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「平和対談」 ジャーナリスト 布施祐仁さん (京都民報2018年8月12日付)

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IMG_5638-1.jpg 大きな政治問題となった自衛隊の「日報」隠ぺい問題──。この問題をめぐり、国会で追及した日本共産党の井上哲士参院議員と隠ぺい発覚の端緒を開いたジャーナリスト・布施祐仁さんが対談しました。国会論戦を通じて何が明らかになったのか、併せて、日本の平和に重大な影響を与える米朝首脳会談(6月12日)の意義と展望について語り合いました。

 

 

「戦争する国」づくりが大本 井上

「日報」隠蔽で文民統制危機 布施

 

自衛官募集で連携して追及

 

 井上 お久しぶりです。「日報」問題で、布施さんの果たした役割は本当に大きかったですね。布施さんや布施さんが編集長を務める「平和新聞」と連携しながら、参院外交防衛委員会で、自衛隊や防衛省に関わる問題を追及してきました。この間柄になったのは2015年からですね。

 布施 そうです。

 井上 布施さんが、自衛官募集をめぐって、自衛隊が高知市に適齢者である高校3年生の名簿提出を執拗(しつよう)に求めたことを、「平和新聞」に書いていました。早速、布施さんに連絡を取ってみると、布施さんは既に、自衛官募集に関するさまざまな内部資料を情報公開請求で手に入れていました。問題を見抜く先見性があり、的確な情報公開請求で真実を明らかにしていく。ジャーナリズムの新境地を切り開いたと思います。

 布施 そう言っていただくと光栄です。ただ、問題となる事実を告発ができても、防衛省は当初、のらりくらりとかわそうとしていました。それを井上さんが国会で追及したことで、当時の中谷防衛相が「不適切な要請だった」と謝罪しました。これは政治の力ですね。

 井上 いい連携ができました。

 布施 本当にそうです。「日報」問題について言いますと、関わるようになったのは自衛隊PKO(国連平和維持活動)部隊の南スーダン派遣(1111月~17年5月)です。

 16年7月、自衛隊が活動する南スーダンの首都ジュバで、政府軍と反政府勢力との大規模な戦闘が起こりました。PKO参加5原則(*)によれば、武力紛争が起こった場合、自衛隊を撤収しなければならないのに、当時の日本政府は「散発的発砲事案が生じているが、これは武力紛争ではない」という発表をしただけでした。

 

駆け付け警護の新任務付与

 

 井上 それどころか政府は、15年に成立した安保関連法=「戦争法」に基づき、南スーダンのPKOに「駆け付け警護」の新しい任務を付与しようとしていたんですね。

 布施 だから政府は、故意に事態を小さく見せようとしているのではないか。単に派遣継続の是非だけの問題ではないと思いました。現地部隊が何らかの記録を残しているはずだと、防衛省に情報公開請求を始め、16年7月には「日報」の情報公開請求をしました(表参照)。

 井上 これが発端ですね。

 布施 はい。ところが、防衛省はこの年の12月、「既に廃棄されており不存在」と回答し、不開示決定がされます。そんなはずはないと、すぐに不服審査請求を申し立てました。

 井上 布施さんがこのことをツイッターで発信したところ、複数の新聞が報道して問題が表面化したんですね。

 布施 はい。最終的には、防衛省の特別防衛監査が行われ、17年7月に結果が公表されます。日報は陸上自衛隊に一貫して保管されており、私が開示請求した際にも存在していた。防衛省が組織ぐるみで、隠ぺいしていたことが明らかになり、稲田防衛相は引責辞任しました。

 そして、「ない」とされていたイラク派遣(0312月~09年2月)の日報も18年には出てくる。「日報」問題はこうした経過でした。

 

0812日報問題.jpg9条禁じるから「隠蔽」

 

 井上 私は政府の隠ぺい問題として当初から繰り返し国会で追及しました。この問題には2つの側面があると思っています。

 時の政権が、憲法9条が禁じる武力行使を行う危険性のある活動を自衛隊にやらせてきた。だから、政府は事実を国会や国民に隠し続けてきたという問題。もう一つは、この政府の下で、実力組織・自衛隊自身が海外派遣の実態を隠してきたという問題です。

