本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2004 年 5 月 25 日

法務委員会
総合法律支援法案
(午前の質疑)

  • 「日本司法支援センター」に民主的意思決定機関が必要なことを指摘し、弁護士を理事などに加えるべきだと主張。あわせて、弁護士活動の独立性の確保を求めました。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 先日、地方公聴会で宮城に行きました際に、宮古のひまわり公設事務所の所長さんの陳述を聞きまして、大変この司法支援センターに対する強い期待が述べられました。

 言われておりましたけれども、ああいう司法過疎の地域に行きますと、やみ金の違法取立てなどがもうやり放題になっていると、無法地帯だというふうに言われておりました。こう言われたんですね。幾ら利息制限法を国会が作っても、使う方法を知らなかったら役に立たないんだと、こういうふうに言われました。本当にそのとおりだと思いまして、立法府に身を置く者としては、法律作ったからそれでいいんじゃなくて、実際にそれが使われるような手だてを取らなければ、正に絵にかいたもちになると。そういう点で、いい制度を早く作ってほしいというのがその宮古のひまわり公設事務所の所長さんのお話でありました。

 全国どこでも市民が法的な救済を受けられる網の目を作るということは本当に急務でありますし、そういう点でこの法案は大きな一歩になると思います。より良く機能をして、そして本当に役立つものにするために更に何が必要なんだろうかという点で幾つか質問をいたします。

 まず、大臣にお聞きをいたします。

 先ほど来の審議にありますように、この法案の土台には、これまで日弁連が行ってきた当番弁護士であるとか、ひまわり基金による公設事務所であるとか、また司法書士会や地方自治体なども含めましたいろんな法律相談の活動があります。こうしたこれまで行われてきた様々な法的サービスというものをどういうふうに評価をされているのか、そして、そうしたそれまでの様々な活動と今度のこのセンターとはどういう関係になっていくのか、まずお願いします。

国務大臣(野沢太三君)

 司法制度がより身近なものになるようにと、このことが今回のこの支援センター設立のこの法案の最大のやはり目標であり、趣旨であるわけでございます。そして、今委員御指摘のとおり、過疎地帯ではなかなか法律があってもその恩恵に浴されないということから、過疎地帯に対する司法サービスも充実をしたいということでございまして、これまで弁護士会を始めいろんな団体、篤志のある方々がサービス業務をやっていただきましたが、これ十分ではないと。これ、あまねく全国でサービスを拡充しようというところに今回の法律の趣旨があるわけでございますので、これまでの御苦労をいただきました皆々様の様々な実績、それからこれからも御一緒にお仕事をしていただくという見通し、それを含めて、これを有機的かつ総合的にまとめる形で今回の制度を構築していくということでございますので、一層幅広くかつ重層的な御協力関係を構築することが非常に大事であろうと思っております。

 しかも、これから取り組む方はもちろんですが、これまで既に実績のある方は、それぞれの御経験の中からこのようにしてほしいという御意見なり御希望なり、あるいは要望なりがあろうかと思いますので、そういったものも取り込みながら、かつまた独自性も発揮していただき、競争をしながら共存をするということもあろうかと思いますので、これまで以上に実はそういった関係の皆様の御活躍を期待しておるということでございます。

井上哲士君

 これまで日弁連を始めとした様々な取組が行われてきた、それを有機的、総合的にまとめるんだと、こういうことでありました。そうしますと、それにふさわしい組織形態というのが必要だと思うんです。

 この法案では、独立行政法人に類似をした形態となりまして、いわゆる理事会などの意識決定機関については設けられておりません。国がやるべきことを独立行政法人としてやる。その場合に、この言わば行政的なピラミッド的な組織というのはあると思うんです。ただ、今回のように、これまでにいろんな実績があって、それを有機的、総合的にまとめるということになりますと、そういう皆さんの意見、合意、これを尊重した組織運営というのが非常にこれまで以上に大事になると思うんですね。民事法務協会などもそういう運営がされてきたと。

