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井上哲士ONLINE
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2003年7月10 日

法務委員会
刑法一部改正案 質疑、討論、採決
司法制度改革関連一括法案 質疑

  • 「刑法一部改正案」――海外にいる日本人に対する外国人の犯罪について、日本の刑法が適用できる本法案の、基本的問題について質問。
  • 「司法制度改革一括法案」――弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に反対し、公害訴訟などの当事者から意見を聞くよう要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 本法案は、海外にいる日本人に対する外国人による犯罪にも日本の刑法が適用できる、いわゆる消極的属人主義を採用をするわけです。先ほどの議論にもありましたように、かつてこの規定がありましたけれども、一九四七年の刑法改正でこれが削除をされた。先ほどの御答弁では、当時の国際情勢にかんがみてと、こういうことがございました。では、どういう情勢だったのかと。

 私、当時の第一回国会参議院司法委員会会議録第九号ということで、趣旨説明が行われておるのを読んでみました。こういうふうに書いているんですね。「憲法の改正によりまして、戦争放棄並びに国際信義、かような原則に基きましてこの規定は特別に我が国の特殊な保護主義を強く主張しておるというふうに見られましたので、この点を削除いたした次第でございます。」と、こう説明がされております。

 ですから、憲法が、新しい憲法ができて戦争放棄と国際信義ということが掲げられた、これに基づいて当時、この消極的属人主義が削除をされたと、こういう経過かと思うんですね。その経過と、今回これが復活をする、この関係についてどのようにお考えでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 御指摘の説明がなされております当時の参議院司法委員会における政府委員説明と同時期に行われました衆参両院の司法委員会におきます提案理由説明では、刑法改正の第二点といたしまして戦争の放棄及び国際主義に関するものが掲げられ、その一として戦争状態の発生及び軍備の存在を前提とする外患罪の規定を改めるとされておりまして、その二として国外規定である第三条第二項を削除をすることとされているのでございます。したがいまして、御指摘の戦争放棄にかかわるものは、戦争状態の発生及び軍備の存在を前提とする当時の外患罪の規定を改める部分と考えられます。

 当時の資料が乏しいために、政府委員説明において御指摘のような説明がなされた経緯については判然としておりませんが、日本国外で日本国民が外国人による犯罪の被害に遭った場合に、日本の刑法を適用するものとすることが直ちに戦争につながるものとは考え難く、したがって戦争放棄と当時の刑法第三条第二項の削除とは直接関係がないものと思われます。

 次に、もう一つの御指摘の国際信義の原則に基づいてといいますのは国際協調の精神を指すものと思われますが、いずれにせよ、当時の我が国の社会情勢及び我が国を取り巻く国際的な状況を背景に刑法第三条第二項が削除されるに至ったものであると思います。

 当時は、諸外国におきましても、こういう国外犯、外国人の自国民に対する罪に関する規定を置いている国が少なかったというふうに、少なかったのであります。しかしながら、現在は、国際的な人の移動が日常化し、自国民が自国外において犯罪の被害に遭う機会が増えており、一定の場合に国民に対する犯罪にかかわる国外犯処罰規定を設けることは、最近の諸外国の立法例においても多く認められるところとなっております。このような国際的な情勢の変化を踏まえまして、国民保護のための国外犯処罰規定を設けることは国際主義の原則等に反するものではないというふうに考えております。

井上哲士君

 衆議院での説明を基に今言われましたけれども、先ほど読み上げましたように、参議院での趣旨説明は明確に戦争放棄という文脈でこの規定の削除を説明をしております。私は、だからといって、今回の改正が憲法に反するということを言う議論をするつもりはないんです。やはり、当時の国際情勢をかんがみるといった場合に、日本がいろんな他国の主権を侵したというその反省というものが憲法にもあっただろうし、いろんな法改正の中に生かされてきた、そういう反省が込められているとして私は読むべきではないかと思うんです。

 そういう点でいいますと、今回の改正でもそのことは忘れられるべきでない。この改正によって他国の主権を侵害をする、こういう問題は出てこないんだと、こういうふうに聞いてよろしいですかね。

政府参考人(樋渡利秋君)

 結論といたしまして、御指摘のとおり、そういう懸念を持っておりません。

 本法案は、日本国外で日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法の適用を認めるものでございまして、外国での犯罪捜査の権限には何ら変更を加えるものではございません。

 したがいまして、従来どおり、事案に応じて外国に対し捜査共助を要請するなどして必要な証拠を収集し、犯罪人引渡請求を行って犯人を逮捕、処罰することとなるのでございまして、外国の主権と衝突することはないと考えております。

井上N士君

 越境化する犯罪対策での国際協力という点でも、そして人権の国際的な保障を支えるという点でも、犯罪カタログの統一などの刑法の国際化というものが進んでいるかと思います。もちろん、特定の国家や社会の基準を押し付けるということではなくて、共存のための地球市民的刑法とでも言うんでしょうか、途上国の利益をも考慮した尊重されるべき国際人権、それから非難されるべき国際犯罪、こういうものに関する国際的なスタンダードを作るべきだという議論があります。

 こういういわゆる刑法の国際化ということに対する考え方と、その中でこの今回の改正がどのように位置付けられているのか、その辺いかがでしょう。

政府参考人(樋渡利秋君)

