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2004 年 5 月 25 日

法務委員会
労働審判法案(午後の質疑)

  • 「日本司法支援センター」に民主的意思決定機関が必要なことを指摘し、弁護士を理事などに加えるべきだと主張。あわせて、弁護士活動の独立性の確保を求めました。

井上哲士君

 午前中に続きまして、まず独立性の確保の問題で何点かお聞きをいたします。

 法案の中で中期目標を定めるとなっているんですが、この中に「業務運営の効率化」という言葉があります。この効率化とは何かということなんですね。弁護活動といいますのは、時として、無駄かもしれないけれども、被疑者、そして依頼人のためにやらなくちゃいけないこともあるわけでありまして、本質的に効率化となじまない部分があろうかと思います。個々の弁護活動には立ち入らないということになっていますが、迅速化法ができまして二年という目標があります。どこどこの支部は二年を超える国選事件が多いじゃないか、効率性が悪いんじゃないか、こんなことになりますと、間接的には圧力になっていくということもなるわけで、この効率化というのは具体的にどういうことを指しているのか、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ここで申し上げます効率化ですね、これは例えば事件の処理が遅いとかそういう問題ではございませんで、これはもう個々の弁護士と依頼者との関係で行われるべきものでございますので、そういうことをイメージしたわけではございません。

 典型的に言えることは、例えば一般管理費の効率的な使用ということは考えられると思いますけれども、いわゆる業務、弁護事務ではなくて組織としての事務ですね、こういう点の効率性を考えなければならぬと、こういう理解をしているわけでございます。

井上哲士君

 事務用品の使い方が多過ぎるとか、多分人の配置が不合理だとか、そういうことなんだろうと思うんです。

 関連して、二十六条の三項で役員の解任事由を決めております。この中に「実績が悪化した場合」というのがあるんですね。この間土曜日に京都の弁護士会の皆さんと懇談会をする機会があったんですが、例えば今法律扶助でも、今年度でいいますと四十億ぐらいの全体の枠の中で京都は四億円以上が割り当てられているということでありました。人口などでいいますと京都は大体二%でありますので、大変大きな割当てがあるんですね。これは、やはり京都の弁護士会の皆さんが熱心にやられているということ、もちろん都市部に事件が多いということがありますけれども、そういう熱心にやられているということの反映かと思うんです。

 本来的にこれ利益が上がる活動ではありませんので、これやればやるほどそういう点では予算が膨れ上がるということも起こり得るわけで、それをもって実績が悪化したということになりますと大変萎縮してしまうということになるわけで、ここで言う実績の悪化ということはどういうことを指しているんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘のとおり、弁護事務ですね、これをやっていく上で、特に法律扶助の関係だろうと思いますけれども、この関係で、それは非常にニーズが多くてある程度その出費がかさむということも恐らく可能性としてはあるわけでございます。そういう場合に、予算がその予算の限度より赤字になったということがあっても、それが直ちに解任すべき事由というわけではないという理解でございます。

 これも、先ほど申し上げましたけれども、そういう弁護業務以外のところのいわゆる経営の効率化等、こういうところでうまくいかなくて全体の業績が悪化をするというような場合に管理責任として解任ということもあり得ると、こういうことを定めているわけでございますので、決して弁護活動の関係で書いているわけではないというふうに理解をしていただきたいと思います。

井上哲士君

 関連して国選弁護のことも聞いておくんですが、民事法律扶助で年度途中に予算不足という話があるわけですが、国選弁護の場合にそういうことがありまして、必要な配置ができないということになりますと正に人権問題になるわけでありまして、この場合は途中で不足しても必ず充足されると、こういう仕組みになっているということでよろしいですね。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘の点につきまして、被告人の弁護の関係は、これは憲法上の権利と位置付けられておるわけでございます。それから、今度、被疑者の弁護についてはこの法律で定めるわけでございます。

 いずれにしましても、必要だということを定められているわけでございますので、予算の不足によって国選弁護の弁護人の選任が行われないという事態は想定はしてはおりません。必要なものについてはお願いをして手当てをするということでございます。