 そういう点でいいますと、理事会などの集団的な意思決定機関、執行機関と、こういうものを設けるべきだったと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 その支援センターに対しましては国費が投入されるということになりますので、その運営について法人の自主性を尊重する一方で、その業務運営に対する責任を明確化する必要があるという要請がございます。この二つの要請を抱えることになるわけでございますが、ここでその理事長に権限を集中したということでございますけれども、この法人の運営に関する意思決定の権限及び責任を理事長に集中させるとともに、その理事等につきましてはその業務内容等に応じて必要と認められる数にとどめているわけでございます。言わば責任の明確化ということですね。

 それから、それを中心にこういう制度を設けているわけでございますが、ただ、その理事長が業務運営に当たりまして、その業務、適当な機関が必要と考えた場合には、その裁量によりまして、例えば理事会ですか、こういうものを設けてやっていくということも、これは妨げるものではないという構成になっておりますので、今後現実にやっていくところで必要であるということであれば、内部の規定として置いていただければそういう体制になっていくだろうというふうに考えております。

井上哲士君

 是非そういう民主的な意思決定と執行の体制で運用していただきたいと思います。

 それで、今も申し上げましたように、実際の業務を支えるのは弁護士さんなどがかなりの部分を占めていきます。もちろん、隣接法律専門職種者の方もいらっしゃいますけれども、やはり中心は日弁連ということになろうかと思います。

 ただ、先ほどありましたように、役員の任命とか中期目標の策定、最高裁の関与は法定をしておりますけれども、日弁連などには支援、協力ということのみになっておりますが、なぜ日弁連の関与ということは法定をしなかったんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは典型的には国選弁護事務でございまして、国選弁護事務に関しましてはこの支援センターがやる事務と、それから裁判所がやる事務というふうに分かれるわけでございますけれども、裁判所はこの国選弁護に関しまして選任と解任という役割を負うわけでございます。実質的にここ、この関係の制度の運営についても一部責任を負うという形になるわけでございますので、そういう意味で経営に密接に関係があるということから、法的にも意見を聴くと、こういう形を取らせていただいたわけでございます。

 日弁連の方も現実に弁護士さん、いろいろお願いをしてやっていくということになるわけでございますけれども、これはまあお願いをしていろいろやって協力をしていただくわけでございますが、経営に直接何か意思決定をするという形にはならないわけでございますので、そこの違いがあるだろうということからこのような規定を置かなかったわけでございますが、ただ、やっぱり実際にやっていく上では弁護士会の御協力が非常に、それから御意見、これが重要でございますので、この三十二条の五項でも支援センターが意見の開陳を求めることができるというふうに規定をしているわけでございます。その、また運用上、その支援センターがその業務を円滑に運営するために必要なものにつきまして、日弁連の意見をお聴きして協力をしていただくということが当然必要になってくるだろうというふうに考えております。

井上哲士君

 実際を担う大半はやはり弁護士の方々ということになるわけですから、私はきちっと法定をすべきではなかったかと思います。運用上しかしそれはしていくんだという答弁でありました。

 そうしますと、実質的な関与ということを運用上確保するという点で役員の問題が大変大事だと思います。理事長、理事の中にきちっと日弁連の推薦する弁護士などを選ぶということが必要ではないかと思うんですね。衆議院の参考人質疑を見ておりましても、日弁連の代表の方が、今後も日弁連として独自の事業を続けるけれども、ばらばらにやるんではなくて、よくセンターと協議、連携が必要だということ、それからセンターの事業に関与についても、例えばスタッフ弁護士としてはこのぐらいの規模を用意してほしいと、こういうことも早めに言ってもらわないと対応ができないんだというようなことも言われておりました。そういう意味での風通しが必要で、役員のうち一人ぐらいはという気持ちもあると、こういうことを参考人が意見を述べられております。私はこれ当然だと思うんですね。

