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2001年11月22日

法務委員会
「刑法」「刑事訴訟法」で質問

  • 交通事故遺族らの運動でこぎつけた法改正に賛成の立場から、「危険運転致死傷罪」の構成要件についてただす。また警察の取り調べの杜撰さを指摘し、厳格適正な事故調査の徹底をもとめる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 最初に、私ごとで恐縮なんですが、ちょうど参議院選挙前の六月に、小学校一年生の娘がおるんですが、交通事故に遭いました。幸い、骨折はしましたけれども、命に別状はなかったんですが、病院に運ばれたという第一報を聞きまして、状況がわかるまでというのは最悪の事態も頭の中を駆けめぐりまして大変な思いをいたしました。ましてや、悪質な交通犯罪で肉親の命を奪われた家族の皆さんの思いというのは本当に察して余りあるものがあります。

 そういう皆さんの、悪質危険な運転による事故事犯を過失犯罪としてのみ処罰するのは軽過ぎる、こういう世論が広がる中で今回の法案が出てきたと思います。これまで、どちらかといえば軽んじられてきたと言われてきた被害者の皆さんの声が生きていくということは大変重要だと私は思っております。

 法務省は当初、本音のところ、こういう規定を入れると刑法が汚れる、ですので、恐らく特別法でというような発言もされてきたかに聞いておりますが、なぜ量刑の引き上げや特別法ではなくて危険運転致死罪にしたかという経緯についてはきょう何度か御答弁もありました。いずれにしても、厳罰化ということになりますので、構成要件を厳格にする必要があるというのはさまざまな角度から質問もされておりますし、乱用があってはならないということであります。

 私からも何点かお聞きをするんですが、一つ、一項前段の危険運転の問題です。薬物とは何を指すのか、これは確認ということになるんですが、睡眠薬、風邪薬とかアレルギー性鼻炎の薬など、眠気を誘ったり、精神を高揚させる興奮剤なども入っていますし、薬によっては運転しないでくださいと書いてあるものもあるわけです。治療用の薬とか医薬品などは、本人は当然危険運転をしようという故意を持って服用するわけではないのだから、これは適用されないと思うんですが、麻薬や覚せい剤など、そういう違法な薬物のみに限定すると、こう考えてよろしいでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 ただいまのお尋ねにお答えする前に、法務省が刑法が汚れると考えていたんではないかという御指摘がありましたけれども、決してそういうわけではなくて、犯罪の性質からして、仮に、非常に技術的な点を多く含むとすれば特別法というようなことも考えなければいけない、それと、過失犯という構成である限り、法定刑としてどこまで引き上げが可能なんだろうか、そういうふうなさまざまな問題を検討していたということでございます。

 ただいまのお尋ねでございますが、ここで申します薬物というのは、今御指摘のような麻薬でありますとかあるいはシンナーでありますとか、そういうようなものが典型ではありますけれども、そういうものに限らず、およそ運転者の精神的、身体的能力を低下させて、正常な運転が困難な状態を生じさせる可能性がある薬理作用がある薬、これは全部含まれることになりまして、睡眠薬等も当然含まれるということになるわけです。

 風邪薬等、これは、実は私も今風邪引いておりまして、ついさっき風邪薬を飲んだばかりで、そういう意味ではやや答弁機能が低下しているかもしれませんが、一般的に風邪薬はそんなに強い眠気を誘うものでもないというようなことで、一時的に多少眠くなるようなことがあるにいたしましても、それが正常な運転が困難な心身の状態にまで陥るということは、通常はちょっと考えられないというふうに思っております。

井上哲士君

 眠くならないような質問を続けたいと思います。

 一項の後段の高速走行ですが、当初、「著しい」というのが入っておりましたけれども、法案との違いというのは、これはあるんでしょうか、ないんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 実質的には意味の差はございません。この「著しい」という言葉が最終段階で削られた理由につきましては、「進行を制御することが困難な高速度」、つまり車の走行をコントロールすることがもうできないぐらいの大変な速度ということであるので、その言葉の中に当然著しいというのは含まれている。そうすると、それはダブっているのではないか。ダブっているように思われる言葉をつけ加えると、それは一体どういう意味かというふうに、逆に理解の混乱を招くおそれもあると、そういう議論が大勢を占めまして、「著しい」という文言は加えないということにしたわけでございます。