井上哲士君

 次に、事業の規模、範囲の問題でお聞きをします。

 今日もずっと司法過疎対策の重要性が繰り返し指摘をされました。そのために過疎地域に事務所を置くわけでありますが、なかなかいろんな理由で事務所を置くことが困難なところには巡回ということもあり得ると、こういう答弁もありました。この間、先ほどもありましたように、このゼロワン地域をどうなくすかということを繰り返し議論をしてきたわけで、やっぱり新しい司法センターができた、そのときに、少なくとも事務所の配置、そして巡回によって、ゼロワン地域はまずは巡回であっても取りあえずは配置をされたという姿にするということが私は出発点であって、非常に必要だと思うんですけれども、そういう目標を持って取り組むということで、いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、おっしゃいましたように、もちろん非常に小規模の事務所を置くということから、巡回、またその他いろんな方との連携をしてサービスを提供するということが想定されているわけでございますけれども、具体的にどのパターンがその地域で行われるかということは、これはもうその地域の実情でございますので、これは今後考えていくわけでございますが、目標としては、おっしゃるとおり、この今回の総合法律支援というのは、やはり手の届くところに法律サービスを供給しようというところがあくまでその非常に大きな柱でございますので、これについて全く何も変わらないという事態では許されないだろうという、そういう前提で私ども巡回サービスの面も考えていきたいと思っております。

井上哲士君

 発足時点でともかくもゼロワン地域にそういういろんなアクセスポイントができたという状況で始まるように是非お願いをしたいと思います。

 業務の範囲を定めた三十条一項二号がありますが、ここで法律扶助の対象者は適法に在留する者というふうになっております。そうしますと、例えば難民認定を求めて訴訟されている方などがこの対象から外れるということになりかねないわけですね。現行は UNHCR の補助を受けて扶助協会が事業を行っているようであります。三十条の二項に国際機関というのも入っているわけですが、これによってこうした難民認定訴訟への扶助ということも引き継がれるんだと、こういう理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、御指摘のとおり、三十条二項でその業務、本来業務以外の業務について規定をしておりますけれども、それにつきまして、例えば国連難民高等弁務官事務所ですか、そこの補助金で行われております難民法律援助事業ですね、このセンターがその委託を受けて行うということは制度としては可能になっているということでございまして、今後そのセンターが立ち上がりますので、それと契約できちっとその範囲を決めていくということになろうかと思います。

井上哲士君

 現在行われているそういう扶助が新しいセンターができたら後退するというようなことはあってはならないと思いますので、これも是非お願いをしたいと思います。

 この三十条二項では、国際機関以外に営利を目的としない団体からの委託による事業も可能ということになっておりますが、この営利を目的としない団体というのは日弁連なり弁護士会を当然ながら含んでいて、それによってこれまでいろんな地域の実情に合わせて行われてきた事業を引き継ぐことが可能なんだと、こういう理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 当然、この営利を目的としない法人の中には、日弁連あるいは弁護士会、これが含まれます。それ以外にも幾つかあろうかと思います。

 それが前提でございますが、そして、この三十条二項でその事業を引き継ぐかどうかという点については、基本的には、委員御指摘のとおり、必要なものをきちっとやっていくということになろうかと思いますが、全体に、その支部独自でいろいろやっているものもあるようでございますので、全体をよく把握した上でこのセンターとしてできるものはなるべくこの中でやっていくと、こういう考え方でおるわけでございます。

井上哲士君

 関連して、この三十条三項というのがあるんですが、支援センターが前二項の業務として契約弁護士等に取り扱わせる事務については、支援センターがこれを取り扱うことができると解してはならないと、これは非常に分かりにくいわけですが、この条文の解釈はどういうことなんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに、ちょっと一見読むと分かりにくいところがございますけれども、これは、支援センターが業務として契約弁護士等に取り扱わせる事務につきましては、その当該契約弁護士等が法律事務を行う主体となるというものであって、支援センター自体がその法律事務を行う権限を与えるものではないということです。これを示したということでございますので、いわゆる弁護活動の独立性ですね、これを基本に置いた規定であるという理解をしていただきたいと思います。

井上哲士君

 分かりました。

 次に、先ほども少し議論になりましたけれども、いわゆる契約弁護士とスタッフ弁護士との関係なんですね。

 いろんな答弁を聞いておりますと、まず一般の契約弁護士にお願いをして、できない部分はスタッフにお願いするんだと、こういう答弁もあります。一方で、自己破産などは、まずはスタッフに集中的にお願いをすると、こういう答弁もあるわけで、まずどちらにという、ここら辺の関係がどういうふうに整理がされるのか、お願いをします。