 まず、世界各国の法制度が均一化いたしまして、いずれの国においても迅速かつ適切に処罰がなされる社会が実現したとするならば、処罰の確保という意味におきましては、外国において自国民が被害者となった犯罪につきまして、自国の刑法の適用を認める必要性が減少するということは言えなくもないというふうに思うわけでございます。

 しかしながら、現在のところ、そもそも各国の法制度は均一であるとは言い難く、必ずしも犯罪地国において適切な刑罰権の行使がなされるとは限らないところ、日本国外で日本国民が生命・身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合におきましても、我が国の刑法をおよそ適用できないとすることは、国民の保護の見地からも妥当であるとは言い難いのでございまして、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定を整備することが急務であるというふうに考えた次第でございまして、先生御指摘の問題との位置付けという関係では、なかなかストレートにお答えすることもできないのでございますけれども、要は国際主義、国際協調を重視いたしましても、やはりその被害を受けた方が現実におられて、それが何らどこの国でも処罰ができないと、あるいは処罰をされるような方向に向いていないという場合に、そのものを是正するような根拠規定を持っておくことは必要であろうというふうに考えている次第でございます。

井上哲士君

 それでは、法案そのもので幾つかお聞きをいたしますけれども、今回のこの立法の契機になりましたのが TAJIMA 号事件なわけですが、これ以外にこういう規定がないがために犯人を処罰できないということで問題になったようなケースがこれまでにあったでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 TAJIMA 号事件のような事件がこれまでにも発生していた可能性はございますが、我が国の刑法が適用されず、刑罰権を行使することができないという問題が顕在化したという事例は当局では承知しておりません。

井上哲士君

 そうしますと、当初、便宜置籍船内の犯罪のみに対応するという動きもあったのが、こういうふうに外国一般に広げる改正になったのは一体なぜでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 これは、先ほども大臣の方からお答えいたしましたように、刑法改正草案の法制審議会の審議の中でも、二十二年でしたか、そういうふうに削除された部分を復活させるような考えがあったわけでございまして、それが不幸にも法案自体が提出されなかったという経緯があるわけでございますが、その後も当局といたしましてはその問題は真剣に検討しておったのでございますが、いかんせん、刑法の総則規定の改正でございますから慎重に検討を進めておったという経緯でございます。

 近時、先ほど御説明いたしましたように、国際的な人の移動が日常化し、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増え、特に殺人や誘拐、強盗等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくない。そのような中で、いわゆる TAJIMA 号事件のように犯罪地国において必ずしも直ちに適切な刑罰権の行使がなされないような事例もございましたことから、日本国外において日本国民が生命・身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法をおよそ適用できないままにしておくことは国外にいる日本国民の保護の見地からも妥当であるとは言い難いと。そこで、日本国民の保護の観点から、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定につきましては、緊急にその整備を行う必要があるというふうに考えた次第でございます。

井上哲士君

 今御紹介にありました一九七四年のときの改正刑法草案ですが、このときもこの消極的属人主義は取り入れられたわけですけれども、その行為地の法律によれば罰せられないものであるときはこの限りではない、こういう双罰規定が当時の草案にはあったかと思います。

 先ほど、今回はこれを採用しなかったというお話があったわけですが、なぜ七四年の時点では採用したものを今回は変えたのか、そこの理由はどういうことなんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 本改正も刑法改正草案第六条第二項も日本国外で日本国民が犯罪の被害に遭った場合に我が国の刑法の適用を認めようとするものでございまして、この種の国外犯処罰規定として刑法改正草案と同程度の範囲の犯罪を対象犯罪とすることも考えられないではございませんが、国民保護の見地から緊急に行う本改正におきましては、日本国外での日本国民の犯罪被害の実態等を踏まえた一定の重大な犯罪に限るとしたものでございます。

 この対象犯罪を広げますとやはり双罰主義という考え方も大きくクローズアップされることもあり得るでありましょうが、そうではなしに、今回その対象犯罪としましたものは、およそどこの国でも犯罪になっているものだ、犯罪にされるものだというふうにも理解できるところでございまして、先ほど説明しましたような事由から双罰主義の必要はないというふうに考えた次第でございます。

井上哲士君

 先ほども議論があったわけですが、実際、この刑法を海外で日本人に犯罪行為を行った外国人に適用するという場合に、相手国内での、行為地での刑罰が我が国よりも相当軽いという場合も出てくるかと思うんですね。そうした場合に、犯罪を犯した外国人はこれほど重い罰だという認識がなくて起こしたということもあり得ようかと思うんです。そういうときには、実際の裁判の場面ではどのようにこれが考慮をされることになるんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 具体的な裁判の場面では量刑は裁判所が様々な事情を考慮してお決めになることでございましょうから、刑事局といたしまして一概に申すことはできないわけでございますが、犯罪地国で軽い法定刑が定められていること一般が裁判における量刑において被告人の有利に考慮されるわけではないというふうに思われますが、例えば、御指摘のように、犯罪地国において当該行為に軽い法定刑が定められていることが行為者の規範意識に影響を与えたような特別な事情がある場合には、これが情状として考慮されることも、それはあり得るというふうに思っております。

