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井上哲士ONLINE
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2007年6月19日(火)

文教科学委員会(午後)
教育3法案について(対総理、採決まで)

  • 4月に実施した全国学力テストの採点のずさんな実態、採点者の9割が派遣会社11社の派遣労働者であることを明らかにする。同時に、政府が競争教育のために全国いっせいという規模にこだわったために、教育の一環である採点を素人集団に委託したことに問題があり、管理と競争の強化では教育は良くならないことを強調する。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、今日の一日の審議を通じても様々な重要な問題が浮かび上がっております。まだまだ審議が必要だということを与党の皆さんに強く申し上げておきたいと思います。

 今日は、全国学力一斉テストについて聞きます。

 小学校六年生百十七万人、中学三年生百十六万人が参加して四月に行われました。今採点が行われておりますが、中学校の採点は、このテストの委託を受けたNTTデータが人材派遣会社を通して派遣労働者を使って採点を行っているはずですが、この採点に携わっている全体の人数、そして派遣会社ごとの受入れの人数がどのようになっているでしょうか、お答えください。

政府参考人(銭谷眞美君)

 全国学力・学習状況調査につきましては、小学校、中学校ともそれぞれ委託先に採点を依頼をして、今実施をしていただいております。中学校は、NTTデータの管理の下、採点基準に基づきまして、派遣会社から派遣をされました採点者により今採点が行われております。

  〔理事中川義雄君退席、委員長着席〕

 中学校の採点業務にかかわっている全体の人数は、六月の十五日時点で約三千人でございます。そのうち、派遣会社から派遣をされました登録採点者は約二千七百人でございます。派遣会社から派遣をされましたその派遣先の会社でございますけれども、合計で十一社でございます。

井上哲士君

 約二千七百人の派遣の人が来ているという話がありました。私が調べますと、大体八割ぐらいがグッドウィルから派遣をされております。NTTデータというのは、今問題の消えた年金にかかわる社会保険庁のオンラインシステムを受注していた会社です。そして、このグッドウィルは介護の不正請求で問題になっているコムスンの親会社と、こういうことになっているわけですね。教育には本来縁のない二つのところです。その下で今どういうことが起きているか。


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 先日、朝日新聞に「学力調査、採点混乱」と、こういう記事が出ております。中三の記述式問題で正誤の基準が途中で変わったり、作業現場の責任者の判断が食い違うなど、混乱が生じている。国語のある問題を受け持った男性は、採点が始まって間もない五月半ばには大混乱になったと話す。あらかじめ示された正誤の判断にない解答が幾つも出てきて、マル・バツの正誤例が次々と張り出された。前日まで誤りだった解答例を正解にすると指示され、同じ問題の採点者同士でマルでよかったのか、随分バツにしちゃったよと顔を見合わせたこともあるという、こういう中身でありまして、重大だと思うんですね。実は、これ同じようなお話は私どものところにも直接寄せられておりましたし、ネットを見ますと掲示板に随分同種の書き込みもあります。

 実はこれだけではないんですね。例えば、数学の問題で採点をされた方から直接訴えがありました。これは今回の学力調査の中学校三年生数学Aの問題です。(資料提示)この直線の比例のグラフをyとxの式で表しなさいと、こういう問題なんですね。正解はこのy=2xでありますが、子供たち、いろんな解答を書きます。y=2x+0と書いた子もいるんですね。

 総理、これは正解だと思いますか、誤りだと思いますか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 これは正解だというふうに私は聞いております。

井上哲士君

 その答弁は正解です。

 ところが、これ最初はバツだったんですね。途中からマルになりました。正に判断基準の変更によるものなんです。ですから、同じ解答でもマルの子供が出たりバツの生徒が生まれるということになれば、これで子供の学力の到達度の参考にする、これはやっぱりとんでもないことだと思うんですね。

 文部科学省にお聞きしますけれども、この採点の判断基準の変更がいつ行われたのか、どういう、何人の採点が終了した時点だったのか、把握されているでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 まず、中学校の記述式問題に関する実際の採点作業に当たりまして、これはあらかじめ採点基準を決めまして、それに基づいて採点が行われるわけでございますが、具体的な解答の当てはめについて打合せを重ねて見直しなどが行われている状況はございます。現在、文字どおり見直しの後、採点作業を行っている段階でございます。

 それから、ただいまお尋ねのございました中学校の数学の問題でございますけれども、これは中学校の数学Aの冊子における調査問題でございます。この問題におきましては、当初からy=2xのみならずy=2x+も正答となるように作業は進められておりました。具体的な採点作業は、その際にそのy=2x+というのは典型的な正答でございますy=2xと同じところに本来分類すべきところを、実際の答案を用いた研修の期間中に様々な解答の分類例を示した資料におきまして、その他の正答の欄にy=2x+0が掲載をされるというミスプリントがございました。これは研修の段階において訂正を行って、採点者に周知を図ったところでございます。

 そこで、この問題は、実際の答案を用いた研修期間、これは四月の二十四日から五月の八日まででございますけれども、この研修期間中におきまして、資料のミスプリントを訂正をし、採点者に内容の周知を行ったところでございます。実際の集計のための採点作業はその後に行われておりますので、採点作業においては影響がなかったものでございます。

