこういう投書がありました。

 普通の家庭でじいちゃん、ばあちゃんが七十五歳になったら、今日から医者代、保険料は自分で持ってと言えますかと、もうすぐ喜寿だね、元気で長生きしてねと言うのが子供や孫たちでしょうと、後期高齢者じゃなくて高貴、あの高く貴い方の高貴ですね、そういう高齢者を大切にする政治をつくってほしいと思ったと、こういう投書でありました。このとおりだと思います。

 是非この法案が成立するように強く訴えまして、質問を終わります。


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