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2002 年 3 月 19 日

法務委員会
「大規模留置場建設計画」の撤回をせまる

  • 渋谷区原宿への東京都の大規模留置場建設計画は地域住民の反対決議があがっており、冤罪の温床である「代用監獄」の拡大・永続化につながるとして法相に撤回をせまる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、薬害ヤコブ訴訟の和解の問題について一点お聞きをいたします。

 東京、大津の両地裁から和解案が出されました。手術の時期にかかわりなく患者全員に国の責任を認め、損害金を支払うと。八七年の六月以前は国に一切責任なしとしていた厚生労働省の官僚側の抵抗を明確に否定をした和解案だと思います。既に、厚生労働大臣からこの和解案の受入れが表明をされております。

 ただ、やはり被害者家族の願いは謝罪の言葉、そして二度と薬害を生まないという対策の確立です。和解の確認書の中ですべての被害者に対する責任とこの謝罪の趣旨を明記をしていただきたい、厚生労働大臣からもその意を表明してほしい、これが被害者家族の気持ちです。二十五日に調印とされておりますけれども、こういう被害者の願いがきちんとそこに盛り込まれるように法務大臣としての積極的な役割を果たしていただきたいと思いますが、御所見をまずお願いします。

国務大臣(森山眞弓君)

 二月二十二日に示されました東京、大津両地裁からの和解案につきましては、今月一日に国として受入れを表明したところでございます。裁判所の和解案にあります謝罪の措置につきましては継続協議事項として挙げられているところでございまして、現在、裁判所において協議をしているところでございますので、具体的な協議内容につきましては事柄の性質上、お答えを今日は差し控えさせていただきたいと思います。和解成立までには更に協議が必要でございますが、早期解決に向けまして一層努力したいと思っております。

井上哲士君

 本当に患者及びその家族の熱い願いでありますので、是非よろしくお願いをいたします。

 大臣は、所信の中で、矯正施設の充実強化と人権擁護について述べられました。関連いたしまして、東京原宿駅近くに六百人収容の大規模留置場を建設するという東京都の計画についてお尋ねをいたします。

 昨年十月にこの問題が明らかになって以来、大変大きな問題になっております。計画予定地は日本社会事業大学の跡地で、都心の一等地であります。都が取得する際に地元との協議がありまして、九六年の二月に区長名で、この場所については緑のオープンスペースを確保して、環境にも商業のにぎわいにも配慮した施設にしてほしいと、こういう六項目の要求も出ております。

 これに対して東京都の財務局長名で区長に対し、本件土地については、今後利用計画策定に当たり、渋谷区及び区が集約した地元住民等の意見要望について取り入れるよう関係局に伝えるとともに、誠意を持って対応してまいりますという旨の回答書も出ております。

 ところが、この回答も全くほごにする形で一方的に計画が出されましたので、関係の地元の皆さんが大変怒りを持っておられます。地元住民が反対する会を結成をいたしまして、一か月間で五万人、実に区民の四分の一に当たる署名を集めておられます。昨年十二月十日に開かれたこの反対の区民の会の総決起集会には、渋谷区長、地元選出の東京都議、そして区議会のすべての会派の代表、渋谷区の百六の町会連合会の代表、同じく五十八の商店会連合会の代表、小中学校の PTA 連合会の代表などそろって参加をされております。渋谷区議会は、十一月の九日にこれも全会派一致で計画の白紙撤回を求める意見書を上げているわけであります。大変異常な事態だと私は思うんですね。

 矯正局に聞きますと、こういうパンフも作られて、大変拘置所などを建設する場合には町とともにということで地元との合意ということを大切にされていると思うんですが、この点、こういう施設に当たって法務省としては地元の合意をどうしているのか、いかがでしょうか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 お答えいたします。

 矯正施設は全国で三百近くありまして、それぞれ老朽度等に応じて順次整備を続けておるわけですけれども、その整備に当たってはやはりできる限り付近住民の合意が得られるように努力しておるところでございます。

井上哲士君

 地元との合意というのは本当に当然のことだと思うんです。

 警察庁、お聞きしますが、過去、全国留置場の建設等に当たって地元の議会が反対の決議をしているという下で建設をしたという例がありますか。

政府参考人(石川重明君)

 通常、留置場は警察署に付設する、あるいは警察本部等の施設の一部として設置をしているわけでございますけれども、その中の留置施設そのものを取り上げて地元議会が反対をしたという例は承知をいたしておりません。

