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井上哲士ONLINE
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2002 年 4 月 25 日

法務委員会
検察機密費、商法改正案について

  • 大阪地検前公安部長の逮捕に関連して、検察機密費である調査活動費の実態をただす。
  • 商法改正案について、米国型企業統治の一部分の導入をはかるものの経営監視は強化されない問題点を指摘。 インサイダー取引を行った経営者を排除する仕組みを要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 巨悪は眠らせないという検察幹部の有名な言葉がありました。国民は、この言葉に拍手を送ったときに社会正義の実現という期待を込めたと思うんですね。その期待を裏切るとんでもない事件でありますし、強大な権力を持つ検察幹部が暴力団と手を組んで悪事を働くというのは、絶対にあってはならない事態であります。

 同時に、先ほど来ありますように、いわゆる機密費の不正を暴く口封じではないのかという疑惑があるわけです。昨日も本会議でお尋ねいたしましたが、大臣は関係がないという御答弁でありましたけれども、これでは私は国民は納得しないと思います。

 そこで、今、平成十年以降、検察全体の調査活動費が激減をしたということが示されまして、その理由も言われました。それで、幾つかのマスコミでもこの問題は取り上げてきたわけですが、どれを見ましても、例えば私、週刊文春を持っておりますが、法務省刑事局総務課の答弁は、平成十一年以降の減額は情報収集でコンピューター利用を充実させたためと、これしか答えていないんですね。今のお話とちょっと私は違うなと思うんですが、途中から理由が変わったんですか。

政府参考人(古田佑紀君)

 特に違ったことを申し上げているつもりはないわけでございまして、コンピューターネットワークの整備に振り替えるということにし、そのこと自体は、先ほどそれが非常に大きいところということを申し上げたわけでございますが、それのそうするに至った理由について先ほどここで御説明をしたということでございまして、結論において別なことを申し上げているわけではないと、こう考えております。

井上哲士君

 犯罪情勢が変わってきたということも言われておりましたけれども、少なくとも当委員会でこの間、議論をしてきましたのは、むしろ犯罪情勢が悪化をしている、そのためにどういう方策を取るかということをずっと議論をしてきたのに、全く逆のことを言われるわけですね。到底納得ができないんです。

 平成十年度に見直しをされたと言いましたが、いわゆるこの機密費の告発が始まったのが平成十年度の末なわけですね。どうもこれを受けて見直しをしたのではないかと私は思うんです。

 例えば、そういう調査対象が変わるとかコンピューターネットワークを大いに活用するということであるならば、公安調査庁の調査活動費も減ったっていいと思うんです。ところが、資料をいただきますと、同じ時期に公安調査庁の方は、十九億百二十五万円から十九億二千五百五十五万円に増えているわけですね。これはどう説明されますか。

政府参考人(古田佑紀君)

 先ほど私が犯罪情勢に変化があったということを申し上げましたのは、先ほど来御説明いたしましたとおり、かつてはいわゆる公安事件の問題が中心であったと。しかしながら、公安事件、この公安の犯罪情勢、これは落ち着いてきて別な面での犯罪情勢が問題になるようになった、そういうことで申し上げたわけでございます。

 それから、ただいまお尋ねの件につきまして、各局といいますか、それぞれの調査活動の方法、考え方というものはそれぞれの独自の立場で判断するということになるわけでございまして、公安調査庁のことについて私が何らかのコメントをすることは、これは差し控えたいと存じます。

 なお、一点申し上げますと、いわゆる調査活動費につきましては、これは平成十一年度の予算要求、これに反映させるための検討と申しますのは平成十年のかなり早い時期から行わなければ当然間に合わないわけでございまして、ただいま委員御指摘のような、言わば内部告発かどうかよく分かりませんけれども、出所不明の文書が出回ったことがあるわけですが、これはそのずっと後のことでございまして、そういう問題とは、そういうような文書が出たということとは全く関係がないものでございます。

