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井上哲士ONLINE
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2003年7月3 日

法務委員会
裁判迅速化法案・民事訴訟法案・人事訴訟法案 質疑

  • 最高裁が、刑事事件で2年を超える長期裁判について行っている調査内容が、裁判官の訴訟指揮のあり方などに踏み込んだものとなっており、憲法で保障された裁判官の独立を侵す恐れがあることを厳しく批判し、裁判迅速化法案における検証では、このような調査をしないことを強く要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、裁判の迅速化法案について質問をいたします。

 今日の午前中の議論でも、衆議院でも、なぜこの法律が必要なんだろうかと、こういう議論が相次ぎました。この間、説得力ある答弁がないわけです。

 私、疑問として三つぐらいあると思うんですね。一つは、司法制度改革審議会が二〇〇〇年に行った調査でも民事訴訟の制度全体に満足した人は一八・六%にすぎない。そして、審理の充実度については肯定意見が三五%、否定意見が四三%。むしろ、利用者の多くは審理の充実度ということについて不満を持っているのではないか。

 二つ目は、審理期間が二年を超えるものが刑事事件では〇・四%、民事事件では七・二%にすぎないし、しかもむしろこの間、審理期間自身は短くなっているということ。

 それから三つ目は、外国の平均審理時間と比べましても、刑事事件でいいますと日本は三・三か月、アメリカは六・〇か月、ドイツは六・二か月、イギリスは三・三か月。民事事件では日本は八・五か月、アメリカは八・七か月、ドイツは六・九か月、イギリスは三十七・七か月。むしろ、日本の審理時間は短いとも言えるわけです。

 ですから、こういう状況の下でこの二年以内のできるだけ早く終結させるということを目標にする、こういう法案を作る、法律を作る立法事実がないんではないか。この点、まず大臣の見解をお願いします。

国務大臣(森山眞弓君)

 おっしゃいますように、我が国の裁判は全体としては近年、相当の迅速化が図られてまいりました。例えば、当事者間に争いがあって人証調べ等を必要とする場合、複雑、専門的な事件、国民が注目する重大事件等において、しかしながら依然として長期間を要するものが少なくございません。そのため、そのような裁判の現状については必ずしも国民の納得が得られていない状況にあると感じております。

 この法案は、そのような事件をも含め、第一審の訴訟事件を始めとする裁判の一層の迅速化を図ろうとするものでございまして、そのための基本的な枠組みを規定する点に意義があるというふうに思う次第でございます。

井上哲士君

 裁判の迅速化ということは今初めて議論がされたわけじゃありませんで、司法制度改革審議会の中でも、充実とともに迅速ということも議論になってきたわけですね。そして、あの意見書が全体としてその方向を打ち出していると思います。人的・物的基盤の整備とか証拠収集手続の拡充とか、取調べ過程の可視化とか、様々な課題を既に提起をしているわけですね。ですから、むしろこうした具体的なことを、課題を、対策を進めるということが求められるのであって、あえてこうした法案を作る必要はないと思うんですが、再度、いかがでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 いろいろな迅速化の試みが行われておりまして、それが相当効果を上げていることは確かでございますけれども、それを本当に定着させて、実際に短縮していこうということになりますと、裁判のやり方あるいは手続その他、そういう面でも一工夫しなければならないということが言われておりまして、それらの基礎となるべくこの迅速化法が是非必要だというふうに私は思っています。

井上哲士君

 私は、基礎となる方向は既に出されている、これをまず進めることが必要だということを申し上げておきます。

 問題は、この立法事実がないだけじゃない、この審理の充実さというのがむしろ犠牲にされるんじゃないかというおそれであります。民事の通常事件、刑事通常事件、それぞれの第一審の総件数、その中で証人調べ、鑑定を行った割合について、九三年と二〇〇二年についてどういうことになっているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)

 まず、民事事件について私の方からお答えしたいと思います。

 民事通常第一審訴訟事件の地裁における既済事件数は、平成五年には十三万七千九百二十一件でございました。平成十四年には十五万五千七百五十四件となっております。このうち証人調べを実施した事件の割合は、平成五年は三〇・八%でございまして、平成十四年はこれが二三・二%になってございます。

 鑑定を実施した事件の割合は、平成五年は二・二%でございますが、平成十四年はこれは一・一%になってございます。

井上哲士君

 刑事事件についてもお願いします。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 それでは、刑事事件の関係についてお答えいたします。

 平成五年度の地方裁判所の刑事通常第一審の終局人員は四万八千六百九十二人でありました。そのうち証人調べの行われました人員の割合は六三・〇%、鑑定の行われた人員の割合は〇・四%です。

 続きまして、平成十四年度の終局人員は七万五千五百七十人、うち証人調べの行われた人員の割合は五七・三%、鑑定の行われた人員の割合は〇・二%ということであります。

井上哲士君

 今、見ましたように、民事事件についても刑事事件についても、鑑定、証人調べが行われた数が非常に、割合が激減をしているというのが実態です。

 私、地元の京都で少しお聞きをいたしましたけれども、京都地裁の本庁を見ましても、平均審理時間というのは、民事で、九六年が十・六か月だったのが二〇〇一年には九・四か月、刑事で、九六年が五・〇か月だったのが二〇〇一年には四・四か月と減少をしておりますが、その下で、例えば民事訴訟で検証を行った割合というのは、九六年には三千五百七十九件中三十三件なのが二〇〇〇年には三千七百三十件中十七件、これ、もう半減をしているという状況があります。