井上哲士君

 こういうことから見ましても、今、この原宿の巨大留置場建設の地元無視のやり方というのは大変異常だと私は思います。

 知事は、地元エゴだということを反対住民について暴言を言われましたが、手続がひどいだけじゃなくて中身も非常に問題だと私は思うんです。現在、原宿警察署の留置場の定員は何人になっていますか。

政府参考人(石川重明君)

 現在、十四名であります。

井上哲士君

 それでは、これまで東京都内で最大の留置場はどこで、その定員は何人ですか。

政府参考人(石川重明君)

 警視庁管内でございますが、いわゆる本部留置場と各警察署ごとの留置場がございますけれども、本部留置場では菊屋橋の分室でございまして、定員数は百二名であります。それから、警察署の留置場では新宿警察署の留置場の定員規模が一番多うございまして、定員数は百一名となっております。

井上哲士君

 現在の原宿の定員で比べますと四十三倍でありますし、警視庁のこれまでの施設と比べましても実に六倍というけた違いの巨大な留置場になるわけであります。これが地元に何をもたらすのかということを地元住民の方は大変心配をされております。

 私も現地を見てまいりましたけれども、原宿でありますから、若者もたくさん集う大変おしゃれな商店街のど真ん中、明治通りに面した一等地であります。そして、この予定地にすぐ隣接をして原宿外苑中学校がある。さらに、横には東郷幼稚園や区立中央図書館があるという文教地区でありますし、一歩入れば大変閑静な住宅地であります。

 原宿署管内の被疑者が四十三倍に増えるわけはありませんから、こういう大きな施設が造られますと、ほとんど留置される被疑者は管轄外の地域からの人となると思います。現場や証拠がある所轄署で捜査をしようと思いますと、連日この被疑者を押送する必要が出てまいります。収容者のうち、実際捜査中の者は四割程度だと思うんですが、それにしましても毎日二百五十人の押送をするということになりますと、この明治通りに押送車両が毎日行き来をする、大変異様な光景になるのではないかという、地元の皆さんは、商店街のイメージのことも含めまして、また文教地域だということで大変心配をされているわけであります。

 こういう地域への環境の悪化という問題についてはどのようにお考えでしょうか。

政府参考人(石川重明君)

 ただいま委員二百五十人ぐらいが一日に押送されるのじゃないかと、こういうお話でございますが、過去の統計では収容人員に対して一日の護送人員は一割強でございまして、仮に六百人規模の留置施設とした場合には一日平均七十人弱ぐらいになるのではないか、これは推計でございますが、そういう状況でございます。

 そういたしますと、今、集中護送ということをやっておりまして、大型の護送車、これは定員三十人程度でございますので、この二、三台が毎日行き来をすると、こういうようなことだろうというふうに思っております。このほかにも接見に弁護人がお見えになるとか、そういったようなことはもちろんあろうと思いますが、押送の人数とその影響といった点では今申し上げたようなことになるわけだろうと思います。

井上哲士君

 押送せずにこの新しい原宿署で、内で捜査をするということになりますと、ここに今度は逆に大挙、毎日他署の警察署の警察官が来るということになりますし、当然、施設上の取調べ室でありますとか作る必要があります。そうしますと、これは原宿署の附属施設と言えるのかと。むしろ、ひさしを貸して母屋を取られるという話がありますが、原宿署に留置場を作るんではなくて、巨大留置場に原宿署がくっ付くんじゃないかと、こういう状況に私、なろうかと思うんです。

 こういう例を見ない施設が管理上どうかということもありますし、大体警察は、この間、警察署評議会などの設置も提言されるなど、言わば地域と歩むという方向を打ち出されていると思うんですね。そういうことからいいましても、これは逆行する方向ではないかということも指摘をしておきたいと思います。

 さらに問題なのは、この留置場、巨大留置場計画が、冤罪の温床と言われて人権侵害として国際的にも厳しい批判がされている代用監獄を拡充し、固定化をすることにあると思います。本来、留置場は最長七十二時間の留置の期間だけ身柄を拘束する施設でありまして、それ以降、裁判所の勾留決定以降は本来、拘置所に身柄を移すべきものであります。勾留以降も警察の留置所に拘禁するというのは言わば代用にすぎないというのが本来のことだと思うんですね。

 国際人権規約委員会の第四回日本政府報告書に対する審査に基づく最終見解でも厳しく指摘をしております。委員会は、取調べはしない警察の部署によるとはいえ代用監獄が分離した権限の管理下にないことに懸念を有する、このことは規約第九条及び第十四条に定められている被拘禁者の権利が侵害される可能性を大きくしかねないと、委員会は第三回政府報告書の審査時の勧告を再度表明をし、代用監獄制度を規約の要請をすべて満たすものにするよう勧告をする。三回目で勧告したのにちっとも良くなっていないじゃないかという、こういう勧告もされているわけであります。

