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2007年4月26日(木)

文教科学委員会
「放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰法案」と「児童生徒のアレルギー対策」について

  • 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰法案の予備罪等について質問。また、文部科学省として初めて行った小・中・高等学校でのアレルギー疾患の全国調査に基づく対策強化を求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 国民の安全を守りつつ、一方で、自由が不当に抑制をされたり、研究活動の萎縮が起こるということは避けなければなりません。その角度から何点かまず質問をさせていただきますが、この法案の基になります核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の第三条では、「犯罪が単一の国において行われ、容疑者及び被害者が当該国の国民であり、当該容疑者が当該国の領域内で発見され、かつ、他のいずれの国も第九条1又は2の規定に基づいて裁判権を行使する根拠を有しない場合には、適用しない。」と、こういうふうになっております。

 要するに、この条約は純粋な国内犯には適用されないということになっているわけですが、この締結に伴う国内法整備である本法案では、純粋な国内犯も処罰対象としているということになっておりますが、この理由はどういうことなんでしょうか。

政府参考人(森口泰孝君)

 条約の第三条でございますが、繰り返しでございますけれども、犯罪が単一の国において行われ、容疑者及び被害者が当該国の国民であり、当該容疑者が当該国の領域内で発見されたようなケースについては除外しているわけでございますが、これはその部分、純粋の国内の犯という意味ではこれは各国の国内問題ということでございまして、これは各国の判断にゆだねると、そういうことから条約を適用しないということを定めたものでございます。これは条約としての性格上そうなっておるわけでございます。

 ただ、実際に国内でその担保措置を考える場合におきましては、そのようなケースであっても、当然ながら人の生命、身体又は財産に対する危険、これを生じさせることは何ら変わりないわけでございまして、そのようなケースも含めまして法案の対象としていると、そういうことでございます。

井上哲士君

 同じような規制法で、放射線障害の防止に関する法律がございますが、この第二条では規制の対象になる放射性同位元素を定義をして、そして政令と告示によってこの同位元素の数量や濃度について種類ごとに下限を定めております。

 ところが、本法案の第二条で放射性物質を定義しておりますけれども、こういう規制の下限については定めていないわけですね。そうしますと、従来のこの障害防止法では規制されないような低濃度の放射性物質の所持や廃棄が、こちらの法案によって処罰の対象になるんではないかという懸念があるんですが、これはどうでしょうか。

政府参考人(森口泰孝君)

 今先生の御質問という意味では、そういう下限値を設けている部分以下の放射性物質、それについてもこの法案の対象となるわけでございます。

 それで、その趣旨でございますけれども、この法案の目的としては、放射性物質等による人の生命、身体又は財産の被害を防止し、公共の安全を確保すると、これがこの法案の目的でございますので、その放射性物質の下限値を設けるということではなくて、個別のその事案ごとにそのような危険が生じたか否かを判断していくと、そういう趣旨からこの法律上は下限値を設けていないと、そういうことでございます。

井上哲士君

 そうすると、いわゆる故意等を持たない形でこの下限値以下の廃棄行為などは、こっちの法案、この法案では対象にならないと、こういうことで確認していいですか。

政府参考人(森口泰孝君)

 故意のない犯罪と、そういう意味ではこの法案自身は故意犯のみを処罰の対象としておりますので、今先生の御指摘のような誤って行為をしてしまったと、そういうことについてはこの法案で処罰されることはございません。

井上哲士君

 さらに、この法律案では放射線発散等の行為の予備を行った者についても処罰対象としておりますが、これまで大規模なテロ行為などの予備罪が適用されたという例はあるんでしょうか。その場合はどういうような要件だったのか。いかがでしょうか。

政府参考人(森口泰孝君)

 大規模なテロに関して予備罪が適用された事例ということでは、先生御承知のとおり、平成七年に発生しました地下鉄サリン事件があるわけでございます。これに関しましては、サリン生成プラントの建設等に携わった者が刑法の第二百一条の殺人予備罪の成立ということで認められた事例がございます。

 これは具体的にどういう事例であったかということでございますけれども、平成八年の東京地裁判決におきましては、被告が考案したサリンの生成工程に基づいて、サリンの標準サンプルの合成に成功しております。また、サリン生成に必要な化学薬品等を大量に購入している。それから、サリン生成プラントの設置予定建屋が既に完成している。生成の各工程の稼働に必要な機器類の選定を開始している。ヘリコプターによる散布計画実行のため、その操縦免許を取得させる目的で教団幹部を米国に派遣していると。こういった諸般の事情に基づきまして、殺人罪の構成要件実現のため実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当な危険性が認められる程度の準備が整えられたと、そういうことから殺人予備罪の成立を認めた例がございます。

