本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2003年4月22 日

法務委員会
法科大学院教員派遣法案 質疑

  • 法科大学院への、裁判官、検察官の派遣と大学の自治の擁護について質問。教授会への参加は、「大学の意向による」との答弁を引き出す。
  • 最高裁、法務省ともに、講義案や統一的マニュアルを作成しないことを明確にさせる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 この間の審議を通じまして、不審な死亡事案に対する視察表やカルテ、死亡報告などの資料が十八日にその一部が提出をされました。今朝、名古屋刑務所五月事件のこの資料についても新たに提出をいただきました。また、同じく五月事件で、事件の十日後に出された報告書も提出をされました。

 これらのものを見ますと、新たな疑惑、問題点というのが浮かび上がってきますし、私はこの間一貫してこの五月事件がその直後に大臣に報告された時点で適切な対応がされていたら九月事件も起きなかった、このことを申し上げてきましたが、そのことも改めて浮き彫りになっております。

 まず、今朝方いただいた五月事件の資料について質問をしますが、私、一読して非常に驚いたんですが、処遇表、動静視察表、視察表、どれを見ましても十一時四十五分の革手錠を締め直したという事実が一切記載されていないんですね。中間報告でも、この十一時四十五分に革手錠を締め直したと、これが言わば致命傷になっているんではないかということが疑われるわけですね。二人掛かりで七十・二センチのものを五十九・八センチまで締め上げたと、これが大問題になっているわけですが、そのことが一切この中には記載をされていません。これはなぜなのか、調べておられますか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えします。

 締め直しの事実が記載されてないことは確かでございます。それがなぜかということにつきましては、現時点でちょっと判明しておりません。

井上哲士君

 ですから、一番核心になる事実がこの中にないんですね。で、特にこの処遇表などはモニターで見ているものでありますから、必ず現場の職員の方が見ているはずなんです。それが書かれていないということですから、やはり省ぐるみの事実隠ぺいがあったということを改めてうかがわせる中身になっております。

 さらに、十八日に提出された資料を見ても問題が浮き彫りになるんですが、ほかの事案を見ますと、大体、死亡報告書というのは死亡から日を置かずに出されています。ところが、あの十二月の消防ホース事件では、十二月の十五日に事件が発生をして、十九日に死亡報告書が記入をされ、実際に矯正局が受け取ったのが翌年の一月十六日だったと、このことを衆議院で我が党議員が指摘をいたしました。法務省の方は、所内決裁に回付したところ時間を要して発送が、発送されたのが一月中旬だったという答弁でありましたけれども、まあ一か月以上も掛かったということで、これはやはり刑務所ぐるみの隠ぺい工作の疑いがあるという指摘もいたしました。

 その目で見ますと、この五月事案についても、この死亡報告書の記入は七月十五日ということでありまして、五月の二十七日に事件が起きていますから一か月半も掛かっています。一体これはなぜでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 委員御指摘のように、このいわゆる五月事案の被収容者死亡報告は、十四年七月十五日付けとなっております。ただ、この事案につきましては、発生直後に変死事案速報というものによりまして名古屋刑務所から矯正局長及び矯正管区長あてに事案の概要が報告されております。

 その後も当該被害受刑者の司法解剖が行われた後においても、死因等が不確定であったこと、また名古屋刑務所が名古屋地方検察庁に捜査を依頼し、さきの報告の内容に追加すべき新たな事実関係が判明するまで同地検の捜査の推移を見守ろうとしていたことなどから、御指摘の被収容者死亡報告を発出するのに遅れが生じたものというように承知しております。

井上哲士君

 じゃ、その間、この死亡報告が長期間にわたって提出をされないということで、矯正局としては刑務所に対して督促であるとか聞き取りなどはされたんでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 当時、矯正局あるいは名古屋矯正管区、上級官庁である名古屋矯正管区におきましては、この事案につきまして、先ほど申し上げましたように、発生直後に変死事案速報によりまして名古屋刑務所から事案の概要に係る報告を受けたこと、また当該死亡案件の死因等が不確定であること、それから名古屋地検に捜査を依頼してその推移を見守っているという報告を受けていたことなどから、その後の死亡報告の提出につきましては現場の判断にゆだねるということで、殊更、督促はしなかったというように承知しております。

