本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2002 年 4 月 11 日

法務委員会
米兵受刑者への厚遇の廃止を

  • 横須賀刑務所における米兵受刑者への厚遇の廃止を要求。
  • 海外での日本人観光客の冤罪―メルボルン事件をとりあげ、外務省に対し邦人保護、法的援助などの抜本的充実をもとめる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 国際的な協力の下で受刑者を本国に移送して刑の執行を共助することにより、その改善更生及び円滑な社会復帰を促進するという法案の目的については私どもも賛成であります。

 受刑者移送が始まりますと、各国の受刑者環境の実情、格差というのが非常に明白になってまいります。午前中もありましたけれども、国際人権規約委員会も日本の刑務所の中の規則を過酷だということで改善も求めております。私語、わき見をしないとかいろいろあるわけですが、私も府中刑務所の刑務所規則をいただきました。「これに違反すると懲罰処分を受けることがあります。」と書いてありますが、例えば、「許可なく定められた方法以外の方法で衣類を洗濯し、又は身体を洗ってはならない。」等々、余りにも細かく、また軍隊的な規定があるんではないかと。そして、監獄法施行規則によって、家族との面会にも立会いがあったり、手紙が親族に限られて、回数も制限されているとか、こういう点での改善の声も非常に強いわけですが、この法ができるに当たり、こうした受刑者の人権、国際的な水準で改めて見直していくということが求められていると思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 受刑者の施設内におけるいろいろな規制、特に所内規則というものは、受刑者に対しまして適切な処遇を行いまして、その改善更生、社会復帰に資すると同時に、やはり集団生活の安全を確保するために必要かつ合理的なものであるわけではございまして、それが過酷とかあるいは人権侵害とされるようなものではないというふうに考えております。

 当局といたしましても、従来から受刑者人権、受刑者の人権には十分配慮をしておりまして、その処遇をより一層充実するため所要の改善措置も講じてきているところでありますので、今後とも改めるべき点があればこれを改善していきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 国際的な水準での見直しということを改めて求めておきたいと思います。

 全体を改善をしていくことは必要でありますが、しかし道理のない特別扱いというのはするべきでないと私は思うんです。

 公務外で犯罪を行ったアメリカ兵が入る日本では唯一の刑務所が横須賀刑務所であります。この中で、アメリカ兵受刑者と日本人受刑者が非常に待遇が違うという問題についてお聞きをいたします。

 これは、九七年に我が党の緒方議員がただしまして、当時の下稲葉法務大臣は、るるお伺いいたしまして感ずることもたくさんございますと、実態をよく調査いたしまして善処するように努力いたしますと、こういう答弁をされております。

 その後、例えばアメリカ兵の就寝時間は十時だが日本人は九時だとか、アメリカ兵は毎日シャワーが浴びれるけれども日本人は週二回のふろだとか、この辺は一定の改善がされたということをお聞きをいたしました。

 暖房がどうかというのを改めて聞くんですが、米兵の房には冬の間は暖房があるけれども日本の受刑者にはないと。しかも、この米兵のボイラー夫は日本人受刑者がやっているという問題がありますが、この点はどういうふうに改善をされたでしょうか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 御指摘のとおり、平成九年にそういった御指摘を受けまして、横須賀刑務所における暖房につきましては、当時、米軍関係受刑者の舎房のみにスチーム暖房が行われていたわけでありますけれども、平成十年以降、日本人受刑者の舎房前に、の廊下にストーブを設置するなどして採暖の措置を講ずるということで、その取扱いに著しい差異がないように、差別がないように改善しております。

