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2004 年 5 月 26 日

憲法調査会


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 戦前の明治憲法の下での天皇は統治権の総攬者として国家のすべての作用を統括する権限を握っておりました。その専制政治の下で国民の権利と自由が奪われ、あの悲惨な戦争に突入をいたしました。そのため、戦前、私たちの党の先輩は、この天皇による専制政治をなくさない限り国民主権の民主主義の実現も平和も実現できないとして、治安維持法などによって迫害、弾圧を受けても天皇制の打倒を訴えました。

 戦後、日本国憲法に天皇条項は残されましたけれども、国家制度として国民主権の原則が明確にされ、天皇制の性格と役割は大きく変わりました。現憲法の下で、天皇条項をなくさなければ日本社会が抱える様々な問題を解決することができないといったようなことではなくなっております。ですから、私たちは、戦前とは違い、現綱領において天皇制の廃止ということは掲げておりません。

 それでは、現天皇条項の下で、日本は国家制度として君主制の国に属するのかどうかという問題があります。

 天皇の機能、権能については、第四条で、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」ということをはっきり明記をしました。ここで言う国事行為とは、国家意思を左右するという力を含まない、全く形式的、儀礼的、栄誉的性質のものだということは一致した見解であると思います。

 このように、憲法が天皇のできる行為を形式的、儀礼的な国事行為に限定し、国の統治権には一切かかわれないことを厳格に定めております。国政に関する権能を持たない君主というものは世界に存在しませんので、日本は国家制度としては君主制の国には属さないことは明白だと思います。

 日本国憲法において天皇制が存続したことは、国民主権の原則を日本独特の形で政治制度に具体化をした現日本国憲法の特質であると言えると思います。

 では、この天皇条項を将来的にどうしていくのがよいのかという問題であります。

 日本共産党の立場は、一人の個人が世襲で国民統合の象徴となるという現制度は、民主主義及び人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則を今以上に花開かせるためには、将来の方向として、民主共和制の政治体制の実現を図るべきだと考えています。しかし、現在の天皇制は憲法に定められている制度であり、その廃止は、国民の間で情勢が熟し、国民の総意で解決されるべきだと思います。

 今大事なことは、天皇の権能を制限する憲法の条項を厳格に守って、その逸脱を許さないこと、そして天皇の政治利用などをさせないことだと思います。

 現在、私たちは、国会の開会式には参加しておりません。これは天皇制を認めないからではありません。戦前は、天皇が帝国議会を自分の補佐する機関として扱って、そこで事実上議会を指図する意味を持った勅語を述べたりしておりました。今の開会式は、戦後、政治制度が根本的に転換をして、国会が独立をした国権の最高機関に変わったのに、戦前のこのやり方を形を変えて引き継いできたものですから、私たちは憲法を守るという立場に立って、これには参加しないという態度を続けております。

 今、憲法の規定を無視をして様々な政治利用を企てるという動きも強まっておりますけれども、私たちは、今必要なことは、憲法の条項を厳格に守る、このことが日本の民主主義にとっても重要な意義を持つものだと思っております。

 以上です。


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