井上哲士君

 提出された資料を見ましても、例えば府中の保護房死亡事案なども大体、日を置かずに出されておりますし、司法解剖まで行っているものも幾つかありましたけれども、それも含めて大体、日を置かずに出されているんです。この十二月とこの五月事案だけが非常に日にちが掛かっている。

 先ほどありましたように、非常にいろんな問題のあった事案だからこそ、一体どうなっているのかということを当然、督促、聞き取り、新しい事実が出るまで死亡報告が出ないというならば、新しい事実が出ているのかということを当然、矯正局として関心を持って追及すべきだと思うんですが、なぜそれをやってないんでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 督促をしなかった理由につきましては先ほど申し上げたとおりでございますけれども、このように後からこういろんな調査等を経て事実関係が明らかになってまいりますと、それを考えますと、当時、督促をしなかったことがそれで良かったのかなというふうに私は思っております。

井上哲士君

 問題は、この事件発生をして死亡報告の、一か月半を掛かると、その間にこの事件を隠ぺいしようとしたいろんな動きが見て取れるんですね。その中で重大なのが、先日提出をしていただきましたこの五月事件の十日後の六月六日に、名古屋刑務所から矯正管区保安課長あてに出された報告の文書です。解剖結果及び当所医師の意見聴取にかかわる報告書というものでありますが、この中に、肝臓の挫裂は革手錠の使用と関係付けるのが相当であるという非常に決定的な医師の所見が書かれているわけですね。この報告書を受け取りながら、真相解明を怠ったというのが名古屋矯正管区長らの処分の理由にもなっています。

 この報告書は二つの文書になっておりまして、一つは事件の翌日の五月の二十九日に名古屋刑務所内で所の幹部と医師が検討会をやったメモ、それからもう一つは、処遇部長がほかの医師から聞き取りをして、その内容を名古屋刑務所長に報告をしたという文書というこの二つになっています。

 まず、この五月二十九日の検討会議のメモについて聞くんですが、これによりますと、参加者、出席者の中に刑務所長の名前はないんですが、この会議には名古屋刑務所長は参加をしていなかったということなんでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えします。

 所長はこの会議には参加しておりません。

井上哲士君

 しかし、三月三十一日の中間報告によりますと、刑務所長がこの会議を行ったと、こういう記載があるんですね。どう読んでも所長が行い、参加をしたと読めるわけですが、この報告が間違いなんですか。

政府参考人(横田尤孝君)

 今申し上げましたように、所長自身はこの検討会と称する会議には出席しておりませんが、その会議そのものは所長の指示により行われたものでありますことから、中間報告におきましては御指摘のような記載がなされたものと承知しております。

井上哲士君

 しかし、どう、普通この中間報告を読みましても、明らかに所長が参加をしたとしか読めないわけですね。そのことを指摘しておきます。

 この報告書は、表面に通常使われるようなファクスの送り状を付けて、名古屋刑務所の恐らく処遇部長が発信元で保安課長あてに送付をされております。境矯正管区長の印鑑も押してあるわけですので、管区長も見ているわけですが、この文書が本省矯正局には送られていなかったということが既に明らかになっております。

 この間、この問題指摘したときには、刑務所長とそれから管区長がそれぞれが本省にも上げるだろうとお互いに思っていて、そごが起きたという答弁でありましたけれども、私は法務省の中でそんないい加減な文書の扱いが行われるとは到底思い難いんですが、日常的なこういう報告の上に上げるルールというのは一体どうなっているんでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 日常的にどうかというお尋ねですが、日常的の文書の場合にどちらがどうという、特にそういう決まりというものはないというふうに聞いております。

井上哲士君

 決まりがないんであれば一体どちらがやるんだということをお互いに相談するのが当たり前、そのぐらいの重大なこれ報告の中身になっているんですね、決定的な事実が書いてあると。私は、本当にこの刑務所長がこれを報告する意思があったのかなと、局までということも疑っておるんですね。

