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井上哲士ONLINE
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2002 年 4 月 4 日

法務委員会
更生保護施設の充実を

  • 篤志家の努力に支えられている更生保護施設の人件費や職員研修の充実、地方自治体の援助の拡充をもとめる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私も、法案審議の前に、地元の京都で三つほど施設を見さしていただきました。いずれも特徴を持った施設でありまして、全国で二番目に古いという盟親、それから在日韓国人の皆さんが中心で経営されている京都保護育成会、それから、今ありました、全国に七か所しかない女性専用施設の一つである西本願寺白光荘という、この三つです。この施設が果たしている役割、そしてどこも職員の皆さんの献身的な努力で支えられているということを見まして、大変胸を打たれるものがありました。

 今、入所者をめぐる状況が非常に困難になっているということも、いろいろお話を伺いまして、施設の皆さんももっとこの事業を発展をさしたいという思いを強く持たれておりました。そういう、今日求められる役割にふさわしい充実した事業になり、かつ職員の皆さんの処遇が、労働条件等がもっと上がっていくという方向で質問をしたいと思います。

 どの施設でも共通していましたのは、大変経営基盤が厳しいと。篤志家の本当に尊い協力と職員の皆さんの献身的な努力で支えられておりました。気になるのは、今回の法律で、第五条の二項で、更生事業法人に対しまして、「経営の基盤の強化と透明性の確保を図らなければならない。」と、こういう規定が新たに加わったわけですね。随分この経営基盤のために皆さん努力をされていて、むしろ私は国が甘えているんじゃないかというような思いもしたわけでありますが、あえてこの法人に経営基盤の強化ということを今回入れた意味は何なのか。これによって国の責任が後退するようなことになってはならないと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 今回の改正におきましては、更生保護施設における処遇機能を充実強化するとともに、一時保護事業及び連絡助成事業に対する規制緩和を行うことによりまして更生保護事業の一層の発展を期することとしましたが、この事業に携わる者の自助努力なくしては、真にこれを実現することは不可能でございます。

 そこで、事業法改正案の第五条の二におきましては、特に更生保護事業において中心的な役割を担う更生保護法人に対しまして、自主的に、その本体業務である処遇等その他事業内容を向上させるとともに、それを側面から支える経営全般について、その基盤の強化と透明性の確保を図らなければならないということにいたしました。

 したがいまして、今回の改正案におきまして「経営の基盤の強化」という文言が加わっておりますが、これは、委員御懸念のような、国の更生保護法人に対する財政的支援を後退させるという、そういう趣旨は全くございません。

井上哲士君

 後退することはないんだという御答弁でした。経営基盤の強化はやっぱり国の委託費の向上などが一番だと思うんですね。

 私は、ある施設で理事長さんに、いわゆる役員報酬などはもらっているんですかとお聞きをいたしますと、とんでもない、逆だと。理事で年間十二万、理事長さんは六十万出されているというお話でありました。こういう本当に善意で支えられているわけでありますが、それでも非常に厳しいわけで、主に職員の皆さんの労働にしわ寄せが行っていると思うんです。

 今、更生保護法人の有給職員数、それからボランティアの数、これは全国的にはどうなっているでしょうか。そして、有給職員については社会福祉法人などと比べますと人件費の積算に当たっての格付がどういうふうになっているでしょうか、お願いします。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えをいたします。

 更生保護施設における有給職員は、平成十四年の四月一日現在で常勤職員が四百八十人です。それから、非常勤の職員が七十三人。したがいまして、合計五百五十三人でございます。

 更生保護に関するボランティアとしましては、保護司さんが全国に約四万九千人、それから更生保護婦人会員が約二十万人、それから BBS 、ビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズの会員が約六千人いらっしゃいます。これらのうちのかなりの方々が更生保護施設に付きまして、被保護者に対する相談に乗ったり、あるいは調理をしてくださったり、あるいは手伝ってくださったり、あるいはレクリエーションの活動に一緒に加わっていただいたりというようなことで、いろいろ御支援をいただいているところであります。

 それから、社会福祉施設の職員と比べていかがかというお尋ねでございますけれども、更生保護施設の職員には福祉職の俸給表が適用されております。その格付でございますけれども、収容定員二十人以下の施設につきましては、その主幹、これは施設の長でございますけれども、主幹は四級一号俸、福祉職のですね。それから、二十一人以上の施設の主幹は四級二号俸。それから、補導主任といいまして、これは補導の責任者になりますが、補導主任は二級の七号俸。それから、その下で補導に当たります補導員は二級六号というようになっております。