井上哲士君

 公安調査庁と検察で、私、調査活動費の考え方等、非常に似ていると思うんですね。

 この問題で、仙台の市民オンブズマンの皆さんが情報開示請求をされております。平成十三年の十月三十日に出されました準備書面を今、手に持っておるんですが、調査活動費の非開示処分の取消しを求める訴訟を仙台地検、高検を相手取って仙台地裁に起こしています。

 仙台地検はこの準備書面で、仙台地方検察庁における平成十年度の調査活動費は、主に組織的な犯罪に対する動向を目的として検察庁の協力者に秘密裏の調査活動を委託し、当該協力者にその対価としての報酬を払うために使用されていたと、こう述べているわけですね。例外の記載はありませんので、全額がこのように使われていたという主張だと思うんですが、そして、こうやって、相手がいることなので使い道を明らかにしたら迷惑が掛かるということで開示を拒否していたということです。

 かつ、この検察側の準備書面の中では、主として組織的な犯罪に関する調査活動に使用されており、個別具体的な事件を離れての犯罪組織等の調査対象者の動向など、基礎資料を収集する、地下に潜行した集団の犯罪行為、厳格な情報統制が行われている集団あるいは密室性のある犯罪に係る刑事事件を挙げるというふうにあるわけですね。

 これ以降、オウムの問題、蛇頭の問題、いわゆる地下に潜行した集団の犯罪行為というのはいろいろあるわけですから、平成十年で急に情勢が変わった、使い方が変わったという御説明は、これ一つ見ても私は理屈に合わないと思うんですけれども、もう一度答弁を求めます。

政府参考人(古田佑紀君)

 もう一つの理由は、ただいま御指摘のいわゆる組織犯罪、こういうふうなものも、当然ながらそれをめぐる犯罪組織の問題とかその動向、これは調査の対象とすべきことは当然ではございますけれども、先ほど申し上げましたように、従来のといいますか、それ以前の言わば公安事件を中心とする犯罪情勢、それとは相当趣を実はやはり異にする面もあるわけでございまして、かつてと同じような考え方、やり方がそういうものに必ずしも適当であるというわけではない、そういうことでございます。

井上哲士君

 納得いかないんですが、先ほど同僚議員の質問にもありましたけれども、元々検察は特捜などの一部の例外を除いては独自の情報活動を大規模にするということはなかったんではないかと。そして、そういうことで情報提供者への報酬などに使われることもほとんど聞いたことがないという証言もいろんなところで出ているわけです。それを裏金にしていたんじゃないかという疑惑が持たれているわけですね。実際には、こういうような告発を受けて、そういう今までの不正常な使い方をやめるということの中で順次減額をしていったんではないかと推測もされるわけですね。

 コンピューターネットワークなどで替えることができるようなものであれば、私は別に秘匿をする必要もないんではないかと思うんですが、それじゃ、この間減ったものについて、国民の前に改めて削減された中身について明らかにできるんじゃないでしょうか。その点どうでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 私、ただいまの御質問の趣旨を的確に把握できたかどうか心もとないわけでございますが、もし調査活動のその成果ということでありますれば、これは先ほどから申し上げていますとおり、秘匿を要するものも非常に多いわけでございますが、それは秘匿を要するものでございますので、その点については詳細を申し上げることは御容赦いただきたいと思います。

井上哲士君

 秘匿を要するものがこの間で四億円も減って、それで調査活動に検察側から言えば支障がないというのは、私は全然納得できません。

 それで、先ほどあったのは、告発との関係ではないかという点でもう少し具体的に聞きますが、調査活動費の中で弁当費等という項目があろうかと思うんですが、これは平成十年度にそういう支出があった地検がどこで、平成十一年度はどういうふうになっていますか。

政府参考人(古田佑紀君)

 先ほどあるいはお答えが漏れたのかもしれませんけれども、その点、若干補充させていただきますが、前にも申し上げましたとおり、いわゆる内部告発文書ではないかというようなものが出回ったと申しますのは、これは平成十一年の四月であったろうという記憶でございまして、これは、平成十一年度の予算要求という意味から申し上げますと全く関係のないものでございます。