 大臣は、国連のこの勧告に対してどういうふうに受け止めをされているんでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 今おっしゃいましたような勧告が国連の人権委員会の方から出されているということは承知しております。しかし、いわゆる代用監獄におきます被疑者の勾留につきましては、十分な司法的コントロールがなされております上、被勾留者の保護のための担保措置が既に十分に講ぜられていると思いますし、代用監獄が警察と分離された当局の管理下にないことについての懸念は当たらないと考えております。

 もとより、代用監獄に勾留中の被疑者の取調べなどにつきまして、任意性を疑われたり、あるいは不当に人権防御権を侵害したとの非難を受けることがないように十分の注意をするべきことは当然でございまして、関係機関においても引き続き努力するべきものと考えております。

井上哲士君

 担保されていると言われましたけれども、警察署の内部で部門が分かれているといっても捜査部門と身柄拘束の部門のトップは結局同じだということも国連の委員会では批判の声も出ているわけであります。

 むしろ、この現状がどんどん悪くなっているということを私、問題にしたいんですが、警視庁内に留置をされている者のうち、勾留前、それから勾留後、起訴後、それぞれ延べ何人になりますか。平成四年と平成十三年についてそれぞれお願いをします。

政府参考人(石川重明君)

 今、手元に平成十三年中の数字がございますのでそれで御答弁申し上げますが、延べ人員で見た場合に、被逮捕者、これは警察の身柄でございますが、五万三千二百十四名、それから勾留被疑者、これが三十万百五十七名、勾留被告人、これは五十五万三千四百七十五名、その他千八百六十二名と、こういうことになっております。

井上哲士君

 驚くべき数字だと思うんですね。本来、勾留前の人を留置をする施設でありますが、その分はわずか、今の数でいいますと五・八%であります。そして、勾留後起訴前が三三%。この起訴後の被告人が、何と今の数でいいますと六一%になるわけですね。私ども平成四年の数もいただいておりますけれども、当時は、この起訴後被告人の数が四二%だったのが年々増えて六一%になっているわけです。

 ですから、現実にはこういう国連等の指摘があるにもかかわらず、その起訴後の被告人がここまで増えているというこの現状、数字について、大臣はどうお考えでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 いわゆる代用監獄におきまして勾留されている者につきましては、その者を起訴して捜査が終了した場合には、原則として拘置所で受入れ可能な限り速やかに拘置所への移監手続を行っているところでございます。また、速やかに移監手続を終えるように拘置所の拡充にも努めたいというふうに考えております。

井上哲士君

 いや、速やかに移監をされていないからこういう事態になって、実に六一%が起訴後被告人ということになっているんです。

 一九九五年の当委員会でも、当時の前田法務大臣は、法制審の答申でも将来、できる限り拘置所又は拘置支所の増設及び収容能力を増強して、被勾留者を留置施設に収容する例を漸次少なくしていくことが示されておりまして、これに対して今後ともできる限りの努力を続けてまいりたいと、こういう答弁をされているんです。ところが、できる限りの努力どころか、実際には年々これが増えていっているという、こういう状況です。

 この結果、一体どうなっているのかと。留置期間の平均日数は全国と警視庁ではそれぞれどうなっていますか。お答えください。

政府参考人(石川重明君)

 平成十二年の数字で申し上げますが、全国一人当たりの留置期間の平均は二十五・四日、警視庁の場合はこれが三十五・九日となっております。さらに、その平成十三年、警視庁の数字が出ておりますが、この平均は三十六・三日というふうに、やや長期化しているということでございます。

井上哲士君

 本来は三日間しか留置をしない施設に二十三日間留置しているのは問題だということが国際的にも批判をされているわけであります。しかし、今ありましたように、全国的に見ても留置期間が二十五日、警視庁管内ではこれを大幅に上回る三十六日という数であります。これは本当に異常だと思うんですね。

 警察庁、お聞きしますが、東京で留置場を増やしたからといってこの長期留置というものが解消されるんでしょうか。

政府参考人(石川重明君)

 留置場を増やして長期留置を解消するというよりも、捜査をして逮捕する被疑者が増えてきているというのが、今後ともそういう趨勢が続くだろう、そういう観点で留置場施設の拡充が必要だと。これは警視庁に限りません、全国的でございますが、それが私どもの今見ておる考え方でございます。

