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2007年3月29日(木)

文教科学委員会
「国立大学法人の教育研究の基盤になっている運営費交付金」について

  • 国立大学法人への国からの運営交付金が毎年減らされていることが教育研究に深刻な影響を与えていることを強調。運営交付金に研究内容による競争をもちこんだならば相当な大学が経営困難になることを指摘し、大学の教育研究の基盤を支える運営交付金の確保を要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 提案されている法案は賛成でありますが、今日、各委員からもありましたように、現在夜間主コースに行かれている学生の皆さんの学ぶ権利であるとか、そして社会人の方の学ぶ権利などがしっかり保障されるということは私からも求めておきたいと思います。

 統合される新しい大学、そしてそれ以外の国立大法人にとって財政基盤の確保というのは非常に重要だということは、今日も様々な議論がありました。国立大学法人法案の質疑の際に、当時の遠山大臣は、国立大学は、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡の取れた配置により地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど重要な役割があると、こう言われました。そして、それを担う大学に対する財政措置については、移行前に必要とされた公費投入額を十分に踏まえて、従来以上に国立大学における教育研究が確実に実施されるよう必要な所要額の確保に文部科学省としてしっかりと取り組んでまいりたいと、こういう答弁があるわけですね。

 この立場は今日においても当然変わらないと思うんですが、それをまず確認をしておきたいのと、こういう資金の確保といった場合に、先ほども大臣から様々な資金が言われたわけでありますけれども、とりわけこの運営費交付金が持つ役割、意義についてどのように文科省としてはとらえているのか、まずお願いをしたいと思います。

政府参考人(清水潔君)

 運営費交付金のまず性格についてでございますけれども、運営費交付金は六年間の中期目標期間、中期計画に沿って安定的かつ持続的に教育研究を展開するための、そういう意味での基盤的経費であるというふうに認識しております。

 最初にお尋ねがございました法人の移行に当たっては、法人化前の公費投入額を踏まえながら十六年度においては実質的に同水準の額を措置したということはこれまでも答弁させていただいておるところでございますが、運営費交付金の算定に当たっては、一定の効率化を図りつつも、新たな教育研究ニーズに対応して、各大学の取組については特別教育研究経費による増額を図ると、こういうふうな仕組みを取っておるところであり、いずれにいたしましても、基盤的経費である運営費交付金を、その本来の性格にかんがみて、それを支えるものとしてきちんと手当てをしていきたい、このように思っております。

井上哲士君

 既に国立大学法人でも運営費交付金の算定ルールで毎年一%の効率化が明記をされまして、法人化後の〇五年で九十八億円、〇七年は百七十一億円、この三年間で既に三百七十一億円の削減となっております。百七十一億円といいますと、近くでいいますと千葉大学の一年間分ぐらいの交付金に当たる大変大きな規模の予算が毎年削減をされておりまして、非常勤講師の削減や語学教育の削減、教材費や印刷費の減少、学生図書や雑誌購入の制限、実験設備を維持更新する経費の不足など様々深刻なことも上がっておりますし、文部科学省の行ったアンケートでも、法人化以降の研究室の経費は、約八五%の研究室が削減をされた若しくは削減される見込みと、こういうことも出ております。

 その上、今もお話ありましたように、二月二十七日の経済財政諮問会議で民間議員から、この運営費交付金の算定ルールを見直せと、こういう議論がされまして、これに対して三月八日の国立大学協会の総会でも学長の皆さんから相当異論が出たと、こういう報道もされております。

 三月十八日付の朝日新聞に、この問題について、科学研究費補助金の獲得実績に基づいて計算をすれば、全国八十七の大学のうち七十で交付金が減って、四十七は半分以下になると。新聞報道では大学がない県が半分になってしまうと、こういう報道がされまして、大変不安の声が上がっておるわけですけれども、こういうシミュレーションを文部科学省が行っておられるというのは、これは事実でしょうか。

政府参考人(清水潔君)

 結論的に申し上げれば、報道された試算あるいはシミュレーションということでございますけれども、これは私どもとして責任を持って試算したというふうな、行ったというふうな性格のものではございません。

 と申しますのは、報道内容、例えば国立大学の教育機能を全く考慮しないあり得べからず前提だと私は思っております。そういう意味で、例えば運営費交付金総額を科研費の補助金の獲得割合に応じて計算するというアプローチは、そもそも国立大学の性格あるいは大学の性格を没却しているというふうに思っております。

 ただ、この試み計算、試算でございますけれども、先行する二月二十七日の報道を受けて、それをどう具体的にイメージするという観点から、担当者がいろんな仮定に仮定を重ねた上で計算したものがこういう報道になったものと、こういうふうに承知しております。

井上哲士君

 試みの案としては行われたようでありますし、そして文部科学省としては、結果としてこういうふうに地方の大学などが経営ができなくなるようなことがあってはならないと、こういうことだと思います。

 それで、この法人化の際に、法人化によって国立大学に対する財源措置を含めた国の責任は変わるものではないと、こういうことも繰り返し答弁をされておりまして、この経済財政諮問会議で行われている国立大学の運営費交付金の在り方の議論は、こうした国立大学法人ができる際に議論されてきた経緯からは私はかなり外れていると思っております。

 大臣は繰り返し知的エリートを社会に送り出すという、大学の役割をこういう表現もされまして、教育としての役割ということも強調もされているわけですね。そういうことも考えまして、この運営費交付金を確保していくということはやはり国の大きな責任かと思います。

 改めて最後に大臣の御所見と御決意を聞いて、質問を終わりたいと思います。

国務大臣(伊吹文明君)

 先ほど来、神取先生、広中先生、山本先生の御質問にお答えしたとおりの私の考えでやっております。

 したがって、国立大学のみならず、私学も同じ扱いでいいという前提で私学出身の経済財政諮問会議の委員は御発言をいただいておるものだと理解しております。

井上哲士君

 やはり、国立大学の基盤というものを支えていくって非常に大事なわけですね。

 先ほど紹介した試算の記事の中で、文科省のコメントとして、運営費交付金というのは人件費や光熱費などを賄う、人間でいえば三度の食事のようなものだと、こういう言葉が出ております。食事もせずに研究しろ競争しろというのはできないわけでありますから、やっぱりしっかり確保していただきたい。改めて申し上げまして、質問を終わります。


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