 それから、ただいま弁当代ということでございますが、これは、平成十年度に弁当代が支出されておりますのは、東京、甲府、大阪、神戸、名古屋、福岡、佐賀の各地方検察庁でございます。

井上哲士君

 平成十一年度はどうなっていますか。

政府参考人(古田佑紀君)

 平成十一年におきましては、ほぼ全国の検察庁で同様の支出が行われていると承知しております。

井上哲士君

 これも仙台の市民オンブズマンの皆さんが詳細に調べ上げておられるんですが、今ありましたように、平成十年で弁当代という項目が挙がっているのは七地検だけですが、それは全部、平成十年度の三月なんですね。そして、平成十一年度からは全庁でこれが計上されるようになったと。

 先ほど言われましたが、実際に告発文が出回っているのは平成十一年の一月だと承知をしているんです。ですから、そこからこういうことはちゃんと見直しをしなさいよというのが、一部、平成十年度の三月から見直しがされて、全国的には十一年度から見直しが徹底した結果ではないかというのをこの仙台のオンブズマンの皆さんは指摘をしているわけです。この点どうですか。

政府参考人(古田佑紀君)

 私どもの承知しております限り、いわゆる内部告発ではないかと言われている文書が出回ったのは平成十一年の四月で、一月ではないと承知しております。

 それから、この弁当の増加というのは調査活動費の執行の在り方とも多少絡むわけではございますが、一方で予算がいろんな意味で減額をされておりまして、その中で、調査活動費の中で支出が補えるもの、こういうものについての執行方法の範囲を広げたと、こういうことでございます。

井上哲士君

 じゃ、もう一点聞きますけれども、先ほどありましたように、この調活費の総支出額というのがきっちり受入額と合っていると、おかしいじゃないかというお話がありました。

 この仙台高検の場合も、平成十年度は九百六十万円ちょうどで、年間の受入額、全部使っているわけですね。消費税が課税される時代に一円単位まで一致するのはあり得ないという指摘があったんですが、これ、平成十一年度からは四百七十九万九千九百二十五円と一円単位までの端数が出てきているんですね。これも告発を受けて見直しをしたんではないかとオンブズマンは指摘していますが、この点どうですか。

政府参考人(古田佑紀君)

 調査活動費の執行につきましては、先ほど来御説明しておりますとおり、従来というか過去は、調査の協力者に対する謝金、これを定期的な情報の提供を受けて支払っていくと、こういうことでございましたので、おのずと端数が出るということもございませんでした。また、非常に計画的な執行もできたわけでございまして、その結果でございます。

 ただいま、平成十一年度からは一円単位の端数まで出ているではないかということでございますが、これは、先ほど来申し上げておりますとおり、調査対象の重点の変更及びそれに伴う様々な調査活動の方法、それを言わばいろんな幅を広げた面がございまして、その結果として端数が生ずると、そういうふうな執行が行われるようになってきたということでございます。

井上哲士君

 平成十年度までが報酬などが主だったとしても、一〇〇%そうだったわけじゃないはずなんですよ。今のは、端数が出ないことの説明としては全然理由になっていないと私は思うんです。

 平成十一年の三月に、こういう調査活動費の在り方の見直し、私は告発を受けたと承知をしているんですが、会議等も行われて、何らかの改善のための文書を各地検等に出されていると思います。この中で、こういう関係機関との情報交換での弁当代等の支出がこれまではいわゆる特例払いだったけれども、今度はちゃんと請求書等を添付せなあかんと、こういうようなことが言われて計上がされるようになったんではないかと、こういう指摘もあるわけですね。

 逆に、いかに不明朗な使い方がされていた証拠かと思うんですが、こういう内部で徹底した文書があると思うんですけれども、それ、是非出していただきたいんですが、どうでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 法務省におきまして、調査活動費の取扱いに関して、当時そういうふうな一般的な執行方法のガイドラインと申しますか、そういうようなものを作成したことはございません。