 一方、社会福祉施設の職員にももちろん福祉職の俸給表が適用されておりますけれども、その格付は、施設長が四級の三号、それから指導員が二級の六号、それから一般の、これは主任でございますけれども、それからもう一つ、一般の指導員は二級の五号俸というふうに承知しております。

 社会福祉施設の職員との比較は、職務の内容や、あるいは施設の規模が異なりますために必ずしも一概には言えませんけれども、更生保護施設職員の給与格付につきましては、従来は行政職(一)、行(一)の俸給表が適用されておりましたところ、財政御当局の御理解を得まして、平成十三年度から福祉職の俸給表が適用されるということとなっているということで、相応の改善は図られてきたのではないかというふうに考えております。

 なお、犯罪者処遇の専門施設としての更生保護施設の機能を高めるために、職員の待遇改善につきましては今後とも引き続き努力してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 格付はほぼ同一に改善をされてきたということは大変いいことだと思うんです。

 ただ、先ほども議論ありましたけれども、問題は、いわゆる出来高払といいますか頭割りということになっていると。これは、国全体でも、延べ定員に対して大体予算セットが全国平均の使用率である七〇・六%というふうにお聞きをしたんですが、今回、委託対象の拡大によって予算措置が増えたという御答弁がありましたが、保護期間の延長については様子を見るという御答弁が午前中ありました。

 私、聞いたところでは、年度末など予算の関係で、実際、希望者がいても受け入れないとかということも起きたりしているということも聞いたわけですね。今回、この法改正されたことによって十二か月施設として延ばしたけれども、結局は負担が施設に来るということになりますと、何のための改正ということになると思うんですが、こういう心配はないですね。

政府参考人(横田尤孝君)

 午前中申し上げましたように、今後の実施の状況を見て、更生保護施設に負担が行かないような対策を取ってまいりたいと考えております。

井上哲士君

 それで、いわゆる出来高払制度が大変な負担になっているということを申し上げたんですが、例えば西本願寺白光荘で聞きますと、五十五歳の主幹と三十代の女性二人が主任、補導員として働いておられました。三日に一度、月十日ほど宿直があると。去年の休みを聞きますと、主幹は三十四日、主任が六十五日、補導員は七十一日ですから、主幹は週一度の休みすら到底取れないということでありました。にもかかわらず、給料は非常に少ないわけで、主幹で月額二十三万から二十五万という施設もございました。

 多くはやはり年金生活者の方に頼らざるを得ないと。もちろん、いろんな経験や知識を持った方を、力を出していただくということはいいことだと思うんですが、若い職員の採用が非常に困難になっているということがどこでも言われたわけです。

 今、少年の入所者が非常に増えているという点からも、それから処遇困難な人が増えているという点からも、専門性を持った若い人、それから同世代の職員を採りたいという希望が非常に強いわけですね。ところが、資料で見ますと、今、職員の平均年齢が六十・三歳で、三十代以下は実に六%ということでありました。

 例えば、京都保護育成会で聞きますと、働きたいということで面接に来た人がいたけれども、給与実態などを聞いて、ちょっとこれでは生活できないなということで断念をされたと、非常に残念だということを言われておりました。

 そういう若い人たちをやっぱり採用していけるようにするためにも、社会福祉法人並みのやっぱり待遇にしてほしいということがどの施設からも出たわけですね。いわゆる出来高払ではなくて、例えば人件費だけ別建てにするとか、そういうこともできないんだろうかという要望が非常に強いわけですが、こういう若い人たちをこういう施設で働けるような条件を作っていくという点でも、委託費を例えばいわゆる定員定額制とかそういう方向で改善をする、こういう点で、是非、大臣の御所見をお願いをしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 御指摘のとおり、更生保護施設の職員の平均年齢は大変高齢化しておりまして、現在六十・三歳ということでございます。犯罪者処遇の専門施設としての機能を高める上で、非常にその人生経験豊かな方というのも非常に役には立つんでございますけれども、若手の有能な職員も欲しいということで、これも重要な課題だというふうに考えております。

