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2003 年 5 月 13 日 午前

法務委員会
刑務所問題
参考人質疑

  • 行刑改革会議、刑務所内の医療の問題で参考人に質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、参考人のお二人、本当にありがとうございます。

 まず、菊田先生にお伺いをいたします。

 真相解明とともに、この先どうしていくのかが大変大事だというお話でありましたが、やはり名古屋刑務所などを中心にして起きたこの間の事件の中に今の刑務所の持っている問題点が集中的に現れていると思いますので、あの問題のやっぱり事実、真相の解明ということが今後の改革の方向の究明にも非常に大きな役割があると私は思っているんですが。

 この間、法務省の行刑問題の調査チームなどからの報告も出されておりますけれども、例えば名古屋の十二月事件や五月事件にしましても、現場にいたごく一部の職員の責任というのが出ているんですが、もっとモニターで見ていたんではないかとか、それからそうした報告がかなり上まで実は上がっていたんではないかとか、いろんな問題があるんですが、その点での非常にえぐり方が弱いのではないかと私は思っております。

 衆議院での質疑では、この行刑改革会議は真相解明の仕事もするんだという答弁が法務省からはあるわけですけれども、こうしたこの間の中間報告の中での真相解明がどこまでいっているかという評価と、それから、行刑改革会議の中で一連の問題の真相解明というのがどのような議論がされているのか、その点をまずお伺いをいたします。

参考人(菊田幸一君)

 私も一応調査報告書をちょっと読ませていただきましたけれども、簡単に申し上げると、あの調査チーム自体が検察官ですよね。これは、矯正局長が検察官がやっておりますし、矯正局自体が検察官主導型になっている状況の中で、現場の調査がどこまでできるかということに私は非常に疑問を持っています。

 これは、現在の制度だから仕方ないということですけれども、これを基本に私は矯正局長はもう検察官から取るべきじゃないと。これは法的根拠があってやっているわけではないと思われます。昔は行刑局長は、小川太郎なんかも矯正出身のベテランが局長になっておりましたし、そういったことをやらない限り刑務官の士気も上がらないと思います。

 それで、今回の場合も、そもそも検察官というのは、その立場から行刑に関与するという職責は出てこないのが私は筋だと思いますね。そういう意味でも、これを機会に、矯正局長だけじゃない、課長に至るまで検察官を法務省から除外するというぐらいの定義をしてもらわないと困るんじゃないかというふうに思っております。

 もう一つは、行刑会議という、これはあくまでも私的な諮問機関でして、しかも、法務大臣のいる間だけだということになるんじゃないでしょうか、形からいきますと。実態調査といっても、何か今度バスで、それこそ東京医療刑務所その他を二、三か所訪問するようですけれども、私は参加希望者、されましたけれども、行かないことにしました。それは、ただ物見遊山に行って実態を知ろうなんて、お茶を濁すようなことはもう真っ平御免だと思いますね。だから、行刑会議自体が実態をする、何といいますか、能力もないし、それはもう国会でやっていただくのが、十分それでもう効果的だというふうに思っております。

 したがって、先ほど申し上げたとおり、これを、将来の方向性について、私は国会議員の方と第三者が法務省とともに、法務省を除外する必要はないと、矯正局も一緒になって、言わば森山法務大臣は本当に、このところ言論、新聞等々を見て、聞いておりますと、真剣になってやろうと思っていらっしゃることはよく伝わってまいります。矯正局も、この際、もう何といいますか、フリーハンドで、本当にその気持ちはあると思います。ですから、可能なことを将来に向かって私は今こそ具体化するときだというふうに思っておりますが。

井上哲士君

 先生の「日本の刑務所」も読ませていただきまして、質問でもいろいろ参考にさせていただいたんですが、いわゆる問題として指摘をされている例えば革手錠の問題、これは六か月後に廃止という方向が打ち出されましたし、それから外部とのいろんな通信についても改善の方向が出されているんですが、私もかんかん踊りのことを一度質問をいたしましたけれども、これはもう絶対必要なんだという大変長答弁をいただいたことを記憶しているんですね。

 今のいろんな議論の中で、きれい事だ、やっぱり受刑者をきちっと制圧をしないと規律が守れない、そしてそれこそが刑務所内で必要だという、こういう議論もされてくると思うんですが、こういう、やっぱり必要なんだという、ああいうやり方が、こういう意見についてはどのようにお考えでしょうか。

参考人(菊田幸一君)

 私、いつも思うんですけれども、アメリカでもそれはいろんな刑務所があります、重警備から軽警備に至るまで。どの刑務所も基本的には私は、例えば刑事裁判においてもアメリカでもいろんな矛盾はあります。けれども、刑務所へ入った途端に、まず食事の点で刑務官と同じ食事を食べる。カフェテリア方式といいますか、そういう方式で好きなものを取る。しかし、食べ残さないように取れというのが規則なんですね。私は、そこで初めて受刑者というのが、悪いことをして入ったけれども、国は人として扱ってくれるんだという実感を味わうところからスタートするように思えるんですよ。

 やっぱりそこのところが大事なんで、例えば保護房というものも確かにアメリカにはあります。けれども、保護房というものは、基本的に今までの居房と物理的条件は変わらないというのが基本です。ですから、懲罰は懲罰だけれども、あくまでも人として扱うということが基本にあるわけで、それは、それこそ精神的に問題がある人はそれは刑務所じゃなくてやっぱり医療病院で処理すべきであって、例えば革手錠をやめたから、私は、革手錠の代わりに何かいすでくっ付けるようなものを工夫しようなんて今言っているようですけれども、それは革手錠だって暴れる人を抑える分には十分機能していただろうし、いすでくっ付けるといったって、ベッドに締め付けようとしているのは同じことですよ。