井上哲士君

 次に、犯人の引渡しを求める相手国の刑罰の方が日本の国内法の刑罰よりも低いという場合に、それを理由に犯人の引渡しを断られるということもあり得ると思うんです。先ほども議論になりました、死刑制度のない国に日本が犯人引渡しを求めた場合に断られると、こういうこともなりかねないと思うんですね。

 過去、こういう例がありましたでしょうか。その点どうでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 お尋ねの事案といたしましては、近年では、例えば平成四年、外国人が日本人女性を東京都内で殺害した、殺害して国外に逃亡し、スウェーデンで発見されたという事案につきまして、我が国から引渡請求を行いましたところ、スウェーデン政府が引渡しを拒絶した例がございます。スウェーデン政府が引渡しを拒絶した理由は、同国の犯罪人引渡法上、引渡犯罪者が請求国で死刑に処せられないことの法的拘束力ある保証が必要であるところ、本件においてはこの保証が満たされないと判断したことによるものと承知しております。

井上哲士君

 その結果、引渡しが行われなかったことになるんだと思うんですが、そうしますと、その犯人はその後、どこで、どのように処罰を受けたのか、受けなかったのか。どうでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 スウェーデンでは代理処罰主義を取っているということがございまして、当該犯罪人は、スウェーデン政府により訴追の上、処罰されたものと承知しております。

井上哲士君

 代理処罰主義というのがあったので、結果としては処罰をされたということであります。

 今後、この今回の改正刑法の規定を使うということになりますと、今の例のように日本における死刑制度の存在というのは大きな問題になってくることかと思います。先ほど刑法の国際化ということについても議論をしたわけでありますが、世界を見渡しますと、今、死刑廃止というのが大きな流れになっておりますし、いわゆる先進国で死刑制度を採用しているのは日本とアメリカの幾つかの州と、こういう状況になっておりますし、国際人権規約委員会も、九三年、九八年に我が国政府あてに死刑の廃止に向けた措置を取ることなども勧告をしているという状況があります。

 国際的な人権保障という観点から見ましても、刑法の国際化ということから見ましても、この機にやはり死刑制度自体の見直しが必要ではないかと思うんですが、この点で大臣の御所見をお願いをいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 死刑の問題が国際的な関心を呼んでいるということはよく承知しております。しかし、死刑の存廃につきましては、基本的にはそれぞれの国におきましてそれぞれの事情を踏まえて独自に決定するべき重要な刑事政策の一つであろうと思います。

 死刑の存廃は我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題でございますから、国民世論に十分配慮しながら、社会における正義の実現等の種々の観点から慎重に検討すべきことだと考えておりますが、我が国では国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対する殺人とか誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況でございますので、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ない、死刑を廃止することは適当ではないというふうに考えております。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私からも、まず長崎の少年事件について大臣にお伺いをしたいと思います。

 朝も、大臣として、また政治家として、また孫を持つ一人の人間としての御所見もございました。私も小学校三年の娘もおりますし、斜め向かいにはちょうど中学校一年生の男の子もおりまして、大変なショックでこの事件を受け止めました。

 繰り返しになりますけれども、まず、この事件への受け止めをまずお願いをしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 先ほども申し上げましたように、大変、何と言ったらよろしいか、言葉を探すのが大変難しい複雑な気持ちでございます。

 四歳で亡くなられた駿ちゃん、本当にかわいそうだったし、心から御冥福を祈りたい。親御さんのお気持ちはどんなものかということを想像いたしますと、本当に胸がつぶれるような思いでございますし、また加害少年が十二歳ということで、さらにもう一つびっくりしたわけでございまして、私の周辺にいるそのくらいの年ごろの子供たちを見ておりますと、まさかそんなことがと信じられないような気持ちでございまして、それが本当にそうだったとすれば全く大きなショックでありまして、何とかできる方法があるのかしらと思いながら、具体的にはいいアイデアが浮かんでこないというような茫然自失の状態でございます。

 法務省といたしましては、先ほども申し上げましたが、少年法の刑事手続の対象とはならない年齢でございまして、触法少年ではもちろんありますけれども、どういうふうに法務省がかかわるか、恐らく今の状態では余りかかわるべきことはないのかもしれませんが、教育とか家庭の問題とか児童福祉とか、その他いろんな面で必要なことがあるのかもしれないと思いながら、どうすればいいのか、本当に途方に暮れるような気持ちでございます。

井上哲士君

 こういうショッキングな事件がありますとすぐに少年法改正などの議論が出てくるというのは、私は大変危険だし、慎重に見なくてはいけないことだと思っております。どういうことが必要なのかということを明らかにする上でも、直接的な動機はもちろんですけれども、本人の成長歴とか家族関係とか、そういう背景の解明ということにまず力を注ぐということが再発防止の上でも大変重要だと思うんですけれども、その点、いかがお考えでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 それはおっしゃるとおりだと思います。どのくらいその調査が進んでいるのか分かりませんし、現在では一般にはこれという詳しいことは公表されておりませんので何とも申しようがございませんけれども、家庭裁判所その他を経て、そのような必要な事実が明らかになって、今後の対策にもプラスになっていけばと思います。