井上哲士君

 今、予備罪、殺人予備罪の適用をされたときに認定された事実等についてもあったわけですが、そうなりますと、本法案における予備罪の適用なども同様の要件が求められていると、こういうふうに聞いてよろしいでしょうか。

政府参考人(森口泰孝君)

 この予備罪につきましては、客観的に相当の危険性が認められる程度の準備がなされたか否か等を個別具体的に判断するということでございますので、例として申し上げますと、犯罪の方法を計画したり、犯行の機会を探したり、下見に行くといった行為、それから犯罪に係る資金を調達する行為、犯罪を行う者を募集し、訓練し、その役割分担を決める行為、犯罪に用いる物質、放射性物質、機器等を調達する行為、こういったことが第三条三項の予備罪として処罰される可能性があると、そのように思っております。

井上哲士君

 最初に申しましたように、安全を確保しつつ、濫用によって国民の自由などが不当に制約されるということはあってはならないことでありますので、その点、改めて強調しておきたいと思います。

 あと、残りの時間で、先日発表されましたアレルギー疾患に関する調査研究報告に関連をして幾つかお尋ねをしたいと思います。

 子供のアレルギーの疾患について、全国の公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校を対象にした初の全国調査として発表をされました。関係者は、早く結果を公表してほしいということで大変待ち望んでいたものでありまして、やっと出てきたという思いなんですが、まず調査結果の概要と評価についてお聞きしたいと思います。

政府参考人(樋口修資君)

 お答え申し上げます。

 今回の全国調査の結果といたしましては、児童生徒の各種アレルギー疾患の有病率といたしまして、ぜんそくのお子様が五・七%、アトピー性皮膚炎のお子様が五・五%、アレルギー性鼻炎が九・二%、アレルギー性結膜炎が三・五%、食物アレルギーが二・六%、アナフィラキシーが〇・一四%という調査結果でございました。

 また、各疾患ごとの学校における取組の現状につきましては、例えばぜんそくに関しましては、発作などの緊急時の対応や連絡体制について共通理解を図っているという学校の割合が五八・〇%にとどまっていた。あるいは、アトピー性皮膚炎に関して、温水シャワー等の設備の充実を図っている学校の割合は一四・八%であった。アレルギー性鼻炎、結膜炎に関しまして、特に花粉の飛散時期やほこりの多い日の体育の授業や屋外活動への参加の際に配慮していると答えた学校の割合が二九・四%にとどまっていたということが明らかになったわけであります。

 この調査の結果、どの学校にも、どのクラスにも各種のアレルギー疾患を持つお子さんがおられるという可能性があるということ、そして、アレルギー疾患を持つ児童生徒に対する学校の取組は現状においては必ずしも十分ではないということが明らかになったわけでございまして、私どもといたしましては、今後、専門家による調査研究会を立ち上げまして、学校生活管理指導表というもの、アレルギー版の学校生活管理指導表を作成いたしまして、学校における運用の手引等も専門家の意見をお聞きして作りまして、各教育委員会や学校にこれを周知させまして、教育上適切な配慮がアレルギー疾患を持ったお子さんになされるように私どもとしても取り組んでまいりたいと思っております。

井上哲士君

 初めて全国的調査が行われたということは非常に重要でありますし、今後の対策の抜本的強化が行われるということで関係者は非常に期待をしております。

 今もありましたように、どのクラスにも何らかのアレルギーを持った子がいるという前提でのいろんな取組が必要かと思うんですが、今も少しお話はあったわけですが、この調査結果を踏まえて、文部科学大臣としてはどのような対策を強化をしていかれるのか、少しお願いをしたいと思います。

政府参考人(樋口修資君)

 今後の対応いかんということでございますが、文部科学省といたしましては、各教職員がアレルギー疾患に対するまず認識を深めていただきたい。そして、学校において適切な対応が取れるように、私ども、今回の報告書を全国の国公私立のすべての小中高等学校、中等教育学校、調査対象は公立学校でございましたが、国公私のすべての学校に送付をさせていただくと。そして、教育委員会が今後行います養護教諭を始めとした教職員に対する研修会におきまして、本報告書が活用されるよう促してまいりたいと考えております。