 これ、いろんな分野で起きていますが、特に顕著なのが東京地裁に作られた四つの医療集中部であります。医療訴訟の平均審理期間が全国平均は二年六か月、これに対して東京地裁は一年三か月と半分。確かに迅速化が進んでおりますが、同じく医療訴訟の鑑定実施の割合を見ますと、二〇〇二年の全国平均で二八・六%、東京地裁でほぼ同時期を見ますと、わずか七%と平均の四分の一ということになっておりまして、迅速化によってやはり審理の充実というのが犠牲になっているんじゃないか、こういう声や批判があります。この点いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)

 まず、ただいまの御指摘のありました鑑定の実施率に関してですが、平成十四年の全国の医療事件の鑑定実施率は、ただいま御指摘のように、二八・六%となっております。ここ数年、この数値に大きな変化はございません。一方、東京地裁全体の医療事件の鑑定実施率は平成十四年には一七・一%というようになっておりまして、全国平均より少し少なくなっておりますが、余り大きな違いはないと見ることもできます。

 ところで、東京地裁には平成十三年四月から御指摘のような医療集中部が四箇部設けられまして、平成十三年四月以降の新しく東京地裁に起こされた医療事件はその四箇部で審理されておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、平成十三年四月から平成十四年九月までの間におけるその四箇部の鑑定の実施率が七%であるという数値が示されておりまして、これが法律雑誌などにも発表されておりまして議論の対象になっているわけでございます。

 今の、経過を御説明いたしましたように、東京地裁の医療集中部は創設されてからまだ二年余りしかなりませんので、そこに係属する事件は訴えが提起されてからそれほど期間がたっていないという事件が多い特徴もございますので、そこでの事件処理状況に評価を下すというのは今の時点ではまだ早いのではなかろうかというように考えておりまして、この鑑定の率についての推移なども今後、関心を持って見守っていきたいというように思っております。

 一般論といたしましては、必要な証拠調べは、証人尋問であろうと鑑定であろうとこれを実施するというのは当然のことでございまして、ただ、争点の絞り込み、争点に関する活発な弁論、そういう中でそのような人証調べあるいは鑑定の実施が双方、当事者との関係から見ても必要性がないと見られる事件がどのように多くなってくるのか、それが専門的処理がされることによってどのような影響があるのかというようなことについては、これからも更に関心を持って見守っていきたいというように思っております。

井上哲士君

 この鑑定やそして証人調べが非常に減っているんじゃないかというのは、いろんなところから私どもはお声を聞いております。日弁連が今年二月に出した資料集の中でも、当事者や代理人から強引に和解を押し付けられた、証人尋問を申請したら陳述書で十分と言われた等々、様々な声が上がっております。だからこそ、この法律によってこういう充実した審理が犠牲になるんじゃないかという様々な懸念の声が上がっております。

 最高裁の中山総務局長が衆議院でこういうふうに答弁されています。私ども一審裁判官の目標は、暗黙のうちに二年以内で処理するよう努力してきた、今回はそれがある意味で数字化をされたと、こういう答弁でありました。暗黙の目標でも拙速になっているんじゃないかという声がある中で、数字化をされることによって一層縛りが掛かるんじゃないか、こういう懸念についてどうお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 衆議院で確かにそのようにお答え申し上げているわけであります。

 私ども、先ほどもお話がありましたけれども、江田先生の方からお話がありましたけれども、基本的に、できる限り早く、裁判は芳しいうちが美しいわけでありますから、その間に事務処理は、裁判処理をしなければならない。裁判官になりましたころから、どんなに遅くても一審判決は二年以内にするように努力しようと、こういうことで努力してまいりました。しかしながら、裁判官の方の努力も足りず、また種々の要因もあり、どうしても二年を超えざるを得ないものも出てきているのも確かでございます。

 今回の迅速化法が成立することで、その辺り、数字化するというだけではなくて萎縮効果を生むのではないかというようなお尋ねでございますが、この迅速化法ができて直ちに全部の事件が二年でできるというふうには私どもも考えておりません。午前中からもお話し申し上げているとおり、種々の基盤整備といいますか、裁判をめぐる社会的諸条件が整備されて初めてそういうものが可能になってくるというものでございますから、当然ある程度のスパンを持って考えていくべきものであり、裁判官は、これまで自分たちが二年というものを努力目標としてきたというところもあり、冷静に受け止めているというのが実態でございます。もっとも、そうはいいましても、またこれで拙速であるというような批判が強まるというようなことがあってはならないというふうに思っておりますし、衆議院でも、裁判の適正というのは裁判の言わば生命線であると、こういうふうにもお答え申し上げました。