井上哲士君

 それでは、この一括法についての質問をいたします。

 まず、今も議論になっておりました弁護士資格の緩和の問題です。

 この法案で、弁護士資格の特例を拡充をして、司法試験合格後国会議員五年以上やった者、これは司法修習なしに弁護士になれる、また、いわゆる特任検事、司法試験に合格をされていないにもかかわらず、これも経験五年以上で弁護士になれるということが盛り込まれています。

 今後、ロースクールが立ち上がりまして、法曹人口を大幅に増やす、こういう方策が進んでいる、そういうさなかになぜあえてこういうふうに弁護士資格の特例というものを拡充を図る、その必v性が一体どこにあるのか、この点、まずどうでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、このたびの司法制度改革におきまして、法科大学院を中核といたしますプロセスとしての法曹養成、法曹養成制度、この下で法曹人口の拡大を図ろうとしているわけでございますけれども、これは、やはり弁護士の果たすべき役割が増大をしていく中で、多様で広範な国民の要請に十分こたえ得るように、多様なバックグラウンドを有する層の厚い法曹の確保を目的とした、こういうものでございます。

 やはり、今後の社会を見た場合に、仮に司法試験に、法科大学院を出て司法試験に受かってもすぐに修習に行かなくていろんな社会で活動される方、そういう方が増えてくるだろうと、こういうことを一応視点に置いて考えたことは間違いございません。

 ただ、じゃ、それは将来だけの問題かということでございまして、それは現在だって、法制上、司法試験は受かったけれども研修を受けなくても法曹資格がもらえるという制度があるわけでございまして、これもやはり一種の、その仕事をやることによって必要なリーガルマインド、これが備わっていると見る、そういうことから法曹資格を与えるわけでございます。そういうことを考えますと、現在の制度の下でもそういう法曹資格、いわゆるリーガルマインドが備わった方がいないか、こういう目で見ていったわけでございます。

 まず、国会議員の先生方でございますけれども、先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、やはり様々な事象に法律を当てはめていく、あるいは解決をしていくと、これは正にリーガルマインドそのものでございます。これを中心にお仕事をされているということになるわけでございます。こういう点は、研修を経なくてもそういう解決能力、これが備わっていくということから、法曹資格を認めるというふうに考えたわけでございます。

 それから、特任検事、先ほどちょっと御説明をいたしましたけれども、司法試験に受かっていないと、確かにそのとおりでございます。ただ、政令に基づく試験と先ほど私、申し上げましたけれども、憲法、民法、商法、刑法、刑事訴訟法、検察実務、これが必須でございます。それ以外に、選択といたしまして民事訴訟法、それから法医学、刑事政策、この中から一つを取れ、こういうような試験でございます。

 個人的な経験で恐縮でございますが、私は司法試験委員も検察官特別考試の委員も両方やっております。このやった経験から申し上げれば、ほとんど、検察官特別考試の試験のやり方につきましては司法試験のやり方と全く同じ発想で進めているということでございまして、ここで相当な能力が試されているというふうに理解をしております。その上に実務を行っているということで、ニアリーイコールだろうということでございます。

井上哲士君

 一発試験では駄目だからプロセスとしての養成を必要だと言っているときでありますから、今のような御説明ではとても私は納得がいきません。

 それで、多様で広範な国民の要請にこたえられるように多様なバックグラウンドを持った人をと言われましたけれども、それじゃ今回のような特例の拡充について、具体的に国民のどの分野からどんな要請があったんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは具体的にどこかからあったということではなくて、やはり今後の社会を考えていったときに、それぞれいろんなバックグラウンドを持った、それぞれに強い分野を持った弁護士さんたち、これが社会にたくさん出てほしいということでございます。それを念頭に置きながら、現在だってそういうジャンルの方はおられるではないか、それもやはり資格をきちっと与え、将来にもまた備えましょう、こういうふうに考えたわけでございます。

井上哲士君

 要するに、特に国民的要請はなかったけれども、検討会でそういう議論をしたんだ、そういうことなわけですね。

政府参考人(山崎潮君)

 国民的声といえば、ここの私どもの前身でございます司法制度改革審議会、ここでも様々な議論が行われまして、その中で声が上がったということでございまして、それは一つの国民の声というふうに理解できるわけでございますが、その流れを受けて私どもの検討会で検討をした、こういうことでございます。

井上哲士君

 推進本部の検討会には様々な分野でいろんな声が直接上がっておりますけれども、なかなかそれが検討に生かされていないんじゃないかという声をお聞きしますけれども、この分野だけは国民の直接の声がなくても進めるというのはやはりお手盛りというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 プロZスとしての法曹養成ということでロースクールが立ち上がるわけですが、社会人入学など、様々な経歴を持った人も入ってくる、そういう人が法曹資格を取るということが今期待をされている。そういう場合であっても、やはり三年間ロースクールに行って、そして司法試験を受けて、さらに修習を受ける、こういうプロセスとして養成をしてこそ本当に高度な専門的知識と同時に様々な幅広い教養、そして十分な職業倫理を持った法曹をつくれるんだという、こういうプロセスを重視しているというときに、今回のように特定の者だけ言わば近道を作るというのは、やはり今回の、今の司法制度改革全体の理念、そして公平、公正、透明性、こういう理念からいっても私は反すると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 先ほどから御答弁させていただいておりますが、制度としては将来を見据えたプロセスとしての法曹養成、これを念頭に置いていることは間違いないということでございます。

