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「安倍政権の〝やりたい放題〟を止める力」 「市民連合みえ」呼びかけ人 岡歩美さんとの対談(『女性のひろば』2018年10月号より)

「市民連合みえ」呼びかけ人
岡 歩美
おか・あゆみ 1990年三重県生まれ。元幼稚園教諭。東日本大震災をきっかけに政治に関心をもつようになる。2015年9月シールズ東海創設にかかわり、16年4月に市民連合みえを設立


井上さとし
日本共産党参院議員
いのうえ・哲士 2019年参院比例候補(活動地域=東海・北陸信越・京都)。1958年山口県生まれ。広島市育ち。3期目。党参院幹事長・国対委員長、党幹部会委員。外交防衛委員会などに所属

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  今日はよろしくお願いします。
 井上 こちらこそ。2016年参院選の最終盤、四日市での街頭演説会(16年7月3日)でお会いしましたね。
  三重の選挙戦の中ではじめて野党の国会議員が並んで街頭に立ちました。本当にあの日がなければ、勝利はなかったというくらい重要な日でした。「みんなのための政治を、いま」と書いたピンク色のプラカードを持って約2000人が集まった。
 井上 三重選挙区(1人区)野党統一候補の芝ひろかずさんが、「どこにいっても、ピンク色の波が揺れている」「まさに市民の選挙だ」「選挙が変わった、私自身も変わった」と演説された。それをつくりだした三重の市民連合の力、若いみなさんの力はすごいなと。
  井上さんは人通りの少ない場所でも芝さんの応援演説をし、それを見た他党関係者が「すごい」と感動していました。他党の候補なのに全力で応援する、まさに本気の共闘でした。
 井上 当たり前のことをしていただけなんだけれど、その話を後から聞いて、うれしかったです。

 ◆国会デモに行って

  私たち「市民連合みえ」には代表はなく、私は呼びかけ人として、2016年参院選から活動しています。私は政治にぜんぜん興味がなくて、学生時代は総理大臣の名前も知らなかったくらいで(笑)。3・11後に福島に行き、子どもたちがマスクをしている姿にショックを受けて、こんな命にかかわるような原発の問題を考えたことがない自分って何だろうと思って。それから1年間、地元の人と政治や社会について話し合う場というか、飲み会を設けて。
 井上 へぇー。それは学生たちで?
  年代を問いませんでした。SNSで募集して「最近この政治家についてどう思う?」とかって話して。でも選挙では毎回、自民党が勝ってしまう。仲間内で話すだけではなく社会に対して自分からアクションを起こさないと変わらないのではないかと。2015年にシールズ(SEALDs=自由と民主主義のための学生緊急行動)の国会前デモに初めて1人で行きました。そこでたまたま「しんぶん赤旗」の取材を受けました。そのあとシールズ東海を立ち上げました。
 井上 私は広島市育ちで、母が看護被爆した被爆2世なんです。今年も8月6日に広島、9日に長崎に行ってきました。

 ◆「どこの国の総理か」

 井上 出身の広島国泰寺高校(元広島一中)は爆心地からわずか5分のところにあって、原爆投下の日、400人もの先輩が一瞬の光のもとで亡くなった。人間の姿で亡くなることもできなかった。なぜこんなことが許されたのか、おかしいことはおかしいと立ち向かう、そんな生き方がしたいと高校生の時に思って、大学時代に日本共産党と出合い、入党しました。
  へぇー、すごい。
 井上 昨年7月、ニューヨークで核兵器禁止条約が採択された時、国連の会議場にいて、歴史が動く場に立ち会えて本当にうれしかった。国会でもずいぶんこの問題を取り上げました。日本政府が条約に背をむけていることにたいし、長崎の被爆者の方が「あなたは、どこの国の総理ですか」と安倍首相に面とむかって言ったでしょう。私は3月の予算委員会で、この言葉を総理にぶつけたんです。これはみんなの共通の思いなのです。
  本当にそう思います。