 また、学校が医療機関との連携を一層強化いたしまして、医学的な根拠に基づく取組を進める必要があるということで、医師の診断に基づく取組を進め、学校における取組が安全、確実で効率、効果的なものとなるようにする必要があるだろうと思っているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、アレルギー版の学校生活管理指導表をまずは専門家によってお作りいただいて、それの効果的な適用というものを、学校現場できちんとした教育上の配慮に基づいた取組が促されるよう、私どもとしてもそういった取組を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。

井上哲士君

 現場で御苦労されている養護教員の方々のお話も聞いたんですが、これはかなり学校や地域によって取組に相当の格差があるわけですね。ですから、きちっと実態や認識を徹底することが必要でありますが、同時に、分かっていてもできないいろんな状況もお聞きをしております。例えば、先ほど、アトピー性皮膚炎を持つ児童生徒で非常に効果の高い温水シャワーの整備が一四・八%にとどまっているという調査結果もございました。これなどは、正に現場の先生の努力ではどうしようもない話になっているわけですね。

 例えば、こういう温水シャワーの普及という点で、そもそも効果についてどう認識をされ、更に普及を促進する上ではどういうことをお考えなんでしょうか。

政府参考人(樋口修資君)

 今アトピー性皮膚炎のお話がございましたが、この皮膚炎のかゆみの原因といたしましては汗とかほこりによる刺激が知られておりまして、アトピー性皮膚炎の児童生徒に対します学校における温水シャワー浴に関しましては、諸学校では、特に春から夏にかけて昼休みに実施した事例においてこの皮膚炎の改善が見られたという報告があると承知しております。

 私どもは、今回の実態調査におきまして、温水シャワーを設置している学校の割合が一四・八%にとどまっているわけでございますが、学校に温水シャワーを設置するかどうかは、これは学校の設置者の判断にゆだねられているところでございまして、私どもは、今回の報告書をまずは学校の設置者と各学校に配付をいたしまして、この温水シャワーの効果というものについてのまずは周知を図りますとともに、今後、学校におけるこの先進的な取組事例というものを私ども収集し、それを各学校にお伝えしながら、各学校においてこういう温水シャワー浴の効果というものを踏まえた対応を促してまいりたいと思っておるわけでございます。

井上哲士君

 特に夏場など、子供はもうかゆくて勉強に身が入らないと。近くにいる子はもう家に帰って浴びるというような対応をしているところもあるようでありますけれども、これは是非更に促進をしていただきたいと思うんですね。

 もう一つ、給食の対応の問題ですが、食物アレルギーへの対応について、完全給食を実施している学校の多くは医師の判断等に基づいて配慮をしているということであります。これを更に広げることは重要だと思うんですが、同時に、学校給食というのはやはり教育の一環でありまして、この調査の中でも、みんなと一緒に給食を楽しみたいという子供の声も出ております。正に、そういうのにこたえた教育的配慮が必要だと思うんですが、必ずしもそうなっていない事態もあるんですね。

 例えば、お聞きすると、牛乳が飛び散って体に付いたらいけないという子供について、配慮する余り給食のときに校長室でその子は食べさせていたというのがあるんですが、これは配慮のようで大変子供にとっては苦痛なわけですね。保育園では問題なかったということを保育所の先生が言ったことによって解決したということも聞いたわけですが、医学的配慮とともにこの教育的配慮をしっかりするということも徹底する必要があると思うんですが、この点いかがでしょうか。

政府参考人(樋口修資君)

 御指摘のような事例については私ども承知はしておりませんが、基本的には、学校給食の実施方法は、まずは各学校の設置者が適切に判断していただきたい。食物アレルギーを持つ児童生徒に対しましては、個々のお子さん方の状況に応じた献立の工夫など、適切な対応を行うことが必要であると認識をしております。

 それで、私どもは、通知で様々、この食に関する指導ということについてはいろいろと通知をさせていただいておりますが、この「食に関する指導の手引」というものの中にも、私ども、食物アレルギーを持つ児童生徒に対する学校給食の対応について、保護者や主治医と十分な連携を取って、医師の指示によって個々に応じた弾力的な対応をしていただきたいとお願いをしているところでございまして、具体的には、可能な限り原因食品、アレルギーの原因となる食品を除いた給食を提供する、あるいは別の食品で代替した給食を提供する、あるいは家庭からの弁当持参を認めるなどの、そういった個々に応じた弾力的な対応をお願いをしたい。