 しかしながら、先ほど来ちょっと申し上げておりますけれども、じゃ現在そういう方がおられるのをどうするかという問題でございます。確かに、法科大学院で三年間教育を受ける、これも大変重要なことでございますが、そこで得られるものは実社会の中で得られないかということでございまして、あるいは修習でやること、これが実社会の中で得られないかというと、そうではないだろうということでございまして、いわゆるリーガルマインド、物事に接してこれをどうやって解決していくか、これが一番のポイントでございますが、これは社会の活動の中で得られていくものでございます。

 そういう点に着目をいたしまして、そういうことの基礎がある方については研修を行わないで法曹資格を与える、こういうことでございます。

井上哲士君

 繰り返しの説明がありましたけれども、しかし実際のやはり経過を見ましても、そして国会議員でいいますと五年以上という経験でありますけれども、そこでの中身を見ましても、今言われたような御説明ではとても納得のできるものではありませんで、やはりお手盛りと言う以外にないし、司法制度改革全体への国民からの信頼という点でも、大変私は、これを傷付けるものだということを指摘をしておきます。

 その上で、裁判所へのアクセスの拡充というのが司法制度改革全体の大きな課題でありますし、本法案でも簡易裁判所の管轄の拡大や、利用者の費用負担の軽減などが提起をされております。

 このアクセスの拡充という観点から、現在、司法アクセスの検討会で議論をされております弁護士報酬の敗訴者負担制度についてお聞きをいたします。

 この問題は、そもそも審議会の俎上に上ったときから、法律の関係者、裁判の原告の皆さん、労働団体や消費者団体等、国民各層から、裁判提訴を萎縮させるものだ、こういう世論が巻き起こりました。ですから、当初、審議会の中間報告では、基本的に導入する方向で考えるべきとされておりましたけれども、最終の意見書では、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて、この制度の設計に当たっては、不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなくと、こういうふうに表現を変えざるを得なくなったという経過です。ところが、この間の検討会の議論を見ておりますと、こういう経過、そして最終意見書の基本認識をも無視をしたような議論が見られますし、委員の一部から大変重大な発言も出ております。

 そこで、まずお聞きをしますけれども、審議会意見書の基本認識というのは、市民の司法アクセスの拡充という方向性であって、そういう観点からのこの問題の提言なんだ、こういうことを確認できるでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは審議会意見書でもまとまっているところでございますけれども、ここを若干読ませていただきますけれども、勝訴しても弁護士報酬を相手から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平を図って訴訟を利用しやすくする見地から、この制度を導入すべきである、こういうような記載になっております。

 ここで言っている内容は、弁護士報酬の負担の公平化を、これを図りながら、利用者の費用負担を軽減することによって裁判所へのアクセスの拡充をするという観点から導入を提言している、こういうふうに理解がされるところでございます。

井上哲士君

 公平を図りながらという文言が付いておりますけれども、その上で目的はアクセスの拡充をどう図っていくのか、こういうことが今の審議会意見書でも示されている見解だと思います。

 実際、審議会の会長で、今、推進本部の顧問会議の座長をされトいます佐藤幸治さんも、いろんなところで発言をされておりますけれども、この弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについての議論は、この「司法制度改革」という本の中でも、元々裁判所へのアクセスの拡充を図ろうという文脈で出てきた、こういうふうに明確に言われておりまして、いわゆる公平性という文脈で出てきたものではないことは明らかです。

 やっぱり我が国の司法制度の改革にとって何よりもアクセスの拡充ということが求められておりますし、当然、敗訴者負担制度の検討についても、広範な市民にとって裁判へのアクセス拡充につながるかどうか、このことを基本に検討をしなくてはならないと思いますけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 先ほど私、申し上げましたように、費用の負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から導入するということになるわけでございますけれども、この意見書の記載では、これと、これに続いて、この制度の設計に当たっては、上記の見地と反対に不当に訴えの提起を萎縮させないように、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱い、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について検討すべきであるということをうたっておるわけでございます。

 ですから、そういう意味では、負担の公平という問題とアクセスと、両方を述べているということでございます。

井上哲士君

 公平性という問題は後ほど議論をしたいと思いますが、少なくとも、司法のアクセスの拡充ということが検討の大きな柱の一つだと、大きな柱だということは今認められました。

 それで、先ほど佐藤会長の言葉を引用しましたけれども、これ衆議院の法務委員会での質問に答えられまして、こういうふうに言われています。

 どうも原則導入、例外はわずかというように受け取られて、私どもの真意とちょっと離れた受け止め方をされたなという反省がございまして、最終的に意見書で、一定の要件の下で導入する、しかし一律に導入はしませんよ、それで、その範囲についてはいろいろ考えなければならないと、こういうふうに衆議院で述べられました。要するに、原則導入、例外はわずかではないんだと、こういうことであります。