 ただ、平成十一年度から、先ほど来申し上げておりますとおり、調査活動の内容を大幅に変更するということとしたことに伴いまして、各検察庁からのいろんなニーズも踏まえまして、より効果的に執行方法を見直すということとしたことから、平成十年秋から平成十一年春に掛けて、法務省、検察庁との間で調査活動費の執行方法について様々な機会に様々な形で意見の交換を行ったことは事実でございます。

 そして、その過程でいろんな意見について取りまとめたメモとかそういうものはあると思いますけれども、それはそういう過程の、言わば意見交換の際の資料でございまして、そういうものは現時点では残っていないものでございます。

井上哲士君

 五億の予算が順次八千万になるような大転換があって、しかも、年が替わったら端数が全部出る、弁当代が地検にも出ると。これだけの全国的な統一をしたことをやっていながら文書も何もないというふうなことを検察がやるとは私は思えませんし、ますます国民の不信が募る答弁だと思います。

 きちっと明らかにしていただきたいということを改めて申し上げまして、質問を終わります。

午後の質疑
井上哲士君

 法案に入ります前に、午前中の問題、大阪高検の元幹部の問題にかかわって二、三質問をいたします。

 国民が非常にやはり驚いたのは、突発ではなくて、この間やはりいろんな警察関係の不祥事が相次いできて、そしてここまで来たのかということだろうと思うんです。

 昨年、福岡の地検の前次席検事による捜査情報漏えい問題というのも起きました。そのときの調査結果というのを私も読ませていただいたんですが、この中で、「今回の事件を契機として、国民から検事に対し、市民感覚からずれて独善に陥っている、被害者の心情に対する理解が十分でない、警察等の捜査関係機関に対する理解が十分でない等の厳しい批判がなされているが、これらの批判を真しに受け止め、検察官の意識改革を図る」と、これが法務省の報告書なわけですね。

 三つ言っています。一つが、「検事を一定期間市民感覚を学ぶことができる場所で執務させることを含む人事・教育制度の抜本的見直しを検討すること」というのが一つ目です。この間行われました司法制度改革推進本部の第二回の法曹検討会を見ておりますと、この検事を民間などに派遣をする制度をこの四月から始めるということが明らかになっておりますけれども、実際、何人がどこに、どれだけの期間、派遣されることになったんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 四月二十四日現在の状況を申し上げますと、三名、合計でその研修に派遣しております。

 派遣先は、一つは社団法人被害者支援都民センター、これは期間は六か月の予定でございます。二つ目は財団法人さわやか福祉財団、これは一年の予定でございます。それから、東京電力株式会社、これは一年の予定でございます。

井上哲士君

 三名ということで、非常に規模がまず小さいと思うんですね。かつ、派遣場所が今三つ出たわけですが、このさわやか福祉財団というのは元検察幹部がやっていらっしゃる福祉団体だと承知しておるんですが、言わばかなり身内的色彩が強いなと私は思いました。

 それから、東京電力ですが、これはいわゆる思想差別問題で時間的にも人数的にも最も大規模な労務管理を行いまして、東京高裁で和解をしたというところなんですね。こういうところに検察官が行って、ここで言われているような市民感覚を学ぶことができる場所だというふうに言えるのかと私は思うんですが、ここに行って市民感覚が分かり、独善から外れ、被害者の心情に対する理解が十分になると、こういうふうに判断してこの三つを選ばれたんですか。

政府参考人(古田佑紀君)

 もちろん、派遣先によって、言わば被害者問題とかそういうことをタッチしていないところもあるわけでございますが、この研修のねらいは、実際にいわゆる民間で活動をしている、そういう場で検察を外から眺める機会を作り、かつ、そういうところでの業務、そういうもののやり方とか、そういうことに触れることによって、一種のカルチャーショックと申しましょうか、そういうふうな、検察官として健全な社会人としての常識を養う一つの契機とするということに主たる目的があるわけでございまして、そういうことからいろんな場所を選んでいると。