井上哲士君

 しかし、先ほど私、数を出してもらいましたけれども、実際には留置施設の中でその起訴後の数がどんどんどんどん増えて実に六割になっていると。本来、留置所に入るべきでない、もう出ているべき人がたくさんいるというのが今の留置所が一杯になっている私は一番の問題だと思うんですね。流れていっていないんです。ですから、川でいいますと、流れていく下流のところで行けないわけですから、上を広くするんじゃなくて、ネックとなっているやはり必要な拘置所とか、そして刑務所を増強してこの問題を解決をするというのが私は必要だと思うんですね。

 今、東京拘置所の増改築が進んでいると思いますけれども、完成の時期、それから定員は何人増えることになっていますか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 東京拘置所の改築工事につきましては、平成八年度から着手しておりまして、完成は平成十七年の予定でございます。

 この改築によりまして、収容定員は約八百四十名増の三千名となる予定でございます。

井上哲士君

 現在、計画中の留置施設が六百ということでありますから、この新留置場の定数を大幅に上回る拘置所の建設が今進められているわけでありますから、現在、先ほどありましたように、起訴後でも入っているような人たちを順次移送をするということによって、新たなこういう大規模の留置場を増やす必要はもうなくなってきているんではないでしょうか。どうでしょうか。

政府参考人(石川重明君)

 今、法務省から御答弁がございましたように、東京拘置所が平成十八年までに改修をされて、収容定員が八百人以上増加をするわけでございますが、というふうに伺っておるわけでありますが、一方で被留置者、私どもの留置場で収容いたします被留置者も今後とも増加を続けていくだろうというふうに見込まれるわけでございまして、東京拘置所の拡充が行われる年におきましてその状況がどうなっているのかといったものを考えたときに、やはり相当現在の警視庁が保有しておる留置場の収容できる定員数では足りないと、こういう計算になるわけでございまして、特に警視庁は、適正処遇をきちっと行うという観点から、適正な被留置者の規模を定数のおおむね八割程度として設定をするとか、そういったような考え方をしておるわけでございまして、更に被留置者の数が警察署の留置場によって偏りがある、例えば都市部とそうでないところといったようなことでございまして、トータルとして警視庁の留置場に相当の不足数が出るだろう、留置可能人員に相当の不足数が出るだろうというふうに予測されるわけであります。

 そうしたことで、東京拘置所の建て替えが完了したとしても、先ほど申しましたように留置場拡充の必要性というものはなお存すると、こういう考え方でございます。

井上哲士君

 法務省は、当然拘置所の増強についての定数問題なども警視庁と協議をされているかと思うんですが、東京都警視庁から更に拘置所の定員を増やしてほしいという要望は来ておるんですか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 お答えいたします。

 東京拘置所の収容に関しましては、警視庁あるいは東京拘置所、また検察庁等含めていろいろ協議しておるところでございまして、警視庁側からは、できる限り東京拘置所の方へ身柄を移監さしてほしいという要望は承っておりますし、また改築工事の早期完成ということも聞いております。

 ただ、今、ただいまお尋ねの、現在工事中の改築によりまして、定員増では足りない旨の要望というところまではまだ承っておりません。

井上哲士君

 ですから、一番肝心の、このネックになっている拘置所の増強などは要望せずに、留置場の拡充で代用監獄を言わば固定化をしていくというこのやり方は絶対間違っていると思います。これは、地方自治体の問題ではありませんで、やはり日本の人権行政、刑事司法全体が問われておりますし、国際社会が注目をしている人権問題だと思うんです。

 今、人権侵害の典型として、片仮名でダイヨウカンゴクというのが国際語にもなるというふうに言われていることがありますが、今年十月には国連に第五回目の報告書を提出することになっていると思うんです。二度にわたってこの国際人権委員会から厳しい勧告を受けながら、代用監獄の縮小、廃止ではなくて、逆に六百もの新しいものを首都東京、国際都市に造る、こういう報告を出すということは本当に世界に恥ずべきことだと思うんですね。

 この問題で、やはり法務省がしっかり拘置所、刑務所等の拡充をして、こういう逆行する巨大留置場を造るべきでない、そういう点で法務大臣の積極的な役割を果たしていただきたいと思いますが、御所見をお願いをいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 今まで御説明申し上げましたように、法務省の矯正局関係の施設におきましても、できるだけ早く必要な数を整えなければいけないということで一生懸命に努力しております。やはり、一つのしっかりした施設を造りますのには時間が掛かるのはやむを得ないことでございまして、それをできるだけ早くするようにということは、特に昨年来の二回にわたる補正予算、またこの十四年度の予算につきまして特別な配慮をお願いして、今、私も一生懸命に努力しているところでございますが、そのような努力の結果、少しでも早くきちんとした施設を完備したいというふうに思っております。


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