井上哲士君

 部屋を暖めるために廊下にストーブを置く人というのはいないわけで、廊下にストーブを置いたからといって改善がされたということには私、ちっともならないと思うんですね。

 最大の問題として指摘したのは食事の問題でした。これ受刑者の最大の楽しみなんですが、これが非常に大きな格差があると。

 当時、直接、基地のメニューも見ておるわけですが、アメリカ兵は毎日ステーキなどの肉が出ると。フルーツ、ケーキ、それから三食ごとにコーヒーと牛乳が付くと、こうなんですね。日本人受刑者の場合はステーキなどもちろん出ませんし、甘いものというのは祝日しか出ないわけですね。フルーツは十日に一遍と。なぜこういう、刑務所内で米兵のメニューが、格差があるのかと。これ基本的に基地内の軍務に就いている米兵の食事とメニューを基本的に同じにしていると、そのために米軍当局から補充食料の提供がされておるというお話でありましたけれども、この点の改善はどうなったでしょうか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 ただいま御指摘のありました米軍から米軍関係受刑者への補充食料の問題につきましては、品目、数量の段階的縮小を図り、最終的には廃止する方向で米国側に申し入れているところでございますが、いまだ結論を見るには至っておりません。

井上哲士君

 これ指摘して五年間ですが、協議はしているけれども、実態は何も変わっていないという御答弁だったと思うんです。

 この刑務所内の処遇というのは監獄法で定められていると思いますが、こういう暖房とか食事の特別待遇というのは監獄法のどこに根拠があるんでしょうか。

政府参考人(鶴田六郎君)

 お答えいたします。

 暖房の方については、特に明文の根拠規定はありませんが、この補充食料については、米軍当局から米軍関係者に差し入れられたと、差し入れということで、監獄法五十三条に規定する差し入れというふうな取扱いをしておりまして、受刑者に対する物の差し入れについては、刑務所長が個々の事案ごとに差し入れ物の性質、差し入れを許すことのできる、差し入れを許すことによる拘禁目的に及ぼす影響等諸般の事情を考慮しましてその許否を決するところでありますけれども、本件についても、横須賀刑務所長は、そういった事情を考慮いたしまして、その裁量により差し入れを許可してきたものと承知しております。

井上哲士君

 差し入れといってもいわゆる間食とかではないわけですね。全く別メニューの食事がされているわけです。

 じゃ、日本人受刑者でこのような形で別メニュー食事が出されているというような例がありますか、差し入れによって。

政府参考人(鶴田六郎君)

 日本人受刑者の場合は、御指摘のとおり、通常の場合、食料の差し入れは認められておりません。ただ、米軍関係受刑者の場合は、日米地位協定の実施に関する合意の趣旨や、米軍関係受刑者の食習慣といったようなものを考慮して、横須賀刑務所長の裁量により認めてきたものと承知しております。

井上哲士君

 ですから、これ日本人には認められていないわけですから、全くやっぱり特別扱いなわけですね。アメリカ人の習慣と言いますが、やられているのはアメリカ兵の受刑者だけなわけですから、二重の意味で私、特別待遇になっていると思うんです。これは本当に道理がないと思うんですね。

 暖房のボイラーをやっている日本人受刑者は、残業をして寒い中で自分でたいて、自分の部屋に帰ったら暖房がないと、ここは一体、日本なのかアメリカなのかと、こういう感想も言われていたというのをお聞きをいたしましたけれども、これは本当、道理ないと思うんです。

 沖縄では、昨年、北谷町での米兵による婦女暴行事件の際に、身柄引渡しをめぐって大きな怒りの声が上がって、地位協定の改定を求める声も広がりました。米兵が刑務所に入っても、こういう罪を罪とも思わないと私は思うんで、そういう特別待遇をされていると知ったら、沖縄の皆さんはどう思うんだろうかということも思うんです。

 やはり、公正な司法への信頼という点からいいましても、処遇の改善というのは、いや、外国人の習慣の違いを考慮することは当然なんです。そうであれば、平等で改善すべきであって、こういう米軍人の受刑者だけの特別扱いというのは私はもうやめるべきだと思うんですが、大臣、御見解いかがでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 先ほど矯正局長も申し上げましたように、米軍当局によって米軍関係受刑者に対する補充食料の提供というこのやり方は最終的には廃止することが望ましいと私も考えます。

 しかし、何十年にもわたって続けられている取扱いでございますので、にわかに簡単にというわけにはまいりませんけれども、今後とも鋭意米国側との折衝を続けまして、適切に対処していきたいと思います。