 さきに、六月の中旬でございますが、全国の高裁長官、地・家裁所長会同が開かれましたけれども、その際にもこの迅速化法案について議論になり、この際改めて、裁判官は適正な裁判が行われてこそ迅速化が意味があるんだということを自戒して、心して裁判をするというのをまず前提に据えていかなければならないという多くの意見が出されたところでございます。

 以上でございます。

井上哲士君

 萎縮をするんじゃないかというのは、私は単なる杞憂でない、現にそれを思わせるような事態が進行しているということを指摘をしなくてはなりません。

 衆議院の答弁で最高裁は、長期係属事件の個別について個別調査表による調査を行っていると、こういうふうに、刑事事件ですね、答弁をされております。この調査を始めたとき、それから目的、調査対象、項目、方法、これについてどうなっているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 こういった調査を継続的に行うようになりましたのは昭和二十八年からということでございます。

 調査の目的は、各庁における長期係属事件の状況、動向を把握いたしまして、これを人的配置の検討あるいは増員といったような司法行政上の措置を取る際の参考とするためのものであります。調査対象といたしましては、係属二年を超える刑事の通常訴訟事件ということで調査を行っております。

 調査の方法につきましては、そこまであれしましょうか。調査の方法、だれがどのように記載しているかということだろうと思いますけれども、実際にだれが記入するかについては各庁の判断に任せておりますので、刑事局としては詳細は把握しておりません。しかし、多くのところでは恐らく書記官が裁判官と相談しながら記入しているという例が多いのではないかというふうに思われます。

井上哲士君

 調査の項目についてもお願いします。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 調査項目は、事件名、審理期間、事件の概要、審理の段階、長期化の原因ということであります。

井上哲士君

 これは調査対象は二年を超えるものということでありましたけれども、去年まではこれは三年を超えるものであったとお聞きをしておりますが、去年の段階で二年を超えるものに調査対象を広げたのは、その理由は何でしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 この調査は、先ほど御説明いたしましたとおり、各庁におきます審理事件の状況、動向を把握いたしまして、これを人的配置の検討、増員等といった司法行政上の処置を取るということのために、その参考とするということのためのものでありますが、平成十四年十二月十九日の通達当時、政府が民事、刑事の第一審判決を二年以内に出すことを目指して、裁判の迅速化に関する法律案を平成十五年の通常国会に提出する予定であるというような方針でありましたことから、これに伴い、各庁における係属二年を超える事件の審理状況、動向を把握しておく必要があるというふうに考えて二年ということにいたした次第であります。

井上哲士君

 午前中の審議でも検証の在り方とか議論になりましたけれども、あくまでも法案が決まってからだという答弁が続きましたが、実際にはこういう調査は言わば法案の先取り的に、それまで三年を超えるものが二年を超えるものになって行われている。私はそれ自体が問題だと思いますが、この調査、これは未済事件についてこういう調査をしているわけですけれども、憲法七十六条は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と定めております。

 これに関連しまして、中山局長が衆議院での答弁でこう言っていますね。裁判官の独立については、外部からの独立はもとより、内部からの独立というのも非常に重要でございます。そこで、これらの調査に当たりましては、基本的に、外形的な実態を把握するというところをベースに考えている。そして、長期未済事件について個々の事件を調査する際も、「証人の人数、証拠調べの回数、公判回数、そういった外形的、客観的な事実を調査するにとどめております」と、こう答弁されておりますが、この認識は今も変わりありませんですね。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 そのとおりでございます。

井上哲士君

 これは逆に言いますと、外形的、客観的事実の調査を超えると裁判官の独立というものに抵触するおそれがあると、こういうことかと思うんです。

 ちょっと資料を配付をお願いをいたします。

  〔資料配付〕

井上哲士君

 重大なのは、この間、この外形的、客観的な事実にとどまらない、非常に大きく踏み込んだ調査が行われているということであります。この間、最高裁が行った調査の資料を今手元に配付をしております。資料(1)と(2)がございますが、資料(2)の方は先ほど答弁のありました、これまで行われてきた長期係属事件の個別調査表の集計表です。

 例えば、一番右の欄、「審理長期化の事由」というところでも証人調べなどは回数のみを書き込むと、こういう表になっております。ところが、この一月三十一日付けで刑事局長から通達が出ている資料では大変踏み込んだ調査が行われております。

 まず、お聞きしますけれども、この調査は何のために、いつ、どのような方法で行われているのか、答弁をお願いします。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 この調査は、当時といいますか、今も続いておりますけれども、司法制度改革推進本部の検討会などで裁判や刑事事件の充実・迅速化等、制度改正に向けた議論がされておりました。そこでの議論に備え、あるいはその議論の参考に供するということのために、係属二年を超える刑事事件につきまして、裁判所側から見た審理遅延の原因をアンケート調査したものです。この調査を行いましたのは今年の一月からということでありますが、同様の照会は昨年八月にも行っております。

 調査表の調査の方法ですけれども、これにつきましては、先ほど述べましたとおり、刑事局として正確に把握しているわけではございませんが、書記官が裁判官と相談するなどして記入している例が多いというふうに思われます。