 そのためにも相応の待遇改善を図っていくことが必要でございますが、現在、更生保護施設職員の人件費は、更生保護委託費という形で委託件数及び委託日数に応じて支払う方法が取られておりまして、保護実績の乏しい更生保護施設におきましては経営に苦慮しているというのが実態だと承知しております。

 当局といたしましては、保護実績の向上を図るための方策を検討いたしますとともに、更生保護委託費の在り方そのものについて更に検討を重ねていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 この西本願寺白光荘の主任の方は、お姉さん的な職員が必要だということで要望されて勤務するようになったと言われておりました。採用の面接を受けたときに、意欲や能力とともに、月ほぼ十回の宿直ができて、労働基準法よりも職業観、使命感を優先する心の持てる人、それから高校新卒並み、この人は大卒なんですが、給料で生活を維持できる、こういうようなことも言われたということを言われておりました。

 ただ、その人の書いた手記もいただきましたけれども、「寮生たちは不幸にして過ちを犯した人たちではありますが生まれながらの善人がいないのと同様、生まれながらの犯罪者は何処にも存在しません。多くの場合、初めは何らかの形で被害者であります。ただ女性であるがためにと……。」、こういうようなことも書かれておりました。

 こういう人間の可能性、自分の可能性を信じて頑張れる若い皆さんがもっともっと採用でき、安心して働き続けれるような改善を改めて強く求めておきたいと思います。

 次に、処遇の改善の問題なんですが、午前中の議論でもいわゆる SST などの問題が出ておりましたけれども、京都の施設でも例えばパソコンなどが法務省から置かれているというところもありました。こういうハードの面とか、それからいろんな処遇の向上のためのプログラム、またそれをやるための職員の研修など、全国的なレベルアップをするという点で、法務省としてはどういう方向をお考えでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 更生保護施設の処遇機能を充実強化するために、当局では、平成十二年の一月に、更生保護法人、全国更生保護法人連盟と共同いたしまして、更生保護施設の処遇機能充実強化のための基本計画、二十一世紀の新しい更生保護施設を目指すトータル・プランというものを策定いたしました。この基本計画におきまして、各更生保護施設は、それぞれの事情に応じて処遇を充実するための具体的な目標を設定いたしまして、そしてその達成を図っております。ただいま委員の御指摘がございました SST とか、あるいはコラージュ療法等の専門的な処遇を試みている更生保護施設も現に幾つかございます。

 こういった各施設の試み、新しい試みにつきましては、当局が主催する協議会、研究会等におきまして相互の情報交換を図っております。また、当局において処遇方法に関する事例集などを作成いたしまして、そして全国の施設に配付することもいたしております。

 このようなことで、全国的にこのレベルが全般的に上がるような、そのような努力をしております。今後とも、このような努力を引き続き行いまして、全国の更生保護施設における処遇水準といいますか、技術といいますか、そういうものの向上を図ってまいりたいと考えております。

井上哲士君

 是非よろしくお願いします。

 次に、地域や自治体との協力の問題なんですが、この法では、五年前の制定のときに、更生保護事業が地域社会の安全及び社会福祉の向上に寄与することにかんがみ、その地域において行われる更生保護事業に対して必要な協力をすることができると、こういう規定が入りました。

 施設の方は本当に地域との協力関係に努力をされておりました。盟親という施設は、十年前に改築をしたときには随分地域の皆さんと何度も協議をされました。集会場を作って地域に開放すると言っても、そんなの使わぬというようなことも最初は言われたようでありますが、今お邪魔しますと、毎日、地域のそれこそ社交ダンスのクラブとかいろんな集会に使われておって、年間三百六十日ぐらいいろんな予約が入っているということも見ました。

 こういう地域との協力を深める上でも自治体の理解を強めるということは非常に大事だと思うんですが、この法を作ったときに自治体の協力ということを明記をしたわけですが、それ以後、それ前と、前後比べますと、施設建設への自治体の補助、それから運営経費への補助というのはどういうふうに変化をしているでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおり、法律に自治体の協力規定が設けられましたことによりまして、その後、自治体からの財政的な協力といいますか、が増えていることは事実でございます。運営経費に対する補助金につきましては、平成十二年度を見ますと、この自治体からの補助を受けました法人は四十三法人ございます。その総額は三千八百四十一万三千円に上っております。