 いわゆるこの制度導入による萎縮効果というのが、何か特別の例外的な訴訟に起こるわけではなくて、広い範囲に起こるおそれがある。ですから、それをやはり広く検討しなくちゃならないんだと、こういう立場はよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 考え方はそれぞれいろいろあろうかと思います。人によって考え方は違うのかもしれませんけれども、私どもの検討会では、そこのところは意見書に従いまして、それじゃ、本当にそういう萎縮が起こるようなものについてどういうジャンルがあり得るのかということを今、何というんですかね、一つ一つ検討をしているという段階でございまして、まだ最終的にどのような範囲になるか等、全く今のところは定まっておりませんけれども、それはその趣旨を踏まえながら今検討中であるということでございます。

井上哲士君

 その趣旨を踏まえながらというのは、先ほど佐藤さんのお言葉も紹介しましたけれども、いわゆる原則導入、例外わずかということではないんだと。やはり全体の訴訟類型、やっぱり一つ一つ検討して、見ていかなくちゃいけないんだと、こういう立場でよろしいわけですね。

政府参考人(山崎潮君)

 どれが原則、例外と、そういうアプリオリなことを立てないで、じゃ本当にどういう場面においてそういう問題が起こり得るのかというところを、今、客観的に検討を加えているというところでございます。

井上哲士君

 原則導入、アプリオリではないんだという答弁でありましたから、やはりそれぞれの訴訟類型について本当に萎縮効果が起きないかどうかということを見ていく必要があります。

 ですから、訴訟類型のそれぞれについて、この司法アクセスが拡充をされるのか、それとも抑制的になるのか、萎縮効果を生むのかと、しっかり検討をしていくことが必要ですが、それでは、こういう観点からの検討会での今の検討状況、そして今後の予定というのはどういうふうになっているでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 検討のその状況としては、一つは、仮にこれ導入をするという場合に、その敗訴者の負担とすべき額の定め方という論点が一つございます。これは意見書でも、全額ではなくその一部ということを言っておりますので、それはどういう範囲なのか、どういうことを基礎に考えるのかとい、のが一つの論点でございます。それからもう一つは、敗訴者負担を導入する範囲、導入しない範囲と、こういうところで幾つかのジャンルに分けて今議論をしているということでございます。

 予定でございますけれども、現在、私どもこの議論を進めておりますが、この議論を進めている現状をもって意見募集をしたいというふうに考えておりまして、そう遠くない時期に、議論のいろいろな意見がありましたものを記載をしましてパブリックコメント、これに付したいというふうに考えております。今月としては、今月の二十三日に検討会が予定されておりまして、その状況でパブリックコメントをしたいと、こういうふうに考えております。

井上哲士君

 この敗訴者負担を導入するかしないかの範囲の議論というのは、いろんな訴訟類型ごとに一定の検討をこの間されていると、こういうことでよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 類型に分けて議論がされているということでございます。

 類型について御説明する必要がございますか。──はい。

 一つの類型は、行政訴訟ということでございます。これは、純粋に行政訴訟なのか、国、地方公共団体が当事者の事件というのか、そこの範囲の問題がございますけれども、行政訴訟というもの。それから労働訴訟、それと消費者訴訟、それから人事訴訟、それ以外には公害、薬害、医療過誤等と、こういうようなジャンルで今のところ議論をしているという状況でございます。

井上哲士君

 その議論の中で、例えば消費者訴訟、それから労働者と使用者という、こういう労働訴訟、こういう分野にもこれ導入すべきだと、こういうような意見は出ているんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 消費者契約については、これは導入すべきでないという意見で、これ導入すべきであるという意見は今のところ、現在は聞いていないということでございます。

 それから、労働の関係でございますが、これは二つの態様がございまして、使用者と労働者の関係ですね、これの事件につきましては導入すべきではないという御意見がございました。もう一つの態様としては、使用者と組合との間の訴訟、これについては意見が分かれたと、こういう状況でございます。

井上哲士君

 議事要旨も読ませていただきましたけれども、萎縮がどうなるかという角度からの突っ込んだ議論がまだ見られていないというのが率直な感想であります。

 逆に、今もありましたけれども、例えば使用者と労働組合との間の訴訟というのは、組合がそれなりのバーゲニングパワーを持っているという前提なので、必ずしも敗訴者負担を導入しない範囲としなくてもよいという気がする、こういう発言が出ております。それから、交通事故も公害も薬害も、敗訴者負担を導入してもよいのではないか、こういう発言もあったと議事概要にありました。

 しかし、先ほども言いましたように、当初の審議会の中間報告ですら、労働訴訟とか少額訴訟など、敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟はその例外とすべきだと、こういうふうに言っていたわけですね。

 やはり、個別の訴訟の掘り下げた検討なしに、ここは導入してもいいんではないかというような、こういう議論は私は非常に不見識な議論だと思っているんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 今、事務局は、この段階でその議論がどうだこうだということについては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これオープンな検討会でございます。その検討会の中でいろいろ御議論があるということ、これ自体は否定することはできないわけでございまして、私どもとしては、自由な御議論をいただき、それからいろいろな声をお聞きして、最終的にどのように判断していくかということは今後の検討であるというふうに認識をしております。

