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2007年3月15日(木)

予算委員会公聴会
「外交・安保問題」について

  • 北朝鮮の核開発問題について開かれた2月の6ヶ国協議の評価や、アメリカ政界にある「拉致問題は心情的に理解するが、北朝鮮の核保有問題が中心課題」という考え方について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。今日はお二人の公述人、本当にありがとうございます。

 最初に、北京での六か国協議の評価について重村公述人にお聞きをいたします。

 先月のこの協議が共同文書を採択をしたわけで、私たちは、北朝鮮の核兵器とその開発計画の放棄に向けた最初の具体的な一歩であるし、また朝鮮半島の非核化や日朝の関係改善を含む五つの作業部会が決められたことは北東アジアの平和と安全にとって重要な一歩だと考えております。伊豆見公述人からは一歩であれ半歩であれ進むことは意義があるというふうなお話がございましたけれども、重村公述人はこの先月の北京での協議についてどういう評価をされておるか、まずお聞きしたいと思います。

公述人(重村智計君)

 前回の六か国協議の合意は、核交渉という点から見ればまだまだ核交渉に全く入っていないという合意ですね。核交渉に入って一番重要なのは何かといったら査察なんですよ。査察を全く受け入れさせていないという意味では、北朝鮮の核問題を解決する交渉には全く入っていないということなんです。一応その前々段階ぐらいの状況にあると。

 もう一つは、アメリカがこの段階で譲歩した、北朝鮮も譲歩したんですけれども、のは、結局、ブッシュ政権のいわゆる事情による、中間選挙で負けたというそういう事情があって譲歩してしまったということなんですが、ただ、前回のジュネーブ合意と違って唯一期待、一つ期待が持てる、あるいは進展する、期待が掛けられているのは、中国が参加していて、中国が北朝鮮に対するおもしになっている。

 つまり、今回の場合には、北朝鮮が五十万トンの重油あるいは百万トンの重油なんというのを要求したんですが、結局、いや五万トンでいいんだ、あんなの五万トン以上あげる必要はないと、こう言ったのは中国ですね。ですから、その中国が非常に現実的な対応をしている。それから、もし約束を破った場合には、合意を破った場合には、中国のメンツを傷付けることになるので、その中国が加わって、中国が監視人みたいな役割をしているところではこれまでと違った要素があると。その意味では期待が、一つの期待が持てる可能性があるということです。ただ、前途は決して楽観はできないということが現実だと思いますね。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 その北京での協議を受けて今月の五日と六日に米朝国交正常化の作業部会が開かれ、そして七、八には日朝の国交正常化の作業部会が行われました。この点について伊豆見公述人にお聞きをするわけですが、米朝国交正常化については、その目標に向けて努力するよう約束することを再確認もし、北朝鮮側は完全な非核化を実現する必要性を再確認したなど一定の協議の進展が見られたわけですが、日朝協議はお互いの立場を表明し確認をするだけで、時間も非常に短く終わりました。

 重村公述人の先ほどのお話では、そもそも今、日本と交渉する高官自体が北朝鮮にいないんだというような背景のお話もあったわけですが、こういう日朝協議と米朝協議の違いができていることについてどういう御意見をお持ちか、お願いしたいと思います。

公述人(伊豆見元君)

 やむを得ないとまず思います。それは、先ほど御説明いたしましたように、米朝でいうならば、アメリカの政策が変わったことが大事なんであって、北朝鮮は一貫して、ですからアメリカと直接交渉したい、取引をしたいと望んでいましたが、それに対してアメリカが積極的にこたえるようになった。

 そして、この前の作業部会のお話をお触れになられましたけれども、その前にまず十月三十一日に北京で米朝は協議を持ちました、クリストファー・ヒルと金桂冠というのはですね。そして十一月にも、二十八、九だったですかね、一回持ちました。そして、十二月に六か国協議が久しぶりに再開され、それで一月には今度三日間、ベルリンで十六から十八まで協議を持つと。そういうものを繰り返してきてやった三月の五日、六日の米朝協議でありますから、もうそれと、日本みたいに昨年の二月以降ずっと協議がないままに来て、久々に一年一か月ぶりに再開される協議。しかも、日本側が政策を変えた、姿勢を大きく変えたわけでもないというときになれば、もうそれはおのずと米朝協議と日朝協議に差が出るというのは当然であったということだと思いますし、日朝協議の場合にはもう少し時間を掛けてみないことには、北朝鮮側がどれだけ変わってくるかというのは今の時点では分からないと思います。