政府参考人(山崎潮君)

 この基本的な発想は、まず業務については一般の弁護士さんにお願いをするということが基本になります。常駐する弁護士等はそれを補完をするものという位置付け、このセンター全体がそういう位置付けでございますけれども、それが基本でございます。

 ただ、それではどうしてもうまくいかないというものもあるわけでございます。典型的に言えるのは自己破産でございまして、もうこれはかなり急増をしておりまして、個々の弁護士さんにお願いをしているというだけではもう手が回り切れない、あるいは費用的にももう足りなくなってしまうというような事態が生じているというふうに伺っておりますけれども、こういうものについて、その支部支部でいろいろな実情があろうかと思いますけれども、そういう事態になるならば、これは効率性の意味から、常勤の弁護士がそれをやった方がより多くのものをお助けできるということから効率性も上がるだろうというような場合には、このスタッフ弁護士をそういうものの専属としてやることもあるということでございまして、これをすべてそこでやるということを申し上げているわけではないということで御理解を賜りたいと思います。

井上哲士君

 あと、今度の法案では盛り込まれなかったけれども、審議会意見書等で検討が必要だと言っていた問題について二点ほどお聞きしますが、一つは、公的付添人制度です。

 審議会意見書の中では、身柄を拘束された資力のない家庭の少年に国費で弁護士を付ける、この制度の積極的な検討が必要だというふうにしておるわけですけれども、今回、なぜ盛り込まれていないのか、そして今後はどういう方向なのか、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 確かに意見書の中で検討の項目ということで位置付けられたと思います。これ絶対にやるということじゃなくて、検討という位置付けだったと思います。私どものその検討会でもこれかなり議論をいたしました。

 ただ、これを議論していくうちに、この制度を仮に取り入れるということになると、少年審判の本質論にも影響をしてくると。要は、少年審判につきましては、裁判官が基本的には裁判官の役とそれから弁護士の役、これですべて持っているという構造になっているわけでございます、一部検察官の立会いという問題がございますけれども。

 そういう構造の中で、その公的付添人を入れるのかどうかと、全部の事件でですね、そういうことになりますと、構造の本質的なところにもかかわってくる、あるいは、そのことをサポートするために調査官の制度が置かれているわけでございますけれども、そういう調査官の制度とこの公的付添人の制度、これをどういうふうに考えていくのかというような、その本質的な議論までしないとなかなか決着が付かないだろうということから今回の議論からは一応切離しをいたしまして、この点につきましては将来の検討課題といたしまして、今後その法曹三者による意見交換会、これを設けまして、その意見交換会において、今検討会で行いました議論ですね、こういうものを踏まえまして更に検討を継続するということでございます。

 現在、法務省、それから最高裁、日弁連ですか、この三者におきまして公的付添人制度に関する意見交換会、これを開催しているようでございまして、大体四回開催済みというふうに聞いておりますけれども、今後もまたこれを継続をしていくと、そこで結論がうまく出るならば出していくと、こういうことでございます。

井上哲士君

 もう一点、十分でないと思う点で、被害者対策というのがあります。

 今度のセンターでは、情報提供というのが中心になっていますけれども、日本のこの被害者対策の現状、大変立ち後れているわけですね。先日、ある議連の勉強会で、各国の被害者対策などを勉強する機会がありましたけれども、イギリスなどはきちっとした法律もできまして、年間四百億ぐらいの予算もあるんだということが言われておりました。

 今回の中で、情報提供にとどまっている理由と、これも今後の拡充の方向についてはいかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 近時、だれもが犯罪被害者になり得るという時代になっておりまして、これは社会を挙げて犯罪被害者をどう遇するかということを考えていかなきゃならない状況になっております。この犯罪被害者支援の関係で、基本的には情報提供ではございますけれども、この司法支援センターに業務として位置付けられたということもそういうことがバックグラウンドにあるわけでございます。

 基本は今申しましたように情報提供ではございますけれども、しかしこの法的主体が一体として民事の法律扶助をやるということから、当然、経済的に困っておられる犯罪被害者の方々はその民事の法律扶助の方にサービスを提供することに誘導するということも容易にできるわけでございますし、また全体といたしましてスタッフ弁護士が、経験のある者を積み重ねられ、経験を積み重ねていける、そういうスタッフ弁護士を置けるということにもメリットがあろうかと思います。