井上哲士君

 私も自由な議論を決して否定するものではありません。大いにしていただくことが必要かと思うんです。しかし、議論をする上では、やはりこの審議会の意見書が示した、やはり司法アクセスをどう進めていくのかという、この観点での議論が必要でありますし、そして国民の権利、人権に深くかかわっているわけですから、現場の実態ということを踏まえた議論をしていただかなくては困るんですね。

 例えばこんな発言もありました。公害・薬害訴訟は勝ってきている訴訟じゃないか、提訴の際にちゅうちょするという話は分かるが、勝訴すれば弁護士報酬を相手から取れるということになれば提訴促進になる場合もあるのではないかと。これは、公害訴訟をやっている皆さんからいえば、これまでどれだけの努力をして、どれだけの被害者がその途中に亡くなられてきたのか、そういうことを見ずにこういう発言が出る、大変怒りの声も聞いておりまして、公害裁判の関係者の多くはやはりこの制度に反対をされております。

 この点で、検討会では別の委員も発言をされていますけれども、こういう公害とか薬害とか環境という裁判は、正に新しいタイプの訴訟で、勝てるか負けるか分からないと。最初から、負けたら二人分の弁護士費用を払うということになるならば、裁判にならなかっただろうと言われておりますし、例えばあの「もんじゅ」の裁判にしましても、二十一連敗した後にやっと勝ったという発言もされております。こういう本当の実態や現場の皆さんの苦労を御存じの上での議論がされているんだろうかということが私は疑問なんです。

 検討会にはいろんな資料は出されているそうでありますけれども、やっぱり直接声を聞いていただくということが大事だと思うんですね。それぞれの訴訟類型ごとに訴訟当事者から直接ヒアリングをすべきだと思いますけれども、この点の計画はどのようになっているでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 先ほども申し上げましたけれども、そう遠くない時期にパブリックコメントをさせていただきたいと思っております。ですから、これはジャンルは物すごいいろんなジャンルが、訴訟でございますから、ありますし、それに関係している方はおられると思いますが、是非、そのパブリックコメント、これ、オープンでございますので、そこに意見をお寄せいただきたいというふうに思います。

 私どもの方として、そのような意見をいろいろ集約いたしまして、その上で議事、今後の議事をどのように進めていくか、それを検討会に諮ってやってまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 パブリックコメントは必要でありますけれども、やはり文書ではなくて訴訟を闘ってきた方の生の声、その息遣いを聞いていただくということがどうしても必要だと思うんです。

 この弁護士報酬の敗訴者負担に反対する全国連絡会が八十万筆の署名を検討会に提出をされておりますけれども、この中でも直接のヒアリングというのを強く求めておられます。先日、十一できています検討会の検討状況というのを見させていただきましたけれども、十一のうち八つの検討会が何らかのヒアリングを既に行っておられますが、このアクセス検討会は一度もやっておられませんし、いわゆる顕名の公開というのも一番遅れた検討会になりました。本来、検討されている中身の性格からいいますと、最も国民の声を直接聞くべき検討会だと思うんですね。

 先ほど言われたように、パブリックコメントでやって、大枠整理をして絞って聞くというようなやり方ではなくて、私はまず、こういう大きな影響を及ぼすものでいいますと、確かにジャンルは広いかもしれないけれども、それだけ影響大きいわけですから、やはり、まず実態に即した検討が必要な課題でありますから、ヒアリングをまず行っていただきたいと思いますけれども、その点、改めてどうでしょう。

政府参考人(山崎潮君)

 今、検討会の運営でございますので、事務局がどうこうということは言えないわけでございますが、今、井上議員の方からいろいろ御意見ございました。そのような点も踏まえまして、どのような方法があり得るか、どういうことをやったらいいのか、よく考えてみたいというふうに思います。

井上哲士君

 是非、早期のヒアリングを改めて求めておきます。

 この検討会の中の議論の中である委員の方が、公害訴訟というのは、多くの犠牲の下に裁判に勝てるようになって法律も整備をされてきたと、こう言われております。個人の救済と同時に、法創造的機能を持つ、いわゆる政策形成訴訟についてまでこの敗訴者負担が導入をされるというのは、本当に論外だと思うんです。

 雇用における女性の差別問題でも同様のことが言えまして、最高裁で勝利和解した芝信用金庫の女性差別裁判の訴訟当事者はこう言われております。もし敗訴したら金庫側の弁護士費用を払わされる可能性があると言われていたら、八割が訴訟をやめるか訴額を減らすと、正にこの敗訴者負担制度が大変な萎縮効果を生むということを言われているわけですね。

 大臣は、この芝信の原告が勝利和解したときにお会いになったと思います。そして、長い間御苦労さまでしたというふうに激励をしていただきました。男女平等ということを切り開いてこられた大臣にこの点で所見を伺いたいんですが、こういう女性差別裁判の提訴に萎縮効果を及ぼすような、こういうような制度導入はあってはならないのではないか。同時に、この芝信の皆さんのアンケートなどを見ておりますと、自分たちは個人ではなくて組合として提訴したと考えていたと、こう言われております。これは労働裁判の中でも、労働者対使用者という裁判だけではなくて、労働組合対使用者という裁判の枠組みであっても萎縮効果を与えるということをこの発言は私は示していると思うんですが、こういう萎縮効果をこういった裁判に及ぼすことがあってはならないと思うんですけれども、その点での大臣の御所見をお願いをいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 芝信の皆さんに私もお目に掛かりまして、大変御苦労であったということを申し上げたことを記憶しております。本当にあの時代のことを考えますと、今とは更に違っておりましたから、最初、訴えられるときに非常な勇気も要ったし、相当の覚悟でおやりになったことだと思いますが、それが長い時間掛けて、ようやく願いがかなったということで、本当に御苦労さまだったと思うわけでございます。