井上哲士君

 是非、早いうちでの改善をお願いしたいと思います。

 この移送条約の批准に当たっては、いわゆる自国民の保護ということから、アメリカからの要求が非常に強かったということも報道をされております。ただ、今のような、日本での罪を罪と思わないような取扱いを米軍自身が求めてきたということを見ますと、この受刑者の改善更生という趣旨と違う運用がされるんじゃないかと、アメリカとの関係で。そういう懸念を私は思うんです。

 米兵の受刑者の移送、送出移送については、法務大臣が相当性を判断して決めると法案ではなっているわけですが、こういう米兵の受刑者の移送などは、例えば県民感情であるとか被害者の皆さんの感情であるとか、こういうことはどういうふうな考慮をされるのか、大臣からお願いします。

国務大臣(森山眞弓君)

 我が国で服役しております外国人受刑者の送出移送の場合には、その者の改善更生や社会復帰の促進という目的と同時に、他方で、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能や抑止効果が損なわれないように留意しなければならないと考えております。

 おっしゃるように、被害者の感情とか国民的な感覚というものも大変重要だと思います。受刑者移送の目的や刑罰の機能等がより良く発揮されますように、御指摘のような被害者感情や社会感情など、関係する様々な事情を総合的に考えまして、個々具体的に送出移送が相当かどうかは判断するということになろうと思います。

井上哲士君

 特に、沖縄県民の皆さん見ておりますので、是非お願いをしたいと思います。

 次に、外国で服役をしている日本人の受刑者についてお聞きをいたします。

 外国旅行する人も年々増えまして、海外での受刑者も十年間で倍ぐらいになっているかと思います。その中には冤罪を主張されている方もいらっしゃるわけです。

 その一つとしてメルボルン事件というのがあります。これは、九二年に日本人の観光客の一団がオーストラリアでヘロインの密輸疑惑で逮捕されて、現在服役中であります。そして、九八年に、国際人権規約委員会に個人通報制度を使って日本人としては初めて通報をした、こういう事件であります。これが通報したときのこの冊子であります。(資料を示す)

 一行は、オーストラリアに入る前にマレーシアに立ち寄りました。そのときにスーツケースを盗まれます。現地のガイドが、スーツケースが見付かった、しかしこれずたずたになっていると言って新しいのを用意してくれるんですね。ところが、そのスーツケースが二重底になっていて、その中にヘロインが隠されていたと。そのままオーストラリアに入ったときに空港で捕まって、男性四人、女性一人が、全く自分たちは身の覚えがないんだと無罪を主張してきましたけれども、結局、有罪判決を受けました。上告をしましたけれども、懲役十五年から二十年の刑が確定をしております。これ現在、服役中でもう十年になります。女性の方はただ一人、女子刑務所に入っておりまして、言葉も通じない、環境も違う、ストレスやショックで時に呼吸困難のひどい発作を起こしたり、自殺未遂もされたという状況があります。

 事件の経過を私も大阪へ行って弁護団の方からいろいろお聞きもしたわけですけれども、やっぱり現地の大使館の最初の対応がこれで十分だったんだろうかということを思うわけです。こういう日本人が外国で犯罪の被疑者にされたときに、外務省としてどういうふうに対応をするのか。その規定はどういうふうになっているんでしょうか。

政府参考人(小野正昭君)

 お答え申し上げます。

 一般的に、在外公館におきまして邦人が逮捕、拘禁されたという事実を知った場合には、直ちに現地官憲に対しまして事実関係の確認をいたしまして、それで当該邦人に対しましては面会等を行いまして本人の希望を聴取するということを行っております。例えば、弁護人ですとか通訳が必要になるということがございますので、その紹介ですとか、あるいは家族等関係者への連絡、それから差し入れなどをしてきているわけでございます。また、当局による取扱いの状況ですとか、あるいは健康状況、それを調査するということも行っておりまして、邦人保護の観点から様々な配慮を行ってきているところでございます。

 先生御指摘のメルボルンの本件事件につきましても、邦人が逮捕された直後から、それから取調べの間も含めまして数次にわたって何度も面会を実施してきております。それから、弁護士の雇用等につきましても助言する等、可能な限りの支援を行ってきた経緯があるわけでございます。