 理事長は大臣が指名をして、理事は最終的に理事長が選任をするということだと思いますが、このセンターの運営が十分適切に行われるという点でいいますと、やはり理事長ないし理事の中にそういう弁護士の方が入るということが必要だと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 運用にかかわる問題でございますので私の方からお答えさせていただきます。

 今御指摘のとおり、ここの二十四条におきまして、支援センターが行う事業に関して高度な知識を有し、適切、公正かつ中立な業務の運営を行うことができる者のうちから任命するというように規定が置かれております。しかし、実情を確かに見ますと、ただいま委員が御指摘のとおり、この業務の運営上あるいはそれを理解する知識の面から見まして、やはり弁護士の皆さんの、何といいますか、アドバイス、あるいは弁護士会との連携というようなものは必要不可欠であろうと、このように認識しているわけでございます。

 そういう弁護士さんの皆さんの御協力を得るのにどういう形がいいのかということは様々なレベルで考えられるわけで、この理事のレベル以外のところでもいろいろ連携を考えなければいけないわけでございますが、この理事のレベルでそういうことを図っていくのも一つの考え方でございますし、一般論として、現段階であくまで申し上げるわけでございますけれども、この適任者として規定されている者の中の有力な候補というのが弁護士さんであることはもう否定し難いことだろうというふうに考えております。

井上哲士君

 是非、しっかり関与ができるような役員の選任を求めたいと思います。

 もう一度大臣にお聞きをいたしますが、先ほどの質問の中でも、理事長の任命とか法律事務取扱規程の認可、中期目標の指示、法務大臣がその権限を行使することが法定されています。それに当たって、最高裁の意見を聴くだけでなく、日弁連の意見をしっかり聴くべきだと、こういう指摘がありました。大臣からは二人三脚という答弁もあったわけでありますが、是非、決まったから聴くんではなくて、あらかじめ聴くという点が大変大事だと思うんですね。その点、日弁連の関与や協力の実を上げるためにあらかじめしっかり意見を聴くと、こういう運用をお願いしたいんですけれども、大臣、お願いいたします。

国務大臣(野沢太三君)

 枠組みに関しては、やっぱりこうして法律を作り、あるいは大臣としての権限で関係者の指名、そういったこともございますが、担い手はやはり弁護士さんが主体になってやるというのがこの支援センターの一番の特徴でございますから、そういう意味で、支援センターが業務を円滑に運営するためには、適宜必要な段階で日本弁護士連合会の御意見を聴取して協力を得るということは不可欠と考えております。

 当然、その適宜と私申し上げました中には、事前にもございますし、事中、事後にもあろうかと思いまして、ここはもう正に運営の一番大事なポイントでございますので、御指摘のとおりに進めていかなきゃならぬなと思っておるわけでございまして、今度の法律支援構想、総合法律支援構想におきます日弁連の責任、役割、さらにはこれまでの経験されましたノウハウの蓄積等の御協力は非常に重要なことと考えておりますので、これはもう、こちらからももちろんチャンスは作っていかなきゃいけませんが、日弁連側におきましても、それぞれ自発的、自主的な御提言はお待ちをしておると、こういうことでございます。

井上哲士君

 このセンターにおいて弁護士活動の独立性がどのように確保されるのかということが繰り返し議論になってまいりました。十二条で、「職務の特性に常に配慮しなければならない。」と、こういう規定も置いてあるわけですが、この独立性を確保するという点でどういう措置がこの法案でされているのでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これを受けまして、一番大きなものにつきましては、弁護士業務に絡む審査等を行うために、これを特に支援センターが直接行うということにしないようにするために審査委員会、これを設けまして、その中で審査をしていくということ、それから弁護士の業務ですね、個々の弁護士の業務については、その独立性を有するということを法律上明確化する、こういう手当てをしているということでございます。