 布施 現地で活動する部隊は、日報に「戦闘」の言葉を何度も記述しています。

 井上 自衛隊イラク派兵をめぐる違憲訴訟で名古屋高裁は、自衛隊の活動の一部を「他国による武力行使と一体の行動」として、9条違反と判決を下しました。安倍政権は、「戦争法」を強行成立させるため、こうした9条違反の実態を隠してきました。「戦争法」成立後は、その実績づくりのために、南スーダンの自衛隊に「駆け付け警護」の任務をしゃにむに付与しようとした。だから日報を隠ぺいする必要があったんですね。

 「日報」問題の最大の問題は、改憲を視野に「戦争する国づくり」を進めるために、政府が実相を隠してきたことにあります。

 布施 日報を見てもらうと、南スーダンでは、ジュバ市内で「激しい戦闘」、自衛隊宿営地の「付近に砲弾落下」したなどの記述があり、さらには自衛隊自身が戦闘に巻き込まれるリスクも明記していました。そうなれば、自衛隊が武力行使する事態に発展するかもしれない。新任務付与前の国会で、政府は「武力紛争は存在しない」と説明していましたが、日報は全く違っていました。

 井上 現地部隊は「戦闘」状況をリアルに報告していますね。

 布施 イラクでもそうなんです。当時、政府は、自衛隊は「非戦闘地域」で人道復興支援を行うので、「武力行使することはない」と説明していました。

 しかし、日報には自衛隊の活動地域で、多国籍軍と地元武装勢力の戦闘が発生したことが記され、この武装勢力を「敵」と記述していました。本来、人道支援であれば「敵」はいません。

 井上 過去の戦争の教訓からも、状況隠しは深刻な問題ですね。

 布施 「日報」問題を通じて、1992年のカンボジアPKO派遣以降、4万3000件の日報の存在が明らかになりました。これまで開示請求しても出てこなかったものです。

 公開すべき行政文書が隠され続け、主権者である国民と国民の代表者である国会議員の目と耳をふさいだ状態で、実力組織である自衛隊が海外派遣されてきました。自衛隊へのシビリアンコントロール上、重大な問題です。

 

自衛官からも追及の信頼が

 

 井上 こうした海外派遣のもと、犠牲となっているのが現場の自衛隊員やその家族なんです。布施さんと連携しながら、201611月の参院外交防衛委員会で、防衛省による南スーダン派遣部隊の家族説明会について追及しました。

 16年2月の説明資料には、「反政府勢力の支配地域」「戦闘地域」と記述されていました。それが8月には、「活動が活発な地域」となり、「戦闘」は「衝突」と書き換えられてしまう。現地では政府軍と反政府軍による戦闘が広がり、多数の犠牲者が出ているのに、資料では全く逆に描かれていました。

 布施 虚偽ですよね。

 井上 「派遣ありき」でしかない。幸い自衛隊から犠牲者はでなかったけれども、隊員は命の危険にさらされ、家族も大変なストレスだったでしょう。私は委員会で、自衛隊をすぐに撤退させ、非軍事の人道支援にすべきだと再三求めました。

 布施 私は隊員の家族の方にも取材してきましたが、海外派遣や新任務付与には賛成という人でも、事実を偽る政府への不信や怒りは強かったですね。隊員から、安全保障に対する考え方は違うけれども、この問題を一番追及してくれているのは共産党という声を聞いたこともありました。

 井上 うれしいことです。

 布施 はい。隊員や家族の方にとっては、命がかかった問題です。政府のうそを暴き出すという点で、共産党に期待が広がりつつあると感じました。

 この問題でもう一つ、私が共産党へ期待していることがあります。それは、4万件を超える日報に基づき自衛隊の海外派遣の総検証をやる、併せて、事実を隠して強行した安保法制は、廃止にして差し戻す。国会によるシビリアンコントロールが試されています。共産党の調査・分析・論戦力を大いに発揮してほしいと思っています。

 

****

 

 井上 6月に米朝首脳会談が行われ、非核化と平和体制構築に向けた歴史的なプロセスが開始されました。

 

歪な安保政策見直す好機に

 

 イラクや南スーダンの実態を隠してまで政府が安保法制を強行した最大の口実は、北朝鮮周辺の安全保障環境の悪化でした。僕は被爆2世として、1年前の国連での核兵器禁止条約採択に立ち会いました。この時、日本政府が条約に反対をした理由も北朝鮮の核・ミサイル開発でした。こうした口実が崩れたことは大きいと思います。