 それから、改善すべき点等があるんではないかという御指摘がございました。私どもも、もちろん執務提要と申しますか指針というものを我々各在外公館持っておりまして、それに基づきましてしかるべき対応をするわけでございますが、個々のケースは様々でございまして、そのケースごとにまた必要に応じて本省から指示を出して、その対応に遺漏なきを期すということでやってきているわけでございます。

 今後ともこの点につきましては、個々の事件の状況に照らしまして、被疑者の立場に立って一層きめの細かな対応に努めていきたいというふうに考えている所存でございます。

井上哲士君

 直ちに連絡を取るということなんですが、実はもう一件、外国で冤罪を訴えているのに、フィリピンで死刑判決を、やはりこれ麻薬の関係で受けておられる名古屋の会社員がいらっしゃいますが、この人の場合も、報道によりますと、逮捕直後に大使館に三回電話をしたけれども、コレクトコールを理由に断られたと。大使館職員が接見したのは逮捕から半年以上も後で、既に一審判決は下りていたと、こういうこともあるんです。

 何というんでしょうか、やはり問題になっているところには対応の問題が私はあったと思うんですね。しかも、通り一遍の照会とかでは駄目だと思うんです。このメルボルン事件の人たちも、自分たちは逮捕されたという認識がそもそもないわけですね。運び屋に使われて、言わば参考にいろいろ話を聞かれていると思っているわけです。ですから、わざわざ領事館と接触を取ったり弁護人を雇うという必要性も感じていなかったと。ある程度捜査が終わったら自由が戻るんだと信じていたと言われております。ですから、言葉も分からない、司法制度も違う、文化も違うところで、自分たちの置かれている状況がどういうことなのかということまでかなり踏み込んだ対応を現地がする必要があると思うんですね。

 特に重要なのは通訳でありまして、この事件の場合、空港での取調べは旅行会社のツアーのガイドがしているわけですね。その後も非常に不十分な供述調書が出ておりまして、例えばリーガルエードという無料で法律扶助を受けられる制度がありますが、こういうこともきちんとは説明されていないわけですね。裁判についても、通訳人の一人が、検察官と弁護士、証人がともに英語で話す場合でも通訳は一人しか付けられず、やり取りの速さに追い付けなくて要約せざるを得なかったと、こういうことを言われております。本人たちも、審理されている内容について翻訳されるのは一部だけで、まるで雲をつかむような裁判だったと、こういうことをこういう本の中でも言われております。

 この個人通報に当たっては、日本の司法通訳人協会の長尾ひろみ会長が中立の立場で協力をされていますが、通訳人がその気になれば裁判を動かすことができるということもある新聞で言われております。

 日本国内の外国人受刑者の通訳の話も審議で出ましたけれども、外国での通訳を付けるのは確かに当該国の責任でありますけれども、現実にはいろんな不十分さがあって、日本人がこういう目に遭っているということになりますと、やはり在外邦人の保護の観点から、信頼できる通訳を紹介をしたりする体制が非常に大事だと思うんです。

 OECD 各国とかオーストラリアのいわゆる法廷通訳人の制度、そういう通訳人をしっかり日本の大使館がリストとして紹介できるように持っているのかどうか、この点どうでしょうか。

政府参考人(小野正昭君)

 法廷通訳制度でございますが、豪州も含めまして西側先進国の多くの国におきましては法廷通訳制度が存在しているわけでございますが、こうした制度を有する多くの国におきましては法廷通訳のリストというものは実は一般的には公開されておりません。そういうのが実情でございますけれども、我が邦在外公館におきましては、可能な限りこうした通訳の情報を入手する努力をしておりまして、当該邦人の求めに応じまして紹介等を行ってきているわけでございます。

 なお、御指摘のメルボルン事件での事件の通訳の質に問題はなかったのかという御下問でございますが、本件事件におきましては裁判所側が法廷での通訳を選定したという事情がございます。

 それから、総領事館員は主要な裁判には立ち会って傍聴をしているわけでございますが、通訳につきましては実はイヤホンを通じて行われてきたという事情がございまして、館員を含め傍聴者は、当該通訳の部分については十分その適否を判断することができなかったという事情があったというふうに承知しております。