井上哲士君

 この独立性が大変一番求められているのが刑事弁護だと思います。

 国選弁護のことでお聞きをするんですが、これはすべて支援センターが担い、支援センターと契約した国選弁護人契約弁護士が担当する、こういうことになります。法定上は日弁連は採用に関する権限がありませんし、個々の事件に、この国選弁護人の選任に関与する権限も持たないということになっております。

 ただ、これは、これまでこの国選弁護人制度の中でずっと日弁連が関与してきた、そういう実績を無視をするものだという指摘があります。例えば、今、迅速化法案というのができましたけれども、そういう迅速な審理に非協力的な弁護士であるとか、それから検察や裁判所の側から見れば不適切な弁護を行うような弁護士であるとか、こういう人たちが排除されるような恣意的な運用をされるんじゃないかという危惧の念が随分私たちのところにも寄せられております。

 この間の審議のときに山崎局長は、嫌な方は別に契約されなくても結構でございます、決して強制するものではございませんと、する意味でもないと、こういう答弁もされたわけですね。しかし、これまで国選弁護をやっておられた方が引き続きやろうと思いますと、これは契約するということが必ず必要なわけですから、ある種強制なんですね。嫌な方は契約されなくても結構でございますといいますと、どうもこの政府の法案に疑問を持つような人は、もう国選やってもらわなくても結構と、やっぱり排除するようなものとして聞こえるんですね。やっぱりあの発言は私は適当じゃなかったと思うんですけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 やや発言がきつかったということは反省はしております。若干、売り言葉に買い言葉のようになったことは認めます。

 ただ、私が申し上げたいのは、この法案の中で弁護士の業務の独立性についてはきちっといろいろ手当てをしておりますので、いろいろ御指摘がされましたような心配はないということですね。それを十分に分かってこの制度に参加をしていただきたいということでございます。

 契約といっても、これ、事前に何かもうこの一年間どうするかとか、そういうような契約を結ばなくても結構でございまして、その必要が起こったときにそこで契約を結ぶという形でも結構なわけでございますので、それは、今までは弁護士会等から名簿等の推薦がございまして、それで裁判所の方で選任していくということになるわけでございますが、それとそれほど大きく変わるわけではないシステムでございまして、ここに独立行政法人が入りますので、選任は裁判所でございますけれども、そのほかの事務はこちらの法人でやるわけでございますので、そこでそういう関係から契約を結んでほしいと言っているわけでございますので、決して縛るようなものでもないということで御理解を賜りたいと思います。

井上哲士君

 売り言葉に買い言葉だったと言われましたが、やはりいろんな疑問、危惧の声についてはよく説明をしていただくということが基本でありまして、嫌な方は結構でございますというのはやはり非常に不適切だったと思いますので、是非しっかりこの趣旨をよく理解をしていただくし、独立ということに気を付けた運用をお願いしたいと思うんです。

 それで、実際やっぱりこの危惧にこたえるような運用が大事だと思うんですね。これまで弁護士会が国選弁護人については準則を決めて、それで推薦をするという扱いが多くの弁護士会で行われてきましたけれども、様々な危惧にこたえる点でいっても、こういうこれまでのやり方を尊重するべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この点については、支援センターと弁護士会でいろいろお話をしていただくことになりますけれども、私どもの認識といたしまして、従来行われているやり方、これは尊重されるべきものだというふうに考えております。

井上哲士君

 この契約弁護士の規模ですけれども、これは、希望があってそういう準則などを満たす人は基本的にすべて契約するのか、それとも何か一定の定員みたいなものを設けるんでしょうか、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これにつきましては、特段、人数の制限とかそういうものを考えているわけではないということでございます。