 そして、今御指摘がございました、こういった医学的な配慮だけではなくて、他の児童生徒がやはり特別のアレルギー食を食べておられるということでの不信に思ったり、それから当該児童生徒がそのことによっていじめや仲間外れになることがないよう配慮いただくということで、食物アレルギー対応食を提供する場合はできる限り一般献立に近づけるとか、あるいは他の児童生徒と同じ食器に盛り付けるということなどの教育的配慮を行うように、今、各学校現場、この「食に関する指導の手引」の中にもそれを盛り込まさせていただいているところでございますので、そういった配慮に基づいてやっていただくようにこれからも促してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 そういう配慮が必ずしも徹底していないということもありますので、是非強化をしていただきたいと思うんですが、そういう配慮も含めて、実際の現場でいいますと、養護教員の役割は非常に重要になっております。

 幻とまでは言いませんが、第八次教職員定数改善計画があったときには、この定員数についても、複数配置の基準は、小学校八百五十一人を八百一人以上、中学校八百一人以上を七百五十一人以上に改善する計画だったわけで、やはり養護教員の配置というものの強化が必要だと思うんですが、この点いかがでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 アレルギー疾患への取組のみならず、学校における保健、安全、衛生の面で養護教育の担う役割というのは、これは大変重要でございます。

 今お話ございましたように、第七次までの教職員の定数改善計画の中で養護教諭につきましても、例えば第七次では総数九百七十四人の定数改善を行ってきたところでございます。

 現在まだ第八次の定数改善という計画が実現できないでいるわけでございますけれども、御案内のように、養護教諭も含めた公務員の総人件費改革の中で今後教職員定数をどうするかということは私ども大変大きな課題だと思っております。

 こういった状況の中で、養護教諭の有効な活用、あるいは今後どういうふうにこの定数問題を考えていくのか、これは私ども十分これからも検討してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 せっかくこういう報告書が出たわけでありますから、是非養護教員の強化について強く求めておきたいと思います。

 最後に、保護者にはなかなか情報がありませんで、今の自治体や学校の対応が全国的な規制に基づいたものと思いがちなわけですね。もっと保護者の皆さんにいろんな情報提供を、例えばホームページの活用なども含めてやるべきだと思うんですが、その点と、もう一つは、特にアトピー性皮膚炎について非常に費用が、除去食、治療費も掛かります。是非学校病として指定にしてほしいという声も非常に強いわけでありますけれども、この二点についていかがでしょうか。

政府参考人(樋口修資君)

 今、ただいまの御指摘でございますが、私ども、アトピー性皮膚炎についてはこのような冊子を、また、ぜんそくのお子さんについてはこの「健康管理マニュアル」というものを資料として作成させていただいておりまして、各学校に周知をさせていただいておりますが、保護者の方々までにはまだ十分行き届いていないということがございます。

 文部科学省のホームページにも今回こういったものを立ち上げまして、また、教育委員会や学校にもホームページを持っておられるケースが多うございますので、そういったところにもこういったものをホームページ上掲載していただくようにこれから要請をさせていただきたいと思っております。そのことを通じまして、各保護者の方々にも、こういったぜんそくやアレルギー性皮膚炎を持っておられるお子さん方、アトピー性皮膚炎を持ったお子さん方についての啓発を促してまいりたいと思っているわけでございます。

 また、御指摘の、特にアトピー性皮膚炎についての学校病の指定のお話がございましたが、御案内のとおり、要保護者につきましては医療扶助がございます。準要保護者にかかわる問題が学校病として手当てするかどうかという問題になるわけでございますが、御案内のとおり、アトピー性皮膚炎というのは長期間の治療を要する問題ということがございますし、また様々な重症度の児童生徒がおりまして、学習に支障を来す重症度の認定には私どもとしては更なる知見の蓄積が必要であろうかと思うわけでございます。また、地方公共団体がこれを実際に実施する場合には多大な財政的な負担の問題もございますので、こういったもろもろのこともございますので、私どもとしては、現段階においては慎重な対応が必要であろうかと考えているところでございます。

井上哲士君

 大変要望強いので、是非よろしくお願いします。

 終わります。


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