井上哲士君

 「制御することが困難な高速度」ということについて、これまでの審議の中では、道路状況等によっても違うというようなこともございました。

 プロであるとかライセンスを持っていらっしゃる方と初心者などの運転技能という問題もあるかと思うんです。速度が速過ぎて車のコントロールが難しいという認識を持つかどうかという点も本人の技能によって随分変わってくるわけですね。往々にして、プロだとかライセンスを持っている方は、自分は大丈夫だということで高速度でカーブに突っ込んだりもするわけですが、そういう技能という問題などをどう考えるんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 車両の走行のコントロールが困難になるかどうかということについては、基本的にはその道路状況に合わせて速度が客観的に非常に速い、したがって道路状況に合わせた運転というものが難しい、ちょっとしたミスですぐ飛び出してしまうとか、そういうふうな客観的にもおそれが認められるようなスピードということになるわけでございますが、それを本人がどう認識しているのか、そこの問題でこれは、自分は大丈夫だというのはいわば評価の問題でございます。したがいまして、自分は大丈夫だという中に、恐らく、これは本来そういうスピードなんだけれども自分が運転を誤ることはないから大丈夫であるとか、恐らくそういうことになっていくんだろうと思うわけです。そうすると、通常、客観的にそういう速度であれば危険が起きる、そういう速度で走っていると、そういう認識があれば犯罪の行為としては十分であると考えているということでございます。

井上哲士君

 次に、当初、赤信号に従わずにというのがあえて「殊更に」というのが加えられた経過についても幾つか御答弁がありましたが、故意による赤信号の無視の中でおよそ赤信号に従う意思がない行為と、こういう答弁だったと思うんです。

 例えば、確認のために次のような事例なんですが、早朝の仕事である市場関係のトラックとか新聞の配送車とかあります。毎朝通る交差点、ほとんど人通りがない、車もいないと。ざっと見渡してきょうもいないようだということで、信号が赤でも特にスピードを緩めずに信号を無視して運行したと。こういうような場合というのはどうなるんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 具体的なその場の状況などの事実関係というのが相当影響することでございますので、なかなか一概に申し上げることは難しいと思いますけれども、その交差点が通常、割と交通量の多い交差点でありますとかであるような場合とか、そうじゃない場合など、いろいろなケースがあると思われるわけで、そのときにざっと見渡したというような場合が、これもいろんな程度の場合があると思われるので、結論的に申し上げますと、言ってみればほかの車が来ようが来まいがどうせ来ないだろうからと、しかし来ようがあるいは来まいがそれは構わないと、そんなような感じで走っているというふうなケースであればこれは本罪に当たる。

 そうではなくて、ざっとというよりはそれなりに、確かにそのくらい見ればおおむね状況を把握できるなというようなことであれば、それはまたあえて他人の危険を顧みることなく赤信号を無視したというところまでは至らない場合が通常であろうと考えているわけです。

 どうも具体的な場面でいろいろなことが起こり得るので、端的に申し上げることはできません。そこは御理解をいただきたいと存じます。

井上哲士君

 二項前段の妨害行為という問題ですが、これもいわゆるあおり行為などのことも言われておりましたが、例えば本人は、運転手は妨害をするという意図はないけれども、結果としては妨害になるんじゃないかなという思いは持ちつつ、極めて急いでいるときなどにかなり強引な割り込みをしながら一定のスピードで走るというようなことがあると思うんですね。タクシーなどが客にせき立てられてそういうことをやるということもあろうかと思うんです。こういうようなケースの場合はどういうふうに判断をするんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 「人又は車の通行を妨害する目的」と申しますのは、相手方に自車との衝突を避けるため急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図するという場面を想定しているわけでございます。ですから、例えば割り込みあるいはあおりみたいな現象が起こったにいたしましても、自分もその後ろからあおられたとか、あるいはとっさに衝突を自分が回避するために割り込まざるを得なかった、こういう場合には、結果的には相手の車両の走行を妨害することにはなるんですけれども、そういうときには妨害の意図があったとは認められないと考えております。

井上哲士君

 そうすると、こういう今言ったようなものの場合は、妨害しようという意図はないわけですから適用にならないということで考えていいんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 御指摘のとおりです。