井上哲士君

 衆議院での質問で我が党の木島議員が、「裁判迅速化を進めるための、既済事件及び未済事件についてどのような調査をしているのか、すべて明らかにしていただきたい。」と、こういう質問をしておりますけれども、この調査については明らかにされませんでした。なぜでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 当時の質問と、私ども受け止めましたのは、継続的に調査を行っているものということで承ったというふうに承知しておりまして、このような単発的な調査につきましては、特に求められなかったというふうに理解しておりますが。

井上哲士君

 当時の質問では、すべて明らかにしていただきたいとわざわざ言っているんです。私も今回の質問の準備に当たりまして、こういう調査を行っているものをすべて改めて明らかにしていただきたいと要望いたしましたけれども、最初は、先ほどありました、例年のものしかないという返事でありました。地裁段階でもっとやっているのがあるんじゃないかと再度いろいろお尋ねする中で、やっと今お配りをした調査が出てきたわけでありまして、意図的にやはり明らかにしてこなかったんではないかと思わざるを得ないんです。

 しかも、この調査が、先ほど司法制度改革推進本部の議論のための調査だと言われました。昨年八月にまず調査を行ったということでありますが、しかしそうであれば、既に法案が提出されている一月以降に再度、調査をする必要は一体どこにあるのか、この点いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 昨年夏、調査いたしました資料は、必ずしもデータとして十分なものというふうにも思われませんでしたので、改めてある程度の期間、それなりの母数を取って調査をしておく必要があるというふうに考えた次第です。

井上哲士君

 昨年の十二月の二日でしたか、司法制度改革推進本部の中で最高裁がこの問題でのプレゼンテーションをしているわけですね。その後、しかし法案がもう出されたんです。なぜ改めて取る必要があるのか、これが実際上、今後の検証のための資料に使われることはないですか。その点いかがですか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 司法制度改革推進本部の検討は、この迅速化法案だけではなくて、現在も続いております裁判員制度の関係、あるいは充実・迅速化の関係といったような検討もまだ続けられておりまして、その長期化の原因を把握しておくということが必要であると、そういう理由から行っているものであります。

井上哲士君

 裁判の迅速化のためにのみ行っている調査はしておりませんというのが衆議院の答弁でもありましたけれども、実に先取り的にこういうやり方が行われていることは大変大問題であります。しかも、調査内容が実に細かく踏み込んでおりまして、この間、最高裁が言ってきました未済事件については外形的、客観的な事実にとどめるべきだと、この調査を大きく逸脱していると言わざるを得ません。

 資料を見ていただきますと、証人尋問開始後に時日を要した事件の要因というのがあります、四ページ目ですね。「ウ 証人調べに多数の公判等を要した。」という項目がありまして、その中に「(ア) 証人が多数であった。」と。そうしまして、その中から幾つかの要因を選ぶということになっております。「争点整理が不十分であった。」、「検察官の立証が過剰であった。」、「弁護人が争いのない事実に関する書証まで不同意にした。」、「整理後の争点が多岐にわたり、多数の証人を調べる必要があった。」と、これから選ぶわけですね。これは、しかし、裁判官の認識まで踏み込んで調査を、その認識を問うているものだと思うんですね。これでも外形的、客観的事実にとどめていると、こういうふうに言えるんですか。そういう認識ですか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 これらの調査項目につきましては、これまで裁判官の認識としてここに掲げられたような事項が長期化の原因であるというふうに思われておりました事項でもありますし、またそういった指摘もなされているところでもあります。それらの事項につきまして、これを認識、裁判官、今まではそういった認識であるということでしたが、それをより客観的な数字としてまとめてみる必要があるということから、そういった実情を把握しておくということで、長期化原因の一つとして取り上げてきたものであります。

井上哲士君

 私が聞いているのは、外形的、客観的事実と言えるのかと。今言われたのは、裁判官のいろんな認識を客観的に調べたいということでありますけれども、外形的と言えますか、これが。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 このような事項につきましては、外形的には時間等で出すことになろうかと思いますが、それでは実際のところが分かりません。何時間掛かったからそれが反対尋問としてあるいは長時間掛かったと言えるのかというようなことになりますと、やはりその意味では、裁判官のその事件との関係でこれが長かったかどうかというところの認識を確認しない限り、こういった調査、実際の長期化の原因というのは把握できないというふうに考えています。

井上哲士君

 長かったかどうかを聞いているんじゃないんですよ。検察官の立証が過剰であったとか、争点整理が不十分であったとか、裁判官がどう評価をしているかということを聞いているんですね。要するに、客観的なことを聞いているんじゃないんです。裁判官の主観を聞いているんじゃないですか。どうですか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 その意味では、裁判官の認識という、先ほど申し上げたようなことですから、主観であるという表現を使われるのであれば、それはそのとおりかもしれません。

井上哲士君

 それが大問題なんですよ。裁判官の独立に対する、実際上、圧力になるし、萎縮効果になるんじゃないか、そういうことになったらならないから、外形的、客観的な調査にとどめるということでやってきたわけですね。これ結局、難しい事案だから長期化しているんじゃなくて、訴訟指揮がまずいからじゃないかと、そういうことを実際、これに回答していく裁判官に思わせるような質問ぶりになっているんです。

