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2004 年 7 月 6 日

答弁書第三七号

内閣参質一五九第三七号
  平成十六年七月六日

内閣総理大臣 小泉純一郎

参議院議長 倉田 寛之殿

参議院議員井上哲士君外六名提出人身売買に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


参議院議員井上哲士君外六名提出人身売買に関する質問に対する答弁書

一について

 都道府県警察から警察庁に対し、「トラフィッキング事案に関する報告について」(平成十二年一月三十一日付け警察庁事務連絡)等に基づき、女性又は児童に対する人身取引等の事案であるとして報告がされた事案につき、平成十二年から平成十五年までの検挙人員及び起訴人員を調査し、被疑者・被告人の国籍又はその属する地域別に整理した結果は、別表のとおりである。

 全国の地方入国管理官署において本年二月一日から同月二十九日までの間(東京入国管理局においては、同年一月二十九日から同年二月二十九日までの間)に行った入国警備官による違反調査に当たり、容疑者から人身取引被害の有無等を聴取し、その結果を法務省入国管理局において集計・分析したところ、調査対象者三千五百十七名のうち人身取引の被害者に該当する可能性が高いと認められた者の数は、五十三名(タイ人三十四名、フィリピン人十六名、韓国人一名、インドネシア人一名及びコロンビア人一名)であった。

 政府としては、人身取引の撲滅に向けた早急な取組が必要であると考えており、昨年十二月に犯罪対策閣僚会議が取りまとめた「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」(以下「人身取引議定書」という。)の締結に向け、人身取引の適正な処罰を確保できるよう、必要な検討を現在進めているところである。さらに、本年四月からは、内閣官房副長官補を議長とする「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を通じるなどして関係する省庁の連携を一層緊密なものとし、人身取引の撲滅に努めている。

二について

 人身取引の適正な処罰に関する所要の法律案については、可能な限り早期に国会に提出することを目指し、関係省庁が協議するなどして、必要な検討を進めているところである。

三の 1 について

 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図ること等を目的とするものであり、同法第三条の規定に違反して本邦に入った者や、同法第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者については、出入国の公正な管理を妨げたものとして、同法違反の罪が成立し、また、本邦からの退去を強制することができるとされているところ、捜査機関及び地方入国管理官署においては、同法に違反するに至った経緯、背景事情等を十分検討し、人身取引の被害者である者についてはその事情を考慮しながら、それぞれの手続を適切に行っているところである。

三の 2 について

 出入国管理及び難民認定法第二十四条各号のいずれかに該当する退去強制の対象者が本邦における在留を希望した場合、法務大臣は、当該対象者が同法第五十条第一項各号のいずれかに該当するときは、在留を特別に許可することができる。

 人身取引の被害者が本邦における在留を希望する場合にも、人身取引の被害者であることや御指摘の刑事・民事の法的手続の継続中といった事情を含め、諸般の事情を総合的に検討して在留を特別に許可するかどうかを判断し、特別な事情がある場合には、これを許可することとしている。

四の 1 について

 各都道府県に設置されている婦人相談所においては、国籍を問わず、各般の問題を抱えた女性に対し、相談に応ずるとともに、必要がある場合には同所に付設する一時保護所において一時保護を行っており、人身取引の被害に関する相談を受けた場合においても、一時保護、衣食の提供、医療機関の紹介、カウンセリング、通訳の確保等を行っている。また、公共職業安定所においては、我が国において就労可能な在留資格を有しており、支援が必要であると認められる者について、職業紹介等の支援を行っているところであり、これは、人身取引の被害者の就労にも資するものと考えている。

 資力が乏しい犯罪被害者については、現行の民事法律扶助事業を利用して援助を受けることが可能であり、引き続き、同事業の周知に努めてまいりたい。

四の 2 について

 婦人相談所の一時保護所で保護した者のうち人身取引の被害が主訴であったものは、平成十三年度が一名、平成十四年度が二名、平成十五年度が六名である。

 婦人相談所の体制については、相談や一時保護に適切に対応できるよう、その強化に努めているところである。具体的には、平成十四年度から、一時保護した者に対し心理的なケアを行うため一時保護所に心理療法担当職員を配置するとともに、侵入者等を防ぐため一時保護所の夜間の警備体制を強化しており、また、いつでも相談に応じられるよう、休日及び夜間における電話相談も実施しているところである。さらに、本年度からは、一時保護した者が乳幼児を連れている場合にも適切に対応できるよう、乳幼児の世話をする指導員を配置することとしたところである。

四の 3 について

 御指摘の民間のシェルターについては、人身取引被害者を保護するため設けられているものであって、人道的見地から運営されているものと承知しており、婦人相談所等関係機関において、必要に応じ、これらとの連携を図ってまいりたい。

 また、御指摘の公的なシェルターについては、これまでも婦人相談所が一時保護等を行ってきたところであり、引き続き、その活用を図ってまいりたい。

五について

 人身取引議定書の締結については、可能な限り早期に国会の承認を求めることを目指して、人身取引議定書を実施するための国内法整備の要否及びその内容について、関係省庁間での検討を鋭意進めているところである。

 また、国際捜査共助に関しては、我が国は、国際捜査共助法(昭和五十五年法律第六十九号)に基づき、御指摘の東南アジア、南アメリカ等の地域を含む諸外国との間で捜査共助を実施してきた実績があり、今後も、二国間の刑事共助に関する条約の締結を含め、より迅速かつ円滑な共助の実施を可能とするための検討も行ってまいりたいと考えている。


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