 ◆自民党の劣化

  国会は腹立つことばかり。森友・加計問題、公文書改ざん、「日報」隠ぺい、「働き方改革」、セクハラ発言...。ありえないです。
 だけどこんなにヒドイのに、安倍政権は倒れない。なぜいまも安倍政権が続いているのか。
 井上 小選挙区制度になってから、総理が人事と「公認」権を握って、執行部にものが言えない議員ばかりになってきた。
 かつては、連休に国会議員が地元に帰ったら、いっぱい批判を受け、連休後の国会の雰囲気がガラッと変わるということがあったといいます。しかしいまの自民党は、国民の声を敏感に受け止められない政党になっている。「いくら国会で多数であっても、これはやってはいけない」と歯止めをかける良識というか、資質が政権自身になくなってきていると思います。一方で、野党の側も自民党政権に代わる政権構想を示しきれていない。いまの安倍さんの支持の理由で圧倒的に多いのは、「ほかにいい人がいない」というもので、政策的な支持ではないんです。
  自民党の杉田衆院議員が月刊誌『新潮45』(8月号)でLGBT(性的少数者)に対して「生産性がない」と攻撃した差別発言がありました。ひどい発言だけれど、その杉田氏を比例上位で国会議員にしたのは自民党ですよね。
 井上 今回の杉田発言は、憲法の根幹の「個人の尊厳」を、いまの自民党政治がこわそうとしている、その象徴的な事件だと思うんですよ。それにたいして非常に敏感な反撃が広がりました。
 岡 自民党本部前に5000人も抗議の人が集まった。その後、新聞などもこの問題を取り上げるようになりました。あの時、路上に立ったのは、いままで活動してきた人たちではない人も多かった。狭い意味の当事者だけじゃなくて、障害者団体などの人も声をあげていて。そういう運動の広がりに、すごく可能性を感じました。
 井上 誰かが呼びかけたら個人でどんどん参加し、思い思いのプラカードを持つ、それぞれの表現で抗議することが急速に日本社会に根付いた。
  ほんとに。
 井上 市民連合やシールズが果たした役割で大きかったのは、あの参院選にむかう共通政策の大きな柱に「個人の尊厳」ということを掲げましたね。それがうんと広がって、ぼくたち国会議員もふくめて、国民の認識を高めたのではないかと思うんです。
  なるほど!

 ◆野党共闘の深化

  野党共闘は、今どんな具合なんでしょうか?
 井上 メディアでは、難しいってことだけ注目されて(笑)、スルーされがちだけど、ずいぶん前進したんですよ。
 たとえば、野党6党による野党国対委員長連絡会議(通称「野国連」)を毎週水曜日に定例化、野党間の重要な情報交換や意思統一の場になってきました。
 「野党合同院内集会」は8回開催。名称もみんなで考えるわけですが、「隠ぺい、改ざん、ねつ造、圧力...安倍政権退陣へ」が途中から看板が2行になった。(笑)
  長くなって、入りきらなくなったのですね。(笑)
 井上 そうそう、新しい問題がおきると、それをどんどん共通課題にしていったから。
 「野党合同ヒアリング」は、「働き方改革」でのデータねつ造疑惑、森友決裁文書改ざん問題をはじめ11テーマで118回開催。野党議員が省庁の役人を呼んでヒアリングを行い、メディアに公開して〝第二の予算委員会〟と呼ばれた。みんなでやるから政府側も幹部を出してくる(笑)。小さな会派もどんどん発言できるし、共同で資料要求もする。
  へぇー。すごいですね。
 井上 森友問題での佐川・前財務省理財局長の証人喚問(3月)では、初めて事前に各党の質問者が集まって意見交換しました。さらに午前中の証人喚問の文字起こしを各党で分担し午後の追及に生かした。
  めちゃめちゃ進んでるんですね。
 井上 昨年と合わせ、野党で共同提出した法案は20本。なかでも全原発の速やかな停止・廃炉を掲げた「原発ゼロ基本法案」は、市民団体とも話しあって練りあげ、共産、立憲民主、自由、社民の4党で提出できたことは画期的です。災害での全壊家屋への支援の限度額を300万円から500万円に引き上げる被災者生活再建支援法案改正案、子どもの生活底上げ法案、選択的夫婦別氏法案、性暴力被害者支援法案も。6野党・会派は、共同で2018年度予算の組み替え動議も提出しました。
  すごいですね。
 井上 これらを力に、共通政策を豊かにすること、そして「本気の共闘」が実現できれば、安倍政権を倒す確かな力になると思っています。