 もう一個聞きましょう。

 (イ)ですね。「一人の証人尋問にかかる時間が長かった。」、こういう項目がありますが、ここでも、「争点整理が不十分であった。」、「必要以上に詳細な尋問を行った。」、「主尋問終了後、反対尋問を即日行わなかった。」、これから選ぶようになっていますが、この「必要以上に詳細な尋問を行った。」、この「必要以上に」というのはだれにとっての必要性なのか、だれが判断をするのか、その点どうでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 これは、先ほど申し上げましたとおり、裁判所側から見た原因ということですので、もちろん裁判所がその事件との関係で判断するということになろうかと思います。

井上哲士君

 結局、こういう調査項目では、長くなったのは、一人の証人尋問に掛かる時間が長かったのは言わば必要以上のことをやらしたからだと、できるだけ証人尋問の時間を短くせよという、こういう萎縮効果を生むのははっきりしているんですよ。

 もう一点行きましょう。

 さらに、次に五ページ、エというのがありますが、「被告人質問に多数の公判を要した。」、こういうのがあります。「争点を明確にしないまま被告人質問を行った。」、「必要以上に詳細な質問を行った。」、「任意性立証のための被告人質問を行った。」、これから選ぶようになっておりますが、この「争点を明確にしないまま」というのは、これ、主語はだれを指して聞いているんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 これは、当該事件の中でそういった争点が明確にされなかったという意味で、その意味では法曹三者いずれもが入りますが、最終的には裁判所がそこを明らかにすべきであったということになろうかと思います。

井上哲士君

 結局、こういう項目も通じて、被告人質問のために多数の公判を行うということは訴訟指揮上問題があるよということを、結局このアンケートに答える私は個々の裁判官に対して大変な圧力になると、人事権を持っている最高裁がこういうアンケートを取るわけですから。

 しかも、この中を見ますと、例えば人的・物的体制にかかわって長期化をすると、こういうことを問うような項目がほとんど見受けれないわけですが、その点はどうしてでしょうか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 これにつきましては、この事件の対象、調査の対象は B1 表と連動しておりまして、B1 表の方で先ほど申し上げましたような事件のふくそう等含めて出てきているわけでありまして、そういったところは B1 表の方で把握し、先ほど申し上げたような人員配置、定員等の問題を考えるということで、B1 表は先ほど申し上げましたように司法行政上の目的と、こういうことで行っておりまして、こちらの方はそういう客観的なデータにつきましては B1 表でということでそちらを除いているということであります。

井上哲士君

 B1 表は B1 表で年末に取られまして、これと別個これがやれるわけですね。そうしますとどうなるのか。全体として二年以上掛かっている裁判について調査がされて、そして個々の項目を裁判官が、これは自分の判断じゃないと書けないから裁判官が記入するんでしょう。結局、やっぱり訴訟指揮がまずかったんじゃないかと、そういうふうに裁判官に自己採点をさせるような、そういう中身になっているんですよ。

 ですから、人事権を持つ最高裁がこういう調査を行うこと自身が裁判官の独立に対して侵害になるばかりでなくて、丁寧過ぎるということで審理が長過ぎると低い人事評価になるんじゃないか、こういう圧力を掛けることになる。個々の裁判官が萎縮して、迷うこともあるでしょう、この証人をやるかどうか、そういうときにちゅうちょをする。結局、やっぱり拙速化に拍車を掛けることにつながるんじゃないか、おそれがあるんじゃないかと。そういうおそれは一切ない、そういう制度的保証がありますか、どうですか。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 私も裁判官でありますが、こういう今現在のような司法制度改革についていろいろ議論がされているというそういう状況下におきまして、このような調査、アンケートに答えるということは、ある意味では時代、そういった議論の参考にするということで理解を求められるものでありましょうし、そこは不可解なものと、あるいは不思議なものという感覚は持たないであろうと思います。このような調査が行われるということで萎縮をするというようなことは考えられないというふうに思っております。

井上哲士君

 再び中山さんにお聞きしますけれども、衆議院の質疑で我が党の木島議員が、「裁判所法逐条解説」も引用しまして、最高裁当局が個々の裁判官に対して、一般的な訓示や研修までは良いけれども、具体的な個々の裁判に関しては根掘り葉掘り調査してはいけない、一般的な研修はいいということではないかと、こう質問いたしますと、基本的にはおっしゃるとおりですと、こういう答弁をされておりますが、現に行われているこの調査は、正に個々の裁判について根掘り葉掘り聞いている、こういうことじゃないんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 いつ回ってくるかしらんと思って、待っておりましたけれども。

 これ率直に言いまして、裁判員制が今度、今、議論をされているわけでありますけれども、裁判員制になりましたときに、迅速化法の二年というようなことでは裁判員制は絶対動いていかない。二年も缶詰にされて審理をするということは、これはとても無理であります。例えば、今まで二年掛かっていたものであっても最大限二か月とか、あるいは、二か月じゃない、失礼しました、二週間とか、せいぜいそのぐらいのところで審理が終えるというようなことにならなければなかなか難しいだろうと。