 しかし、政策形成訴訟と呼ばれるものがどういうものかということは様々ないろんな見方があると思いますけれども、そこで一概に申し上げることは難しいわけでございますが、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いにつきましては、今、事務局長がいろいろ御説明申し上げましたように、検討会において検討していただいているという段階でございますので、今、先生からお話が出たようなことも検討会のメンバーの皆さんにお取り次ぎいたしまして、検討会の十分な検討を期待するというふうに私も考えております。

井上哲士君

 本当にこの裁判だけでなくて、住友ミセス裁判も始めとしまして、女性の雇用差別の裁判というのは大変な御苦労の中で長期の裁判を闘っていらっしゃって、それがやはり雇用における男女の機会均等の前進に大きな力になってきた。これが本当に萎縮するようなことは絶対にあってはならないということを改めて申し上げておきます。

 次に、公平性ということが言われました。確かに審議会意見書でその言葉は出てきますが、その負担の公平を図って訴訟を利用しやすくする見地からと、こういう文脈で言葉が出てまいります。公平という言葉を使っていますけれども、やはりその意味は、公平を図ることによって司法アクセスを促進をさせようということを述べています。ですから、あくまでも司法アクセスの寄与につながる公平を言っているのであって、司法アクセスの促進化、萎縮化、こういう点での公平性というのは検討されるべきでありますけれども、これとは無関係のところでの公平性ということの議論というのはやはり審議会の意見書のらち外になると思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、このくだりは司法アクセスの中でうたわれていることでございますので、費用の負担の公平化ということですね、これとやはり司法アクセス、これが結び付いているということでございます。

井上哲士君

 正に、この公平性というのが司法アクセスと結び付いた議論だということは今確認をいたしました。

 この司法制度改革の審議会に先立ちまして、平成九年に民訴費用制度等研究会報告というのが出されております。十二回にわたる検討が行われまして、公平論とかそれから権利目減り論とか様々な敗訴者負担にかかわる賛否の議論が尽くされて、その上で、いまだ導入の時期にあらずと、こういう結論を出しております。

 この結論と今の議論とはどういう関係になるんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 その研究会の取りまとめのとき、たしか私が司法法制部長だったと思いますけれども、それはその当時の認識でまとまっていることでございまして、それもまた踏まえながら、そういう研究の成果も踏まえながら改革審議会において議論がされてきたわけでございまして、それはこの見方はいろいろな考え方があるわけでございます。そういうことから、やはり時代の背景、こういうものを踏まえながら今回の意見が取りまとめられているということだろうと思います。必ずしも絶対のものではないというふうに理解をしております。

井上哲士君

 このときの研究会報告でも、例えば法律扶助などが非常に諸外国と比べましてもけた違いに少ないことなども含めまして、様々なほかの制度との関係を含めて検討することが必要だということが言われているわけであります。

 日弁連なども諸外国のいろんな制度の調査もされておりますけれども、敗訴者負担というのが訴訟の抑制効果がやっぱり非常に強いと。仮に、導入している国でも、一方で経済的弱者のための法律扶助を非常に充実をさせている、こういうことも報告をされておりますけれども、我が国はこの法律扶助の制度もけた違いに少ないという状況があります。

 そもそも司法というのは、立場によっていろんな異なる多義的な調整システムでありますから、だれにでも公平なルールというのはフィクションとも言えることだと思うんですね。紛争解決のルール自体が社会的対立者間の綱引きの妥協の産物的なところもあるわけでありますから、強い方は形式的なルールを望んで、弱い方は実質的な公平ルールを望んでいくという問題があります。

 今回の弁護士の敗訴者負担というのは、司法ルールとしてのやはり形式的な公平というものを貫かれようということになりますので、そうなりますと、本当に弱者にとっての実質的な公平というものが阻害をされることになる。

 そういう点でも、この検討会で、国民のための司法アクセスの拡充という角度から徹底した議論をするし、直接の声もしっかり聞くということを改めて求めたいと思いますけれども、その点でもう一度、事務局長からお願いをいたします。

政府参考人(山崎潮君)

 議論は徹底してやりたいというふうに思っております。

 また、国民の声を聞く方法につきまして、先ほどもちょっと、どういう方法があるか検討してみたいというふうに申し上げましたけれども、とにかく、どういう形かは別として国民の声を聞くこと、これが大変重要であるということは十分に認識をしているというところでございます。また、もう少し検討会を進めて、最終的な結論に向けてやっていきたいというふうに思っています。

井上哲士君

 様々な訴訟関係者の直接のヒアリングも含めて、本当に国民の声をしっかり聞いて、間違いのない結論を出していただきたいということを改めて強く求めまして、質問を終わります。


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