井上哲士君

 私たちが直接お話聞いている話とは違います。実際に採点をされている方が途中から基準が変わったと、こう言われているんですね。

 それで、非常に私は今のは無責任な答弁だなと思って聞いたんですが、いろんな問題がこれ以外にもあります。ほかにも採点の判断が変わったものはたくさんあると関係者から聞いているんですね。今消えた年金問題が国民的怒りを呼んでいますけれども、点数が消えてしまうということになりかねないわけでありますから、これはきちっと私は調査してもらう必要があると思うんです。

 これは一体どういう変化や追加が行われたのか、そしてちゃんと最初からやり直されているのかと。これ、契約書では中間報告を出せるようになっているんですから、これ是非命じてこういう問題を正すべきだと思いますが、これ総理、いかがでしょうか。

国務大臣(伊吹文明君)

 御指摘のような事実が判明いたしておりますので、答えをした児童生徒に不利益のないようにもう一度解答をきちっと見直すように私から指示してあります。

井上哲士君

 これ、現場でいろんな判断をしている部分もあるんですね。ですから、これは是非全貌を私は調べてやはり出させたいと、出さしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(伊吹文明君)

 よく事情を聴いてみますが、御指摘のようなことがありましたので、もう一度解答をきちっと見直すように私から指示をしてあるということを申し上げてございますので、児童生徒に不利益のないようにきっちりと見定めてやらしていただきます。

井上哲士君

 なぜこういう混乱が起きたのかという問題なんですね。

 そもそも、テストの採点というのは、これは教育の一環なんですね。同じバツでも、何にも書いていない子もいる、それから問題を取り間違えた子もいる、計算間違いをした子もいる、それを現実に教育をした人が採点をして、ああ、この子はここが分かっていない、自分の教え方はここが問題だと、こういうふうにやる、正に採点なんですよ。それが教育なんですよ。それを全くの素人集団に任せてしまっている、ここに私は大きな問題があると思うんですね。

 なぜこういうことになったのか。元々、文部科学省は今回のテストを児童生徒の学力、学習状況を把握、分析するためと説明をしておりました。それならば、一部の学校や子供を抽出するやり方でいいわけです。現にそういうこともやられておりました。そして、教師は日常的に子供の理解の度合いを確認しながら授業を進めているわけですね。これでいいんですよ。にもかかわらず、全国一斉、全国でやるということにこだわった。その結果、こういう教育と無関係なところに事実上丸投げをすると、ここで混乱が起きているんですね。

 結局、この学力テストの実施を決めたときの中山文部科学大臣は、全国学力テストをやって競い合う教育をと、こういうふうに言っておられました。そして、総理も、あの美しい国という本の中で、この学力テストを公表して、そして学校選択制の導入などを言われてきました。

 つまり、結局、競争教育の材料に使うということがあったからこの全国実施にこだわり、その結果こういう事態が起きているんじゃないでしょうか。総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 この学力調査については、やはり全国で一律に実施をすることによってそれぞれの学校の状況を把握をすることができるわけでありますし、学校にとっても自分たちの学校の教育の成果がどうなっているかということを把握することもできるのではないかと、このように思うわけでございます。

 そして、当然その中において実績を上げているという学校も分かるわけでありますから、そういう学校のノウハウ、やり方等を全国で共有をしていくということにも私はつながっていくという意味において私は有意義であろうと、このように思います。

井上哲士君

 答案用紙は子供のところに返ってこないんですね。点だけしか返ってこないんです。ですから、さっき言ったような何も書いてないとか問題を取り間違えたとか、そういうことは自分でも検証できないですよ。ですから、何か教育条件や到達を検証すると言いますけれども、そもそもそういうものになっていないんですね。

 しかも、私たちは実施する前から様々な警告をいたしました。結局、テストで測れる本当の狭い部分だけを競わせることになるんじゃないか。恐れていた事態が起きているわけですね。例えば、これは広島のある町の教育委員会でありますけれども、直前に類似の問題集を配付をして小中学校長に取組を指示していたと、こういうことが起こりまして、非常に大きな問題になっております。独自の問題集を配付して、時間配分とか解き方を児童生徒に指導する。ですから、正にテストのためのテスト、競争のための競争が行われるじゃないかということが現に事実になってきているんです。私たちが警告したとおりです。

 こういう実態について、総理はどういう御認識でしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 先ほども申し上げましたように、教育のそれぞれの成果として、学校全体でどういう成果が出ているかということを把握をするための試験と言ったらいいんではないかと、このように思うわけであります。

 一人一人の子供たちについて細かな、きめ細かな指導は指導としてちゃんと行っていかなければいけない、そのための試験等は別途それぞれの学校等、それぞれのクラス等について行われるんだろうと、このように思うわけでありますが、この全国の学力調査については、一律に行うことによってそれぞれの学校の成果等の、今どれぐらい出ているかということは分析できるのではないかと、このように思います。

井上哲士君

 一律にやることによって問題が起きているということを私は具体的例を挙げて指摘をしているんです。

 今回の法案には学校評価も盛り込まれております。学力テストの結果がその一つに使われる可能性もあるわけですね。そのほか、愛国心の強要とか、文科省による地方教育への介入とか、私学の自由の介入とかが可能になってきている。私は、こういう国の管理と統制、競争を持ち込むことによって子供たちにとっては大変なことになる、こんな法案は徹底審議の上、廃案にするべきだと最後述べまして、質問を終わります。


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