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2010年5月20日(木)

外交防衛委員会

  • 米国内での米軍飛行訓練は、住宅地域上空での訓練は行わず、動物や環境への影響を配慮して行っています。他方、日本国内での在日米軍飛行訓練は、住宅密集地上空を我が物顔で低空飛行訓練をしている。しかも、在日米軍の訓練空域については日米地位協定にも明文規定ないことを指摘して、飛行訓練中止を求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 群馬での米軍による低空飛行訓練について再度お聞きいたします。

 前回、四月の八日に当委員会で質問をいたしました。当時は少し訓練は収まっていたと聞いていたんですが、実は、後の報道を見ますと、私が質問した当日に随分訓練が行われまして、多くの苦情が寄せられております。さらに、今月に入っても低空飛行訓練が続けられておりまして、一月から五月の十二日までで県や市町村に寄せられた苦情件数は五百七十四件に上っております。特に、昨年までは四月の苦情件数は一けた台だったんですが、今年は九十七件に急増をしている。そして、ゴールデンウイーク中の五月の四日、五日の両日にも四十一件の苦情があったと、こういうことなわけですね。

 前回質問の際に、雫石の事故の後に自衛隊の訓練地域はすべて海上に設定をされたと、にもかかわらず、この群馬の人口の密集地の上空にこの訓練空域であるエリアHとエリア3が設定をされ、しかも自衛隊の戦闘機の訓練は行われずに専ら米軍の旋回訓練などが行われているという問題を指摘をいたしました。何でこんなことになっているのかということを申し上げたわけでありますが、政務官、重要な指摘なので、この点の詳細について調べて後日お答えしたいという答弁がありました。

 まず、その後、詳細がどのように判明をしたか、答弁をいただきたいと思います。

防衛大臣政務官(長島昭久君)

 井上委員から御指摘をいただきまして、私どもで、三十年以上前の資料でありますけれども関連資料が残っていないか捜索をさせていただきまして、結論的に申し上げますと、この空域の設置の目的あるいは内陸部上空に設置された理由についての資料は見付かりませんで、この場で明確にお答えすることはできません。

 ただ、経緯につきましては幾つか資料が出てまいりまして、当時の防衛庁長官から旧運輸省の航空局と協議をした資料が幾つか出ておりまして、例えばエリアHにつきましては、昭和四十六年八月十日付けで防衛庁長官より運輸大臣あてに自衛隊の訓練空域及び試験空域について協議が設定されると、こういう資料、あるいは昭和五十二年十一月九日付けでありますが、我が方の当時の防衛局長より当時の運輸省航空局長あてに、エリアH訓練・試験空域(高高度)の設定についての協議の促進に関する資料が、文書が残っておりました。

 ただ、先ほど申し上げましたように、経緯は断片的には分かるものの、設定した理由につきましては、これまでお答えすることができるほどの関連資料が残っておりませんので御容赦いただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 今もありましたように、当時の運輸省と協議をしているわけですが、国土交通省はこの経緯についてはどういう認識をされているでしょうか。

国土交通省航空局長(前田隆平君)

 お答え申し上げます。

 ただいまの御答弁のとおりでございまして、昭和四十六年に雫石事故が起こり、それを受けて定められました航空交通安全緊急対策要綱、ここで民間航空機の飛行する空域と自衛隊機の訓練及び試験空域とを完全に分離するということが定められたことを踏まえまして、当時の防衛庁と協議の上に設定されたものでございます。

 エリアHにつきましても、当時、防衛庁の方から設定の依頼がございまして、民間航空機の航空路との分離を図るなど協議を行った上で、これは昭和五十三年でございますが、現在の位置に設定されてございます。

井上哲士君

 民間航空機と分離を図ると、それはそのとおりなんですね。しかし、そのために全部海上に訓練地域が設定されたのに、なぜこんな人口密集地に設定されたのかということが焦点なわけでありますが、今の答弁でも、政務官の答弁でも、目的、理由はよく分からないわけですね。