 そういうことで、今、司法制度改革推進本部の方の検討会で議論がされているわけでありますが、いずれその折に、じゃ最初に事前準備を行うためには、今までどうしてできなかったのか、それが審理にどのような影響をもたらしたのか、マクロ的に見て。そういったものをやはり実証的データとして裁判所としてはお出ししていかなければならない、そういった責務があるだろうと、そういう観点からこれは取られたものだというふうに思っております。また、これを一月に取る際には、当然、そういうものであるということにつきましては、これ高裁長官及び地裁所長あてでございますけれども、高裁の事務局長に対して、その辺りは誤解のないようにしてもらいたいということでございます。

 また、この間、裁判所の中では、裁判員制になったときにどこをどのように工夫することにより、運用上の方策を取ることにより、あるいは制度上いろいろ御勘案いただくことにより、そういったような短期に裁判員が無理なく審理に参加する、そういった訴訟手続が実現できるかどうか、こういうふうに考えてそういった議論をしてまいりました。その延長線上であるというところも御理解いただきたいというふうに思うわけであります。

井上哲士君

 これはまたもう一回、中山さんにお聞きいたしますけれども、先ほど引用しました衆議院の答弁で、裁判官の独立の関係から外形的、客観的な調査にしてきたということを言われておりましたけれども、この今の項目も外形的なものだというのが中山さんの御認識ですか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 そこら辺のところは、これは主観的なものを求めるものではないかというふうに言われても、それは致し方ないというところはあるかと思いますけれども、その辺りは目的との関連でお考えいただくこともまた必要かと思っております。

 往時、私が刑事局の課長をしておりましたときには、百日裁判という事件が、なかなか百日以内にできない、一体どういうことだと、こういうことをやはりこういった法務委員会の場で追及されたということもございました。そういう場合に、どういったところに問題点があるのかどうかというものを、かなりさかのぼって、やはりそういって細かく調べるというようなこともございます。

 その辺り、決してそれを裁判官の独立あるいは裁判官の評価に使おうというものではない、あくまでも、いい制度を作るための資料集めであるという観点も御理解いただければと思うわけであります。

井上哲士君

 目的が違うからやってもいいという、全然違う話ですよ。中山さんが言われているのは、裁判官の独立については内部からの独立というのも非常に重要だと、だから基本的に外形的な実態を把握するということをベースに考えていると、こういう答弁なんですよ。ですから、目的が変わったら、多少、裁判官の独立について問題があっても、こういう調査をやっても構わないと、こういうことになるんですか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 少し言葉足らずで申し訳ありませんでしたけれども、恒常的にこういったものを毎年取り続けるということになりますれば、それはどうしても人事評価とかそういったものにまで影響してくるのではないかと、こういうふうに思われるというふうに私は考えております。

 したがって、そういった統計的に恒常的に取り続けるというものは、外形的なもの、そういったものにしなければならないと、こういうふうに考えているわけでございますが、その場、時期、その時期においての必要性ということで、こういった単発的に取るということはあり得るということを御理解いただきたいというわけでございます。

井上哲士君

 いや、衆議院の答弁では、そんな、そういう、系統的にやったらいけないけれども単発ならいいとかいうことは言われておりませんし、仮に単発であっても、仮に一つの事件であっても、それは絶対に裁判官の独立としては侵してはならないんですよ。だから、私は、単発であろうが、こういう形で正に裁判官の訴訟指揮、その認識を問うような調査というのは行われてはならないと。

 この点、山崎局長にもお聞きをいたしますが、これ全部、未済事件について踏み込んでいるんですね。衆議院の答弁では、この法案に基づいた今後の検証の調査について、個々の裁判の独立に影響を与えてはならないと言われまして、調査対象については原則的には既済事件を中心に行われるのが相当だ、一審で現にやっているような事件については相当な配慮をするべきだと、こういうふうに言われておりますが、今ここでやられているような未済事件について、争点がどうだったかとか必要以上な尋問があったんじゃないかとかいう、そういう、裁判官の認識を問うようなこういう調査が、相当な配慮、こういう範囲に入っているんでしょうか、それともはみ出しているんでしょうか、どうでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま最高裁の方でおやりになっている調査でございますけれども、これは、この法案に基づく、検証に基づく、検証ですね、八条に基づく検証、これに直接連動するものではないということで御答弁がいろいろあったと思います。

 私どもの認識も、一応、調査の対象は全事件、これが対象にならないと全体の実態が分からないわけでございます。その中で、やはり現に係属中の事件については、その裁判に対する影響も考えて、その調査はなるべく客観的な外形的なものにとどめて、既済事件については、これはもうその影響はないということでございますので、それはある程度踏み込んで調査が可能かもしれませんけれども、そういうような、未済事件については何らかの配慮、こういうものが必要かなという認識は申し上げました。

井上哲士君

 そうしますと、今後、この法案に基づく検証のための調査ということが行われるわけでありますが、その調査の内容としては、こういうふうに、個々の裁判の中身について裁判官のこうした認識を問うということについては、この相当の配慮から考えるとふさわしくないと、こういうことでよろしいですか。

政府参考人(山崎潮君)