 中間報告書によりますと、六月の五日に名古屋刑務所長から矯正局の保安課長に対してこの五月事件の経緯について報告があったとされております。六月五日というのはこの報告書が発せられる前日なわけですね。刑務所側にこれを局まで上げるという意思があれば、その六月五日の報告の際にこういう文書をあした出しますということを言わないはずがないと思うんですが、この六月五日の報告の際になぜこれが触れられていないと承知をされていますか。

政府参考人(横田尤孝君)

 その点につきましては承知しておりません。

井上哲士君

 ですから、肝心な問題について結局この中間報告は全然突っ込めていないんですよ。一番事件の核心の問題がどのように報告をされ、また隠ぺい工作がされたのかと、このことにメスを入れなければ私は問題の解決につながっていかないと思います。

 この中間報告によりますと、名古屋刑務所長は、行政検視の際にかなりの傷が腹部にあったということを見て、革手錠の使用が原因ではないかと思ったとされているわけですね。実際、今朝方いただいたこの五月事件の視察表を見ておりますと、行政検視を実施したことについての視察表の中で、松尾処遇部長の起案で、遺体には両側腹部に擦過傷があったと、この時点では書いてあるんですね。ところが、この六月三日付けの文書では松尾処遇部長の発言として、革手錠を強く緊縛すると表皮に索状が付くが今回はなかったと、処遇表とは全く違う発言が松尾処遇部長からされているんです。にもかかわらず、この報告書は刑務所長も了解の印鑑を押して上に上げられたと。

 ですから、私はこの時点で、これが発せられた時点で刑務所ぐるみでの隠ぺい工作も始まったんじゃないかという疑いを持つんですが、なぜこういう全く事実と違う記述がある報告書を管区にやらせたのか。この点、刑務所長には、当時の刑務所長にはただしているんでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 特にただしたというふうに認識しておりませんが、ただ、この記載内容は松尾処遇部長の認識であるということでございまして、その事実の有無ということではないというふうに考えます。

井上哲士君

 しかし、その認識が書いた文書をちゃんと刑務所長の判こをついて矯正管区に上げているんですから、刑務所長もこれを認めたということなんですよ。ですから、正に組織ぐるみの隠ぺいが行われていたと言わざるを得ないんですね。

 しかも、七月十五日で起案をされて、これは矯正局長、矯正管区長あてに出されました死亡報告には、この肝臓の挫裂は革手錠の使用と関係付けるのが相当という、六月のときに医師の所見として出されているような中身は一切この死亡報告書には記載をされていないわけですね、一か月半掛かっておりながら。重大なのは、肝臓の挫裂は革手錠の使用と関係付けるのが相当というこの報告書は管区長は見ているんです。それがもう一切書かれていない死亡報告書が管区長と矯正局に出されているんです。ですから、管区長は一見したらこれはおかしいと思わざるを得ないと思うんですが、そのことは指摘をされているんでしょうか、管区長は。

政府参考人(横田尤孝君)

 管区長がこの点について指摘をしたと、したかどうかにつきましては確認しておりませんが、恐らくしていないのではないかというふうに思います。

井上哲士君

 ですから、やはりこの一か月半の中で事実が、言わば矯正管区も巻き込んで隠ぺいをされたんではないかということがうかがわれるわけであります。

 ですから、管区長などの処分理由は受刑者死亡の原因について真相究明を怠ったということになっておりますけれども、究明を怠っただけでない、もっと積極的に事実隠ぺいに手をかした、加担をしたんではないかという疑いを持って、私は、もっとこの中間報告は一つ一つの問題を掘り下げなければこれは全く解明にならないと思います。

