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2010年4月13日(火)

外交防衛委員会

  • 米軍関係者の犯罪について、重要な事件以外は日本が第一次裁判権を放棄するという日米間の密約問題について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 日本国内での米兵犯罪への裁判権放棄の密約問題についてお聞きをいたします。

 日本国内での米兵犯罪について、日米地位協定上日本側に第一次裁判権がある場合でも、重要な事件以外は裁判権を行使せずに事実上放棄するという秘密合意があるということが問題になってまいりました。これは、一九五三年の十月二十八日の日米合同委員会の裁判権分科委員会刑事部会の秘密議事録に記されたものであります。この中で、日本側の部会長の声明として、日本に著しく重要と考える事件以外では裁判権を行使するつもりがないと、こう述べられております。この秘密議事録が二〇〇八年にアメリカの公文書館で米政府の解禁文書の中から発見をされましたけれども、前政権はこの存在を認めてきませんでした。

 ところが、十日の日に複数の報道機関がこの合意を裏付ける文書が外務省に保管されているというふうに報じました。一九五八年の十月の、当時の岸首相、藤山外務大臣、マッカーサー駐日大使の会談録であります。報道によりますと、この会談録では、マッカーサー大使が、五三年の日米合同委員会で日本側が日本にとって実質的に重要と考える事件を除き米兵に対する一次裁判権を行使しないと発言したことを指摘し、これを公表するように求めたけれども日本側が断ったと、こういう会談録だというふうに報道されております。

 これは、核密約に関する外務省の調査の中で発見をされたということでありますけれども、こういう文書があったという報道は事実でしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 委員御指摘のように、四月十日付けでそういった報道がなされたわけでありますが、文書自身は三月九日にこの核密約をめぐる調査の結果としてホームページに掲載して発表を既に我々として行ったものであります。

 この文書では、確かに一九五三年十月二十八日、刑事裁判権に関する分科委員会の合意議事録の中に、日本側はある場合、裁判権の行使を譲る趣旨が記録されているという記述が出てまいります。ということは、そういった文書があったのではないかという議論が出てくるのは当然だというふうに思っております。ただ、その文書そのものが実際にあるのかどうかということについては、前回、二〇〇八年の情報公開請求に基づいて二〇〇八年の時点で確認をしたところ、そういったものはなかったということで、当時の外務大臣があるいは内閣がそういった返事をしているということでございます。

 本件については、いったん調査はしたものの、そしてそういう結果が出ているものの、改めてそういう文書の存在を示唆する表現が情報公開の中で明らかになりましたので、今後、引き続き適切な形で説明責任を果たしていくよう努力したいというふうに考えております。

 具体的には、これから外務省の文書について三十年を超えたものについては原則公開という形で情報公開を進めていくことにしておりますが、たくさん文書がございます。どこから手を付けていくかという判断をまずしなければなりません。その判断をする過程で、こういった行政協定とか地位協定に関するものについて優先順位を高くして公開していくということが一つ考えられるのではないかと思っております。

井上哲士君

 前政権が認めてこなかったというのは今の答弁にあったとおりでありますが、これは、先ほど言いましたように、アメリカでは公文書館でもう公開をされ、そしてそれを裏付ける報道もあり、その文書もあったということを今御答弁がありました。ですから、核密約とある意味同じ構図なわけですね。アメリカでは公開をされ、それを裏付ける資料もあると。しかし、前政権はこれを認めてこなかったと。こういう状態というのは外交に対する信頼を失うということで、あの核密約の調査も大臣が命じて行われたわけでありますね。

 今適切な形でということは言われましたが、新政権の下で、この文書があるかどうかという調査は既に行われたのか、それから、もしまだだとすれば始められるのか、その点はいかがでしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 まず、そういった調査は行っておりません。そして、先ほど言いましたように、それをやるとしたら徹底的にやる、今回の密約調査のように徹底的にやらなければならないわけであります。

 密約調査のときには十五人の人間をフルに使って、二か月掛かって調査結果が出たということであります。それだけのマンパワーをつぎ込んでやっていくというのは、なかなか限られた資源をどういうふうに使っていくかという中で難しい面もあります。

 ですから、私、先ほど申し上げましたように、今後、三十年を超えた文書について、順次、テーマごとに公開をしていく。その公開をしていく順番をどう付けるかということもこれから議論をしていくんですが、そういう中で、こういった行政協定、地位協定にかかわるものについて優先順位を高くして公開していくということは考えられるのではないかと。もちろん、そのほかにもこういったものを早く公開しろという声はたくさんございます。そういう中で、どれに順番を付けていくかということは中で議論をしなければなりませんが、私は、地位協定の議論もこれから日米間で様々行っていかなければなりませんし、こういった過去の資料についてきちんと精査をして、現実がどうであったのかということをなるべく明らかにしていくということは重要なことではないかというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 核密約のときと違って、これは日米合同委員会の議事録なんですね。日にちも特定されています。ですから、これは外務省に保管されているはずの文書でありますし、しかも、先ほどあった一九五八年の議事録でいいますと、アメリカ側の方は公開を求めていると、ところが日本が拒否をしたということなわけですね。