 私は、であるならば、現実に今これが米軍の低空飛行訓練の空域になっているということを見れば、それ自体を見直すことが必要であると思います。

 この訓練空域の使用統制機関は入間基地だということでありますが、自衛隊以外の者がこれを使用する場合はAIPに基づいて使用の都度自衛隊と調整するということでありますが、この調整は当然米軍も行うということでよろしいんでしょうか。

防衛大臣政務官(長島昭久君)

 今、井上委員が御指摘いただきましたように、自衛隊の訓練・試験空域は国土交通大臣の公示により設定され、自衛隊以外の者がこれを使用する場合には、国土交通省が発行している、委員がおっしゃいましたAIPに基づいて使用の都度自衛隊と米軍との間で調整されると、こういうことでございます。

井上哲士君

 そうしますと、今年一月から、米軍からこの空域を使用する旨のこのAIPに基づく通報があった日数及び時間を月ごとに明らかにしていただきたいと思います。

防衛大臣政務官(長島昭久君)

 本年一月以降、米軍からエリアHの使用統制機関に対してその使用予定の通報があった月ごとの日数及び時間数は、以下のとおりであります。

 一月が九日間、約十八時間、二月が十六日間、約四十時間、三月が五日間、約二十九時間、四月が十日間、約十六時間、五月は現時点でまだデータがまとまっておりません。

 以上です。

井上哲士君

 先日の質疑では、米軍の運用に係る事項なので必ずしも承知をしていないというようなこともありましたけれども、実際にはこういう調整をして、空域の使用状況については把握をされているということであります。

 それで、先日の質疑の際、このHエリアでは自衛隊の戦闘機の訓練はやっていないということであります。確認しますけれども、雫石事件以降、自衛隊のジェット戦闘機、陸上部の上空では低空飛行訓練はもちろん、基本的に飛行訓練はやっていないと、こういうことでよろしいんでしょうか。

防衛大臣政務官(長島昭久君)

 必ずしもそうではありません。自衛隊の戦闘機も、任務遂行に万全を期すために陸地の上空において必要な訓練を実施してきております。例えば、指定された時間どおりに目的地まで到着する技術を養うための戦闘航法訓練や射爆撃場において模擬弾を使用した射爆撃訓練などというものを実施しております。

 ただし、低高度で行う訓練飛行につきましては、最低安全高度、これ三百メートルですけれども、以下の高度で飛行する場合は、航空法第八十一条の規定に基づき国土交通大臣の許可を受けていると。その際には自衛隊の飛行場や演習場など自衛隊の施設の上空で行っています。したがって、それ以外の場所においては最低安全高度以下の高度で飛行するいわゆる低高度訓練というものは行っておりません。

 以上です。

井上哲士君

 低高度訓練については、施設の上空以外は自衛隊はやっておらぬということのわけですが、この訓練が今米軍によって行われていることが大きな問題なんですが、米軍が国内で同じような低空の飛行訓練を行う場合は米国内ではどういう規制が掛けられているでしょうか。外務省、お願いします。

外交防衛委員会委員長(田中直紀君)

 もう一回質問してください。

井上哲士君

 昨日通告してあるんですが。

外務副大臣(福山哲郎君)

 お答えいたします。

 米国本土において人口密集地の上空を米軍機が訓練目的で飛行することがあるか否かについては、詳細については外務省として承知をしてはおりません。低空飛行訓練に関していえば、これを人口密集地の上空で行うことがあるとは承知しておりません。

井上哲士君

 米軍の場合は、米国内では指定空域でしか訓練やっておりませんし、当然、国土が非常に広いこともありますが、住宅密集地ではやっておりませんし、野生生物の生理的影響とか、それから自然公園における環境破壊とか、そういうことまで考慮してこういう訓練が行われるわけですね。日本国民は野生生物以下なのかということにもなるわけでありますが。

 政府はこれまで、安保条約の目的達成のために米軍が施設・区域以外の上空でも通常の飛行訓練を行うことは地位協定上認められるということで、この低空飛行訓練について答弁をされてきましたが、地位協定上認められると言いますけれども、そのことは一体明文的にどこに地位協定に書かれているんでしょうか。

外務副大臣(福山哲郎君)

