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2004 年 6 月 10 日

法務委員会
不動産登記法施行に伴う関係法整備法案
(質疑・採決)


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 先ほど不動産登記法案の提案の理由説明をお聞きをいたしました。この法案が、不動産登記制度について、登記の正確性を確保しつつ国民の利便性の一層の向上を図るためと、こういう御説明でありました。

 利便性の向上、確かに重要であります。同時に、やはりこうした土地をめぐる様々なトラブル、事件、詐欺などを考えますと、やはり正確性、そしてまた真実性、信頼性の向上と、確保にとどまらず向上ということも必要だと思うんですが、その点で大臣の所見と、この法案がどうなっているのか、まずお願いいたします。

国務大臣(野沢太三君)

 最も基本的な問題でございます。委員が今御指摘のとおり、国民の重要な財産である不動産に関する権利を保全し、不動産取引の安全と円滑に資するということを目的とする不動産登記制度におきましては、利便性の向上だけではなく、登記の正確性の確保を図ることが重要でございます。

 今回の法案の改正事項のうち、まず本人確認の正確性確保のためのものといたしましては、まず第一に登記済証と比較して偽造が困難である登記識別情報の制度を導入すること、二つ目が登記識別情報の提供がない場合の本人確認手段である事前通知手続を強化すること、三つ目に資格者代理人による本人確認情報の提供制度の導入等があります。また、登記の内容の正確性の確保に関するものとしては、四番目に登記原因証明情報の提供を必須のものとしていることがございます。

 したがいまして、これまで述べましたような今回の改正法案は、国民の利便性の向上を図るとともに、登記の正確性を確保するという観点からも必要な事項を十分盛り込んだものであると考えております。

井上哲士君

 今後、先ほどもありましたように、具体的には多くは政令や省令にゆだねられるということになりますし、様々な現場での運用ということも含めまして、関係団体とかまた登記所職員の皆さんとの十分な意見交換が必要だと思いますし、それは十分にやっていくということが繰り返し答弁がございました。

 是非お願いをしたいわけですが、今信頼性の確保を向上させるということを申し上げましたが、その点から幾つかお聞きをしますけれども、十九条の二項で、「同一の不動産に関し二以上の申請がされた場合において、その前後が明らかでないときは、これらの申請は、同時にされたものとみなす。」と、こういう規定があるわけですが、これはどういうようなケースを想定をして、そしてその際の内部の処理、手続というのはどのようになっていくのか、その点をお願いします。

政府参考人(房村精一君)

 不動産に関する登記の申請におきましては、順番が問題になることがあります。先に申請されたものが優先するという扱いになっておりますので、そういう順番が大きな意味があるということを踏まえまして、その前後が明らかでないときには同時にされたとみなすという条文をわざわざ置いているわけでございます。

 ただ、実際上は、例えばオンライン申請を考えますと、これはオンラインの場合には、もう来ると同時に受付の処理がされますので、同時ということはまず考えられません。それから、窓口に来た場合におきましても、通常は担当者が来た申請について順次受付を行っていきますので、やはりこれも同時ということは普通は考えられない。まあ、何かの事情でたまたまそこが混乱をしたりして順番が分からなくなったと、そういう極めて限られた場合以外には通常は起こらないと思っています。

 ただ、今回郵送申請を認めますので、郵送の場合ですと、これは固まりでそれぞれ登記所に来ますので、その同じ一回の配達で来たものは、これはもう同時と考えるしかありませんので、これは同時ということで、今後は郵送に関しましてはこの同時ということが増えてこようかと思いますが、従来のような扱い、窓口できちんと受け付けている、あるいはオンラインで申請をしていただくという場合には、この例外的な場合に当たるのは本当に限られているのではないかと、こう思っています。

井上哲士君

 郵送の場合とオンライン、窓口、それぞれの前後というのはどの段階で判断をすることなんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 これは、その登記所に届いたときに受付をすると、こうなっておりますので、登記所のシステムの方にオンラインで来たものと、それから窓口で受け付けるときにも受付をして、同時にその順番が分かるようにするという予定になっております。したがいまして、オンラインで登記所のコンピューターに入るのと、それから窓口に来たのを職員が来たということでそのコンピューターの方に登録をする、その順番で決まりますので、これも同時ということはなく、必ず順番が分かるようにする予定でございます。

井上哲士君

 郵送、郵送の方は。

政府参考人(房村精一君)

 郵送の場合も、郵送で来た時点で職員がその処理をいたしますので、ですから、ただ郵送で一括して来たものについては同じ順番ということにはなります。

井上哲士君

 次に、二十四条一項の件ですが、これは登記官による本人確認の問題です。申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは出頭や質問などで申請人の申請の権限の有無を調査しなければならないと、こうなるわけですが、この疑い得るに足りる相当な理由というのは具体的にはどういうケースなのか。これまでも利用者から登記済証とか実印が盗難にあったので受理しないでくれと、こういうような連絡があって、現にそういうような運用をされてきたと思うんですが、こうしたこれまでの内部処理基準との整合性ということも含めてお願いします。

政府参考人(房村精一君)

 基本的に、例えば所有者の方から登記済証あるいは実印が盗難に遭ったというような形で盗難届を添えてこちらに連絡があると、そういうような場合であれば、これはそれを用いた登記申請がなされた場合には当然疑うに足りる相当な理由があるということになろうかと思います。