 もちろん、検察官の身分のまま派遣するわけでございますので、これまた派遣先については慎重な選択というのも必要になってくるわけでございまして、そういうようなことも考え合わせながら、様々な場所でできるだけ広い範囲で研修ができるようにしていきたいと考えているところでございます。

井上哲士君

 今おっしゃった目的からいえば、もう少し派遣先を検討すべきではないかということを申し上げておきます。

 それから、この報告書で二つ目には、「幹部を含む検察官が犯罪被害者の心情や捜査現場の第一線で汗を流している警察官の活動等に対する理解を深めるための具体的方策を検討していくこと」と、こうあります。

 今回、正に幹部の事件であります。大変大事だと思うんですが、これはどういう方策が現在検討をされているんでしょうか。

政府参考人(古田佑紀君)

 これにつきましては、検察官については様々な研修の機会があるわけですが、幹部検察官等の研修の機会におきましても、警察等からの外部講師の派遣などを積極的に依頼いたしまして、それぞれの立場からの検察に対する物の見方、あるいはその立場からの考え方、そういうふうなことについてお話を承り、いろんな意見の交換をすると、そういうことを中心に現在実施しているところでございます。

井上哲士君

 まあ一般的な研修とどこが変わらないのかなという気は私はします。

 それで、三つ目には、「部内研修等の充実強化を通じて、検察官が独善に陥ることを防止するとともに、検察官としての基本的な在り方を徹底すること」と、こうあります。

 こういうことも含めまして、本当に検察に対する国民の信頼を回復をするという点でも、午前中議論になりましたけれども、改めて私は調査活動費、さかのぼって調査もするし、こういう研修も、既に始まっているものも、もう一回今回の事件を契機に見直しをして進めていくべきだと思うんです。その点で大臣の所信をお伺いいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 おっしゃるとおり、大変な事件でございまして、このようなことが二度と起こらないように、あらゆる手段を講じて努力をしていかなければいけないと思います。

 先生が例に引かれました福岡の高検の問題、それの反省に立っての研修、外部研修等の話は、これは業務の上にかかわる話でございますが、このたびのことは、業務にかかわることというよりは、むしろその自分自身の人間性というか、人格の問題だと思いまして、必ずしも、外部研修をしっかりやって被害者の心情がよく分かるようになったというようなこととは直接関係ないんではないかという気もいたします。当然それは業務上心得るべきことでありまして、これもしっかりやらなきゃいけないということはもうよく分かっておりますし、この面でも努力いたしたいと思いますが、今回の事件は、大変残念ながら、そのようなこと以前の本人の人間性の問題なのではないだろうかというふうに思いまして、更に深刻な感じを受けている次第でございます。

 いずれにいたしましても、再発防止のために最善を尽くしたいと考えております。

井上哲士君

 そういう人物が大幹部になっておるということに対して国民の目があるわけですので、是非よろしくお願いをいたします。

 では、商法について質問をいたします。

 我が国のコーポレートガバナンスに関する商法改正は、この間、基本的にはこの監査役の強化を中心に進められてきたと思います。言わば、今回大きく転換をしてアメリカ型の企業統治の在り方も選択肢として加えられることになったということですが、この間、マスコミ等でも、我が国企業は、雪印やそごうなどの事件を見ても、企業統治の仕組みに欠ける企業が多い、こういう指摘もあるわけです。

 我が国の企業統治の在り方のどこが問題だったというのが今回の商法改正のベースになっているのか、まず大臣、よろしくお願いします。

副大臣(横内正明君)

 我が国の企業統治の問題点という御質問でございますけれども、言うまでもないことでありますが、現在のような世界的な大競争の時代には、企業は迅速果敢な意思決定が必要であることは言うまでもないわけでございます。しかしながら、現行商法では取締役会で決定をしなければならない事項が大変多岐にわたっておりまして、取締役の員数が多い大規模会社の場合にはなかなか頻繁に取締役会を開催することが実際問題として困難である、そういう結果として、迅速果敢な意思決定というものがなかなか困難になるというような問題が指摘されております。

