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2004 年 4 月 20 日

法務委員会
電子公告制度導入のための商法改正案


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 電子公告制度の導入は、大多数の投資家や債権者等の利害関係人にとっては公告に接する機会を、そしてまた利便を実質的に増やすことになると思います。私たちも今、あの新聞記事どこ行ったかというときには、新聞をめくるよりもまずインターネットでの検索を行うということでありますから、これは大変利便性は向上すると思います。ただ、今もそれぞれの委員からありましたように、一部お年寄りなどにとってはこれが逆に情報へのアクセスを阻害をすることになりかねないということがあろうかと思います。

 二〇〇〇年の一月に「規制緩和推進三か年計画の改定作業状況」というのが中間公表をされておりますけれども、それを見ておりますと、関西経済連合会から出たインターネットによる公告の掲載という要求に対して、当時の法務省は措置困難だというふうにここで答えております。理由としては、「閲覧するためのコンピューター機器、閲覧ソフト等の入手、プロバイダーへの加入等が必要となることに加え、コンピューターの普及率が十分とは言えないことを考えると、直ちに誰でもが容易に情報を入手し得る状態に置かれたと見ることは困難である。」と、こういうことを当時言われております。

 今、導入が可能になったと判断をされたわけですけれども、その根拠、そしてどういう状況になった上でそれをお考えかと、まずお聞かせください。

政府参考人(房村精一君)

 平成十二年一月の規制緩和推進要望に対する回答でございますので、この回答した時点でのインターネット普及率に関する統計は平成十年末のものでございます。この平成十年末のインターネットの普及率を見ますと、全人口普及率では一三・四%、それから企業について見ますと、三百人以上の企業は八〇%でございますが、五人以上の事業所についての普及率は一九・二%、世帯の普及率は一一%ということで、これは当時の認識といたしましてはやはりまだまだコンピューターの普及率は十分と言えないと、こういうことでおっしゃるような意見を出したわけでございます。

 だが、これが現在は、先ほども申し上げましたが、比較をいたしますと、十五年度末では人口普及率が一三・四%から六〇・六%まで上がっております。また、企業は、三百人以上の企業が八〇%から九八・二%まで、そして五人以上の事業所については一九・二%から八二・六%へ、世帯普及率が一一%から八八・一%へと、これだけ大きく伸びておりますので、やはり私どもとしては、平成十二年当時ではやはりインターネットというのはまだまだ国民の間に普及していないと、こういう認識でございましたが、その後の利用環境をめぐるこれだけの劇的な変化がございましたので、今回はそれを踏まえて電子公告制度を導入するということにしたわけでございます。

井上哲士君

 正に劇的な普及が進んだわけでありますが、しかし、わずかであってもやはりこういう情報に接することがしにくい方々への手だて等、最終的には会社が選択をすることになるわけですけれども、是非ここの手だて等もお願いをしたいと思います。

 この制度で、先ほどもありましたように、認証機関が非常に大事になります。ただ、これ登記の前提になるのが認証でありますから、本来これは国が直接的に負うという考え方もあったと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、国が行うということも考えられないわけではありませんが、しかし、この調査の内容は、その掲載された公告のホームページにアクセスをいたしまして、その情報を取って、あらかじめ届けられているものと対照して一致しているかどうか、しかもその記録を残す、こういう作業でございますので、その客観的証拠がきちんと残っていればこれは調査がきちっとされたということはおのずと分かるわけでございますので、必ずしも国でなければできないという内容の業務ではないと思われるわけでございます。

 そういう意味では、やはりそういった民間で行えるようなことにつきましては民間にゆだねて自由にやっていただくということが基本的に望ましいのではないかということから登録制を採用することとしたわけでございます。

井上哲士君

 民間にゆだねる部分は自由にと、こういうことでありましたが、しかしながら、やはり登記の前提ということで、法務省の監督、検査の権限があるということが先ほど大臣からの答弁もありました。立入検査なども可能のようですけれども、ただ、例えば、この間問題になりましたあの三菱自動車の大型車によるタイヤ脱落事故というのがありました。メーカー側の言い分をうのみにしていたという行政の問題もありますし、同時に、技術力とかがなかなか行政の側にメーカーほどないということも一つの問題かと思うんです。

 今回も、コンピューターにかかわることになるわけですが、立入検査をする権限があっても、実際上、技術的な面、いろんな情報の面等で、その辺の能力、それから体制というものが十分確保できるのかどうか、この点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、登録基準の審査あるいは更新、その後の立入調査等の場合、いずれも設備の登録基準適合性というようなコンピューターに関する専門的知識を要求されることがその判断内容を占めるということは御指摘のとおりでございます。そういった能力を法務省の職員だけで賄えるかというと、これはやはり難しいわけでございますので、このような専門技術的事項に関する審査、調査につきましては、法務省の職員による監督の下で民間業者であるシステムエンジニアに委託をして、その専門知識を活用して適正な調査、審査を行うということを考えております。