 ただ、本格的には、御指摘のとおり、この被害者支援そのものを一体どういうふうに今後していくかということは問題点としてはあろうかと思われますけれども、それは犯罪被害者そのものの支援の枠組みでどういう検討がなされるかということを慎重に私どもとしては見守って、かつそれをこの支援に反映していきたいと、このように考えているわけでございます。

井上哲士君

 是非、この点は積極的な検討をお願いをしたいと思います。

 ただ、一つの組織が刑事の被疑者、被告人に対する業務と犯罪被害者に対する業務と両方担うということになるわけで、一方の利用者からは不信などが生じないようなことも必要かと思うんですが、この辺の必要な運用の工夫など考えていることがあればお願いをします。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これ、おっしゃるとおり、これが一つの仮に弁護士事務所だというふうにいたしますと、一方で犯罪被害者をケアし、他方で被疑者の、あるいは被告人の弁護をするということはなかなか難しい問題がございます。

 一つの弁護士事務所でございませんで、それぞれ弁護士に対するサービスを、あるいはその他の法律サービスを提供するということで、サービスの提供主体そのものはこの支援センターではない場合が多いわけでございますので、そこはやや普通の場合よりはそのことについて楽観的でいられる側面もあるわけでございますけれども、しかし、外部から見ますと、おっしゃるとおり非常に注意を要するところもございますので、その辺は運用面で十分に検討していきたいと思います。

井上哲士君

 最後に、予算の問題でお聞きをします。

 先ほどの質疑にもあったんですが、今の扶助協会の現状でいいますと、場所もそして人も弁護士会に間借りをしていたり、それから兼任という場合が多いと。場所についてはきちっとした確保という答弁でありましたけれども、そうするとスタッフについても今のような弁護士会との兼任というようなことはもうなくなって、全部専任スタッフになっていくと、こういう理解でよろしいんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、実際にどうするかということはなかなか難しい問題でございますけれども、先ほども申し上げましたように、概念的にはもう独立したスタッフを持たないと、これはとてもこのサービスの提供を有効にできるということにならないと思いますので、それ、いろんな形態はあるとは思いますけれども、しかし独自のスタッフというものに固執はしたいと、このように考えております。

井上哲士君

 最後に、大臣にお聞きをいたします。

 今日は、繰り返し必要な予算の確保に努めるという決意と御答弁がありました。一部には、法律扶助と国選を一体の組織でやることによって事務的効率が図れるということで、今よりも予算削られるんじゃないかという不安さえ挙げる方もいらっしゃるんです。もちろん、そんなことはあってはなりませんし、そこは当然ながら確保し、これを更に大きく上回る予算をしっかり確保するということが正にこの制度がきちっといくかどうかに懸かっているかと思います。

 衆議院の答弁見ていますと、大臣の答弁で、法務省としては「必要な予算の確保に努めてまいりたいと」、「これは、人がかわりましてもこの議事録は永久に残りますから、これは法務省の公的な意思として私は残しておきます。私の遺言状と考えてください。」と、こういう答弁を大臣がされております。

 お元気なわけですから、遺言状ということは、多分そういうものも胸に秘めて死に物狂いで頑張るという意味なんだと受け止めたわけですけれども、そういう決意を改めて最後にお聞きをいたしまして、質問を終わります。

国務大臣(野沢太三君)

 正に、この法律、法案が魂が入るかどうか、これは結局、人と物とお金、特に国の方から手当てするものとしては予算の獲得が最も大事な仕事と考えております。

 今の間借りで仕事をしているというような状況であるとか、あるいは民事法律扶助についても、これまでの努力に加えまして、更なるまた期待も大きくなっているわけでございますので、この点を含めまして予算の獲得につきましては全力を挙げて努力をするつもりでございますが、関係省庁とのこれからの協議もございますし、それからまた、この予算の獲得につきましては国会における皆さん方の御支援も大変物を言うということもまたこれ事実でございます。正に、議事録は今後とも物を言うことになるような立派な御提言もいただいておりますので、それを踏まえまして、法務省、しっかり取り組むつもりでございます。

 ありがとうございます。

委員長(山本保君)

 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。

 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。

 総合法律支援法案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕


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