 それから同時に、もう一点でありますけれども、現行の取締役会制度は役員の人事及び報酬についての決定権限が事実上、代表取締役、社長に集中をしているという場合が多いがために、なかなか取締役会の監督機能が果たされない。それがゆえに、いろんな不祥事だとか会社の私物化というような問題点が起こってきているというような問題点が指摘されております。

井上哲士君

 その裏返しということになると思うんですが、それと対比して、では、この米国型のどういうところが利点だと判断をされたんでしょうか。

副大臣(横内正明君)

 今回の改正法案で、米国あるいはヨーロッパの企業統治の制度を参考にしてこの委員会等設置会社というものを選択的に導入できるということにしたわけでございますけれども、この制度は、会社の業務を執行する執行役にこの業務の決定権限を委譲する、他方で取締役会は監督に徹することにいたしまして、取締役会には社外取締役が過半数を占める三つの委員会を設置をするということによって取締役会の監督権限を強化をするということにしております。

 この委員会等設置会社制度を採用することによりまして、一方で業務執行役が迅速果敢に意思決定をする、しかし他方で株主の立場に立って取締役会がしっかりと監督をして執行役の業務を適正に行わせるようにするということで、現在のそういった企業統治の問題点に対する対応方策として考えておるものでございます。

井上哲士君

 先ほどからもずっとエンロンの問題が出ておるんですが、そういうアメリカにおいてでもこのエンロン問題が起きて、アメリカ型のコーポレートガバナンスについての議論というのが今いろいろ再検討が加えられていると思います。

 社外取締役が十四人もいたけれども全く機能していなかったんではないかとか、経営陣と社外取締役が余りにも緊密で取締役会の独立性を保てなかったんではないかとか、いろんなことが指摘をされていますが、言わば米国型を利点として今回導入をしていくわけですが、このエンロン事件を受けて、改めてこの法案の方向というのを見直すという点というのはないということでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 エンロンのケースにつきましては、現在、米国においても破綻に至る経緯等について調査等が行われているという具合に聞いておりますので、現段階で具体的なコメントは差し控えたいと思いますが、一般的に、いかなる制度であっても、それだけで会社の不祥事を完全に防止するということは、これはできないわけでありまして、その運用に当たる者の使命感、倫理観というものが極めて重要でありますし、また、より良い制度を構築するための不断の見直しというものも必要なわけであります。

 そういう意味で、私どもとしても、今回お願いしている委員会等設置会社につきましても、今後も、アメリカのエンロンの調査結果等も踏まえて、あるいは日本における、これが御採用いただけた場合には、日本におけるその活用状況も見て、更に工夫をしたいと思っておりますが、現在お願いしておりますこの制度は、一応、先進諸国の企業統治システムの大きな流れの中で、米国だけではなくて、例えばイギリスにおいても今求められております経営の監督と業務執行を分離する、そして取締役会の監督権限を強化するという、そういう方向に沿った形で制度を考えたものでございまして、今回、現時点において直ちにこの制度そのものを見直しをしなければならないとは考えておりません。

井上哲士君

 アメリカでも市場の信頼を取り戻すために監査委員会の権限強化に乗り出すであるとか、ニューヨークの証券取引所が報酬・監査委員会の独立性強化とか、会長と最高経営責任者の機能分離を検討しているなど、こういう報道も行われております。三井物産の戦略研究所の寺島実郎さんが、日本では、ここ十年間、アメリカ型ビジネスモデルが透明性に優れており、学ばなければいけないと議論されてきた、エンロン事件をきっかけにそれらの議論がすべて吹っ飛んでしまった、もう一度企業統治なるものを真剣に考えなければならないと、こういう指摘もされております。