 布施 政府が03年にイラクへ自衛隊を送るとき、当時の小泉首相は、「日米同盟を強化するためにも、米国を助けなければならない」と言いました。これに違和感をすごく感じました。日米同盟のために、関係のない他国に犠牲を強いてよいのか。朝鮮半島の緊張緩和の流れは、日本の歪な安全保障政策を見直すチャンスになると思っています。

 井上 この問題で、共産党は「北朝鮮の核開発には断固反対だが、破滅をもたらす戦争だけは絶対に起こしてはならない、対話による平和的解決が解決の道だ」という立場をずっと貫きました。節々で関係国への働きかけを行ってきましたが、これが的確な役割を果たしたと思っています。

 布施 どんなことですか。

 

平和的解決への対話を追求

 

 井上 まず昨年2月、米国のトランプ新政権がオバマ前政権時代の「戦略的忍耐」と呼ばれた政策を「見直す」と表明したときでした。「戦略的忍耐」とは、〝北朝鮮が非核化の意思と行動を示すまでは交渉をしない〟という政策です。結局、米国が交渉を拒否している間に北朝鮮は核・ミサイル開発をどんどん進めてしまった。トランプ大統領がこれを「見直す」と言ったんですね。ただ、同時に米国政府は、外交的選択肢とともに軍事的選択肢もありうると表明しました。

 布施 両面ありますね。

 井上 そうです。だから、共産党は「見直す」のだったら、軍事の選択肢は絶対とるべきではないとの提起をしました。

 続いて昨年8月、米朝間で一触即発の軍事的緊張が高まったときです。共産党は「米朝は無条件で直接対話を」という声明を発表し、関係国に働きかけました。その後、2月の平昌五輪を大きな契機として、対話による平和的解決のチャンスが生まれてきました。

 布施 平和への気運がありましたね。

 井上 私たちは4月、このチャンスを逃してはならないと、「朝鮮半島の非核化と北東アジア地域の平和体制の構築を一体的、段階的に進めてほしい」という要請を政府や関係6カ国に行いました。私も韓国大使館を訪問しました。こうした努力が、一つの貢献となったと思っています。

 布施 なるほど。

 井上 この問題で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、決定的役割を果たしています。文大統領の発言には、朝鮮半島で戦争を起こしてはいけないという強い信念がある。その背景にあるのは国民の世論です。国民による「キャンドル革命」が生んだ政権ならではの力でしょう。

 布施 私は、4月の北朝鮮と韓国の南北首脳会談で、「年内の朝鮮戦争終結」が宣言されたことに注目しています。朝鮮戦争を終わらせることができれば、北東アジアでの「冷戦構造」に終止符を打ち、新たな安全保障の枠組みをつくる可能性が広がるからです。

 

共産党「構想」現実のものに

 

 ぜひ、共産党には、平和に向けた論議を前に進めてほしいと思っています。

 井上 共産党は、北東アジア規模の「友好協力条約」を結ぶ「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。この構想が現実のものになる可能性は大いにあると思っています。

 憲法9条を生かした外交とはどういうものなのか、多くの人に分かってもらえる条件が広がっています。私は「憲法と命が輝く政治を」を信条に掲げてきましたが、憲法の値打ちをもっと前向きに語り、さらに共同を広げていきたいですね。

 布施 私も、9条を生かした日本の安全保障を実現するチャンスが来ていると実感しています。大事なのは、事実が重んじられる社会を取り戻すことです。フェイクニュースに流される社会は戦争に向かいやすい。だからこそ、真実を追及する共産党には大きな役割があります。期待しています。

 

 

 *(1)紛争当事者間の停戦合意(2)紛争当事者の受け入れ合意(3)中立性を厳守すること(4)上記の原則が満たされない場合は撤収(5)武器の使用は必要最小限。

 

 

 いのうえ・さとし 1958年山口県生まれ。60歳。広島市育ちの被爆2世。日本共産党の参院議員。3期目。党参議院国会対策委員長。外交防衛委員会に所属。昨年の第193通常国会・参院外交防衛委員会での質問回数が21回で、トップタイを記録(「週刊エコノミスト」4月10日号)。

 

 ふせ・ゆうじん 1976年東京都生まれ。42歳。ジャーナリスト。日本平和委員会機関紙「平和新聞」編集長。「ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場」(岩波書店)で、平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)、日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。

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