井上哲士君

 厳罰化ということで刑法を改正をするわけですが、やはりこれが生きるかどうかというのは適切な捜査にも大きくかかわってくると思いますし、そのことはいろんな民事の問題についても大変大きな問題になってくるかと思うんです。

 最高裁にも来ていただいておりますけれども、交通事故による損害賠償請求訴訟で、裁判官はどういう証拠を事実認定に用いることが多いんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)

 裁判官としましては、交通事故による損害賠償請求訴訟においても、当事者が提出した証拠に基づいて事実認定をするということは変わりがないわけでございますが、その際、当事者が実況見分調書などの交通事故に関する刑事裁判の関係書類、こういったものを証拠として提出をして、それを事実認定の基礎にするという場合は当然あり得るということでございます。

井上哲士君

 次のような交通事故による損害賠償請求訴訟があったと聞きますけれども、それに間違いがないかなんですが、平成八年の十二月の東京地裁の判決です。

 幹線道路から細い道に右折しようとしていた被告の自動車と、細い道から幹線道路に出ようとした原告の二輪車が衝突したと、こう認定をされ、反訴を認めて、原告に対して被告に約三十万円の支払いをすることを命じたと。ところが、平成十二年三月の東京高裁の判決では、幹線道路から細い道に右折しようとした被告の自動車と、その幹線道路を反対方向から直進してきた原告の二輪車が衝突したと認定をして、本訴を認めて、被告に対し原告に約六千万円の支払いを命じたと、こういう訴訟があった。これは確認できますか。

最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)

 委員御指摘のような判決があったということは間違いございません。

井上哲士君

 読んだだけではわかりにくいわけですけれども、これは後藤さんという方の事件なんですね。

 九三年の十一月の二十日の朝に大型バイクで出勤中に二トントラックと衝突をすると。重傷を負って意識不明のまま病院に運ばれます。ところが、一カ月後に意識を取り戻してみますと、自分がふだんの通勤とは全く違う道を通って加害者になっていたと。しかし、警察は退院後も後藤さんから調書もとらない、保険会社も後藤さんに重い過失があるということで自賠責保険すらカットするという中で途方に暮れまして、この方は民事裁判を起こしたわけですけれども、一審では敗訴をします。それでもあきらめずに控訴をする中で、いろんな世論の広がりもありまして、再捜査も行われて、時効の二日前にこの加害者の方が起訴をされ、その中でこの後藤さんの主張を認める科学捜査研究所の鑑定結果も出されるということで、刑事事件では加害者に有罪判決が出たわけです。民事でも二審で、この刑事裁判の捜査関係書類が有力な証拠になりまして、二審では逆転勝訴をする。要するに、一審と二審で加害者と被害者が全く入れかわったという民事裁判だったんですね。

 結局、事故発生から六年半もかかったわけです。やはり捜査機関の資料というのは、刑事はもちろん民事でもこういう大きな役割を果たしていくわけで、最初からきちっと事情聴取とか証拠の検証があればこういう事態にならなかったんではないかと後藤さんは言われているわけですが、警察としてはこの経過をどう反省をし、こういう事態が起こらないような点はどうお考えになっているんでしょうか。

政府参考人(坂東自朗君)

 委員御指摘のその民事裁判の判決につきましては私ども警察としてはコメントする立場にはございませんけれども、刑事事件そのものにつきましては、委員御指摘の東京高裁の民事判決以前の平成十一年十二月に、東京高裁民事判決で認定された事実と同一事実によりまして、刑事事件としては有罪判決が言い渡されたというように承知しているところでございます。

 そこで、警察といたしましては、かねてから交通事故事件捜査を適切に推進していくために、特に第三者たる目撃者が得られないような事故とかあるいは当事者の言い分が違うような事故等のように事故原因の究明が困難なケースにつきましては、警察署に対する現地指導を行う事故捜査指導官というものを警察の本部に配置するといったことの対策を講じておりますし、さらには警察本部の交通鑑識体制の整備を促進するなど、いわゆる警察署の交通事故捜査に対する指導、支援体制の強化を行っているところでございます。あわせて、科学技術を活用した捜査支援システムの整備にも努めているところでございますので、警察庁といたしましても、今後とも適正かつ迅速な交通事故事件捜査の推進に向けて都道府県警察を指導してまいる所存でございます。