 この実際のやり方等、私ども十分承知しているわけではございませんし、そこのところをお答えするのは適当ではないかと思いますけれども、そこのところは、この法案の趣旨に照らして、最高裁判所の方で今後どのようにやっていくか、それをいろいろ御判断されて、裁判の独立に影響のないやり方をやっていただく、それを期待しているというところでございます。

井上哲士君

 その独立、期待されているその独立に影響がないやり方というのは、先ほども少し言われましたけれども、外形的、客観的な事実にとどめるべきだと、こういう認識でいいわけですね。

政府参考人(山崎潮君)

 一般的にはそういうことでございますけれども、それが文言の意味としてどこまで外形的なのか、客観的なのかと。それは例えば、いろんな原因について一般的に言われている幾つかの範疇があるといたします。それの範疇のどれかというぐらい、これを聞くこと、これは客観的に言われている原因であれば、それは客観的なところにマークをするというものになるというふうに考えられますし、その内容いかんによるということで、文言から一義的に決まってくるわけではないということでございます。

井上哲士君

 ここで問われている、不十分であるとか、過剰であるとか、こういうのは明らかに裁判官の主観を問うものなわけですね。

 もう一回、最高裁にお聞きしますけれども、先ほど、単発的なものというふうに言われました。となりますと、今後はもうこの調査は行わないんだと、今回限りだと、こういうことは言えるわけですね。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 この調査、ごらんいただいてお分かりのとおり、十五年末で終わるということになっております。

 今後、このような調査を行うかどうかというか、単発の調査、こういう調査かどうかは別として、単発の調査を行うかどうかということに関しましては、裁判の独立にも十分配慮しつつ、やっぱりその必要がある場合には単発的な調査を行うことはあり得るだろうと思います。

井上哲士君

 単発的な調査でも、例えば間を置かれて数度も行われますと、さっき言われたように、それは正に人事も含めて影響が起こってくるわけでありますから、これは、今回行われたこと自体が問題でありますけれども、今後こういった形で正に独立に影響を及ぼすようなことは絶対にあってはならないということを求めておきます。

 大臣にも認識をお伺いしますけれども、これは衆議院の答弁で、最高裁が検証を行うに当たりまして個々の裁判官の独立に影響を及ぼすことが許されないのは当然だと、こういう答弁でありますが、このようなやはり個々の裁判官の主観を問うような調査というのが今後行われるということは、私は大変独立という点から問題があると思いますけれども、その点、大臣のお考え、いかがでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 今、御説明がございましたように、この問題にされております調査はこの法案に基づく検証に使用する目的ではないということが明らかでございますし、当然、最高裁判所においては、本法案に基づく検証の実施に当たりまして、裁判官の独立を侵す、あるいは害するということがないように調査の在り方については十分に配慮されるものと考えております。

井上哲士君

 このように、既にこの間の国会答弁とはやっぱり食い違うような調査が行われておりまして、やはり最高裁がこの法律に基づく、法案に基づく検証の主体になるということは、調査の項目、やり方、これも含めてやっぱりいろんな問題があるということは改めて浮き彫りになったと思います。やはり、第三者も組み込んだしっかりとした検証機関を作るべきだと思いますけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいまの御指摘の点につきましては、最高裁判所の方でやはり裁判の独立に影響を与えないような調査の仕方、これは工夫していただくということになりますけれども、じゃ、これを仮に第三者に行ってもらおうということになれば、それはますます裁判の独立に影響が出てくるというおそれもございます。また、現に事件、係属中のものもありますので、それは守秘義務等もあるわけでございまして、プライバシーの問題もございます。そういう関係から、やはり調査の主体は最高裁判所でやっていただく、これが一番いい方法であるというふうに我々は判断したわけでございます。

井上哲士君

 先ほど、午前中の審議で福岡方式のお話がありました。詳しく御説明がありましたからあえていたしませんけれども、この検証の方式、生の裁判を素材にしつつ、それぞれが記録をして、そして検証自体は終結後に行うという形でやったわけでありますけれども、私、非常に工夫された仕組みだと思うんですが、あの方式については最高裁としてはどういうような御評価をされているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 福岡方式といいますか、福岡方式のモニタリングのことをお聞きになっているかと思いますが、あれは現実に担当をしています裁判官、それからその訴訟代理人である弁護士の方、これらの方が自主的、主体的に相互の意思疎通をより図って、その結果、福岡方式を実のあるものにしようということでなされたものだというふうに思っており、地・家裁レベルでそういった共働関係を作る方策として非常に有力なものだというふうに考えております。

井上哲士君

 非常に有力なものだという評価でありましたけれども、この福岡方式では、それぞれが持ち寄ったものについて、地裁の中に、とともに、裁判官とともに弁護士が加わって検証しているわけですね。そのことによって、いわゆる裁判の独立が侵されたような事態が起きていると、こういうことは当然ないわけですね。その点いかがですか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 先ほど、裁判官、弁護士、それぞれの意思に基づいて自主的、主体的に今行っているというものでございますから、裁判に対する不当な影響という目的も、そういったまた弊害も生んではいないというふうに考えております。