井上哲士君

 次に、事件への割当ての問題なんですが、個別事件についての弁護士候補の割当てというのは、これは地域の弁護士会の規模などによっていろいろ事情は違う、関与の在り方は違うようですけれども、これまではこの割当てについても弁護士会が関与するということもかなりのところで行われてきました。これも、やはりこういう連携が後退しないような運用がされるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 姿は変わりますけれども、今までの基本的な実務ですね、これは尊重してやっていくということを念頭に置いているということでございます。

井上哲士君

 このセンターの常勤弁護士なんですが、判事や検事の職にあった人が一定期間弁護士になって、そしてこの常勤になると、こういうこともあり得るんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは将来の運用の問題でございますけれども、一般論として申し上げれば、非常に幅広い法律事務を行うこの支援センターに、いろんな形のバックグラウンドを持った、あるいは年齢的にもそういうバラエティーのある法律家が職務に従事するということは望ましいことだろうというふうに考えております。

 裁判官ですとかあるいは検察官が一定の期間こういうことに従事するということもあり得ることだろうというふうには思っておりますが、現在のところ具体的にはまだ考えてございません。

井上哲士君

 二つほどあると思うんですが、一つは、この司法センターに期待されるのが、刑事弁護に強い弁護士を養成もするし、その蓄積を生かすということも言われております。そうしますと、一定期間やってまた戻るという方であれば、その蓄積を生かすという趣旨からは外れる。そういうことでいいますと、やっぱり常勤というのはいささかふさわしくないんではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 おっしゃるとおり、これは将来のことでございますので、いろんな考慮をしていかなきゃならないわけでございますが、今御指摘にありますとおり、何といいますか、必ずしも全面的にこれはふさわしいというようなことが言えるかどうかについては、いろいろな問題点を検討していかなきゃならないわけでございます。しかしながら、一つの考え得る道だということで申し上げたわけでございまして、おっしゃるような論点というのはいろいろクリアしていかなきゃならないところはあるというふうに考えております。

井上哲士君

 もう一つ論点があるんですね。独立性という問題があります。

 これまでもいわゆる判検交流というのがやられてきまして、国相手の行政訴訟で、国側の担当者だった人が同じ裁判で裁判官になったというような例もあります。いったん身分を離れているとはいえ、かつて同僚であり、また将来も同僚になる者と果たして裁判の場でしっかり対峙して被告人の権利を守ることができるんだろうか。公正らしさという点でも様々な疑念を生じかねないと思うんですね。

 元総理経験者の方が自分の裁判に検事出身者をたくさん固めたこともありまして、手の内を知っているから逆に強いだろうと思ってそういう弁護を依頼するというのは自由ですけれども、常勤弁護士や国選ということになりますと断れないということに事実上なりますので、この点はやはりそういう点で問題が生じると思うんですけれども、この点いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これはいろいろな点から御指摘をいただくところでございますが、仮にでございますけれども、いったん判検事の経歴がある、あるいは将来そういう立場に立つ者が弁護士として法廷に立つ、あるいはいろいろな弁護士としての仕事をする場合に、そのことだけで刑事事件を扱うのは不適当である、公正さを欠くということはないのではないかというふうに思うわけでございます。

 これは、例えば弁護士任官を考えてみましても、将来弁護士に、失礼、裁判官になる直前の方が弁護士をするのは不適当だということもなかなか言いにくいわけでございますし、いろんなバラエティーがある法律家、バックグラウンドがある法律家というのは一般的に望ましいわけで、ただ、その仕事、その仕事に立つ場合に、法律家としての自覚を中心にいたしまして、不公正さがないように、これは御本人の自覚だけの問題じゃなくて、周囲の環境の問題もございますけれども、そういったことを計らうことが大事であって、そのこと自体で不公正でもう一切まかりならぬということはないのではないかというふうに基本的には考えております。