井上哲士君

 ですから、そういう、これ裁判のやり方も違うわけですから、現実には裁判の場所に行っていてもこの通訳がきちんと行われていないということが結果としては見過ごされて残っているわけですね。

 現地で支援をしている皆さんからは、事件当初の海外における日本国政府の対応のお粗末さに唖然としたと、こういうような批判の声なども出されておるわけです。

 やっぱり今後、海外でこういう不幸にも事件に巻き込まれる人も増えていくと思うんですね。ですから、在外邦人の保護という観点から、一層きめ細かく、しかも迅速な踏み込んだ措置が求められていると思うんですが、今後の強化方向について再度お願いします。

政府参考人(小野正昭君)

 先生御指摘のように、近年、世界的に事件、事故に巻き込まれる邦人の援護件数というのは増えておりまして、本年一月現在で未決、既決、合わせて邦人拘禁者数百六十名に上がっているわけでございます。

 こうした被拘禁者に対する援護につきましては、これ繰り返しになりますけれども、先生御指摘のように、初動が大切だというふうに我々も認識しております。今後とも、個々の事件の状況に照らしまして、被疑者の立場に立ってより一層きめ細かな対応をしていきたいと。特に、御指摘のように、言葉が不自由な邦人の場合には、やはり必要に応じて、弁護士等と打合せを通じて、滞在国の法令等、それから被告人に認められている権利等については当該邦人にきちっと説明していく等の措置を講じていきたいというふうに感じております。

井上哲士君

 是非、一層の強化をお願いをしたいと思います。

 この事件が注目されるようになったのは、最初にも言いましたように、国連への個人通報を日本人として初めて行ったということからです。当初、日本ではほとんど知られていない事件でありましたけれども、現地で支援活動をしている日本人から伝わって、判決から四年たってやっと弁護団ができまして、今、連名で釈放などを求めていらっしゃいます。こういうパンフも作っていらっしゃいます。個人通報の中では、捜査段階や公判段階を通じてオーストラリアの通訳体制や運用に問題があったということも指摘をしているわけです。受刑者の方々は、とにかく無実を晴らしたい、たとえ恩赦が認められても残って無罪を証明したいと、そこまで言われているようなことがあります。やはり、こういう世論を広げていくという点で、非常にこの個人通報制度が大きな私は力を発揮している一つの例だと思うんですね。

 私どもは個人通報制度を国際的に確立している人権保護の基準として批准を求めてきたわけでありますけれども、法務省は検討検討ということを繰り返してこられました。受刑者移送についても、かつては刑罰権は国の主権の一部で裁判国で実現するのが原則だということで消極的だったと思うんですが、今度こうやって踏み出したわけですから、いろんな意味での人権の国際水準を満たすという点で、この個人通報制度の批准に踏み出すべきではないかと思うんですが、大臣の御所見をお願いします。

国務大臣(森山眞弓君)

 条約の批准ということになりますと、それは外務省の所管ということになるわけでございますが、それを前提として私なりのお答えを申し上げますと、今、委員が御指摘になりました国際人権 B 規約第一選択議定書において、いわゆる個人通報制度が規定されているわけでございます。

 この個人通報制度につきましては、おっしゃるような意味があるとは思いますけれども、他方で、司法権の独立を含め司法制度との関連で問題が生ずるおそれもあるのではないかという懸念があるわけでございますが、いずれにせよ、この条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨から注目すべき制度であろうと思っております。

井上哲士君

 勧告は政府に行われるわけなので、司法権の侵害にはならないということを言っておきたいと思います。

 人権宣言が五十年のときに、ある新聞の社説でこの問題について、この条約に加わった場合の戸惑いや若干の混乱よりも、条約を拒むことによって国際的な人権基準や世界の潮流から取り残されることこそ恐れるべきだと、こういう指摘もされております。人権感覚を研ぎ、社会や法制のありようを考えていく上で大いに意味のある制度であると、こういう指摘もあるわけで、是非前向きにこれを取り入れていくという点で改めて求めまして、質問を終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.