 この間、この種の合同委員会の議事録についてはアメリカの同意がないから出せないんだという答弁がありましたけど、これはそれもクリアされているわけでありますし、やはり国家の主権にかかわる裁判権の問題でありますから、優先して調査をして明らかにし、発表していただきたいと思いますけれども、改めていかがでしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 ですから、一通り調査したけど出てこなかったということですね。これは二〇〇八年、そんなに昔のことではないわけであります。

 密約のときには、外務省中の資料を徹底的に調査をして、そういう中でいろいろな資料、今回のものもそうなんですが、いろんなものが出てきたわけであります。ですから、担当部署だけではなくて、それ以外も含めて全省的に調査をしていくということになると、それはなかなか大変な作業であることは間違いございません。

 そういう中で、幾つか今までこういうことがあったんではないかという指摘されている問題がありますので、そういう中でどれを優先的にやっていくかという問題で、私としては、先ほど申し上げましたように、こういった地位協定、行政協定にかかわる文書の公開ということについてはかなり重点を高くしてやっていく価値があるのではないかと、そういうふうに思っているところであります。

井上哲士君

 是非最優先でやっていただきたいと思います。

 この密約が結ばれた年に、十月の七日に法務省の刑事局長から検事長、検事正あてに通達、行政協定の第十七条の改正についてというものが出されておりますけれども、この通達は今でも有効だということでよろしいでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 御指摘の昭和二十八年十月七日の刑事局長通達は、基本的に現在も有効であると考えております。

井上哲士君

 この通達の中で、米兵犯罪への第一次裁判権の行使については、差し当たり、日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ第一次の裁判権を行使するのが適当であるという、同じ趣旨のことが述べられております。

 しかし、実際には、検察によって重要な事件でないと判断されることによって国民や被害者にとって重要な事件も不起訴となって、米軍優遇になっているというふうに思います。

 これが問題になった際に、当時の高村外務大臣が、二〇〇七年度の数字で、我が国が第一次裁判権を持つ米軍関係者の事件のうち四八・六%は起訴をされ、〇六年の日本全体の起訴の場合の四二・四%を上回っているんだと、優遇じゃないということを言われました。これは、事件数の八割前後を占める道路交通法違反などが含んでおりまして、きちっとこれを検証する数字じゃないと思います。

 そこで、改めて聞きますけれども、一般刑法犯で、自動車による過失致死傷を除いた場合の二〇〇一年から二〇〇八年までの通常受理人数、起訴人員及び平均の起訴率について、日本全体と、日本が第一次裁判権を有する米軍関係者、それぞれについて数字を明らかにしてください。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 御指摘ありましたように、刑法犯全体としては、米軍人等による事件と全国の事件はそれほど起訴比率について遜色はないのではないかというふうに考えております。

 御指摘の自動車による業務上過失致死傷を除いた刑法犯、一般刑法犯と呼んでおりますが、これについて申し上げますと、平成十三年から二十年までのこれを平均して申し上げますと、全国の刑法犯につきましては、通常受理人員が約三十四万五千七百十六名、そのうち起訴人員が約十万三千八百八十四名、起訴率が約四八・六%となっております。

 これに対して、米軍人等による刑法犯につきましては、通常受理人員が約百六十二名、起訴人員が約二十七名となっておりまして、起訴率は約一七・五%というふうになっております。

井上哲士君

 今の数のように、米軍関係者の起訴率は、やはり今のでいいますと三分の一程度のわけですね。これ、やはり米軍優遇になっているという事態ではありませんか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 数字の見方をどう見るかということの問題があろうかと思いますが、そもそも全国の刑法犯の処理件数というのは毎年二十万件、三十万件というオーダーの数字であるのに対して、米軍人等による刑法犯の処理件数というのは毎年百数十件前後であります。

 また、罪種別に分けますと更に人数が少のうございまして、一つの、殺人とかでいえば一件とか二件とか三件とかという、そういう数字になりますので、統計上どこまでの差異を認めることができるのかという問題が一つあります。

 それから、罪種別に見ますと、両者とも窃盗罪の占める割合がかなり大きい、七、八割に達するのではないかと思います。窃盗について見ますと、米軍人等の起訴率というのは全国平均よりもかなり低くなっております。これが一般刑法犯の起訴率が低いことのかなり大きな要因ではないかなというふうには思っておるわけでございますが、他方で、一般の刑法犯につきましては警察段階で万引き等については微罪処分ということで処理されることがございます。これは検察庁に送致されないことになるわけですが、米軍人等については微罪事件についても検察庁に全件送致されるということで、こういった事件は極めて軽微な事件ということで不起訴処分になることが多いのではないかというふうに思われますので、こういった点も相当影響しているのではないかなというふうには考えているところでございます。

井上哲士君

 言われましたように、米軍の数は非常に少のうございますので、例えば米軍に関しては〇一年から〇八年、合計で私、比較してみました。それの起訴率と〇八年の日本全体の起訴率を比べますと、例えば強制わいせつは、米兵関係は起訴率一〇・五%、日本全体は五四・七%。強姦は、米兵関係二〇%、日本全体は五二・二%。傷害は、米兵関係が二七・一%、日本全体は四九・九%と。およそこういう事件が重要でないとはとても思えないわけでありまして、やはり土台にあの密約があり、米軍優遇にゆがめられているんじゃないかという疑いを禁じられないわけであります。

 この問題は極めて重要でありますので、今後も更に質問をしていきますが、今日は時間ですので終わります。


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