 今、あえて見直しをする必要はないということでありましたけれども、やはりああいう教訓を見たときに、このほか日本でも雪印の問題、マイカルの問題とかあるわけで、今回の改正によって、ああいう日本でも起きてきたいろんな不祥事や破綻というものがこの企業統治の在り方で防ぐことができるんだろうかと思うわけですが、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 もちろん、この委員会等設置会社を行ったら絶対に防げる、完全に防げるということはそれは難しいかもしれませんが、しかし現行の制度と比べまして、この委員会等設置会社、取締役会の独立性を高めておりますし、また監査委員会につきましてもそれをサポートする社内体制を整備するということも求めております。そういう意味で、従来の会社に比べてこの委員会等設置会社が監査において劣るということはあり得ないだろうと思っております。

 現に、例えば雪印につきまして、これは新聞報道によるところですが、社外取締役を入れ、かつ、このような問題についての取締役による委員会制度を作って違法な行為を根絶するということを会社において検討されているということですが、正にこの委員会等設置会社で社外取締役を入れ、監査委員会等の過半数をその社外の取締役に占めるということにしている、あるいは社内の監査体制を整備するための体制を整えていただくというようなこともこの法案で定めているわけでございますが、そういう意味では、正に現に起きた不祥事に学んで会社が取ろうとしている方向性に合ったような改正内容になっているのではないかと思っております。

 監査委員会の独立性ということでいいますと、例えば新聞報道でこのエンロン事件に関して、監査委員会が監査法人の選定、交代について経営陣に提言する権限を強めるというようなことが検討されていると報道されておりますが、この監査委員会は、会計監査人の選定はこの監査委員会の権限で行うというのが今回の法案になっております。

 そういう意味で、私どもとしては、日本の実情も踏まえて、できるだけ監査委員会の独立性あるいは取締役会の監督権限の強化という点について配慮をしたつもりでございます。もちろん、これで完全ということはありませんでしょうから、今後も常に見直しということはしていくつもりでございますが、現段階においてはそれなりに配慮された仕組みになっているという具合に思っております。

井上哲士君

 先ほどの答弁で、仕組みとともにやはり役員の倫理、人間の問題だということが言われました。私、それは非常に大事だと思うんですが、それもやはり制度的に担保をしていくということが非常に必要だと思うんです。

 この間、あるものを読んでおりますと、元日産の常務がこの四月に専務に就任した仰天人事なんという記事がありましたので、いろいろ調べておったんですが、この元日産常務というのはインサイダー取引で処分をされている人なわけですね。平成十年の五月二十九日に証取法違反の罪に該当するとして告発をされたわけですが、日産自動車の取締役で当時あって、日産自動車が所有していたトーソクというところの株式を日本電産に売却する株式譲渡の契約締結業務等に従事をしていて、この契約の締結に関して、日本電産がトーソクの株式を発行済株式総数の五%以上を買い集めるという公開買い付けに準ずる行為の実施に関する情報を知り、当該事実の公表前にトーソクの株式を買い付けたということで告発したというのが出されております。

 要するに、この日本電産というのは買い付けをしようとした相手なわけですね。ところが、この元常務、元取締役が、この証取法違反で罰金五十万円の略式命令を受けたその二か月後にこの日本電産に入社をして、そしてこの四月から専務になったということなわけですね。

 インサイダー取引などで刑事事件を起こした人物が、その当事者である会社に再びこの経営責任を問われる取締役に選ばれるということが果たして適当なのかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 具体的な問題につきましては、ちょっと事実関係を承知しておりませんので、コメントは差し控えたいと思いますが、一般的に申し上げますと、商法の二百五十四条ノ二では取締役の欠格事由を定めておりまして、そこでは商法あるいは有限会社法等の会社法に規定する犯罪を犯した者というものが欠格事由に定められております。また、それ以外の犯罪を犯して禁錮以上の刑に処せられている者というふうなものも欠格事由に該当することとなっておりますが、インサイダー取引について特段そういった規定は商法上は設けられておりませんので、その会社の判断でということになろうかと思います。