井上哲士君

 そうしますと、この福岡方式でやることによって、検証に弁護士も加わってやっているわけですけれども、それによって独立が侵されるようなことはないということになりますと、この法案に基づく検証というものにも、最高裁とともに訴訟関係者、利用者である市民、こういう者が加わった第三者機関によって検証するということも何ら問題はないんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいまの福岡方式、私も十分承知しているわけではございませんけれども、関係者の合意があって行っているものでございます。そういう意味において、裁判の内容的なものも外に現れると、こういうようなやり方でございます。

 こちらの八条に基づきます検証、これについては、それぞれの事件の当事者の合意があるかどうかということを問わずに調査をまずしなければならないということでございますので、そこで性質は大きく変わってくるということでございます。

 ですから、第一義的には、それは裁判所の方でお願いをいたしまして、そういうものをある程度まとめて抽出したもの、これをどういうふうに分析していくかという場面において、弁護士会あるいは検察庁、それ以外の有識者も含めていろいろ分析をしていただいて、その上でこれを施策に持っていくと、こういうことは必要であろうというふうに理解をしておりますし、また衆議院における修正あるいは附帯決議、これもそのことを意味しているというふうに理解をしております。

井上哲士君

 今、最高裁が検証の主体となった場合も関係者の意見をしっかり聞くんだと、こういう答弁でありましたが、意見の聞き方もいろいろあると思うんですね。言わば、一本釣りでコメントを聞く場合もあるでしょう。パブリックコメントという形で発表して求める場合もあるでしょう。しかし、そういうコメントを聞きおくようなやり方ではなくて、しっかりやっぱり協議をする場を作ることは私は必要だと思うんですね。

 例えば、この五月に下級裁判所裁判官の指名諮問委員会が立ち上がっております。法曹三者五人に学識経験者六人を加えて、最高裁が下級裁判所の裁判官として任命されるべき者を指名するに当たってその指名候補者について諮問をする、そしてこの委員会が意見を述べると。最高裁がこの意見と異なる結論を出した場合には、その理由を委員会に示すということになっております。

 これは、人事権は最高裁にはあるけれども、しかし実際その中にこの委員会を通して国民の声を反映をさせると、こういう仕組みかと思うんですね。

 ですから、こういう例えば法曹三者や外部の有識者などを加えた検証委員会的なものなど、こういうこの下級裁判所裁判官指名諮問委員会に似たような性格のものを例えば作ると、こういうことも可能かと思いますけれども、こういう仕組みを採用することに何か不都合がありますか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 その前に、福岡方式に対するモニタリングというものがこの最高裁の今回の検証とどんな関係にあるかというところをちょっと、先ほど福岡方式のモニタリングについて裁判所としてどう見ているかということでありましたので、ちょっと誤解があるといけませんので、そこの部分、お話しさせていただきたいと思いますが。

 午前中に江田先生の方からもお話ありましたけれども、あれは、福岡方式というものを実施に、本当に実のあるものにするためにどうしたらいいか、裁判官と訴訟当事者の間で共働関係というものをきちんと作って審理を充実するとともに迅速化を進めていくためにはどうすればいいか、言わばそういった素地をそれで作っていったということになるわけであります。あくまでも、それは福岡方式というものを対象にそのモニタリングを行っているというものであります。今回の最高裁の、今、八条に言われている検証といいますのは、より大きな視点からのものではないだろうかというふうに考えているわけでございまして、少しく場面が違うのではなかろうかというふうに思っています。

 そこで、午前中に江田先生の方にお答え申し上げましたとおり、そういったものを率先して下級裁が、こういうやり方でどうだろうかということを弁護士会と共働していろいろやっていただく、こういうことは大いに考えられますし、またそこで、こういうやり方をするとこういう隘路が乗り切れたということであれば、それが裁判所の、最高裁における検証の結果、こういう問題点があるところの処方せんとなり得るということであれば、それは採用していくということにはなるだろう、そういうような関係に立つものだろうというふうに考えております。

 それから、先ほど、今回は、今の御質問に対する答弁でございますけれども、裁判所が国家機関として最終的に国民に対する説明責任あるいは実施責任を負わなければならない、そういう意味では国家機関として検証主体とならなければならない立場にある。最終的に最高裁がどういった提言をここで行っていくか、あるいは結果を出していくかというのは、裁判官会議による、最高裁の裁判官会議による議事を経てということになるわけでございます。しかし、その過程において最高裁だけで、あるいは裁判所だけでいろんな結論を出せるものではなかろう、いろんな視点、あるいはデータの提供も受けなければならない。そういう意味で、この大きなプロセス、検証の大きなプロセスの中でシステムとしてそういった外部の方にお入りいただく、法曹二者に御協力をいただく、そして意見もちょうだいする、検討にも参加していただく、そういった場が必要であるというふうには思っておりますが、それが指名諮問委員会というような形のものとは少し違うのではないかなというふうに思っているわけであります。

井上哲士君

 形はどうあれ、いわゆる単にコメントを聞くというだけではなくて、一定の協議や議論をする場というものを恒常的に作って一緒に検証していくというものが作られるということだというふうに御答弁をお聞きをしております。

 いずれにしても、本当に国民の立場でしっかりとしたことが行われるということを改めて求めまして、質問を終わります。


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