井上哲士君

 最高裁、結構です。

 適切かつ迅速と言われましたけれども、今も言いましたように、意識不明で入院をしていて、意識を取り戻しても事情聴取はなかったと。そして、結局もう時効の二日前まで起訴がされなかったということになっているわけですね。私は、これはやっぱり今の適正、迅速というのとは随分離れた状況になっていると思うんです。

 さらに、ことしの八月の二十四日に、栃木の氏家署ですか、交通事故の遺族の告訴を八カ月間放置していたという事件があったと報道をされています。処分をされているようですけれども、少し事実経過について、なぜこういうことが起こったのか、お願いします。

政府参考人(坂東自朗君)

 委員御指摘の本件についてでございますけれども、平成十二年の九月二十二日に、署の担当者が死亡した被害者の御両親の方から被疑者の厳罰を求める告訴状の提出を受けていたにもかかわらず、その告訴状を失念いたしまして検察官への送致を怠っていたというものでございまして、本年の六月の八日に至りまして、検察官からの問い合わせによりまして告訴状を検察庁に追送致したという事案でございます。

 そこで、栃木県警察におきましては、本年の六月の二十二日に被害者の御両親の方から氏家警察署の対応についての苦情申し立てがなされたということも受けまして、県公安委員会と県警察本部長にそういった苦情申し立てが出されておりましたので、同県警察におきましては事実関係の究明に努めまして、七月の二十四日に被害者の御両親に対して県警幹部が謝罪するとともに、八月の二十四日にはこの事故事件捜査を担当していた交通課長、県地域課長ら三人を戒告処分等としたほか、監督責任者として当時の署長、次長を本部長訓戒の措置というようにしたものと承知しているところでございます。

井上哲士君

 本当に起こってはならないことだと思うんですね。けさの朝刊でも、千葉の県警で重傷事故の通報があったのに放置をして、それを上司にとがめられてこの警官が失踪したという報道がされておりました。

 もちろん、多くの現場の警察官の方が熱心にやられている姿については見ておりますけれども、しかし、やはりあってはならないこういう問題が起きている中で、やはり国民の今の捜査に対する厳しいまなざしというのは見ておく必要があると思うんですね。

 その中で、今回、この刑の免除規定というのが新設をされますが、そのメリットとして、捜査に関する事務処理を効率化をし、その結果生じた余力を真に処罰すべき事案に振り向けると、こうあります。遺族の方などからは、効率化の名のもとに、先ほど来挙げたようないろんな捜査の問題が指摘される中で、いわゆる手抜きが行われるんではないかと、こういう不安の声が上がっているのは再三指摘をされてきました。

 まずお聞きするんですが、自動車等による業務上過失傷害の起訴率、いただきました資料ですと、昭和六十一年には七二・九%だったのが、以降急速に下がりまして、平成五年には一五・七%、平成十二年には一〇・九%と、こうなっていますが、急速に起訴率が下がったその理由は何でしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 起訴率が低下した理由につきましては、これは昭和六十二年に全国の検察庁におきまして業務上過失傷害事件の処理のあり方が見直されたことによるものでございます。

 その趣旨は、現在、一般市民が日常生活を営む上でこれだけの自動車が普及した社会になりますと、一般市民が犯しやすい事件である、非常に多くの方が犯しかねない事件である。そういう中で、傷害の程度が軽微で特段の悪質性も認められず被害者も特に処罰を望まないと、そういうふうな事案も多数あるわけでございますので、そういうものにつきましては起訴猶予処分の弾力的運用を図ると。そういうことにする一方、重大ないし悪質な事案について厳正に対処すると、そういうことから交通事犯の適正処理ということで起訴率が変わってきたということでございます。

 したがいまして、実質的に起訴率が低下しておりますのは、事案が軽微で被害者も特に処罰を望まないと、そういうふうな業務上過失傷害事件に限られておりまして、例えば業務上過失致死事件、これらについては起訴率は特に低下しているわけではございません。

井上哲士君

 昭和六十二年以降そういうことになったということですが、ちょうどその経過の中で、警察庁交通局の交通指導課理事官の方が「法律のひろば」という雑誌の一九九四年一月号にこう書かれております。

