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世界最先端の憲法を 日本共産党参院議員井上 哲士 【「女性のひろば」2016年5月号】

世界最先端の憲法を
日本共産党参院議員 井上 哲士

 ──安倍首相はこの夏の参議院選挙で憲法「改正」を公約にするといい、改憲へのつよい執念を見せています。
 井上 安倍首相は3月2日の参院予算委員会で、明文改憲について「在任中に成し遂げたい」とのべました。これ自体、憲法を守る義務を負った首相として憲法違反の重大な発言です。
 それと同時に注目すべきなのは、日本国憲法第9条※そのものを改憲の大きな課題としてあげたことです。これまでは国民の反対を恐れて、96条を変えて改憲をしやすくしようなど姑息な手を使ってきましたが、今回は一番の"本丸"である9条の改正を公然と掲げています。
 自民党は2012年に「日本国憲法改正草案」を発表し、その中では、新たに国防軍を設置し、交戦権─国が戦争をする権利─を認めることも書いており、これまでも改憲をねらってきたわけですが、いよいよその実現に本腰を入れてきたというべきでしょう。

・これまでの政府解釈くつがえし

 これまでの日本政府の解釈は、自衛隊は軍隊ではない、自衛のための必要最小限度の実力組織だといってきました。だから、武力行使の目的をもった海外派兵はできない、集団的自衛権※の行使はできない、武力行使を目的とした集団安全保障には参加できない、と説明してきたのです。
 ところが、2014年7月1日、安倍政権は、これまでの政府の憲法解釈を勝手にくつがえして集団的自衛権の行使を認めると閣議決定し、昨年は集団的自衛権を行使できるように安保法制=戦争法を強行しました。
 国会ではこれらは内容も手続きも憲法違反だという追及をし、国民のみなさんからも立憲主義※に反するというきびしい批判があがりました。そうなると今度は、「憲法学者の7割が自衛隊は違憲だとしている」から憲法の方を変えようという、まったく許しがたい、すりかえの議論を始めています。まずは憲法違反の安保法制を廃止し、集団的自衛権行使を認めた閣議決定を撤回するべきなのです。

・憲法の制約取り払って

 昨年の戦争法案の議論の中で政府は、集団的自衛権行使は「限定的」と盛んにいってきました。戦闘現場以外では後方支援もできるなどと、大きく自衛隊の活動を広げましたが、それでも「武力行使と一体化してはならない」という見解は維持せざるを得ませんでした。憲法の制約があったからです。この制約を取り払いたいと、今度は、憲法9条を変えて、全面的に集団的自衛権を行使できるようにすると言い出しています。つまり、今度の改憲のねらいは、憲法上の制約を全部取っ払って、自衛隊を名実ともに海外で戦争する軍隊にし、戦争する国づくりを完成させようというものです。

・震災ダシに「緊急事態条項」

 一方、そうはいっても、安保法制反対のたたかいを通じて、9条を守りたいという国民の非常に大きなエネルギーが明らかになりました。そう簡単に9条は変えられない。
 そこで自民党が持ち出しているのが、憲法に「緊急事態条項」を創設しようという改憲案です。これは、「緊急事態」のときには、首相の権限を強化し、法律と同じ効力を有する政令を国会を通さずに発令して地方自治体に指示をする、国民の権利は制限するというものです。
 自民党のいう「緊急事態」とは何か。改憲草案では「緊急事態」の例として冒頭に「外部からの武力攻撃」をあげている。まさに戦争をする国づくりのためのものです。
 一方で谷垣幹事長は、阪神・淡路大震災や東日本大震災をあげ、「ふだんの平静なときの考え方では対処できないことがでてくるから、基本原則を憲法で書いたほうがいい」と、まるで災害対応策のように描いています。しかし、現実にそれらの災害の現場で「緊急事態条項」がなくて困ったことがあったのでしょうか。
 実は5年前、東日本大震災のすぐあとにも参院の憲法審査会で緊急事態条項について議論したことがあります。しかし、自民党推薦の参考人も、緊急事態条項がなくてできなかったことを挙げられませんでした。むしろ東日本大震災で明らかになったことは、災害時には権力を国に集中させるのではなく、現場の市町村の判断でできることを増やしていくのが大事だということです。ですから、岩手、宮城、福島、新潟、兵庫といった大規模災害を経験した県の弁護士会は共同で記者会見もし、「緊急事態条項は乱用の危険性が高く、災害対策を口実に創設することは許されない」と反対しています。
 自民党憲法改正推進本部本部長代理の古屋圭司衆院議員は昨年10月に講演で「本音は9条だがリスクも考えないといけない。緊急性が高く、国民の支持も得やすいのは緊急事態条項だ。本音を言わずにスタートしたい」と露骨にのべています。震災をダシにしながら本音は9条改憲とは、許しがたいことです。