 また、警察が捜査をしている過程で、どうも詐欺事件としてこういうことがありそうだというようなことで登記所の方に連絡がある場合もございますが、それは警察がそれなりに捜索をして、捜査をして事情を把握した上で連絡をしていただいたような場合には当然疑うに足りる相当な理由があると、そういうことになろうかと思います。

 大体、以上のようなものが典型例として考えているところでございます。

井上哲士君

 じゃ次に、二十三条の四項第一号の問題ですが、この申請が代理人によってなされた場合に、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるときは第一項の事前通知の規定は適用されないと、こうなっているわけですが、ここで言うこの法務省令で定める事項、これは具体的にはどのようなことが想定をされているんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 この事項につきましては、まず当然のことながら登記の申請を業とすることができる代理人であると、そういうことを言っていただく必要がありますが、そのほかに、まず本人確認の情報の具体的な内容といたしましては、例えば本人と面談等をした際の状況、それから資格者がその申請人と面識があるというときにはその旨と面識が生じた経緯及び時期、それから資格者が申請人と面識がないときは、資格者が申請人本人を確認した際に利用した身分証明書等の本人確認資料の種類及び内容、多分典型的なものとしては免許証とかパスポートがあろうかと思いますが、そういった具体的内容を定めるということを検討しております。

井上哲士君

 もう一点、六十一条で言う登記原因を証明する情報、これは具体的にどのようなものをお考えで、その真実性を担保する方策というのはどのように取られているのか、お願いします。

政府参考人(房村精一君)

 この六十一条の登記原因を証する情報といたしましては、登記の原因となった事実又は法律行為及びこれに基づく物権変動の生じたことを証する情報ということでございますが、例えば売買契約に基づいて所有権移転を申請するという場合でございますと、その売買契約の存在、それから当該売買契約に基づく所有権移転があったということ、そういうことが分かるような情報、したがいまして、具体的にいつだれとだれとで売買を結んだと、で、代金の定めがあると、そういうようなことが必要になろうかと思っております。

 これの真実性の担保ということでございますが、これは登記面上不利益を被る者、すなわち所有権を失ってしまう立場にある売主、この方が登記原因証明情報に文書でいえば署名押印、あるいは電子情報でいただく場合には電子署名をしていただくと、そういうことによってその真実性の担保をするということになろうかと思います。

 また、単独申請の例えば相続というような場合には、客観的にその内容を証明するに足りるもの、例えば相続であれば戸籍謄本と、こういうようなものを付けていただくことになろうかと思いますので、その証拠の種類によって真実性の担保が図られると、こういうことを考えております。

井上哲士君

 この方法によって権利書がなくなるということがずっと議論になっているわけですが、これまでは売買契約で登記申請に必要な最重要の書類として代金決済と引換えに交付されているという慣行があったと思うんですね。ですから、金は払ったけれども登記はされないと、こういうような事態が起きないために非常によく機能をしていたと思うんですが、こういう機能については今後はどう代替をされていくんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 権利証が代金決済の際の重要な役割を果たすというのは、権利証を渡すことによって登記が可能になるということに着目して実質的な同時履行の関係を維持するという役割を果たしていたんだろうと思います。今後は、登記識別情報を利用する場合には、その登記識別情報が同じような機能を果たせるということになろうかと思います。

 ただ、この登記識別情報は、権利証と違いまして、中身を見せるわけにはいかないものですから、仮に書面でやる場合にはやはり封をした形で相手に渡すしかない。その前提としては、まず有効性確認をしていただいて、登記識別情報であるという有効性を確認した上で、これは有効なものですと、ただし中はお見せするわけにはいきませんと、そのような形でお渡しいただくというやや面倒な手続にはなろうかとは思いますが、そのような形を取れば実質的には同じ機能を果たせますし、またオンラインで申請をするのであれば、正にオンラインのそのときに受付まで行きますので、逆に実質的な同時履行というのはかえって従来よりも確保されるのではないかと、こう思っております。

井上哲士君

 最後に、この権利書がなくなる関係で、やはりしっかりとしたものとして確認をしておきたいというのは随分感情としてもあるわけですね。

 そこで、いわゆる登記完了通知というものを完了証というような形にしてはどうかと、こういう強い意見もあるわけですが、この辺はどのように検討をされているんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、従来の登記済証につきましては、次の登記申請に必要ということもありますが、それと同時に、この登記を本当に終わっているんだと、そういうことをほかの人に分かってもらうための証拠として用いられていたという御指摘もございますので、今回の登記識別情報にしてしまいますと、これは人に見せるわけにいきませんので、そういう役割を果たせないということがあります。

 そういうことから、従来の登記済証の持っておりました登記が終わったということをお知らせする機能として登記完了通知というものを考えておりますが、これも単なる通知書ではなくて、御指摘のように、ほかの人たちに登記が終わったということを分かっていただくのに使えるようにということで登記完了証ということにして、その当該登記官が登記官印を押して、ちゃんとした言わばそういう証明書として使えるようなものを発行するということで考えております。

井上哲士君

 終わります。

委員長(山本保君)

 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。

 これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。

 まず、不動産登記法案の採決を行います。

 本案に賛成の方の挙手を願います。

  〔賛成者挙手〕


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