 日米の地位協定の特定の条項に明記されているというわけではなく、日米安保条約及び日米地位協定により、米軍が飛行訓練を含む軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを前提とした上で、日米安保条約の目的達成のために我が国に駐留することを米軍に認めていることから導き出されるものと承知しております。

井上哲士君

 駐留米軍がいろんな活動をすると。しかし、自由勝手に何やってもいいということになれば、これはもう占領軍と一緒なんですね。ですから、施設・区域の使用の在り方とか裁判権の問題とか、それを明文で取り決めたというのが地位協定なわけですね。

 この低空飛行訓練という問題は、先ほどありましたように、日本の自衛隊は上空では基本的にやっていない、そしてアメリカでは様々な規制が掛かっていると。それをやって、結果として様々な被害を与えているわけですね。それを、地位協定の明文規定もないということは、私はこれはおかしな話だと思うんですけれども、改めて、いかがですか。

副大臣(福山哲郎君)

 これは委員はもう御承知の上で御質問いただいていると思いますが、低空飛行訓練に関しては、平成十一年の日米合同委員会合意において人口密集地域に妥当な考慮を払うとされておりまして、我が国において在日米軍が低空飛行訓練を人口密集地上空で何ら制限なしに行うことが許されているわけではないというふうに承知しております。

井上哲士君

 全く空域の制限もなしに今行われているんですね。

 群馬上空などで行われているああいう訓練について、日本は空域としてアメリカ側に提供している、訓練空域として、こういう認識でしょうか、政府は。

防衛大臣政務官(長島昭久君)

 先ほどから説明申し上げているように、国土交通大臣の公示によって設定されているわけですけれども、米軍を含めた第三者が自衛隊の訓練空域を使用する場合には、先ほど申し上げましたAIPを踏まえて自衛隊との間で空域使用の調整を実施すると。しかし、この空域というのは、自衛隊以外の者がこれを使用することを禁止されるといった排他的な性格を有するものではないために、防衛省・自衛隊としては、米軍を含め第三者に対して使用を禁止したり許可したりするそういう立場にはない、したがいまして調整を続けていると、こういうことでございます。

 しかも、委員が御指摘いただいたような、例えば市街地の上を飛んでしまうとかこういう場合には、その都度我々としては在日米軍を通じて米側に抗議をし、再発の防止を求めてきたと。基本的には、先ほど福山副大臣からお話がありましたように、日米合同委員会の取決めに従ってかなり米側に対しては規制をした形で空域の使用を許可していると、こういうことになっております。

井上哲士君

 しかし、現実は、これはずっと国会でも議論されてきましたけれども、様々な被害が続けられているわけですね。

 外務大臣、答弁いただきたいんですが、米国内では住宅地上空などでの訓練は行われておりません。そして、日本の自衛隊も、安全の確保という点からいっても住民の被害からという点からいっても低空訓練というのは行っていない、基本的に、こういうことになっているわけですね。

 ところが、そういう日本の上空を我が物顔に米軍だけがこういう低空飛行訓練をやっている、そして地位協定上にも明文の規定もなしに行われている。私はこれは異常だと思いますけれども、大臣、是正をするという意思はありませんか。

外務大臣(岡田克也君)

 まず、委員御指摘のこの群馬県前橋市上空における飛行訓練でありますが、これが米軍が定義するところの低空飛行訓練であったのかどうか。私の聞くところでは、それが低空飛行訓練であったということは、私自身承知をしておりません。

 そして、低空飛行訓練に関して申し上げますと、先ほど来御答弁申し上げておりますように、在日米軍による低空飛行訓練についての日米合同委員会合意というものがございます。その中に、全体で六項目にわたって、その影響を最小限にするための具体的なことが書いてあるということでございます。

 この日米合意というものがしっかりと守られるように、今後も日米合同委員会の場等で米国側と意見交換をしてまいりたいというふうに思っているところであります。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、定義の問題ではなくて、現実に住民の皆さんが被害を受けていると、何とかしてほしいという声が上がっているわけでありますから、是非正していただきたいと思います。

 終わります。


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