 ただ、いろいろな配慮をしなきゃならないということは御指摘のとおりでございます。

井上哲士君

 私も、検事であった人が刑事裁判にかかわるべきでないと、こう申し上げているんじゃなくて、常勤という形がどうなるんだろうかということを申し上げています。

 もう少しその辺を掘り下げたいんですが、その点で、最高裁、来ていただいていますが、接見禁止決定、この件数のこの十年間での変化、かなり増えているわけですが、その理由、これをお願いをいたします。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 接見禁止決定の人員につきましては、平成五年度では一万八千六百八十四名、平成十四年につきましては四万七千四百五十五名となっております。

 接見禁止決定の増加につきましては、個々の事件における裁判体の個別的な判断の結果の集積ということでありまして、その原因につきまして統計的な裏付けを得ているわけではありません。ただ、刑事の裁判官としての経験から申し上げますと、そもそも、この十年間の間に事件数自体も相当増加しております。それに伴いまして接見禁止の付される事件も増加したというふうに考えられること、さらに、罪証隠滅を防止する必要性の高い組織的、計画的犯罪や悪質な共犯事件が増加していることといったような、こういった事情が影響しているのではないかというような感じを持っております。

井上哲士君

 今、数を出していただきましたけれども、十年間で二・七倍に増えているんですね。事件数も増えているとおっしゃいましたけれども、やはり接見禁止の数の二・七倍というのは大変大きいと思うんです。

 その中でどういうことがあるかということで、鹿児島の選挙違反事件で起きていることをちょっと紹介をしますけれども、昨年の十一月三十日の朝日の記事ですが、ちょっと紹介します。「鹿児島県議選で、買収された疑いで逮捕された女性の目に、娘の筆跡が飛び込んできた。 「やってないんだったら、きちんと否定しないとダメだよ」 警察署の接見室のガラス越し。家族との接見が禁止されているため、国選弁護人がとった「非常手段」だった。」と、こういうことが起きたそうであります。

 これに対して、検察側が弁護活動に行き過ぎがあるということを指摘をして、鹿児島地裁がこの二人の国選弁護人を解任をしたんですね。これに鹿児島県の弁護士会が猛反発をして、約二か月間、地裁に対する国選弁護人の推薦を停止をした、こんなことが起きたということが報道をされております。証拠隠滅の内容ならともかく、励ましの手紙を見せて何が悪いのかということが言われているわけですが、正に被告人の権利という点でこういうぎりぎりのことが現場で行われているという状況があります。

 それだけじゃありませんで、保釈という問題でもいろんなせめぎ合いがありますが、同じく保釈率、この十年間の変化、率がかなり下がっているかと思いますが、その理由について、最高裁、お願いします。

最高裁判所長官代理者(大野市太郎君)

 保釈率につきましても、平成五年度につきましては二一・二%、平成十四年度につきましては一二%というふうになっております。この保釈請求に対する保釈の許可率というものにつきましては、長年ほぼ五〇%前後で一定しているという、そういう状況にあります。

 したがいまして、保釈率の低下につきましても、保釈請求の数が減少しているということが主な原因であろうかと思われます。その保釈請求の数が減少した原因ということになりますと、もとより私どもが統計的な裏付けを得ているわけでもございません。したがいまして、正確なところは不明でありますが、今までの経験からいたしますと、貧困その他の事由によりまして国選弁護人が選任される事件が増加している、そのような事件では保釈金の納付が困難なことなどもありまして保釈請求がされにくい、また、身上関係が安定していない外国人の事件も増加しているということに加えまして、この十年間というわけではありませんが、長期的に見ますと刑事裁判の審理期間が短縮化しているといったようなことなどの事情が影響しているのではないかという印象を持っております。

井上哲士君

 この点も先ほど紹介した記事で特集をしているんですが、確かに資力の乏しい被告に付く国選弁護人の割合が増えたということも一つの理由に挙げられていますが、現場の弁護士さんの言葉としては、否認というだけで安易に判断されるようになっていて保釈制度が機能しなくなった、そういう現実の反映として被告弁護側の保釈請求率も下がっているんじゃないかということが指摘をされております。