 それから、最も大きいものは更生保護施設の整備事業に対する補助でございます。これは、例えばこの協力規定のできる前で、ごくかいつまんで申し上げますと、全体の更生施設の改築、改修等に要する経費に対する自治体の補助金の割合が、ざっと計算しますと約一六%でございましたが、最近の状況見ますと、それが約二五%、四分の一につきまして自治体からの補助がなされているという実情がございまして、やはり協力規定が置かれたということによってこのような結果になっている、成果が上がっているというふうに理解しております。

井上哲士君

 一定の前進がされているということでありました。ただ、やはり期待したほどの前進なのかということがあるかと思うんですね。

 特に、施設運営の経費でいいますと四十三法人ということですから、六割の施設はいまだに自治体からの補助はないと。全体百一として、法の実施直前、平成六年でいいますと、いただいた資料では三十六法人、三千二百八十三万九千円でありますから、七法人増えたとはいえ、六割はまだゼロということなんですね。

 補助を受けている施設を見ましても、少ないところで年間八万、一番多いのが愛知県豊橋の東三更生会というところで、これが年間五百二十五万八千円ということですから、相当ばらつきがあります。それぞれの施設のいろんな経緯、事情もありますから、少ないところが冷たいとかそういうことを言うつもりはないんですが、しかしもっと、本来、そういう自治体との協力が広がるということを私はあのとき期待をされていると思うんですね。

 まだまだ、こういう地域社会の安定と社会福祉の向上につながると法に明記したこの中身といいましょうか、施設そのものが十分に理解が広がっていないんじゃないかという気もするわけで、これは施設任せにせずに、国として大いに自治体にも働き掛けていくべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 自治体は自治体で、特に最近は地方財政なかなか厳しいということもございまして、それなりの事情がおありのことと思いますけれども、しかしやはり更生保護といいますのは地域に根差していくといいますか、地域社会の中で実施していくということで、一番身近なものはそれぞれの自治体であるわけでございますので、私どもといたしましては、これからもそのような自治体に対して更生保護の理念、実情といったものをいろいろ訴え掛けまして御理解を求めて、それを運営経費あるいは設備整備の補助金という形で具体的な御協力を得るように努めてまいりたいと、このように考えております。

井上哲士君

 施設の皆さんも、援助待ちとか協力待ちということではなくて、いろいろ積極的に地域に貢献をどうしていくのかということを考えていらっしゃいます。

 京都保護育成会というのは、最初言いましたように、在日韓国人の皆さんが主体となって作っておられるんですね。当初は在日の人々が入所されていたんですが、もう今は入所者すべて日本人だそうです。もうやめようかという話もあったけれども、日本社会に世話になってきたということで続けていらっしゃるわけですね。

 私、行ったときも、当日、集会室で京都府下の保護司の皆さんの研修会をされておりましたし、地元の右京区の保護司の皆さんが月一遍の少年非行相談ということをその場所でも行われておりました。理事長さんは、例えばいったん退所をした人も気軽に相談に来て、自分の後輩の犯罪を防ぐ役割をするとか、やっぱり地域のそういうコミュニティーセンター的な、コミュニケーションのセンター的な役割を果たすような施設にしたいと、こういうような抱負も語っておられました。こういう本当に地域センターとしての発展方向にもっともっと国としても援助をするべきだと思います。

 保護局の皆さんとお話ししていましても、全体としてやっぱり予算も厳しい、理解もまだまだ広がっていないということがありました。予算に占める司法の割合が低いということはこの委員会でも議論になってまいりましたが、法務省の中でも保護の予算というのは三%だということもお聞きしたわけですね。必要な予算の確保とともに、自治体や地域に理解を広げて、この事業を発展をさせる上での大臣の決意を最後にお聞きをしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 前の質問者の場合にも類似の御指摘がございましたけれども、この更生保護の仕事というのは民間の善意、そして社会奉仕の旺盛な精神をお持ちの方々の献身的な御努力というところからスタートしておりまして、それが今の世の中の必要に応じて次第に発展、成長してきたというふうに私は感じております。

 そのような経緯がございまして、しかもそのような善意による人間的な接触ということが非常に重要だという要素でもありますので大切なことだと思いますけれども、一方において、そのような経緯から公のかかわり、特に政府のかかわりというものがやや立ち後れているというふうな面も否めないかと思うのでございます。

 政府の努力、なすべきことをきちんとした上で国民の多くの方の御理解をいただいて、民間の善意、活力をちょうだいしながらこの仕事が伸ばしていくことができるようにというふうに願っているところでございます。


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