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女性トイレ=長蛇の列をなくそう(『女性のひろば』2023年8月号)

女性トイレ=長蛇の列をなくそう――井上哲士・日本共産党参院議員に聞く

──5月9日の参院内閣委員会で、井上さんが「女性トイレを増やして行列解消を」と求めた質問が話題になっています。どんなきっかけであの質問を?

井上 以前から女性トイレの行列は気になっていたんです。私がよく使う京都駅も、コロナ禍が落ち着きを見せて、また長蛇の列が復活しています。つれあいと一緒に出かけて「ちょっと待ってて」とトイレに行くと、なかなか戻ってこれません。(笑)
 2月2日付の「しんぶん赤旗」に、トイレの男女格差を調べている百瀬まなみさんのインタビューが載りました。自分で調べている人がいるということに感動したし、「公共トイレの数は平均して男性用が女性用の1・7倍」という百瀬さんのデータを知って驚いたんです。女性の方が時間がかかるのに、そもそもこんなに少なかったのか、と。行列ができるのは当然ですよね。
 この問題で国会質問ができないか、秘書の皆さんと知恵だしするなかで、これは女性の社会参加、平等の課題であり大事な政治の課題だ、やろう! となりました。

■まず実態把握を

 質問では、公衆トイレの清潔、多機能トイレ、男性トイレのおむつ替えスペースなどの改善は少しずつ進んできたものの、行列解消はほとんど進んでいないことを紹介しました。
 そもそも国土交通省が「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用のあり方に関する取りまとめ」(2017年)で、行列の原因は「トイレ利用者数に見合った個室便房数になっていないことだ」と指摘しているのです。それなのにその後、実態の把握もされず、言いっぱなしになってきたことがわかり、まず実態把握を、と求めました。

■男女比の目安示して

 改善を進めるために、政府として男女比の目安を示すことも求めました。
 ネクスコ中日本の調べで、女性の個室利用時間は男性の小便器利用時間の2・5倍というデータがあります。国際的には、災害援助における人道憲章と人道支援における最低基準(スフィアハンドブック2018)で、男性トイレと女性トイレの割合を1対3にすることが推奨されています。女性用は男性用の3倍あるのが望ましいということですね。
 イギリスの王立公衆衛生協会も、トイレへのアクセスの平等は大事だ、として、少なくとも1対2で女性に有利にしてこそ公平になる、としています。
 国内でも、山口県萩市では公共施設のトイレに「男性小便器と女性便器数の比はおおむね1対2」と目標を掲げて取り組んでいます。
 大臣も、「待ち時間は同じになるのが望ましい」と答弁し、災害時の避難所では「女性用トイレの数は男性用より多くする」というガイドラインも出されているのですから、公共トイレでも、厳格な最低基準でなくてもいいので政府が目安を示してほしい。
 「トイレが心配で外出がおっくうになる」「一度の失敗で、外出が怖くなってしまった」という実情は女性の人権問題であり、政治がきちんと責任を果たすべきです。

■『女性のひろば』記事も

 質問の準備で、1993年3月号の『女性のひろば』の「知らず知らずの不平等 なぜ? 女性トイレに長~い列」という記事も参考にさせてもらったんですよ。

──見つけてくださってありがとうございます(笑)。あれは男性記者と組になって、東京駅や新宿駅構内、デパートのトイレを歩いて回って男女比を調べたんです。

井上 記事では、働く女性の切実な要求として教職員組合はじめ労働運動や学生の要求実現運動でトイレ改善がとりくまれてきたことにも触れていましたね。
 おとな用は男女共用しかなかった学校職場で、教職員組合が声をあげて女性用トイレを作らせてきました。
 ここ参議院でも初の女性議員誕生が1953年。本館に初めて女性専用トイレができたのが59年。その後、女性議員や職員が増えるのにともなって、今では本館・分館あわせて男性トイレ20カ所、女性トイレ22カ所になっています。女性の社会進出に欠かせない課題なんですよね。

──質問にどんな反響がありますか?

■あきらめていたけれど...

井上 「よくぞとりあげてくれました」「いつも困っています」という声、「ありがとうございます。女性用トイレが少ないけど『そういうものだ』とあきらめていた私ですが、しんぶん赤旗の(井上質問の)記事を読んで『権利なんだ』と気がつきました」といったうれしい声が届いています。多くの人が行列にモヤモヤしていたんですね。「◯◯駅はこんなに改善されています」という情報や、地方議員さんが地方議会でとりあげ改善してきた経験も届いていて、これは動くぞという予感がしています。
 じつは公衆トイレは入り口の壁に構造を記したプレートがついていて、中に入らなくても個室や便器の数がわかることを百瀬さんに教わりました。以来、トイレのプレートに目がいくようになりました(笑)。先日、京都駅地下街ポルタのトイレは男性用7、女性用17なのを発見しました。少しずつ動いているんですね。情報交換しながら前に進めていきましょう。

いのうえさとし:1958年生まれ、広島市で育つ。京都市在住。2001年初当選し、4期目。参議院幹事長・国会対策委員長

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