 同じ記事の中では、これは神戸地裁姫路支部の総括判事の談話として、自分自身、若いころに比べると保釈に慎重になっているということが出されております。例えば、保釈の内容が分かってくると捜査当局が勾留を請求する必然性も理解できるということも書いてありますし、ほかの裁判官の本音として、身柄が拘束されている事件の方が断然審理がしやすいというような言葉も出されております。

 こういうふうに、言わば法廷だけじゃなくて、その前の接見とか保釈請求という段階で本当に被告人の権利を守るというために激しいやり取りがあるという下で、正に時には検察や裁判所などと厳しく対決するということが必要だという状況がある中で、こうした活動を判事や検事、そしてまた元職場に帰っていくような方がしっかりできるんだろうかという疑念はやはり被告の側から私は出てくると思うんですね。

 こういう点、改めていかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 今御指摘になられましたのは、一般的に今の刑事事件についての一つの手続上の問題の見方でございますけれども、それにつきましてはそれといたしましていろいろのまた御議論があり、また検察、裁判所、弁護士会の間でも今後いろいろまたそういう問題点を一つ一つ解決していかなきゃならないところはあるわけでございますけれども、ただ、先ほどおっしゃいました、一定の裁判官の経歴を有する者あるいは検事の経歴を有する者がこういう形で出向するということに本質的な支障があるかということになりますと、それはやはり弁護士に仮になった以上は、それは弁護士として独立性を持ってやられるということが大前提でございますので、先ほど申しましたように、周りの環境ということを整備しなきゃならないことも当然でございますけれども、本質的な支障があるというふうには私どもは考えておりません。

井上哲士君

 この記事の中でも、保釈がなかなかされないということに関連してあるベテラン裁判官の言葉として紹介しています。身柄拘束の悲惨さの感覚がないと勾留の厳格な運用についての心構えは生まれないと。若い裁判官に一泊程度の監獄経験があった方がいいんじゃないかなんということも書かれております。

 私たちは、法曹一元化ということも主張してまいりましたし、判事や検事をされた方、またされる方が被告人、被疑者の立場を経験するということ自体は大変重要だと思っております。ですから、刑事事件一般にかかわるべきでないということじゃなくて、常勤という形態はやはりいろんな問題があるんじゃないか、今後、その上でやはりよく検討していただきたいということを改めて強く申し上げておきます。

 次に、今回、被疑者段階の国選弁護が入るわけですが、範囲も大変限定をされましたし、逮捕時から必要だということも随分言われてまいりましたけれども、これは見送られました。

 先ほど当番弁護士、国として当番弁護士制度をやるべきでないかということに対して、資力の審査等に時間が掛かるというような理由も挙げられておりました。しかし、今、日弁連などがやっておりますように、一回分だけ、初回の無料接見をするというやり方でありますと、こういう資力の審査等は必要もないわけでありますから、身柄を拘束された時点での適切なやっぱり法的なアドバイス、非常に大事なことを考えますと、もっと前向きに検討していただきたいと思うんですけれども、改めていかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これにつきましては、今回、私ども直接の検討対象に入っていなかったということでございます。したがいまして、議論はいたしましたけれども、なかなかその先の進展に至らなかったというところでございます。

 先ほど理由は三点ほど申し上げましたけれども、ただいま一回だけ無料でということでございますけれども、そうなりますと、例えば資力のある人についても無料でということになるわけでございまして、現在、被疑者あるいは被告人の国選弁護につきましてやっぱり資力要件を設けているわけでございますので、その考え方と若干外れてくるわけでございます。

 したがいまして、それとどう整合的に組み立てていくか、議論をしていくかという問題が残っているということでございまして、現段階でこの制度とそこをどういうふうにつなげていくかという議論はまだ未成熟であるということでございまして、将来の課題だというふうに考えております。

井上哲士君

 是非、積極的に検討していただきたいと思います。

 午前中、終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.