 ちょっと大臣にお聞きするんですが、結局、今ありましたように、一番肝心の事実について全く記載もされておりませんし、この報告が一か月半も遅れても特に督促もしてこなかった。そして、そもそもこの六月六日付けの報告文書というのが、調査チームの翌年の二月に矯正管区で発見するまで明らかにならなかった。ですから、九月事件がもし発覚しなければこの五月事件というのはやはりやみに葬られた可能性もあると思うんです。やはり、大臣が、これは五月事件の直後に報告を受けながら結局、検察任せにするということでは、適切な行政としての真相解明の指示をしなかったということがこういうことになっていると思いますが、その責任、改めて今どうお考えでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 御指摘のようなことが今、先生のお言葉で明らかになってきたということでございますが、しかしそれはもう少しそれぞれの担当者あるいは関係者によく問いただしてみなければ分からない面もたくさんございまして、しかしそれにしましても、非常に文書あるいは報告の取扱いが言わばずさんであったと言わざるを得ないという気がいたします。その点は非常に残念なことで、私も今後そういうことがないようにきちっと文書の扱いについても厳しくしていかなければいけないというふうに考えておりますし、矯正局を中心とする関係の部局も大変そのことを肝に銘じておりますので、今後は二度とこのようなことがないように、みんなで力を合わせて努力をしていきたいというふうに考えます。

井上哲士君

 単なる文書の扱いというよりも、書くべきことを意図的に落とす、また違う事実を上げているということでありますから、ここに本当にメスを入れることが必要でありますし、その指示を怠ってきたという責任の重大性を改めて指摘をしたいと思います。

 さらに、この中間報告を見ますと、この六月六日付けの報告書の件は何にも触れられていないんですね。これは矯正管区の責任にもかかわる処分理由にもなっていることなのに、なぜこの中間報告には触れられていないんですか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 この報告書でございますけれども、この報告書は、革手錠の、これは報告書といいますのは、先生が先ほど御指摘になった五月事案発生の十日後に、名古屋刑務所から名古屋矯正管区に対して、受刑者の肝挫裂が革手錠の使用に起因する旨の医師の所見を含む報告書を指しますけれども、その報告書は、革手錠の使用が受刑者の死亡の原因であるという、するものではなくて、また受刑者の遺体に革手錠を強く緊縛すると残るはずの痕跡がない旨の記載があるものであります。

 その上、かえって、中間報告に記載されておりますように、当時の名古屋刑務所長からの矯正局保安課長に対する報告や、名古屋刑務所からの矯正局及び名古屋矯正管区に対する被収容者死亡報告で、受刑者の肝挫創の原因は、制圧時に被害者が長時間にわたって暴れたことから、その際に何らかの形で腹部が圧迫されたこと、心肺蘇生術により生じた可能性が否定できないことなどが考えられる旨、革手錠による強度の締め付けが受刑者の肝挫創の原因であることを否定するような報告がなされたため、矯正局におきましても、名古屋矯正管区におきましても、受刑者が革手錠による強い締め付けで死亡するに至ったと認識するに至らなかったというふうに認められるところであります。このため中間報告では、これに記載されている矯正局保安課長に対する報告や、被収容者死亡報告による誤った報告がなされたことを行刑運営上の問題点として掲げているものというように承知しております。

 一方、御指摘のとおり、名古屋矯正管区におきましては、受刑者の肝挫創が革手錠の使用に起因する旨の報告を受けていたのでありますから、その死因について事実解明に努めるべきであったのでありまして、報告中の疑問点などを探索して真相を解明しようとする姿勢に欠けていたと言わざるを得ません。

 したがって、中間報告にもこのような問題点を示す事実として、名古屋矯正管区において御指摘のような報告を受けながら事実解明に努めなかったことを明確に記載することも考えられたというふうに思っております。

井上哲士君

 結局、現場が事実を上げなかった、これがおかしいというのがこの中間報告の全体のトーンになっているんですね。

 この六月の報告書の取扱いというのは正に矯正管区の責任が問われているわけでありますが、私はどうもそれが意図的に外されていると思うんです。これはやはり現場が報告を上げなかったのが問題で、こういう書き方をしているんですね。

委員長(魚住裕一郎君)

 井上君、時間が超過しておりますから。

井上哲士君

 はい。

 施設の幹部や矯正管区・矯正局の姿勢にも問題なしとはしないと、こういう言い方なんですね。

 ですから、こういうやはり身内的な調査がこういう記述に結果としてはなっていると。やはり、現場だけの問題じゃない、幹部、上級の問題も含めてしっかりとしたメスを入れる、そういうことを改めて強く求めまして、質問を終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.