井上哲士君

 アメリカでは、こういうインサイダー取引というのは言わばこれは証券詐欺だと、こういう扱いで上場企業の役員から排除をするような仕組みが作られております。

 一九三三年証券法というのは、この SEC の申立てに基づいて証券の募集又は売り付けについて詐欺的行為を行った者を期限付又は無期限で取引所法の登録証券の発行社の役員又は取締役から排除する命令を裁判所が下すことができると、こういう規定を持っております。

 それから、取引所法では、同法の規則に違反した者を登録証券発行社の役員又は取締役から排除する命令を下す裁判所の権限を定めておりまして、インサイダー取引というのは正に証券詐欺だということで、こういう役員から排除をしているということになっているわけですね。

 ですから、個人の倫理の問題だということで言われましたが、あるんですが、そういう処罰をされても実際には全部ほとんど、これ見ましたけれども、罰金二十万から五十万円ぐらいの略式命令になっておりまして、実際にはこうやって関係したところの企業の役員にもなれるということになっておるわけですね。これは倫理が低いということで嘆くのではなくて、やはり仕組みをきっかり作っていくということが必要かと思うんです。

 ですから、今回、こういうアメリカ型の企業統治というものを導入をするということであるならば、こういう厳しさということも倣うべきだと思うんですね。そういう点で、日本でもこういう規定などを検討していくということの点ではいかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のような点も含めて諸外国の実情も調べ、今後も必要があれば検討してまいりたいという具合には考えております。

井上哲士君

 この間、ずっと繰り返されてきた商法の改正でも、どうもやはりアメリカ型の一部だけを取り入れるという、ある意味で都合のいいところだけを取り入れるような改正が目立ってきたと思うんですね。ストックオプションの解禁でも、アメリカの SEC の約三千三百人と比べて日本の証券取引等監視委員会が二百六十五人の貧弱な体制で、これでいいのかということもここでも議論になってきたと思うんです。株主代表訴訟の改悪ということもあったわけですが、こういうやっぱり都合のいいところだけを取り入れていくというやり方はいかがかと私は思っておるんですが、今回、社外取締役は、アメリカの場合は取締役のメンバーのうち過半数ですけれども、日本は委員会の過半数ということになっていますね。これはどうしてでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 アメリカの実情として大規模会社であればほとんどの会社において取締役会の過半数は社外取締役が占めているという具合に聞いておりますが、これは法律で強制されているわけではなくて、運用としてそれぞれの会社がそういう取締役を選んでいるという実情にございます。

 日本においてこの委員会等設置会社を導入する場合に、その取締役会全体について社外取締役が過半数を占めるということを法律で要求するということになりますと、現在、社外取締役へのふさわしい人材が非常に足らないということが言われているわけでございまして、社外監査役の、大会社における社外監査役を過半数以上という改正を前の臨時国会においていたしましたが、それも人材の点も考慮して三年間の期間が施行まで定められているわけでございます。そういう日本の実情からしますと、取締役会の過半数ということを法律で要求するというのは非常に実現が難しいであろうということがございます。

 また、取締役会全体の機能をどう考えるかというのは、やはり会社が自主的に判断することが望ましいということも言えようかと思います。

 そこで、取締役会の中に内部機関として重要な役割を担う指名委員会、報酬委員会、監査委員会というものを設けまして、ここについては過半数が社外取締役であるということを要求するという形にしたものでございます。

井上哲士君

 その社外取締役というのはその委員会それぞれを兼務できるんですかね。これはどうですか。

政府参考人(房村精一君)

 これは兼務は禁じられておりません。

井上哲士君

 そうすると、実践的には、実際的には大変少ない社外取締役の人数で、少なくて済むということになるわけですね。

 ですから、なかなか人材がいないというお話もありましたけれども、どうも、こういう点から見ましても、一部のみを取り入れているようなやり方になるんではないかなという気がしております。

 そういう点で、やはり本当に公開の問題等を全面的に見据えた改正が必要なのではないかなということまで指摘しておきまして、時間ですので、終わります。


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