井上哲士君

 分かりました。先ほども天下りの温床になることはないなというお話がありました。考えていないという答弁でありましたけれども、決してないということを改めて確認をしておきたいと思います。

 この間ずっと商法が年何回も変わるということがございましたけれども、一応個別的な問題はこれがほぼ最後ぐらいになって、会社法の全面改定ということが今法制審でも議論をされておるようです。去年中間報告が出されまして、中間試案が出されましてパブリックコメントにも付されているわけですが、その中で特に株主代表訴訟の問題について少しお聞きをいたします。

 最近も企業不祥事というのが後を絶たないという中で、私はこの株主代表訴訟というものがそういういろんな不祥事や経営者をただすという上で大変大きな役割を果たしてきていると思うんですが、その点でまず大臣の御所見をお願いをいたします。

国務大臣(野沢太三君)

 企業の不祥事を含めまして、会社の取締役がその任務を懈怠して会社に損害を与えた場合には、その損害を回復するために取締役の責任を適切に追及する必要があるわけでございます。取締役の責任を追及する訴えは本来会社が当事者として行うべきものであり、監査役その他訴訟について会社を代表する者が訴訟を遂行することになります。しかしながら、取締役が会社の役員であるために同僚意識などからその責任追及が適切に行われない事態が想定されまして、この場合には会社の損害を回復することができず株主共同の利益を害することになるわけでございます。そこで、商法におきましては、会社が適切に取締役の責任を追及しない場合には、各株主が取締役に対し直接訴えを提起する代表訴訟制度を設けているものでございます。

 このように、株主代表訴訟制度は株主共同の利益を確保するために取締役の責任を適切に追及するという重大な機能を果たしているものと考えております。

井上哲士君

 重大な機能を果たしていると、こういう答弁でありましたが、では今法制審でこの株主代表訴訟について検討されている主な項目と、そして今後の検討計画はどうなっているでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 現在、法制審で検討しております株主代表訴訟関係でございますが、具体的には、まず訴訟委員会制度の導入の可否、これが第一点でございます。それから第二点といたしまして、株主代表訴訟の原告適格の見直し、すなわち違法行為がなされた当時の株主に限定すべきではないかと、こういう点でございます。それから第三が担保提供制度における悪意の意義の明確化と、この三点が株主代表訴訟に関しましては検討されております。

 これらの論点について、昨年十月に要綱試案を発表いたしましてパブリックコメントに付したところでございます。現在そのパブリックコメントの結果を踏まえて更に引き続き議論をしているところでございまして、平成十七年の通常国会に所要の法案を提出するということを目指しております。

井上哲士君

 原告適格についての検討が一つの柱でありますが、二〇〇一年十二月に与党の議員立法で株主代表訴訟が改悪をされまして、取締役の責任を軽減をするということがありました。その審議の中で、大和銀行の訴訟の例も挙げまして、持ち株会社が創設することによって原告適格を喪失してしまうということが大きな問題だと、むしろこここそ改善すべきだということを私申し上げたことがあるんですが、こういう子会社の取締役の責任を追及できるようにするという点での改善という点ではどうなろうとしているでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、法制審議会におきましても、代表訴訟を提起した後に株式交換あるいは株式移転が行われた結果、株主の地位を失い、そのことによって原告適格を喪失するということにいたしますと訴訟手続におけるそれまでの努力が無駄になるというような問題点が指摘されておりまして、原告適格を喪失しない等の立法上の手当てを行うべきであるという意見も出されております。

 そういうことを踏まえまして、要綱試案においてもこれを紹介いたしましたところ、賛成意見も多く出されております。しかし、同時に反対意見もございまして、これは反対意見といたしましては、子会社の株主の地位は失うにしても、親会社になった取締役に対して、その子会社の取締役に対する責任追及を株主たる親会社として行わない、そういうことについて代表訴訟を提起すれば結局は目的が達成できるではないかと。やや間接的にはなりますが、そういう議論もございました。

 そういったことを踏まえて、現在、引き続き検討をしているところでございます。

井上哲士君

 間接的ということもありましたけれども、いずれにしても、そういう子会社等の取締役の責任を追及できるそういう手だてを取らなくてはならないと、こういう点では共通の声だと、こういう理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 申し上げたとおり、何らかの形でできるのではないかということでいろいろ議論をされておりますので。