井上哲士君

 両公述人にお聞きいたします。

 二月の十九日の日経新聞に、同社とアメリカ戦略国際問題研究所が行ったシンポジウムの記事が出ております。その中で、元アメリカ国防副次官補のカート・キャンベル氏の発言が載っております。こう述べられております。

 六か国協議内部では力学が変わりつつある、アメリカと日本の間に距離感が生まれ始めている、アメリカ側では、日本の拉致問題は戦略的な問題ではなく、感情的な問題だとの意見を持つ人が増えている、アメリカが六か国協議の合意を探る中で、現在最も重要なパートナーは恐らく日本ではなく中国だと、こう述べられております。

 私はまあごく一部の意見かなと思ったんですが、その後、今月の四日に東京新聞にジェラルド・カーティスさんがやはり書かれておられまして、こう言われていますね。

 米国人は拉致被害者とその家族に対して深い同情を抱いている、米国は日本の立場を配慮して、同情の念を表明し続けるだろうし、北朝鮮に問題を解決するよう促すだろう、だが、一番のねらいは核兵器放棄であることを忘れてはいけない、外交戦略は現実を直視して展開していかなければならない、世界は北朝鮮の核兵器放棄を求めている、安倍政権もそうだが、同時に拉致問題の解決も求める、後者の追求のため、前者に非協力的であるように思われてはいけない、日本の対米戦略の再考が求められていると、こう言われておりまして、同様の御意見かなと思ったんですね。

 伊豆見公述人もこの核問題の位置付けというものをきちっとするということを繰り返されておられたわけですが、米国内でこういうような意見があることについて、それぞれ感想をいただきたいと思います。

公述人(伊豆見元君)

 アメリカ人の中では、今委員が御指摘になられた議論というのはかなり多いということだと思います。たしか、カート・キャンベルという人は民主党の人ですから、よりその部分を明確にかなり厳しく言う人であろうと。まだ、比べれば、共和党系の人たちの方がもう少し日本に対して同情的ということにはなると思いますが、しかし、明らかに今アメリカはかじを切ったわけでありまして、エンゲージすると、関与するという形で北朝鮮の核問題を解決しようというような話になれば、やはり日本にも同調してほしいという気持ちになるのはよく分かると。

 中国、中国と言っているのは、それは例えば、私は、キャンベルさんなんか、あるいはカーチスさんみたいに日本ということもよく分かっている人からすれば、なぜそこが中国になってしまうのかと、本来だと日本だろうと。だけど、今、日本を挙げて言うことはできないですよ、今のブッシュ政権からしますと。なぜならば、その政策がかなり今、日本とアメリカはずれてきちゃっていると。そこに対して口惜しいという気持ちが相当あるんだろうと思います。

 ですから、本来、六か国協議の枠内でもアメリカが最も信頼できるパートナーであり、一緒に同調してこの問題の解決に歩めるのは日本だと、私はやっぱりアメリカの多くの人たちは思っていると思いますが、残念ながら今そういう形になかなかなっているように見えないんで、中国、中国と言わざるを得ないという状況があると思います。

公述人(重村智計君)

 この意見は別に驚くべきものではなくて、六か国協議の始まる当初からアメリカが抱いていた考えでしてね。では、なぜ六か国協議をやったのか。つまり、米朝の直接交渉を北朝鮮は求めている。しかし、六か国協議をアメリカがしたというのは、ブッシュ政権はもちろん直接交渉も嫌だったんですが、核問題の解決をアメリカだけに責任を負わされるのが一番嫌だった。だから、中国を引き入れて中国に責任を負わせようということで六か国協議を始めた。

 そこに日本がメーンのプレーヤーであるかないかって、メーンのプレーヤーであるわけがないんでしてね。メーンのプレーヤーになったら、逆に今度は責任を負わされるわけですから。必要以上に日本が、そこにおれを主役にしろと言ったら、おまえ責任持てと、こう言われるだけの話ですから。

 アメリカが一番心配しているのは何かというと、合意したときに金を出すのは日本なんですよ、金を出す日本にそっぽを向かれると合意が実行できなくなる。そこを担保しておきたいために、こういう、人によっては脅しを掛けてみたり、人によってはなだめすかしてみたりということを言っているだけで、別に中国を重視して日本を外すという意味で言っているわけではない。アメリカは、あくまでもこの問題を中国にも責任分担させて中国に負わせようということで始まったのが六か国協議だという基本認識が、我々にしてみればそう変わった話じゃないということなんですね。

井上哲士君

 ありがとうございました。終わります。


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