 ──国民の中には、平和憲法への誇りとともに、北朝鮮や中国への不安の声もあります。
 井上 北朝鮮の核実験やミサイル発射、中国の軍事演習などに不安を感じ、また日本のマスコミがそれをことさらあおっているという面があるからではないでしょうか。
 けれど、北朝鮮のミサイル発射以降の事態を見れば、軍事的対応の強化では何の解決にもなりません。ミサイル発射後アメリカと韓国が合同軍事演習をし、北朝鮮指導部にたいする「斬首作戦」の訓練までおこない、北朝鮮が反発して緊張を高めています。やはり暴挙にたいしては、国際社会が一致して実効ある制裁をする、それによって対話のテーブルに戻させることが非常に大事です。
 3月初めに国連安全保障理事会は北朝鮮にたいする制裁を強化する決議を全会一致で採択しましたが、北朝鮮へのモノ・カネ・ヒトの流れを大幅に制限すると同時に、6カ国協議の再開を非常につよく求めています。6カ国協議というのは、米国、北朝鮮、日本、韓国、中国、ロシアの6カ国による、北朝鮮の核問題等にかんして対話による解決を目指すための外交会議ですが、朝鮮半島の非核化だけではなく、相互の主権尊重と平和共存、6カ国の経済協力の促進も確認しています。こういう話し合いのテーブル、政治的外交的な努力が非常に大事で、それ以外に解決の方法はありません。
 中国との関係では、日本と中国はいまお互いが最大の貿易相手国です。武力衝突になれば深刻な経済的損害となり、誰も望んでいません。しかし、軍事的な対応をエスカレートさせると不測の事態が起こりかねず、ここでも外交によっての解決をつらぬくほかありません。
軍事的対応は成功しない
 ASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)は、昨年末に「ASEAN共同体」を発足させました。これは、平和を保障する「政治・安保共同体」、繁栄をめざす「経済共同体」、一人ひとりが豊かに発展できる「社会・文化共同体」の3本柱からなり、アジアの平和と安定の中心的役割を果たそうとしています。今年2月には、今後10年間の目標となる「ビジョン2025」を確認し、平和のための「行程表」を決めました。紛争予防とともに、たとえ紛争があっても軍事的な衝突にしないという努力を積み重ねています。こうした平和の流れを東アジアでもつくっていくために日本が本気で努力することが大事です。
 軍事的対応がけっして成功しないことはここ10数年のアメリカがやってきたことを見ても明らかです。イラクへの軍事介入によって過激組織ISをつくりだし、アフガニスタンへの攻撃によってテロが激増した。2000年からの15年間でテロの犠牲者は10倍になっています。武力行使によっては、平和も安定もおとずれません。
 安倍政権は憲法の制約をとっぱらって"普通の国"になるといいます。しかし、あの戦争の惨禍をくりかえさないと世界に約束し、戦争ではなく外交によって平和な世界をつくっていく最先端に立ったのが、日本の憲法です。なぜそれをほうりだして、わざわざ後戻りする必要があるでしょうか。いまするべきは、9条をもつ国にふさわしい平和的対応によって世界の平和に貢献することです。

 ──憲法をめぐっても参院選が大事になっていますね。
 井上 2月19日、民主党、日本共産党、維新の党、社民党、生活の党の5野党党首が、安保法制の廃止や国政選挙で最大限の協力をおこなうことなどで合意しました。その後、実際に選挙協力が始まっており、国民の期待が非常に大きくなっています。
 5野党は立憲主義を守るということでは一致して行動してきましたので、憲法をめぐっても自民党・公明党と、5野党の対決構図が明確になっています。安保法制にとどまらず、5野党は介護職員の賃上げ法案を出すなど、一致できるところで共闘を進めています。
 自民党の比例代表選挙での得票というのは、2009年の衆院選で敗北して下野したときと、前回(2014年)の衆院選で圧勝したときはほとんど変わりません。小選挙区で勝つことで議席を増やしている。だからこそ、野党が結束すれば、自民党はだめだけど受け皿がないとあきらめていた人、投票にいかなかった人に、この野党共闘ならば1票を託してみようと思ってもらえ、1+1が、3にも4にもなり、参院選の1人区でも複数区、比例区でも勝利が可能になると思います。

・「5野党プラス市民」対「自公」

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(「市民連合」)が全国レベルで発足し、地方ごとの「市民連合」も次々と生まれ、野党共闘を支えてくれています。5野党合意は単なる政党間協議でも選挙協力でもなく、国民の運動の中から生まれたものですから、「5野党プラス市民」対「自民・公明」というのが真の対決構図です。
 これを自民党は大変おそれています。野党連携を批判するビラを作ったり、自民党大会では「選挙のために何でもやる無責任な勢力」と敵意をむき出しにしています。私たちは真の対決構図を明らかにすると同時に、政党の責任として、間違った攻撃にはきちんと反撃をし、共産党の姿や政策を広げる必要があります。「政治を変えるのは私たちだ」と声をあげている市民のみなさんといっしょに憲法を守るたたかいでも参院選でも勝利したい。
 一人ひとりが声をあげ、政治を変える。それ自身が日本国憲法の精神を守り広げることだと思います。

※日本国憲法第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
※集団的自衛権=自国が攻撃されたわけでもないのに、他国が起こす戦争に武力行使をもって参加すること
※立憲主義=憲法にもとづいて政治をおこなう、憲法で権力者をしばるという考え方

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