 問題は、そういうことに、そういう人間がいることは事実でしょう。だけれども、警察の保護房だってそんなものはありませんよ。だけれども、それは自殺を防止するという最低の保障には必要だけれども、懲罰、今のは要するに、革手錠なり、懲らしめることが優先しているわけですよ。それは刑務官もお互いに、一人ではやらないけれども大勢ならできるという、そういうやることが刑務官の使命だというふうに錯覚している面があるわけでしょう。だから、今のいろいろ、それは名古屋刑務所は暴力団も多いし、扱いの困難な人間が多いことは事実分かります。だけれども、それだからといって、ノイローゼになるとか、過剰拘禁だから、ノイローゼになって子供を殺していいという母親がいていいわけじゃないんで、だからこそ処遇をする人間というのは冷静に、そして教育、処遇をする人間として人をどう扱うというのは、全体の中がそういうものができなきゃいけない。

 だから、そういう意味では、そう一朝一夕にできない。やっぱり刑務官の給料も上げなきゃならぬし、勤労条件も良くしなきゃならぬと。あらゆることを並行していくことによって私は少しでも前進すると。ただし、物理的なこういうことは即刻やめてもらいたい。革手錠に代わるようなものができたからといって、それで万事オーケーだということはとても言えないというふうに思います。

井上哲士君

 次に、黒田先生にお伺いをいたしますが、今、保護房の話もありました。精神科に受診をしている受刑者を保護房に入れるときには診察をすることが必要だということになっているようですが、この間の府中刑務所内の死亡事案などを見ましても、そういう人が保護房に繰り返し入れられて、そして死亡しているという状況があります。

 そういう言わば保護房に入れるときの診察というのが実際には適切に行われているのかどうかという問題と、そもそもそういう人を保護房に入れることができるという、病気のことからいいますと、私ども視察で見ましたけれども、あの中に閉じ込められますと一層悪化をするんじゃないかという気がするんですが、そういう今の仕組み自体を改善する必要がないのかどうか、その点、いかがでしょうか。

参考人(黒田治君)

 私、先ほども言いましたけれども、例えば名古屋刑務所であるとか府中刑務所での保護房の運用の実態というのを全く知りませんので、私がおりました八王子医療刑務所に関して申し上げますけれども、まず八王子医療刑務所では、基本的に保護房というのを使用することは全くないといいますか、例外的です。

 ただ、いわゆる個室といいますか、隔離室のようなものはありますけれども、そこは常にカメラで監視していますし、それから頻繁に職員が様子をうかがうことができるような体制がありますので、そういう意味では、具合が悪くなっているのを放置されるということはないんじゃないかと思います。

 それから、ああいう閉鎖的な空間に閉じ込められることで余計具合が悪くなるのではないかということに関しては、一面としてはそのとおりではないかと思います。ただ、逆に言いますと、それは日本の精神病院についても言えることなんですけれども、例えばその方が興奮状態で暴れているとか、あるいは目を離すと例えば自殺未遂をしてしまうとか、そういった場合に、じゃ閉じ込めるなり拘束するなり、そういった方法に代わって何ができるかといいますと、常に人がそばにいてそれを防止するということしかないと思うんですね。そのためには非常に多くのスタッフ、それから大変な技術とか、そういったものが必要になりますけれども、そういった整備というのは、日本の、刑務所もそうですし、病院についても十分とは言えないと思います。人がいないのでそういう手段に頼らざるを得ないんじゃないかという、そういった一面があるように思いますけれども。

井上哲士君

 先ほどもジレンマというお話がございました。

 刑務所の医療を考える場合に、受刑者にきちっとした医療を実施をするという問題と、この間の事件を見ておりますと、いろんな人権侵害が起きたときに、虐待などがあった場合に、これは医療を受けるわけで、そういう人権侵害のチェックの機能も持ち合わすかと思うんです。ところが、どうも一連の事件を見ておりますと、医師の方はいろんな疑問を持ちながら、それが表に出てこなかった。名古屋の場合は、九月事件が外部の病院で治療をしたことによりまして外に出たわけでありますが。

 そういうことを考えますと、刑務所内の医療もやはり法務省の管轄にあるということ自体を考える必要があるんじゃないかと、こういう指摘もあります。例えば厚生労働省の管轄に移すとか、そういうことにやらないと、いろんなやはり事実を法務省の一人として隠ぺいをしてしまうんではないかと、こういう指摘もあるんですが、こういう医療部分を法務省からは外していくというような考えについてはいかがお考えでしょうか。

参考人(黒田治君)

 私は、本当に一医師ですので、法務省の立場を代表してお話しすることはできない、もちろんできません。

 ただ、例えば諸外国の例、ヨーロッパの例などでも、例えばフランスとかイギリスなんかもだんだんそうなりつつありますけれども、やはり刑務所の中でも、医療については例えば日本の厚生労働省のようなところから予算も、それから人も付けて運営するというのがだんだん広がってきておりますので、やはり医療水準の面からもそうですし、それから倫理的な点からもやはりそういう、すべて法務省の中で処理するのではなくて、外部の目というのは必要なのだろうと思います。


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