 年間六〇万件を超える交通業過事件を送致する負担は、処理方式の一部について簡易なものとすることによっても過大なものがあり、しかも、その内僅か一八・七%しか起訴されていないという現状は、交通事故捜査に従事する警察官の勤務意欲にも影響しかねないものとなっている。

と、こう言われているわけですね。

 確かに、熱心に仕事をしてもこれが起訴されないということがこの意欲の影響ということになるのかもしれませんが、そうしますと、刑の免除ということになりますと、一層その意欲に影響するんではないかと思うんですが、その点どうでしょう。

政府参考人(坂東自朗君)

 警察といたしましては、被害程度が軽微な交通事故でございましても、その事故原因等を明らかにするために発生現場における実況見分を初めとする所要の捜査を行いまして検察庁に事件送致をするとともに、あわせまして必要な例えば運転免許の取り消しとか停止等の行政処分というものも行っているところでございます。

 したがいまして、起訴率いかんにかかわらず、現場警察官の勤務意欲が低下するといったようなことはないというように私どもは考えているところでございます。

井上哲士君

 必要な捜査は現場でしっかりするんだということでありましたが、事件送致の捜査書式として、基本書式に加えまして、昭和五十年に特例書式、平成四年から被害者の傷害の程度がおおむね二、三週間以下の軽微の交通関係業過事件には簡約特例書式というのが導入をされているかと思います。

 結局、繰り返し捜査の効率化ということが指摘をされているわけですが、この簡約特例書式というやり方が一層簡単なものに変わっていくというふうに理解したらよろしいんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 具体的に送致の手続、これをどういうふうにするか、どういう送致書類にするか、これは警察御当局とも十分相談して決めていかなければならない問題とは考えておりますけれども、本当に軽微な事件で被害者も処罰を望んでいないし悪質な情状もない、こういうふうなものにつきましてはやはりそれなりに捜査書類あるいは送致手続を簡略化して、そういう負担、意欲ということもおっしゃいましたけれども、現実問題としては相当な負担になっていることも事実と私どもは認識しておりますので、そこら辺をできるだけ軽減するようにしたいとは考えております。

井上哲士君

 簡易な方法で送致をされた場合に、先ほどの民事訴訟のこともありましたけれども、後から争いになって事実解明が必要なときに支障を来すんじゃないかという不安もあるわけですね。ですから、要するに、実況見分から送致までの間に、どの部分はきちっとやって、そしてどういう資料をしっかり残して、そしてどの部分は効率化をされていくのか、これをわかりやすくお願いします。

政府参考人(坂東自朗君)

 私ども現場を預かる交通警察といたしましては、先ほども御答弁いたしましたように、交通事故がございましたらば捜査は捜査としてしっかりやるということでございます。

 ただ、どこまでのものを捜査書類としてまとめるかということは、先ほど法務省の刑事局長さんからのお話もございましたように、どういった捜査書類にするかということは、検察庁等の御指示も受けながら今言ったような形で、先ほどの御答弁あったように三種類の捜査書類があるということでございますので、いささかも現場の捜査においてそういった形で手抜きが行われるとかそういうことはあり得ないということでございます。

委員長(高野博師君)

 時間です。

井上哲士君

 運転手の中には軽微な事故が刑免除されることによって大したことないんじゃないかという、モラルハザードが起こるんじゃないかという不安もあります。その点で、そういうことが起こらないような、大臣の御決意を最後、お願いをしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 刑の裁量的免除の規定というのは、自動車運転による軽傷事犯に対して一律に適用されるものではございませんで、過失の内容や被害者の処罰意思、本人の反省の程度、その他諸般の情状を考慮いたしまして刑の言い渡しを要しないと認められるものに限って適用されるわけでございます。軽傷事犯でありましても情状の悪いものについては厳正に訴追、処罰がなされるのは当然でありまして、処罰されるべきものが刑を免れるようなことはございません。

 また、現に多数発生する軽傷の業務上過失傷害事犯の中には刑の言い渡しを要しないような事案が少なからず含まれているという事情がございます。このような実情を前提といたしますと、このような刑の言い渡しを要しないような軽微事案について刑の免除ができることを刑法上明らかにするということは、この種事案についての取り扱いを合理化して、その分、悪質、重大な事犯に力を注いで厳正な処罰を行うということを可能にするものでございまして、総合的に見て交通事故の撲滅に資するものと考えております。


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