 ◆市民が主役の選挙

  三重では、昨年10月の衆院選で、市民と野党の共闘を実現した2区で野党統一候補が激戦を制し、1区でも自民候補にあと一歩まで迫りました。一度は希望の党に合流すると言った候補者に、「政治家としての信念を貫いてほしい」と毎日のようにメールや電話しました。1区の松田直久氏が無所属、2区の中川正春氏も無所属で立候補、あきらめずに訴えてよかった。
 16年参院選がきっかけで、伊勢、伊賀・名張、鈴鹿、四日市などそれぞれの地域で市民連合ができて「積極的に議員を呼ぼう」とスタンディングなどでも市民が地元議員を巻き込んでやっているのがすごく大きいと思います。
 井上 国会では、安倍首相は改憲発議をねらっていたけれど、野党は衆院憲法審査会をほとんど開かせませんでした。「安倍内閣のもとでの改憲は許さない」という野党の一致点が力になりました。安倍首相は秋の臨時国会に自民党の改憲草案を出すといっています。いよいよ参院選では改憲が大きな争点に。憲法違反の戦争法廃止という共闘の一丁目一番地を大きな旗印にして、野党も共産党も大きく躍進する選挙にしたいと思います。
  若者にとっては自分の生活で精いっぱいという感じがあって。福祉の職場で働いているのですが、待遇も悪く、周りの友人も「もう辞めたい」と。自民党がやりたい政治は、弱者にとって厳しい政治。みんなにやさしい政治にしてほしい。
 井上 2013年参院選では共産党が改選3から8人当選して計11人に躍進したことで、本会議の登壇回数が3回から30回ぐらいに増え、議会運営の理事会にも出せるようになりました。15年の戦争法・安保法制強行のあと、国民連合政権をうちだしたとき、もし共産党が小さいままだったら、他党もメディアも無視したかもしれません。国会での発言権を大きくしてこそ、役割が果たせる。もっともっと伸びなくては、と。
  ほんとに、伸びてほしいです。
 井上 来年の参院選では、参院比例代表で7議席をめざします。私は参議院国対委員長として4期目をめざしますが、憲法改悪を許さず、個人の尊厳を守る政治に全力をあげたいと思います。
 がんばったのに安倍政権倒れないという気持ちがあるかと思いますが、それが安倍さんの戦略ですね。忘れさせる、あきらめさせる、国民のなかに分断をもちこむ。沖縄では、たたかっても無駄だと思わせるために力ずくで辺野古の工事を進めている。でも県民は...。
  勝つ方法はあきらめないこと、と。
 井上 そうです。その思いで知事選をたたかっている。知事が設計変更に合意しなければ基地はつくれません。野党共闘の源流でもある沖縄で何としても勝利しなくては。
  実は今日ここへ来るまで、ちょっとお疲れモードだったんです。でも、お話を聞いて、元気がでました。選挙は政党がやるものと考えず、自分が主体的にかかわって社会をつくっていきたい。共産党のことはパートナーだと思っています。
 井上 ありがとうございます! リスペクトして手を取り合っていきたいですね。
  力を合わせていきたいです。次につなげていきます。

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