井上哲士君

 もう一つ。先ほどありましたように、この原告適格を訴訟の原因になった行為の時点での株主に限定をすべきだと、こういう議論もあるようです。これは、先ほど言いました二〇〇一年十二月の商法改正でも、実は当初、原案にあったわけですが、修正をされて削除されました。その理由ということはどのように承知をされているでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、平成十三年の立法の際、当初の原案では、株主代表訴訟の原告適格につきまして、商法が定める六か月間の株式保有期間の要件に代えまして、当該株主が株式を譲り受けた当時、その取締役の責任の原因となる事実について悪意または重大な過失があるものについてはこれを認めないと、こういう要件になっていたわけでございますが、これが結局最終的には修正されて、六か月間の株式保有ということになったわけでございます。

 その理由といたしましては、株主の主観的要件をめぐって訴訟が複雑化するなどの理由から改正を行わない旨の修正が行われたと承知しております。

井上哲士君

 この株主の権利に対する規制を強化するというのはどうなのかということが強い意見としてありました。

 それで、先ほど紹介をしたこの規制緩和推進三か年計画の中間公表の中でも、当時、経団連から原告適格を行為時の株主に限る等の厳格化という要望が出されております。これに対して法務省は、「取締役の違法な行為により会社が損害を被り株主全員に現に不利益が生じているので、訴えを提起することができる株主を限定することは相当でない。」という説明を付けて、措置困難だという回答をされているわけですね。

 この理由を大きく変えるような状況がその後出ていると、こういう認識があるんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 この点についても法制審議会において審議をしているところでございますが、会社法制の現代化に関する要綱試案に対するパブリックコメントにおきましては、行為時株主原則について肯定的な意見が経済界や司法界から複数寄せられてはおりますが、しかし、代表訴訟の実態につきまして、平成十二年以降、それほど大きな事情の変更が生じているとの指摘はないと承知しております。

井上哲士君

 一貫して経済界はこういう要求をしているわけでありますけれども、当時から見ても株主代表訴訟の現状に大きな変化はないと、こういうことでありました。

 理論的に見ましても、代表訴訟が会社の権利を行使するものであり、会社の現在の損害を回復をすることを目的とし、しかもその利益は会社に属するわけですから、原告を行為時株主に限定をすると、そういう理由も乏しいと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 先ほども申し上げましたが、要綱試案に対するパブリックコメントで寄せられた意見の中には、原因行為時の株主であった者が原告となることに十分な合理性があるという意見もございました。しかし、他方、同時に違法行為時以外の株主にも株主代表訴訟による取締役の責任追及を認めることが会社の利益にかなうという反対の意見もございますし、また会社不祥事の発覚には通常相当の時間を要するため、代表訴訟の原因たる事実を知らずに株式を買い受け、その後に当該事実が発覚した場合に代表訴訟の道が閉ざされるべきではないという、こういう反対意見もございます。

 このように、行為時株主原則につきましては様々な問題点が指摘されておりますので、今後も慎重な検討が必要であろうと、こう思っております。

井上哲士君

 もう一点、訴訟委員会制度の導入ということもありました。

 本来、先ほどの大臣の答弁にありましたように、会社監査役が訴えすべきなのにしないから株主がやるわけでありますから、訴訟委員会といってもいろんな考えがあるようですけれども、いずれにしても今の経営陣の下に作られた訴訟委員会がこの訴訟に対しての判断をするということになりますと代表訴訟が持つ本来の意義が失われると思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 株主代表訴訟の意義は、先ほど大臣からも御答弁いたしましたように、取締役の責任を適切に追及することによりまして株主の共同の利益を確保するということにありますので、逆に代表訴訟を提起することによりましてかえって株主共同の利益、すなわち会社の利益を損なうような場合も考えられまして、そのような場合に訴訟委員会が総株主の利益を考慮して取締役の責任を追及しない旨の判断をするときに、裁判所がその判断を一定の限度で尊重することは必ずしも株主代表訴訟の意義を失わせるとは言えないと考えております。

 ただ、しかし我が国の訴訟制度とアメリカにおいて採用されております訴訟制度というのが大きく異なりますので、訴訟委員会制度の導入を我が国で検討するに当たりましては、委員会の構成をどのようなものとするか、裁判所の審理の対象をどのように定めるかなど様々な困難な問題点が指摘されており、株主代表訴訟の意義を失わせることなく訴訟委員会制度を導入することができるかどうかについては、なお慎重な検討が必要であると考えております。

 そこで、法制審議会においては、そのような問題点も踏まえて、なお更に検討を続けております。

井上哲士君

 幾つかの問題についてお聞きをしましたけれども、大臣も大変重要な役割を果たしていると言われているこの株主代表訴訟がその本来の意義を失わされるようなことではなくて、むしろもっと使い勝手のいいものにしていくと、こういうことでの検討を強くお願いをして、質問を終わります。


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